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吉永南央の「アンジャーネ」は、妙に心に残る小説だ。主人公の瑞輝は、司法試験に失敗した二十五歳の青年で、死の床に就く祖母が営んでいた外国人向けの安アパートの大家を任される。この連作短篇集に収録されている七話は、いずれも彼が、アパートの住民のトラブルを解決するものだ。青年を主人公とする小説は、多くの場合、文体がソフトである場合が多い。それは、なぜかと言えば、主人公の若く柔軟な感受性と文体を直結させて、青年のナイーヴな感受性をほぼ恒常的に表現するからだ。また、ミステリ的なサプライズを狙った場合を除き、主人公と仲間は原則として善人揃いで、悪人は専ら敵に集中する。正邪の別がはっきりしているんですね。しかし、この本は趣きがやや違っている。連作を通して、主人公の瑞輝は成長し、その限りにおいてこの本は青春小説なのだが、文体は硬質だし、事件の内容は貧しい外国人住民のリアルを直視するものだ。相当シリアスな状況や、苦い結末も用意されている。覚悟を持って異国の地で生きることを選択した人々は、事と次第によっては汚い手を使うことも厭わない。瑞輝が事件を通して垣間見る、住民のシビアな現実は、青春小説によくある「主人公の仲間は正義か無実」という単純な図式を拒否し、たとえ事件を解決できても、事態の根本的な収束には失敗することがある。しかし、だからこそ、瑞輝は本当に成長するのだと思う。愛、友情、信頼や信念を語り、主人公が熱血漢に成長する作品を書くことは、ある意味、容易なことで、リアルで過酷な現実を描くと同時に、過剰な性悪説に走らない、落ち着いて抑制の効いた青春小説を書くのは難しいことだと思う。そういう意味で、この「アンジャーネ」は、その困難を克服した作品であり、素直に賞賛したいと思いますね。 >> 続きを読む
2019/01/20 by dreamer
「アンジャーネ」のレビュー
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アンジャーネ | 読書ログ
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