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ナイトランド

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: ウィリアム・ホープ ホジスン
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    「ナイトランド」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【闇の世界の悪夢】
       SFファンタジー・ロマンの異色作です。
       物語の舞台は100万年後の地球。
       この時代の地球は、強烈な地殻変動の結果、全世界が荒廃し、人類は『ラスト・リダウト(最後の角面堡)』と呼ばれる超巨大ピラミッド型都市の中で細々と命脈を保っていました。

       このラスト・リダウトがとてつもないシロモノで、全部で1320層からなる超巨大建造物であり、この中に数百万人の人間が生活していました。
       もはや、一つの階層、一つのエリアが一つの都市を形成していると言っても良い程で、ラスト・リダウト全体が超都市群というべきものだったのです。

       何故、人類はこんなラスト・リダウトの中に籠もって生活しているかと言えば、その外の世界がまたとんでもない世界になってしまっていたからでした。
       外世界は、いつまで経っても暗闇のままの、夜だけの世界『ナイトランド』と化していたのです。
       そこには太陽はもちろん、月や星の明かりもなく、あるとすれば地中深くの穴から吹き出ている炎の明かりだけでした。

       そして、この外世界には化け物のような原始的で凶暴な生物がうようよしていました。
       たとえば、馬のように大きな『夜の狼』、丘程もある巨大なナメクジのような生物、『こぶをもつやつら』と呼ばれている、肩や首筋が盛り上がった類人猿などなど、異形の生物が徘徊しているのです。
       これらの生物は獰猛で粗暴なため、人間が外世界にいるのを見つけるとたちまちのうちに殺してしまうのでした。

       また、ある時から、この外世界には邪霊と呼ばれる、精神的な魔のようなものが棲みつくようになりました。
       先ほどの原始的生物であれば、まだ物理的な攻撃により倒すことも可能ではあるのですが、邪霊は物理的な攻撃は寄せ付けず、これに取り憑かれてしまうと人間はなすすべなく殺されてしまうのでした。

       人類は、これらの生物の前では極めて非力なのですが、唯一『地流』と呼んでいる、大地からのエネルギーだけが頼りになりました。
       これらの生物は地流を嫌うため、この地流を流したパイプをラスト・リダウトの周囲に張り巡らせてサークルを作っています。
       これらの生物は、このサークルの中には入って来られないのですね。

       こんな世界で生活している主人公は、『夜の耳』と呼ばれる特殊能力を有していました。
       これは、いわば精神感応力のようなもので、遠く離れていても『エーテルの波動』を感じ取ることができる能力と説明されています。
       そんな主人公は、ある時、遠くから聞こえてくる女性の『声』を聞き取りました。
       その女性は、ナーニと名乗っており、自分たちは別のリダウトで生活しているのだというのです。
       まだ、他にも生きている人類がいる!

       主人公は、精神波を使ってナーニと交信を続け、もう一つのリダウトの状況を聞き出します。
       ナーニの話によれば、もう一つのリダウトの周囲の地流が弱まりつつあり、いつまで保つか分からない状態にあるというのです。
       もし、地流が途絶えてしまえば、すぐに化け物達がリダウトに侵入してくることは目に見えていました。

       何とか彼らを救出したいと考えた、ラスト・リダウトに住む500人からの血気盛んな若者達は、禁を犯してラスト・リダウトを飛び出し、ナーニ達がいると思われる北方を目指して一目散に駆けだしたのです。
       そんな無謀な振る舞いをすれば、すぐに化け物達に発見されてしまいます。
       彼らは、身を隠すこともせず、ただひたすら北を目指していったのですが、案の定、間もなく化け物達に見つかり、なすすべもなく壊滅させられてしまいました。

       さて、主人公は、実は遙か昔の記憶を有していました。
       この作品が書かれたのは1921年なのですが、自分はそのころのイギリスに生きていたという鮮明な記憶があるのです。
       その頃の自分は、最愛の女性であるミルダスと出会い、結婚して子供をもうけたのですが、間もなくミルダスは若くして亡くなってしまったという記憶なのです。
       そして、今、彼の『夜の耳』に届くナーニの声は、ミルダスの声そっくりなのです。
       また、ナーニは、彼が昔イギリスに生きていた時に名乗っていた名前も知っていました。
       もしかしたら、ナーニは、自分と同じように、過去にイギリスに生きていた最愛のミルダスの生まれ変わりではないのか? そんな思いが主人公の心を捉えて離さなくなりました。

       主人公は、何とかしてナーニ達を救い出したいという気持ちに駆られます。
       とは言え、500人からの屈強な若者達ですら化け物達にやられてしまったのですから、どうにもならないということは頭では分かっていました。
       それでも、最愛の女性を助け出したいという気持ちに取り憑かれ、主人公はどんどん憔悴していきました。
       
       このままでは、何もしないうちにダメになってしまうと考えた主人公は、無理を承知でラスト・リダウトの怪物警備官長に頼み込み、単身ナーニ達を救出する旅に出るというのが本書のストーリーです。

       500人からの若者達でさえ叶わなかった救出行を、たった一人で成し遂げるなど、設定からして無理があり過ぎですし(500人は無謀にも何の注意も払わずに一目散に駆け出したからすぐに見つかったのであり、慎重に身を隠しながら進んでいくことにより化け物達との遭遇を可能な限り回避するとしていますが)、1921年作の作品ですから、色々と陳腐化しているところがあるのは否めません。

       物語の展開も、結局の所、主人公の変わり映えのしない旅が延々と語られるだけですし、結構ご都合主義で解決している部分もあり、同じことの繰り返しで単調で冗漫な部分もあります。
       ちょっとネタバレですが、主人公は、結局ナーニと巡り会うことに成功し、今度は二人でラスト・リダウトへ帰還する旅を始めるのですが、また同じように外世界を歩き続ける描写が繰り返されるわけで、その間に化け物に襲われるなどの出来事は起きますが、やはりこれは冗漫であるという指摘は致し方ないところです。

       また、ナーニと出会った後は、二人は相思相愛になるのですが、まぁ、この二人、一体何回『口づけ』するの?と思うほどベタベタとしたラブ・ロマンスが描かれ、そこには何のひねりもない単調な繰り返しだというのもその通りでしょう。

       というわけで、色々弱点がある作品であることは事実なのですが、こんなとんでもない世界を作り出し、その悪夢のような旅を描いた点についてはかなりのインパクトがあることも事実です。
       この度、再読になるのですが、特に初読の時は「これはすごい作品だ!」と圧倒されたことも事実です。

       解説を書いている訳者の荒俣宏氏は、この作品は(色々批判もあるけれど)、『指輪物語』などのファンタジーの大本となった作品であり、その意味では『ナルニア国物語』や『リリス』と並ぶ意義を有する重要な作品であるとしています。

       非常に不思議な魅力がある作品であることはその通りだと思いますし、こればっかりは実際に読んでみないと分からないところでもあります。
       どうか、いつまでも闇が続く夜だけの世界を、ご自身で是非読んで堪能されてみてください。
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      2019/04/27 by

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