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遠き神々の炎〈上〉 (創元SF文庫)

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: ヴァーナー ヴィンジ
定価: 1,188 円
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    「遠き神々の炎〈上〉 (創元SF文庫)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【50億年前の発掘されたアーカイヴから現れたのは邪悪な精神を持つ奇形体だった!】
       最近のSFのスタイルは、作者が創造した仮想世界や技術に関し、包括的な説明を加えることなくどんどんストーリーを展開させ、読者にはそのストーリーを追いながら語られている世界像や技術などを少しずつ把握、理解することを求めるというものだと思います。
       本作もそういうスタイルの作品なのですが、銀河宇宙全体を包摂するような超遠大かつ深淵な世界を創造しているため、その理解はなかなかに大変です。

       まず、地球をも含む銀河系宇宙のことを理解する必要があります(本書の冒頭に図説があります)。
       実は、この銀河系宇宙は三層(その外側も含めると四層)から成り立ち、それぞれの層によって空間の性質が全く異なるという世界を設定しています。
       地球が含まれる『低速圏』では、知的生命体が自然発生するのですが、その空間では光速を越えることはできず、従って生まれた文明も非常に遅い速度でしか発展できず、長期間にわたる持続性もない(と、言ってもかなり長い期間文明は維持されるのですけれど、それは宇宙規模では短いとされるのです)とされています。

       その『低速圏』のさらに内側には『無思考深部』と呼ばれる層があり、そこでは生命体の思考速度が極めて低速になり、事実上思考停止状態に陥るとされています。
       コンピュータも処理速度が落ちまくり、ほとんど使い物にならない世界です。

       『低速圏』の外側には『際涯圏』と呼ばれる層が広がっており、そこでは光速を越える速度を実現することが可能になっており、それに伴い全てが超速を得られるため、文明の発展も迅速で、持続性も高い世界になるのです。
       『低速圏』で発生した知的生命体のうち、己の文明が滅びる前にこの『際涯圏』に到達することができた種族は、新たな文明の段階を迎え、広範囲の宇宙を情報と物流で結んだネットワークに加わることができ、極めて高度な科学文明社会を築くことになります。

      そして、『際涯圏』のさらに外側には『超越界』と呼ばれる世界があり、『際涯圏』からこの『超越界』に達することができた者は、『神仙』と呼ばれる存在に進化しているのでした。

       さて、物語は、ストリョームという人類型生物の世界の考古学者が、50億年前のアーカイヴを発見し、ハイラブと呼ばれる領域でその発掘作業を開始したことから始まります。
       実は、そのアーカイヴの存在自体は、以前から知っている者は知っているという存在だったのですが、あまりにも危険かつ胡散臭いところもあり、これまで誰も手出しをしなかったというシロモノなのですね。
       ところが、ストリョームはその封印を解いてしまったのです。

       そうしたところ、そのアーカイヴから現れたのは、邪悪意識からなる奇形体だったのです。
       ストリョームの考古学者達も、途中から異常を感じ始め、作業を中断してハイラブまでやって来たフリゲート艦と輸送艦に分乗して脱出しようとしていたのです。
       しかし、奇形体の展開と成長は速く、わずかな時間の差でフリゲート艦の情報システムは汚染されてしまい、ワープが強制中止された結果、フリゲート艦は自爆してしまうのでした。
       その間隙を縫って輸送艦だけは脱出に成功し、『低速圏』にある不明の惑星に不時着しました。

       その惑星には、後に鉄爪族と呼ばれることになる群生生命体が初期の文明社会を構築していました。
       この群生生命体は、見た目は犬というかネズミのような外見をしており、4~6個の個体が一つの意識を形成しているという生命体でした。
       彼らは、降下してくる輸送艦を見て、「天から船が降りてきた!」と驚愕し、攻撃を仕掛けてくるのです。

       不時着した輸送艦には多数の子供達がコールド・スリープ状態で搭乗していましたが、彼らを率いる夫婦とその2人の姉弟だけはコールド・スリープから覚醒しているという状況でした。
       輸送艦は、不時着と同時に救難信号を発し、外の様子を探っていたのですがそこを急襲されたのです。
       迎撃はしたものの、多勢に無勢。
       夫婦は殺害されてしまい、子供達は捕縛されてしまいました。

       この鉄爪族ですが、どうやら『鋼鉄卿』率いる斬伐主義者と、『木彫師』率いるグループとが対立関係にあるようで、姉のヨハンナは『鋼鉄卿』に囚われ、弟のイェフリは『鋼鉄卿』のもとから奪い去られて『木彫師』の下に連れてこられました。
       お互いに、両親も姉弟も殺され、生き残ったのは自分だけだと教えられて。

       『鋼鉄卿』も『木彫師』も、子供達の世界の先進技術に驚愕し、子供達が所持していた携帯端末から多くの知識を得ようとします。
       そして、それぞれの保護下においた子供達を自分たちの都合の良いように騙し、懐柔してさらに多くの知識を引き出そうとしているのです。

       一方、輸送艦の救難信号をキャッチした、『際涯圏』にいたラヴナ達は、どうやら輸送艦は邪悪意識の形成に欠くことができない枢要な一部を持ち出しているという情報もキャッチしました。
       そのため、邪悪意識は第二形態に移行できずにいると思われるのです。
       これは何としてでも輸送艦を救出し、邪悪意識を殲滅する必要がある!

       何故なら、既に邪悪意識はその支配領域を拡大しており、いくつかの居住惑星をネットワークから脱落させたばかりか、ネットワーク本体にまで攻撃を仕掛けてきているのです。
       そればかりではなく、何と、『超越界』にいた『神仙』の一人を殺害までしてしまったのです。

       ネットワーク世界の壊滅寸前に宇宙船で脱出したラヴナ達は、ヨハンナやイェフリを救出し、邪悪意識を殲滅することができるのか?
       物語は下巻へと続きます。

       なお、このレビューの冒頭で簡単に書いたこの物語の背景世界については、上巻の巻末に詳しい解説がまとめられていますので、本編をお読みになる前に(あるいは読みながら)その解説を参照していただくとこの物語の世界の理解がし易くなると思います。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
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      2020/04/30 by

      遠き神々の炎〈上〉 (創元SF文庫)」のレビュー


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