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古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: トラヴィス マクデード
定価: 2,700 円
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    • 評価: 4.0

      【稀覯本窃盗グループが狙った相手は?】
       タイトルを見て、貴重な古書を職業的に盗んでいる男達の話なのだろうなぁと推測し、盗む先と言えば、貴重な古書を沢山所蔵している愛書家や古書店などだろうかと思って読み始めたのですがさにあらず。
       何と、盗む先は公共図書館だというのです。
       この本は、大恐慌時代のアメリカにおいて、組織的に稀覯本を盗んでは売りさばいていた窃盗集団とそのターゲットにされた図書館についてのノンフィクションです。
       
       何故、窃盗集団は図書館をターゲットにしたのでしょうか?
       それは、第一に図書館には初版本などの稀覯書が確実に存在しているから。
       第二に、当時は司書を始めとする図書館職員の盗難に関する意識が低く、またセキュリティも甘かったからだと言います。

       そして、そんな窃盗集団を率いていた男たちの何人かは、当時マンハッタンにあった『ブック・ロウ』(本の通り)と呼ばれた、6ブロックに渡る書店密集地域で古書店を経営していた者たちだったというのです。
       あるいは、それらの書店を経営していた者の相当数の者達は、自ら窃盗に手を出すことはしないまでも、盗品であると分かって稀覯書を買い取っていたというのですから、ブック・ロウは盗品書籍の一大マーケットになっていたわけですね。

       図書館のセキュリティの甘さで言えば、開架式書棚に稀覯書を平気で並べていたり、偽名や架空の住所で簡単に貸し出しカードを作れてしまい、貸し出した本を持ち逃げされてしまったりだったそうです。
       また、蔵書管理もいい加減だったようで、盗まれても捜査当局から指摘されれるまで無くなっていることに気付かない例も沢山あったようです。

       図書館の蔵書と言えば、蔵書印が押されているなどは当時も現在と変わりませんので、そんな本を盗んでも売りさばけないのではないかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
       図書館は、その蔵書を(複数冊購入した等の理由から)売却する場合があり、実際に古書店には合法的に買い取った図書館の蔵書印入りの古書が並んでいることは当たり前だったそうなのです。

       それでも、本によってはそんな本を図書館が売却するわけはないとすぐに分かるようなものもありましたし、蔵書印が無い方が市場価値が高くなるという理由から、窃盗団は巧妙に蔵書印を消して売却していたそうです。
       インクスタンプの蔵書印は、薬品で簡単に消すことができたそうですし、穴を開けるタイプの蔵書印ですらその穴を埋めてしまうことは可能だったようです(ただし、よくよく見れば加工の痕は分かってしまうそうですが)。

       図書館から盗まれた本は市場に出回るわけですが、一度買われたとしてもしばらくするとそれら稀覯書は再び市場に出回ることも多く、ディーラー達は自分たちが稀覯書を売却してもそれはいずれまた売りに出されるということを承知しており、売るのではなく、一時貸し出すだけだと考えていたというから驚きです。
       そうやって稀覯書の売買を繰り返し、巨額の利益を上げていたのですね。

       図書館側も指をくわえて見ていたわけではありません。
       捜査権限を有する特別捜査官を図書館に配属し、図書窃盗事件を専門に捜査させたりもしていたというのですね。
       非常に執念深く捜査を継続した捜査官もいたようで、大物窃盗犯の逮捕に漕ぎ着けた事例なども紹介されています。

       しかし、せっかく逮捕し、裁判にかけることに成功しても、場合によっては軽窃盗にしかならず、有罪判決を得ても刑期が短かったりもしたようです。
       いや、公共財の窃盗なのですから、もっと厳しく処罰されてしかるべきでしょう。
       本書でも紹介されていますが、結構偏った思想を持った判事もいたようで、窃盗犯が「金が無くて本が買えず勉強できなかったので盗んでしまった」などという見え見えの弁解をするとそれに同情して極めて軽微な判決を言い渡す判事もいたというのですから驚きです。

       さすがに現在の我が国で、公共図書館を荒らし回るような窃盗犯というのは聞きませんし、セキュリティも図書館とは言え昔に比べれば格段に厳しくなっているのでしょうから、そんなことは無いのだと思いたいところです。
       しかし、一般書店での本の万引きは相変わらず横行していますし、いかにも怪しいにもかかわらず、そうやって万引きされた本をどんどん買ってしまう新古書店も沢山あるのは事実です。
       書店経営は様々な理由で厳しいというのに、こういう万引きが横行している現状というのは嘆かわしいというか、本当に困ったものだと思います。

       いや、ちょっと本の内容からそれてしまいましたが、非常に興味深い一冊でした。
      >> 続きを読む

      2019/11/15 by

      古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件」のレビュー


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