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ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)

3.5 3.5 (レビュー3件)
著者: ポール・アダム
定価: 1,166 円
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    「ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【ミステリにはアートがよく似合う】
       とある晩、昔馴染みの4人が集まりました。
       元ヴァイオリニストだったけど、「一流」にはなれなかったため、今ではしがないヴァイオリン職人をしているトマソ。
       神父のアリーギ。
       超一流のヴァイオリン職人のジャンニ(本作の主人公)。
       そして、他の3人より少し若いけれど、子供の頃から親しくつきあっているイタリア警察の警察官、グァスタフェステ。
       彼らは、この夕べに弦楽四重奏を楽しもうというわけです。

       たっぷり演奏を楽しんだ後、トマソとアリーギは家路につきました。
       ジャンニは、残っていたグァタフェステと演奏後の一杯を楽しんでいたところ……トマソの奥さんから電話がかかってきました。
       「主人がまだ帰らないのですが……」。
       トマソの工房にも電話をしてみたそうですが、誰も出ないのだとか。
       私達が探してみますよ、ということでジャンニとグァスタフェステはトマソを探しに出かけたのですが……トマソは自分の工房で鑿によって殺害されていたのでした。

       これが本作の最初の事件です。
       そう言えば、トマソは、「探索」のためにイギリスに行っていたけれど、詳しいことはまだ言えないなんて話していたっけ。
       ええそうなんです。捜査を続けていくうちに、どうやら事件の裏にはヴァイオリンが絡んでいるかもしれないという疑惑が浮かび上がってきます。

       ストラディヴァリ作の「ル・メシー」(「メシア」のフランス語読みですね。いくら待っても現れないからそういう名前がついたのだそうです)と呼ばれている未発見のヴァイオリンがあるそうなのですが、もう一つ、そのメシアの「姉妹」と呼ばれているヴァイオリンも存在しており、どうやらトマソはその「メシアの姉妹」と何らかの関わりがあったのではないかと思われるのです。
       こうなると警察としてもヴァイオリンの知識が豊富なジャンニの協力を得たいところ。
       ジャンニも、幼なじみのトマソを殺害した犯人を見つけ出したいと思いますし、その「メシアの姉妹」なるヴァイオリンにだって関心が無いわけがありません。
       ということで、ジャンニとグァスタフェステの二人による捜査が始まるという物語です。


       さて、本作はミステリではありますが、いわゆる「黄金期」の本格ミステリとは趣を異にします。
       「本格物」と言われた作品は、例えば奇抜なトリックを軸にしていたり、あるいはあくまでもフェアに、読者に全ての手がかりを与え、「さあ、犯人を推理してごらんなさい」と読者に挑戦するようなタイプのミステリでした。
       でも、現在のミステリはこの「黄金期」のようなものではなく、むしろ本作のように、犯人を論理的に推理できるだけの完全な手がかりなど与えられていないし、犯行にも何らのトリックも用いていないような作品の方が主流になっているように思われます。

       え? そんな作品のどこが面白いのか?ですって?
       面白いんですよ。特に、どのようなモチーフを使うかによって作品に独特の雰囲気、色合いを持たせることができ、その魅力は大変大きい物があります。
       ええ、奇抜だけれど非現実的なトリックを使う作品よりも優れている場合だって沢山あるように思うのです。
       本作だって、「推理」の部分は全く理論的ではないところがあります。
       事実、グァスタフェステがジャンニに対して「それは何か証拠がある推理なんですか?それとも当てずっぽう?」と尋ね、ジャンニ自身「単なる推測だ」と答える場面があります。
       理詰め、論理で犯人を突き止めるという作品ではないのですね。

       本作と似たようなタイプの作品であれば、例えばアルトゥーロ・ベレス・レベルテ作の「フランドルの呪画」なんていうところがすぐに思い浮かびますし、犯罪が起きなくても良いというのならジェラルディン・ブルックスの「古書の来歴」なんていう作品だって同じ根っこを持つ作品のように思われます。

       そう、ミステリというのは、実はアートと大変相性が良いように思えます。
       「フランドルの呪画」は絵画、「古書の来歴」なら稀覯本。
       そして、本書では音楽、ヴァイオリンというわけです。
       だって、それら芸術作品には既に数多の謎が潜んでいるわけですからね。

       これまでにも絵画をモチーフにしたミステリはいくつかあった記憶ですし、音楽に関しても、楽譜をモチーフにした作品があった記憶です。
       でも、「楽器」というのはこれまでにあまり無かったのではないでしょうか?(私の知識が浅薄なもので間違っていたらごめんなさい)
       思わず、「良いところに目をつけたね、ワトソン君」と言いたくなってしまいました。

       そしてもう一つ。
       本作は、音楽で言えば、「名器のヴァイオリン」という主題が一本通っているのですが、それをちょっと抒情的に表している「楽章」もあれば、ややおどけた様な、軽快な「楽章」もあり、それを巧みに構成している、まるでソナタ形式の楽曲のようではありませんか。
       例えば、同じミステリにしても、ジェフリー・ディーヴアのリンカーン・ライム・シリーズ(これも私は大好きです)などは、まるでサラサーテのツィゴイネル・ワイゼンの大二楽章のように、スピード感溢れる中にどんでん返しの連続という魔術的技巧を鏤めた楽曲のように感じますが、本作はそれとは違うのですね。

       さらにさらに、音楽好きな方ならにやっとしてしまうような、例えばハイフェッツとかイツァーク・パールマンなどの名前がさらっと出てきたり、美味しそうなイタリア料理の描写があったり、美しいヴェネツィアの風景が描かれていたり、それぞれに雰囲気を盛り上げてくれます。

       大変よくまとまっている、でも最後までぐいぐい読ませる(私はあっという間に読了してしまいました)良作ではないでしょうか。
       おっと! 最後にもう一つだけ。
       巻末解説によると、何と!本作の続編Paganini's Ghost(「パガニーニの幽霊」……パガニーニはイタリアのウルトラ技巧派のヴァイオリニストです)の日本での刊行が決定しているのだそうです。
       これは続編も楽しみですねっ。
      >> 続きを読む

      2019/08/19 by

      ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)」のレビュー

    • 評価: 3.0

      親友のトマソが殺害されてしまったヴァイオリン職人のジャンニ。
      親友で刑事のアントニオと事件を捜査するが、辿り着いたのはメシアの姉妹と呼ばれる幻のストラディバリウス。

      ヴァイオリン職人が探偵というのは史上初だろう。
      起こる事件に対し、ヴァイオリンの知識が必要不可欠なためジャンニが事件に関わることに。

      ヴァイオリンに関しての蘊蓄がかなり多く、そのため過去のいきさつが事件の重要な鍵に。
      シリーズは2作目まで出てるらしいが、続編も見てみたい。
      >> 続きを読む

      2019/03/05 by

      ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)」のレビュー

    • 評価: 4.0

      熟練のヴァイオリン職人の友人が殺された。同じくヴァイオリン職人である主人公が友人の不可解な死を、これまた友人の刑事と謎を追求していく。そこには存在するかもわからない伝説のヴァイオリンの影が…
      弦楽器が好きな人には特に楽しめるような内容。

      2015/06/10 by

      ヴァイオリン職人の探求と推理 (創元推理文庫)」のレビュー

    • 興味深い推理小説ですね!!

      2015/06/11 by r-nn

    • なかなか面白かったです♪

      2015/06/11 by みくた


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