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ケイレブ・ウィリアムズ (白水Uブックス)

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: ウィリアム・ゴドウィン
定価: 1,944 円
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    「ケイレブ・ウィリアムズ (白水Uブックス)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【『モルグ街』より古い、ミステリ(要素を持った)作品】
       主人公のケイレブ・ウィリアムズは、小作農の息子でした。
       好奇心旺盛で聡い子供だったため、領主のフォークランド氏の目に留まり、秘書としてお屋敷に引き揚げられます。
       フォークランド氏は人格者であり、寛容で公正な領主だったのですが、時に我を忘れて激怒したり、何かに心を悩ませて苦悩する姿も見られました。
       フォークランド氏は若い頃大変人望があり、交際も広かったというのに、今ではすっかり隠遁した生活を送っているのです。

       さて、ミステリの嚆矢と言えばポーの『モルグ街の殺人』というのが定説ですが、それよりも前の時代にもミステリ的要素を持った作品は書かれていました。
       本作もそんな一つです。
       本作で探偵役をつとめるのは主人公のケイレブ・ウィリアムズということになります。
       ウィリアムズは、フォークランド氏には何か隠された秘密があるに違いないと考え、好奇心からそれを探りにかかるのです。
       ウィリアムズは、フォークランド氏に長く仕えていたコリンズ氏から、フォークランド氏の若かった頃の出来事を聞き出すことに成功します。

       フォークランド氏は、隣の領主であったティレル氏と激しく対立していたというのです。
       ティレル氏というのは地位と金に物を言わせて強引な押し出しで人心を掌握していた領主なのですが、まぁ、誰も怖くて逆らえずおべっかを使っていたというのが実体の、まるでジャイアンの様な奴というわけです。
       ところが、フォークランド氏がグランド・ツアー(昔は成人するに当たり、諸国を漫遊して見分を広めるということが行われていました)から帰って隣の領地に落ち着くや否や、人々の心は公正なフォークランド氏になびいてしまったのです。

       ティレル氏は全く面白くないわけで、あれこれ良からぬことを画策するのですが、ことごとくフォークランド氏に阻止されてしまい、特にある謀略から一人の女性を死なせてしまったことによってティレル氏は完全に鼻つまみ者に成り下がってしまうのです。
       「これもすべてフォークランドのせいだ!」と逆恨みしたティレル氏は、公衆の面前でフォークランド氏を殴り倒してしまうのですね。
       腕力ではティレル氏には叶いません。

       フォークランド氏は非常に名誉を重んじ、また短気なところもあったので、これは決闘でも申し込まなければ解決しないだろうと考えられていた矢先、何と、ティレル氏が何者かに刺し殺されるという事件が起きたのです。
       この事件により、フォークランド氏は名誉を回復する機会を失ってしまったのでした。

       しかし、口さがない人々もいるもので、次第にティレル氏を殺したのはフォークランド氏だという噂が広がり始めたのです。
       遂にフォークランド氏は、ティレル氏殺害の廉で告発され裁判にかけられてしまいます。
       これもフォークランド氏にとっては恥辱です。
       裁判ではフォークランド氏の有罪を立証するに至らず、無罪となるのですが……。

       そして、ティレル氏殺害の犯人としてホーキンズ親子が逮捕されます。
       ホーキンズ親子は、もともとティレル氏の小作人だったのですが、ティレル氏の理不尽な扱いにより土地を追い出されてしまったのでした。
       フォークランド氏はホーキンズ親子に目をかけてやっていたのですが、それも叶わなかったのですね。
       ホーキンズ親子は、そのことの恨みを晴らすためにティレル氏殺害したと見られ、裁判の結果有罪となり死刑に処せられてしまいました。
       こんなことがあって以来、フォークランド氏は神経を痛め、隠遁生活に入り、情緒不安定な今のような状態になってしまったというのです。

       しかし、ウィリアムズはコリンズ氏の話をにわかに信じられませんでした。
       いえ、何の根拠も無いのですが何となくそんな考えが浮かんだ程度のことなんです。
       以来、ウィリアムズは、フォークランド氏との会話の際に、巧妙にこの出来事を思い出させるような話題を織り込み、ねちねちといたぶるようになっていったのです。
       つまり、そうやって責め続ければ何か尻尾を出すかもしれないというんですね。
       しかも、そのような行動に出た動機は単なる好奇心からということなので、もう、嫌な奴としか言いようがありません。

       フォークランド氏は、最初は我慢していたのですが、とうとう耐えきれなくなり、ウィリアムズに真相を告白してしまうのです。
       「ああ、そうだ。ティレルを殺したのは私だ。」と。
       しかし、フォークランド氏は名誉を重んじる気持ちが人一倍強く、どうあっても自分が殺人の罪に問われることだけは避けたいと考えていました。
       自分が名乗り出なかったために無実のホーキンズ親子が死刑になったとしてもです。
       フォークランド氏は、ウィリアムズに対し、「お前の望みどおりに告白してやった以上は、お前にも制約を課す。」と言い渡します。
       このことは他言無用であることはもちろん、お前の行動は今後監視するというのです。

       そうなるとウィリアムズはこの監視が嫌で嫌でたまらなくなります。
       そりゃお前が余計な詮索をするからだろうにとも思うんですけれどね。
       自分には自由が無いと大げさに嘆くのですが、監視と言ってもこれまで通り黙ってお屋敷で仕事をしていれば良いのであって、そうしていれば十分な生活は保障されているのです。
       しかし、ウィリアムズはそういう状態すら嫌だと考え、我慢できずに屋敷から逃げ出してしまうのです。
       これを知ったフォークランド氏は、ウィリアムズを連れ戻すと共に、屋敷から宝石や金を盗んだと虚偽の告発をし、捏造した証拠を示してウィリアムズを拘置所に入れてしまうのでした。

       探偵役のウィリアムズは敢えなくフォークランド氏の手に墜ちてしまい、この後は、ウィリアムズの度重なる脱獄譚と、脱獄した後も執拗にフォークランド氏につけ狙われ、とことん破滅させられる目にあうという復讐譚になっていきます。
       いや、しつこいのなんのって。

       とまあミステリ要素がある作品とは言ってもこんな感じなんですが、この作品どうにも感情移入ができない物語でした。
       というのは、主要な登場人物の誰一人として共感できないのです。
       ティレルは言うまでもなく、フォークランドもウィリアムズも嫌な奴ですよ。

       巻末解説を読むと、本作には作者のウィリアム・ゴドウィンの思想が現れている部分も多いというのですね。
       それはどんな思想かというと、非常に功利的なもので、「人間が皆平等だというのはその通りだが、例えば世の中の役に立つ有能な人物とそうではない人物の2人がいて、どちらか一人しか助けることができないとしたら、当然有能な人物の方を助けるのは当たり前だ」というような考え方です。
       だからあちこちにムッとしてしまうような振る舞いや考え方がちらちら見え隠れしていて、読んでいてあまり気分が良くないのでしょう。

       なお、本作には二つの結末が用意されています(両方の結末が収録されています)。
       一つはフォークランド氏が破滅する結末。もう一つはウィリアムズの方が破滅する結末です。

       まぁ、とにかく時代がかっているし、ご都合主義の展開は多いし、登場人物の考え方は薄っぺらいし、不快な部分も多い物語なのでした。
       なお、作者のゴドウィンの娘は、『フランケンシュタイン』を書いたメアリー・シェリーなのですよ。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
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      2020/03/26 by

      ケイレブ・ウィリアムズ (白水Uブックス)」のレビュー


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