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空飛ぶ馬

4.1 4.1 (レビュー3件)
著者:
カテゴリー: 小説、物語
定価: 714 円
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    「空飛ぶ馬」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0


      北村薫の本格謎解きものの連作短編集である「空飛ぶ馬」は、郊外から東京の私立大学に通う女子大生の「私」と、人気落語家の春桜亭円紫のコンビの周辺で起きる"謎めいた出来事"の顛末を描いています。

      主人公の女子大生の「私」が語る、日常生活の中で出会ったちょっとした謎を、探偵役である噺家の円紫師匠が鮮やかな推理で解き明かすという、北村薫の小説世界に完全にはまってしまいました。

      この「空飛ぶ馬」が、例えようもないくらいに面白いのは、各編で見せる円紫師匠の論理的な推理ぶりもさることながら、人情小説の味わいを大切にしているからなのです。

      そして、この連作短編集は、優れた本格推理小説であるのと同時に、一人の少女の魅力あふれる成長の物語だと思うのです。

      そして、そうなり得たのは、まさに殺人事件という"非日常的"な題材ではなく、主人公の「私」の身の回りで起きる"日常的"な題材を扱っているためなのです。

      まだ、少女の名残りを留めている「私」は、その様々なドラマから人生の側面を垣間見て、大人へと成長していくのです。そして、その様子を温かな視線で見守るのが、円紫師匠を始め、大学の加茂先生、友人の正ちゃんといった「私」の取り巻きなのです。

      日常に潜む謎といえば、どうしても人間の営み、人間の心理といった問題に関わってきます。それゆえ「私」が、ある一つの謎の真相を知ることは、同時に人間に対する理解を一歩進めることになるのだと思います。

      この人間に対する"深い洞察と愛情"、これこそが他の誰にも真似できない「北村ワールド」の大きな魅力なのだと強く思います。

      これがあって初めて、「砂糖合戦」の「なぜ少女は紅茶に何杯も砂糖を入れるのか」、「赤頭巾」の「なぜ日曜日の夜になると公園に赤頭巾が現れるのか」、「空飛ぶ馬」の「幼稚園の木馬は、どうして一日だけ空を飛んだのか」などといった謎が、生き生きとした魅力を放つのだと思います。

      文学少女の「私」にとって、第一話の「織部の霊」から第四話の「赤頭巾」までのエピソードは、ある意味、人生の悲哀や生臭さといったものを感じさせるものでしたが、第五話の「空飛ぶ馬」に至って、そうした憂さは見事に払拭させられるのです。

      そして、最後に人生讃歌のクリスマス・ストーリーを用意した辺りの北村薫の配慮は、心憎いばかりです。

      この連作短編集には、本格ミステリ全般に対する溢れんばかりの愛情があり、第二話の「砂糖合戦」の中で、円紫師匠が、「私」に向かって「落語」に対する考えを語った言葉は、そのまま推理小説作家・北村薫のミステリに対する真摯な姿勢を言い表していると思います。

      「古い形の中にある命は残して、それを生き生きとしたものにしたい。子供の頃から聞いて、好きで好きでたまらなかった落語です。喜ばせてもらった恩返しをしなくちゃいけない。それには後ろを向いているだけでは駄目でしょうね。必要なのはやっぱり演出の工夫と芸の力です」。



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      2017/05/13 by

      空飛ぶ馬」のレビュー

    • 評価: 4.0

      探偵役が真打の落語家円紫、主人公は女子大生の私。北村薫さんのデビュー作だそうだが、もう面白くて止まらなくなった。
      何気ない日常の謎、ありふれた中に混じって気が付く不思議な出来事が、胸がすくように論理的に、説明しながら絵解きをしてくれる。「私」をとりまく家庭も学校もいたって平和で、三人の友達も個性は違っても雰囲気が暖かい。
      ほのぼのとした江美ちゃん、落語好きの私。ズバリと飾り気のない会話をするが、心根の優しい正ちゃん。
      落語の演題がいろいろ出てきて、少し噺の中身も紹介してくれるのが嬉しい。



      短編が5つ

      織部の霊
      最近古田織部のエピソードを読んでいたので、最初に出てきた名前でビックリした。
      大学の先生がまるで覚えのない織部の夢を見ると言う。

      砂糖合戦
      円紫さんと喫茶店に入ったら、女の子の三人組が砂糖壷を何度もまわしていた

      胡桃の中の鳥
      円紫さんが蔵王で研究会を開くので誘われた、友人と三人で旅先を蔵王にした。そこの宿で可愛い女の子を見かけた。

      赤頭巾
      絵本作家の女性と知り合いになった、その家の前の公園の麒麟の前に、時々赤頭巾が立っているという。

      空飛ぶ馬
      働き者の青年が、店先に飾っていた木馬を幼稚園に寄付をした。だが、一日その木馬が消えてしまった夜があるという。


      どれも些細な謎かもしれない、私なんか?が頭の上に出るようなことがあってもまぁいいかと流してしまっている。そのくらいちょっとしたことを、円紫さんが解き明かす。ほのぼのとして筆が暖かい。「空飛ぶ馬」はなんだかほろっとしてしまった。

      勢いに乗って、シリーズの4作「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」まで買ってそろえてしまった。

      北村さんは博識で、文章も味わい深い。引用されてい本まで読みたくなる。それもいつかと思っている。






      比喩や抽象は現実に近づく中断であると同時に、それから最も遠ざかる方法であろう。現実に苦しみに思いを致すときにそう考えないわけにいかない。

      「元気?」
      声を上げながら近づく私たちに、江美ちゃんは二人分――両手を胸の前に広げて、夜を迎える前に現れた気の早い星の輝きのように振ってみせた。

      「そういえば――」
      「何よ」
      「稲花餅、食べるぞ」「あら、忘れてた。感心するわね、凄い執着」
      「執着のないところに達成はない」
      笑ってしまう正ちゃんのせりふより


      知で情を抑えることはできるのに、その逆は出来ないのです。そこが知で動く人間の悲しさではありませんか。そういう意味で知は永遠に情を嫉妬せざるを得ないのでしょうね
      「赤頭巾」解決後の円紫師匠の言葉


      ごまめさんのレビューでこの本に出会えました。田舎の家にいた頃学校から帰ると誰もいませんでした。ラジオをつけて宿題をしながら聞いていたのが丁度落語の時間で、あれはこういう噺だったのかと気がついたものもありました。、そのうち繁盛亭に行ってみようかと思いましたが、こうして片足突っ込み抜き差しできないくらい深入りするのかな、用心しなければと思っています。
      >> 続きを読む

      2015/05/29 by

      空飛ぶ馬」のレビュー

    • >空耳よ さんへ

      中トリと、大トリの方はすべて聴きごたえがあると思います。

      6月末から7月にかけてのトリでは、
      春若、雀三郎、都、福笑、九雀、梅団治、三喬、文之助、福団治、さん

      中堅では、
      吉坊、文三、生喬、遊喬、かい枝さんが、お奨め。

      平日行けるなら、東京からの
      柳家さん喬、三遊亭白鳥、さんもお奨めでおます。

      タレントとしてお名前を知っている方よりも、実力派の落語を堪能してください。

      また、御感想、お聞かせください。
      >> 続きを読む

      2015/05/31 by ごまめ

    • ごまめさん

      ありがとうございます♪

      早速、いただいたコメントをコピーして、参考にします。
      行くと決まったら演目の勉強もしておきたいなぁとおもいます。
      行きましたら、感想を書きます。楽しそうです。
      >> 続きを読む

      2015/05/31 by 空耳よ

    • 評価: 3.0

      柳家三三で北村薫~(円紫さんと私)シリーズよりという落語会が、西宮の芸術センターであると知ったが、
      「北村薫」「、円紫と私」って何と、思い辿りついて買ったのがこの本。

      ヒロインの女子大生の「私」と、探偵役の噺家、春桜亭円紫との日常の不可思議なことを解いていくという物語。
      でも、推理小説というより、人の暖かさ、人の優しさに触れることのできる、ほのぼの本である。

      噺家として登場する春桜亭円紫、上方の噺家にはいないタイプ、粋でかっこいい。


      落語ファンとして、気に入った箇所を紹介すると、

      正ちゃんという娘が、「大勢を相手にする御仕事なのに、お一人が好きですか。」と聞かれた円紫さんは、
      「だから、なのかな」ちょっと思案しながら「大勢を相手にしていませんね」と・・・。

      「それじゃ一部の人、噺の分かる人が相手なんですか?」

      「いいえ。一部でもない、たった一人、自分ですね」・・「自分?」
      「ええ、若い頃の僕が相手です。一席一席、純な期待をこめて耳を傾けていた僕がね。
      お客様は全員がその頃の僕だと思って話しています。この相手はごまかせません。
      それをごまかしたら、自分で自分に落語をやめろというのと同じですから・・・。」

      この言葉で、いかに円紫さんの噺家として、正面から落語に向かい合ってるのが解りますな。

      シリーズとしては、「夜の蝉」、「秋の花」、「六の宮の姫君」、「朝霧」と続くらしいが、
      急いで読もうというのではなく、ゆったりとした時間の中で読みたい本なので、
      長期休暇のときに、他の本と一緒に手にする様な、本でおますな。
      >> 続きを読む

      2013/06/17 by

      空飛ぶ馬」のレビュー

    • おはようございます。

      >ヒロインの女子大生の「私」と、探偵役の噺家、春桜亭円紫との日常の不可思議なことを解いていくという物語。
      >でも、推理小説というより、人の暖かさ、人の優しさに触れることのできる、ほのぼの本である。

      現在の推理小説の1つのジャンルとして確立した
      “日常の謎”の嚆矢となったこの作品ですが

      謎としては地味ではありますが『砂糖合戦』『赤頭巾』ような
      日常に潜む悪意のようなものが描かれる分
      表題作の『空飛ぶ馬』が優しさに救われるところがあるような気がします。



      落語ファンとして、気に入った箇所を紹介すると、

      正ちゃんという娘が、「大勢を相手にする御仕事なのに、お一人が好きですか。」と聞かれた円紫さんは、
      「だから、なのかな」ちょっと思案しながら「大勢を相手にしていませんね」と・・・。

      「それじゃ一部の人、噺の分かる人が相手なんですか?」

      「いいえ。一部でもない、たった一人、自分ですね」・・「自分?」
      「ええ、若い頃の僕が相手です。一席一席、純な期待をこめて耳を傾けていた僕がね。
      お客様は全員がその頃の僕だと思って話しています。この相手はごまかせません。
      それをごまかしたら、自分で自分に落語をやめろというのと同じですから・・・。」

      この言葉で、いかに円紫さんの噺家として、正面から落語に向かい合ってるのが解りますな。

      シリーズとしては、「夜の蝉」、「秋の花」、「六の宮の姫君」、「朝霧」と続くらしいが、
      急いで読もうというのではなく、ゆったりとした時間の中で読みたい本なので、
      長期休暇のときに、他の本と一緒に手にする様な、本でおますな。

      >> 続きを読む

      2013/06/18 by きみやす

    • この本に収録されている「赤頭巾」という話が好き・・・というか、大変印象に残っています。
      「知らぬは本人ばかりなり」の恐ろしさを見ました。
      >> 続きを読む

      2013/06/18 by アコチム


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