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燃えよ!刑務所

3.0 3.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 980 円
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    「燃えよ!刑務所」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      「日本の刑務所は囚人に甘い!」囚人が増えすぎた刑務所をどうするか。警察庁ОBの花菱は画期的なアイデアを思いつく。
      刑務所を民営化するのだ。
      小井泉首相の協力を得て“民間刑務所”の経営に乗り出した花菱は、囚人プロレスを開催し、オール刑務所ロケのスーパーサバイバルアクション映画『燃えよ!刑務所』をつくる。
      爆走する花菱の運命やいかに。

      物凄い馬鹿馬鹿しさ、素晴らしいエンタテインメント作品です!
      戸梶さんらしさが随所に、というか全編を通して炸裂しており、爆笑必至、電車での移動中などの読書は危険というレベルの大作です。

      警察庁ОBの花菱条一郎は、現実世界でもよく見られる、存在自体何の意味もない有識者会議『刑務所過剰収容対策委員会』のメンバー。
      日本全国で発生している刑務所の定員オーバー問題に、表面上は懸命に取り組んでいる元官僚です。
      元国家官僚ですから当然金持ち。
      身の回りの些末なことはすべて札束で何とかなると思っています(実際になっています)。
      また、64歳という年齢の割に精力旺盛で見た目ソコソコ、独身の彼は、夜な夜な女をとっかえひっかえ。
      そんな花菱がある日、刑務所の民営化を、突如として思いつきます。
      元官僚らしく根回しを始める花菱でしたが、実の娘がリーダー格の誘拐団に拉致される破目に。
      誘拐団は実は犯罪被害者が独自に集まったグループでした。
      そしてその狙いは、大切な家族や友人をひどい目にあわせた犯罪者たちを極刑にすること。
      我が意を得たりと、逆に花菱は誘拐団を味方に引き入れようと説得するのですが、強制的に脳手術され時限爆弾を脳に埋め込まれてしまいます。
      花菱の企画する民間刑務所が完成しなければ、遠隔操作で頭の中の爆弾を爆破する。
      誘拐団の脅迫に、勇躍、花菱は総理大臣小井泉のもとへ向かいます。
      刑務所民営化法案を国会で通過させるために…。

      物語はこのあと、集められた極悪人たちをとにかく痛めつけ、虐待の限りを尽くし、なぶります。
      そして花菱はどんどんエスカレート、『囚人プロレス』を興行して資金を集め、映画『燃えよ!刑務所』の制作へと漕ぎつけるのですが、映画発表後、遂にその身柄を警察に逮捕されてしまいます。
      それまでの間にも花菱はあの世と、この世を行ったり来たり。
      何が何やら訳の分からない世界は、戸梶圭太さんならでは。
      悲惨にもどんどん人が死んでゆく状況をこうも滑稽に描かれると、気分爽快!ストレス発散著しいです。
      読者を選ぶ作風ではありますが、お好きな方には堪らない。
      病み付きになる事、請け合いです。

      ◆たとえば、花菱が誘拐され、空腹を訴えるシーン

      「なんか食べる物はないかなぁ。腹が減り過ぎて体が震えてきたよ。うう…」
      フランケンは(←誘拐団のひとり)ますます落ち着きをなくした。
      この男もまた何者かに大切な人間を奪われたのだ。それは一体誰なのだろう。
      「俺と話すことは禁じられていても、食い物を与えるなとは言われてないだろう?なんか食べる物ないかなぁ」
      フランケン右膝がカクカクと上下し始めた。本人は自覚しているのだろうか。
      「私は元気そうに見えても所詮年寄りなんだ。体力がないんだ。飯を食って、薬も飲まないと…薬だけ飲むと胃が荒れるから…」
      「ん、ん、んっ、んっ」
      フランケンが咳払いした。
      「ああ、体が弱ってきた。目が霞む…なんだか熱っぽい」
      フランケンは急に立ち上がった。花菱は彼が怒ったのかと思い、ぎくりとしたが、そうではなかった。
      フランケンはズボンの左ポケットに手を入れ、何か引っ張り出した。それを花菱の方へおそるおそるといった感じで差し出した。
      都昆布であった。
      「おおっ!」思わず歓喜の声が漏れた。
      「くれるのかっ!」フランケンは躊躇いがちにこくん、と頷いた。
      「ありがとう、君は優しい人間だ」
      花菱は礼を言うと、口を開け、舌を突き出した。涎が糸を引いて滴り落ちる。
      「く、口の中に入れてくれ」フランケンが迷う。
      「噛み付いたりしないよ。私は歯が弱いんだから」
      その言葉に安心したのか、フランケンは顔を緩め、箱から紙のように薄い昆布を一枚引き抜いて花菱の口に差し出した。
      「はっ、はっ、はっ」花菱はすっかり興奮し、さらに涎を垂らした。
      舌の上に、ぴたっ、と昆布がのせられた。昆布の表面の白い粉が舌の先端に触れた瞬間、花菱の延髄に電流が走った。
      「おうっ!」舌を引っ込め、昆布を口の中に引き入れる。
      「おおおっ!」昆布と酢の味が、香りが、舌触りが、体中の細胞を目覚めさせた。
      「んんんんっ!」花菱はすっぱさに身をよじり、全身を突っ張らせた。顔に汗がじゅわ、と滲んだ。
      口の中で舌を前後に動かし、口蓋に擦りつける。
      「むおおっ!」歓喜のあまり背筋を寒気が駆け抜けた。涎が後から後から泉の如く溢れてくる。
      「ひいいっ!」花菱は床に転がってびくん、びくん、と痙攣しだした。フランケンは反応のあまりの激しさにたじろぎ、後ずさりした。「ひいいっ、ひいいい!」花菱は、右へ、左へのたうちまわった。
      そうしながら口の中で昆布をこねくり回し、存分に味わう。
      こんなにうまいものは食ったことがない。奇蹟だ。昆布を飲み下すと、ぜいぜいと荒い息を吐きながら歓喜の余韻に浸った。
      「ふう…まったく…すげえ昆布だぜ」

      ◆たとえば、花菱の刑務所に呼び寄せられた、ある囚人の履歴

      小佐野孝則(69)無職。1956年に出身地の高知県で、近くの小学校の女子児童にいたずらしようとし、騒がれたために顔を殴り、右目を失明させる。少年鑑別所に送られ、58年に出所、その後、家出する。
      翌59年、大阪で下校途中の中学二年生の女子生徒に自転車で体当たりして、顔に19針を縫う大けがを負わせる。毎日その学校周辺をうろついていて顔を覚えられていたため、すぐに逮捕される。取り調べに対し「いたずら目的でやった」と供述。懲役1年の判決を受ける。翌60年に出所。高知県の実家に戻るが、再び失踪。64年、富山県において中学一年の女子生徒を盗んだ車に連れ込んでいたずらしようとしたところ、逃げられたため車で追いかけて轢き殺した。一時間後、市内のある中学校付近をうろうろしているところを警官に職務質問され、犯行を自供。殺人罪により懲役10年に処される。小佐野は無免許であった。また小佐野が無免許でありながら配達の仕事をさせていた運送会社の社長も処罰された。
      74年、出所。高知県の実家に戻るがまたもや失踪。75年、埼玉県秩父市において下校途中の中学一年生の女子を山林で暴行し、首を絞めて殺害。女子生徒の鞄に付着した指紋から身元が割れ、5日後に逮捕される。検察は無期懲役を求刑したが、裁判官は「本人は深く悔いていて、まだ更生の余地がある」として、判決は懲役10年。
      85年、出所。高知県の実家に戻るが、母親を殴って怪我をさせ、金を奪い、またしても失踪。東京都町田市の駅近くの駐車場で車を物色しているところを駐車場の利用者である会社員に見咎められ、持っていた金槌でこの会社員の顔を十数回殴打、殺害し、さらにこの会社員から車のキーを奪い、車で逃走。30分後、多摩市の市立小学校の近くで六年生の女子児童を、道を訊くフリをして車に押し込もうとし、騒がれたために金槌で腹部を殴打。近くにいた大人たちに取り押さえられる。取り調べに対して小佐野は完全黙秘。これにより裁判官はなぜか「犯行に計画性が無く、明白な殺意があったとは断定しがたい」とし、検察側の求刑である無期懲役を退け、懲役6年を言い渡す。
      91年、出所。実家の両親は高齢の為、連れ戻せず。小佐野は出所当日に失踪。93年、東京都板橋区において「お小遣いをあげる」といって中学二年生の女子生徒を駅前のホテルに連れ込んだが、「先に金を欲しい」と言われ、無一文であることが発覚すると、持っていた大型マイナスドライバーで「ヤラせないと殺すぞ」と脅した。女子生徒が大声を出して騒ぐと、ドライバーで女子生徒の顔や手足などを突き刺した。ホテルの従業員が警察に通報し、その場で逮捕される。女子生徒は全身に十数か所の刺し傷を負った。取り調べで小佐野は完全黙秘。検察は殺人未遂で懲役8年を求刑したが、裁判長はなぜか「明白な殺意があったとは言えない」として懲役2年を言い渡した。
      95年、出所。東京都墨田区の路上で、中学二年生の女子生徒に「3万円をあげる」といって声をかけ、ホテルに連れ込み、猥褻な行為をしようとしたが、女子生徒に「口が臭い」と言われたため激怒、持っていたジュースの空き缶(雪印の『ホッ、とマイルドコーヒー』)の縁の部分で女子生徒の顔を数十回殴打し、逃走。女子生徒は全治6カ月の重傷。40分後に足立区の路上で女子中学生のあとを尾けているところを警官に職務質問され、逃走。すぐに逮捕される。取り調べに対し、小佐野は完全黙秘。検察側は小佐野の犯歴から「再犯性が非常に高いのは明らか」として懲役7年を求刑したが、裁判長は「更生の余地がまったくないとはまだ言い切れない」とし、懲役2年を言い渡した。
      97年、出所。千葉市稲毛区の路上で、小学五年生の女子児童に「千円あげるから道案内をしてほしい」と頼むが、この児童に「交番で訊けば?」と言われ、カッとなってえ持っていた2色ボールペン(インクはなくなっていた)で少女の顔を刺し、さらに数百メートルにわたって追い掛け回した。途中で息が切れて倒れ、逮捕される。調べに対し、小佐野は完全黙秘。検察は「被告は残虐かつ身勝手で、もはや更生の余地が無いのは明らか」として懲役10年を求刑したが、裁判長は「被告に犯罪指向性があることは認めるが、今回の事件に限っては、計画性が認められず、なおかつ被告に更生の余地が一片もないとは言い難い」と、懲役3年を言い渡した。
      2000年、出所。

      「おい、まだ続くのか?」
      花菱は思わず声をあげ、画面をスクロールした。
      「なんだかあたし、寒気がしてきた」
      凛はそう言って、自分の体を抱くような格好をした。

      出所した2日後、埼玉県和光市の路上で性器を露出しながら下校途中の女子児童の集団に、割れた鏡の破片を持って襲いかかる。小学三年生の女子児童の首に破片を十数回突き刺し、殺害。駆け付けた警官にその場で逮捕される。取り調べに対し完全黙秘。検察側は「極めて残虐かつ身勝手な犯行で、もはや極刑をもって臨むしかない」と死刑を求刑したが、裁判長は弁護側の犯行時心神喪失説を採用し、無罪を言い渡す。検察側が即日控訴し、高等裁判所では「犯行時における被告には責任能力があった」としながらも「被告の自白がないために殺意の認定ができない」として懲役15年を言い渡す。検察側は上告したが、最高裁においても「殺害に計画性は認められず、本人も深く反省しているようなので、更生の可能性を見逃すべきではない」として懲役10年を言い渡した。

      「なんだそりゃ!」花菱は声を張り上げた。「これが現実というものなのか!こんなことがあっていいのか、裁判所はノータリンの寄せ集めなのか!」
      「ひどい…」花菱の隣で、凛は掌で顔を覆った。
      「無責任よ、裁判官は」
      「くそ、ボケナス裁判官どもを俺のムショにぶちこんでやる!」

      …終始、このような小説です。
      >> 続きを読む

      2015/02/06 by

      燃えよ!刑務所」のレビュー

    • >空耳よさん
      いつも、コメントありがとうございます。
      好みの本はアマゾンで探します。今読んでる本を出すと、下にだだだーっと「この作品を検索した人が検索した本」なるリストが現われるじゃないですか。
      新しい作家さんに挑むとき、探すときは、ほぼそこからです。
      便利な世の中になりましたね、僕が若い頃とは恐ろしいほどの乖離、進歩。

      『永遠のとなり』を読んだのは平成19年の夏のことです。
      当時のメモを見ると、白石作品に没頭していたようで『どれくらいの愛情』『私という運命について』『すぐそばの彼方』『不自由な心』『一瞬の光』『草にすわる』などたてつづけに読んでました。
      なかでも『不自由な心』と『一瞬の光』、『私という運命について』が、当時の僕的には高評価だったようです。
      僕自身も鬱傾向が見られ始めたころですね~(苦笑)。
      >> 続きを読む

      2015/02/08 by 課長代理

    • Amazonで、そうですか、出ますね、選んだ本とか検索本とか、続編とか、あ〜
      見てましたが、ナルホドです(^^)
      昨日久々に本屋さんをチェックに行きましたが、戸梶さんのみだしがなくて、田舎を実感しました💢
      二冊厳選して買ってきたのを読み終わりました。次々に読みたいものばかりでレビューが(;_;)読みかけもあるし、、
      白石さんは今見たら「不自由な心」と「胸に〜」がありました。深く考えさせられますね。「私という運命について」も見つけたら買ってきます。
      暫く図書館を休んで積本解消をしないと春雪崩です💧
      >> 続きを読む

      2015/02/08 by 空耳よ


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