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紅はこべ (創元推理文庫 507-1)

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: バロネス・オルツィ
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    「紅はこべ (創元推理文庫 507-1)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【イギリス側から見たフランス革命】


       まるでシャーウッドの森から姿を見せる「ロビン・フッド」の様な、はたまた颯爽と登場する「怪傑ゾロ」のような、本作を読んでそんな印象を持ちました。
       1905年に書かれた古い作品でもあり、やや陳腐化しているところもあることから、現在はあまり人気がないのかなぁ?(でも、宝塚で演じられたりしていますよね?)。
       とまれ、名の通った作品ではありますので、特にまだ読まれていないという方を念頭においてご紹介したいと思います。

       時は、フランス革命のまっただ中。ロベスピエールやダントン率いる共和主義者は、長い間自分たちを苦しめてきた貴族達を徹底的に血祭りにあげていきます。
       それはある意味狂乱的であり、人々は血を見ずしては収まりがつかなくなっているかのようです。
       毎日何百人もの貴族達(女性や子供たちも含めて)が処刑されていました。

       貴族達は何とかパリから逃れようとしますが、街道の要所には共和主義者達が陣取っており、そこをすり抜けようとする貴族達を容赦なく処刑場に送り込みます。
       この処刑に使われたのが、かの「ギロチン」です。
       今の私たちの目からすると、何とも残酷な処刑具と思えてしまうのですが、実はこれ、内科医だったギヨタン(これがギロチンという名前の由来ですね)が極めて人道的な理由から設計した処刑具だったんですね。
       苦痛もなく、一瞬にして首を切り落とすことができる器具として。

       さて、ドーヴァー海峡を挟んだ対岸のイギリスでは、フランスのこの狂熱の様を苦々しく見ていました。
       もちろん、王制を敷いているイギリスとしては、王を廃してギロチンにかけるようなフランスを容認できるはずもありません(それは、当時のヨーロッパ諸国が全てそうで、自国への革命の波及をひどく恐れ、警戒もしていたんですね)。
       かと言って、まともな政治が期待できない当時の狂乱のフランスに対して、外交的に何を言えるわけもなく、時の英ピット政権はこの惨状を黙視するしかなかったのです。

       そこに、「義勇」の人たちが現れます(王政側から見てということですが)。
       首領を含めて20人からなるイギリス人達の組織なのですが、死を目前にしているフランス貴族達を、厳重な警戒網を破ってイギリスに渡らせることを繰り返していました。
       フランス共和主義者達は怒りに燃えたぎります。
       まんまと門をすり抜けられてしまった、その門を担当していた軍曹をもギロチン送りにしてしまうほどに。
       彼等は、いつもメモを残して行きました。
       「○○公爵をお連れする」という予告メモですね。
       そのメモには、署名代わりに、星形の花が書かれていました。
       それが「紅はこべ」の花だったのです。

       救出する側のイギリスは、紅はこべの活躍に拍手喝采です。
       少しでも多くの人たちを助けるんだ! そんな感情がイギリス側にはあったと描かれています。

       フランスだって黙っていません。何とか「紅はこべ」を引っ捕らえろということで、全権を委ねた狡猾なショーヴランをイギリスに送り込みます。
       ショーヴランが目をつけたのは、表面上は共和主義者を装っているけれどどうやら「紅はこべ」と連動してフランス貴族達の救出にあたっていると思われるアルマン・サン・ジュストの妹であり、ヨーロッパ随一の才媛と言われていたマルグリートでした(フランス人ですよ)。
       彼女は既に、イギリスの大富豪、サー・パーシー・ブレイクニーに嫁いでいました。

       この旦那のパーシー・ブレイクニーが、またとんでもな男で。
       伊達男を絵に描いたような美丈夫ではあるのですが、まぁまるで間抜け。
       人々は、彼の財力や地位があるので面と向かって何も言いませんが、陰では揶揄しているんです。
       加えて、何故、欧州一の才媛たるマルグリートが、よりにもよって抜け作パーシー・ブレイクニーの妻になったんだ?と口さがない噂話ばかり。
       金や地位目当てだったのか? とかね。

       でもね、マルグリートにはそれなりの愛情が、過去にはあったんです。
       結婚する頃には、それはそれは、パーシー・ブレイクニーは誠実で熱烈な愛情をマルグリートに捧げたのだとか。
       並み居る求婚者を退けて、パーシー・ブレイクニーを選んだのは、まさにその情熱的な愛情にほだされてのことだったんです。

       それで二人は結婚したのですが、ある時、マルグリートは、噂に聞いた話を何の気なく人々の前で話してしまったことがありました。
       それは、フランスのとある貴族が、フランス革命に反対していて、オーストリアと結託して革命政府を転覆させようとしているという話。
       マルグリートとしては、悪意があって話したことではなかったのですが、それがきっかけで当の貴族はギロチンにかけられ、一族全員が処刑されてしまったんです。
       フランスの共和主義者の人々は、この「悪事」を告発したマルグリートを口々に誉め称えました。 さすが欧州一の才媛だと。
       イギリス人の妻になっても祖国フランスの革命を支持しているのだと。

       でも、その時から、パーシー・ブレイクニーは、マルグリートに対する態度が変わってしまい、マルグリートも夫の心変わりと捉え、夫婦仲は冷え込んで行ったのでした。

       こんな「ロマンス」も織り込みながら、さあ、「紅はこべ」はフランス貴族達を救出し続けられるのか?
       あるいは、狡猾なショーヴランの毒牙にかかって捕縛されてしまうのか。
       実際、ショーヴランの追求の手は徐々に「紅はこべ」本人に迫ってきます(そこに再度利用されてしまうマルグリート)。

       こんなお話が「紅はこべ」なのでした。
       フランス革命がテーマになる作品の場合、多くはフランス側、共和主義者側から描かれることが多い様に思います。
       本作は、その反対側から描いた作品なんですね。
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      2019/08/20 by

      紅はこべ (創元推理文庫 507-1)」のレビュー


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