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Nのために (双葉文庫)

3.6 3.6 (レビュー13件)
著者: 湊 かなえ
定価: 680 円
いいね! Arisann ryoji

    「Nのために (双葉文庫)」 の読書レビュー (人気順)

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    • 評価: 4.0

      超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。
      現場に居合わせたのは、20代の4人の男女。
      それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。
      なぜ夫妻は死んだのか?
      それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか?
      切なさに満ちた、著者初の純愛ミステリー。

      2010年に東京創元社から刊行されたものを、2014年の夏に双葉社から文庫として再販されたものです。
      ミステリ評論家の千街晶之さんの解説が、巻末に附されています。
      その解説の冒頭、千街さんは
      「ごく稀にではあるけれども、たった一冊の本が、エンタテインメント界の潮流を一気に変えてしまうことがある。湊かなえのデビュー作『告白』は、そんな革命的な作品のうちのひとつだった。」
      と、書いておられます。

      確かに、『告白』以降、ミステリ界に“イヤミス(この語源は、嫌なミステリなのか、いやらしいミステリなのか、そのへんはよくわからないのですが、雰囲気としてはよく伝わっている言葉だと思います)”なるジャンルが確立されました。
      僕が知らないだけで、もっと昔に、同じように、殊更に人間の暗部を抉り出して読者に曝け出すような、そんな小説世界があったのかもしれません。
      ただ、『告白』前後のミステリ小説界には、間違いなく存在しなかった類の、読む者の熱量をひたすら消費させるような、暗く、重い小説世界を、湊さんは世に送り出され、そして後がつづきました。
      後進の作家さんのみなさんは、やはり二番煎じの謗りは免れないでしょう、少しずつ作品数が落ちていったり、そのお名前に触れることも少なくなってきましたが、本家本元の湊さんは、さすがの実力、益々創作に盛んです。
      もう“イヤミス”なんてジャンルすら飛び越えて、常に新しく、面白いエンターテインメント作品を手がけられていらっしゃいます。

      本作は、初期の湊作品ですが、湊さんの湊さんらしさが随所に見られる佳作だと思いました。
      常に一人称で語られる回想風の構成、ひとつの出来事を違った目線から次々と繰り出すことで読み手を上手に混乱へといざなう技術力、そしてどこまでも底が見えない人間といういきものの不幸と愛。
      青々とした湊さんのタッチが、近著と比べて先鋭的で、残酷です。
      登場人物たちの境遇は救いがたく、それぞれの思念・思考も若く、若いが故に定型にこだわってしまう感情の移ろいを、実に見事に描写していらっしゃいます。
      そして、それをミステリに、ロジカルに小説として仕上げた力量は、見事な仕事ととしか言いようがありません。

      タイトルにある“N”とは、登場人物たちのことです。
      瀬戸内の島から強い独立願望を抱いて上京した、杉下希(N)美。
      幼い日の母親からの虐待のトラウマから脱しきれない作家志望、西(N)崎真人。
      かつては島で一番の料亭だった実家を焼失させた、成(N)瀬慎司。
      人生において目指すべき途はひとつ強い心を持った、安藤望(N)。
      4人が、それぞれの思惑を抱いて、それぞれの立場から、その日、その時間、その場所に集まります。
      殺される運命にあったエリートサラリーマン、野(N)口貴弘と奈(N)央子夫妻宅。
      すべての条件が整ったとき、まるで化学反応を起こしたかのように、運命の歯車は誤った方向へ回り始めます。
      登場人物たちの、過去からの数多くの不幸さえも、あたかもその日の為にあったかのように。
      読者は、10年という歳月が経ってなお、その後の4人の境遇に影をさす、その日の事件を、時間軸をずらしながら、場面場面がリフレインのようにくりかえされる錯覚を覚えつつ読み進めることになります。

      悲しい恋を抱き、また、自らの運命に抗おうとした若者たちの物語は、極めて完成度の高い状態で、僕の手許に届きました。
      >> 続きを読む

      2015/07/27 by

      Nのために (双葉文庫)」のレビュー

    • >ありんこさん
      いつも、コメントありがとうございます。
      流行る=軽い、っていうイメージは僕も同じです。
      流行になんかのるもんか、っていつも思ってます。
      人と同じ事をしている自分が許せないんですね。
      でも、ベストセラーとか、満足度ナンバーワンとかのキャッチコピーに弱いんです。
      これから『告白』ですか。湊さんはたくさんおもしろい作品がありますので、楽しいですよ。
      >> 続きを読む

      2015/07/30 by 課長代理

    • >jhmさん
      いつも、コメントありがとうございます。
      僕もjhm さんと嗜好が似ていると思ってます。
      この作品で思われた、ぼんやりしているっていう感想はなんとなくわかります。
      西崎さんのイメージがどんどん良化してゆくところなど、キャラクターイメージが固定されてなかったり、結局Nって何よ?っていう素朴な疑問が浮かんじゃうと、煙に巻かれたようでね。
      グロい描写や、えげつない人間性のキャラもOKなjhm さんと、僕は間違いなく似た好みと思います。僭越ながら。
      >> 続きを読む

      2015/07/30 by 課長代理

    • 評価: 4.0

      杉下は瀬戸内の小さな島から進学のために東京に出て、ボロアパートに住んでいる。たまたまとなりに作家希望の西崎が居た。台風が来て床上浸水のため世話になった二階の部屋に、安藤が住んでいた。

      暫くぶりに島に帰省して同窓会に出た。そこで成瀬に出会う。彼はアパート近くのレストランでアルバイトをしていた。

      殺人事件が起きるのだがそれも「N」がつく野口夫妻が死ぬ。
      主要な人物の名前には姓か名に「N」が付いているので、「N」のためにというタイトルは、誰が誰のために行動したかという、読み方が最終的な課題になっている

      杉下と安藤は清掃会社でアルバイトをしていたが、その会社はスキューバダイビングの資格を取らせてくれるというので、二人で申し込んだ。安藤は就職活動中でそれが大きなスキルになると思った。
      資格を取り、仲間と出かけた石垣島で野口夫妻と出会い、偶然に将棋好きの杉下と安藤は、野口氏と趣味が合う。帰ってからも自宅に招かれるようになった。安藤は希望通り大手商社の内定を受けたが、そこに野口氏が居て、希望の部署に推してもらった。

      野口夫妻宅で妻が刺殺され夫が撲殺された、そこに西崎が居合わせ、撲殺犯として逮捕された。彼も自分からそれを認めた。

      野口夫人が夫からの暴力で逃げることも出来ず、外から取り付けたチェーンで閉じ込められていた。顔見知りになった杉下、西崎は幼馴染の成瀬を加えて夫人を救出する計画を立てた、が失敗、婦人と付き合いがあった西崎が逮捕され10年の実刑を受けた。

      警察の事情聴取で犯行時の行動を述べた。それぞれのつじつまが合って、全員が開放された。


      そして10年後。杉下は余命わずかと宣告されて療養中だった。
      それぞれの真実が、ここで明らかになる。一人ずつの過去、野口夫人救出計画の際の4人の動き。
      表立った計画的な行動は、警察で述べた。だがその裏に、お互いの真実が隠されていた。


      湊さんの作品は、「告白」をまず読んだが、本屋大賞と知っても、自分とは合わない作家だと決め付けていた。
      今回広告や批評でもう一度と思って読んでみたら面白かった。
      技術的なストーリー展開がいい。ます表向きの話で切り抜けた警察聴取。野口夫妻の家庭事情と、職場が同じだった安藤の立場。急遽計画に加わった成瀬。

      10年後に明らかになるそれぞれの気持ちが、「N」というイニシャルだけで、想い合う悲しみが迫ってきた。

      湊さんをもう少し呼んでみたい気持ちにさせる、良く出来た作品だった。
      >> 続きを読む

      2015/05/20 by

      Nのために (双葉文庫)」のレビュー

    • 大好きな空耳よさんが、大好きな「Nのために」のレビューを書かれてる!
      今頃気が付きました・・・出張ウィークめ・・・
      この本、湊作品の中でもけちょんけちょんなレビューが多いので評価高くてうれしいです。笑
      杉下希美のキャラクターの出来のよさだけでこの本が好き。
      ドラマは素晴らしく、余裕でこの本を超えてます。笑
      原作になかったところがしっかり描かれてるかんじ。湊さんも脚本に目を通してOKを出していたようです。
      成瀬派?安藤派?それとも西崎派???ってかんじで、最後まで楽しめました(*^_^*)
      >> 続きを読む

      2015/05/26 by あすか

    • あすかさん

      Nと言うのがわかりにくいかもしれません。私もちょっとメモしました。
      ドラマは一話だけ動画を見たのですが、ちょっと違いますね。分かりやすかったです。
      成瀬さんは、原作では影が薄かったですが、膨らましてあるんですね。
      何も杉下さんを病気にしなくてもって思いました。お母さんいやでしたね。
      西崎さんの小出恵介さん、サッサと罪をかぶって10年。それでいいの、いくらトラウマもちでもって、と思いました。
      突っ込みどころ多いですね、これも楽しみ(^∇^)
      >> 続きを読む

      2015/05/26 by 空耳よ

    • 評価: 5.0

      かなり面白いミステリーだった。
      私が一番面白いと思った点はこの小説の構造であるが、まだ把握しきれていない。

      次点で面白かったのは、小説を読んでいて騙されまくったことだ。

      はじめにタワーマンションで殺人事件が起き、その事件に関する警察の調書によって事件の概要が提示される。しかしだれもが正直に話すわけではない。

      物語は各々の主観で見た事件に進む。彼らはだれに伝えるでもなく本音で語る、野望や好きな人のことや過去のこと。

      そして小説終盤、人は自分のことを本音で話すときに自らの本心を正確に捉えているのだろうか。という問題にあたる。
      主観で捉える自分は神の視点の客観とは違い、正確ではない。人は選択を迫られ、選んだあとに本当の自分を知るのだ。

      面白かった。
      >> 続きを読む

      2016/05/12 by

      Nのために (双葉文庫)」のレビュー

    • 〉人は選択を迫られ、選んだあとに本当の自分を知るのだ。
      含蓄のあるお言葉ですね。
      間って自分の心を直視することが実は一番難しいのかもしれないですよね。
      >> 続きを読む

      2016/05/19 by 月うさぎ

    • なりたい自分と現実の自分のギャップはなるべく目を逸らして生きたいものですよね

      2016/05/20 by ryochan333

    • 評価: 3.0

      久々の湊さん。ドラマが面白かったので読んでみました。

      やはり、湊さん独特の、どこか暗くて謎めいた空気が終始立ち込めている空気はこの作品からも感じられました。
      暗いのに、なぜか読みたくなってしまう。湊さん、さすがです。

      『告白』を読んでからすっかりその世界観にはまっている私。ドラマは原作には無い視点からも描かれていたんだなあ。
      >> 続きを読む

      2015/05/20 by

      Nのために (双葉文庫)」のレビュー

    • ●メガネ萌え さん
      コメントありがとうございます^^
      ドラマを見ていたのでしたら、原作でより深くこの作品を楽しめると思います。
      切なさが漂っているのに、のめり込んでしまいました。。!
      >> 続きを読む

      2015/05/23 by kaa

    • ●れーー さん
      コメントありがとうございます^^
      湊さんの世界観、引き込まれますよね
      映像化されている作品も多くて、どちらも見ることが多いです。
      読んだことが無い作品もまだまだあるのでこれから読もうと思います…!
      >> 続きを読む

      2015/05/23 by kaa

    • 評価: 4.0

      湊かなえさんの本は告白に続き2冊め。ものすごくくだらないところで最初からつまずいてしまった(安藤は女性だと思いこんでた)。結局、とても話が面白いんだけど、まるで理解できないなにかを抱えたまま読み終えた感じ。TVドラマ化されてるのでそちらも見てみよう。

      2017/12/06 by

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