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隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

5.0 5.0 (レビュー1件)
著者: エリック・マコーマック
定価: 950 円
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    「隠し部屋を査察して (創元推理文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

       非常に奇怪で不思議な作品を集めた短編集です。中には極めてグロテスクな描写も結構出てくるものの、この感性は特筆に値すると思います。

      ○「隠し部屋を査察して」
       表題作です。主人公は、とある入植地に赴任した査察官です。
       この入植地には6軒の家があり、それぞれの家には夫婦の管理人が住んでいます。そして、その地下には「隠し部屋」があり、囚人が一人ずつ収容されています。
       査察官は、月に一度、隠し部屋を査察して、それぞれの囚人が無事でいるかどうかを確認しなければならないのですが、この囚人達がすこぶる付きの奇怪な人達です。
       例えば、魔女だと告発されたために裁判にかけられたところ、判事の前で4時間に渡りとんでもない物を嘔吐し続けた女性.。嘔吐したものはと言えば、ウツボ4匹、44口径の巨大なピストル、花崗岩のいくつかの塊、1ダースもの動物の毛玉、文字が書かれた羊皮紙等々。
       あぁ、判事が目を背けずに嘔吐された羊皮紙に書かれている内容を読んでいたら命を落とさずに済んだかもしれないのに……とか、森の空き地に勝手に実物大(!)のガレオン船(奴隷船ですね)の精巧な模型を作り上げてしまった男とか。そんな囚人達を査察していた査察官ですら、この後……。

      ○「パタゴニアの悲しい物語」
       パタゴニアにいるというミロドンという不思議な動物を捕獲するために上陸した船乗り一行の物語です。
       明日はミロドンを探しに行くという晩、船乗り達は慣例なのでしょうか、各々物語を語り合い、評価し合うということを始めました。その物語がそれぞれ怖いのです。
       例えば、船長の物語は、南ボルネオに行った時の体験談でしたが、とある村では蜘蛛の神を崇拝していたそうです。その蜘蛛を奉った神殿の守護者(と、その予備の者)を養成するため、呪術師達は、近隣の村から男の子の赤ん坊をさらってきては何年もかけて守護者に育てたのだそうです。
       それが強烈で。さらってきた赤ん坊を、幼い頃から少しずつ上半身をひねっては固定していき、ついには上半身が真後ろを向くようにしてしまいます。そしてその後、手と足の間に膜を移植してしまうことから、その者は蜘蛛のように四つんばいにしか歩けなくなります。つまりは、顔は下を向いていて、剥き出しの生殖器が上を向いているという異形の者になるというのです。

      ○「刈り跡」
       私が一番印象に残った作品です。
       7月7日午前6時、カナダのサスカチュワンにある村から、それは始まりました。風のような音と伴に、突然大草原の表面に亀裂が走り始めたのです。
       その亀裂は幅100メートル、深さ30メートルの溝で、断面は人工的としか見えない程に極めて滑らか。その溝が時速1600キロの猛スピードで走り始めたのです。
       行く手にあった物はことごとく消滅してしまいます。とある農家はその溝の進路に半分だけかかっていたのですが、ちょうど半分がすっぱりと消滅してしまい、消滅した側にいた人々もいなくなってしまいました。
       この溝は「刈り跡」と呼ばれるようになりますが、これが世界中を走り始めたのです。ものすごいスケールの話ですよね。
       もちろん、軍もマスコミもも追いかけまくります。でも、ここに作者の、何だろう、アイロニー? じゃなければ何と表現したら良いのだろう。すごく不思議な感覚が盛り込まれています。悲惨さは何もないのです。あまりにもきれいに、スパっと「刈り跡」が作られていくことに、人類はどう対処したかというと……。

       といった感じの作品が多数収録されています。一つの作品の長さはかなり短めですが、どれも奇妙な味わいを有しています。
       私は、こういうタイプの作品はかなり好きなのでございました。
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      2019/03/14 by

      隠し部屋を査察して (創元推理文庫)」のレビュー


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