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ロクス・ソルス (平凡社ライブラリー)

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: レーモン ルーセル
定価: 1,620 円
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    「ロクス・ソルス (平凡社ライブラリー)」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【奇想天外な装置の話というよりは……】
       再読です。
       初めて本書を読んだのは、もう10年以上前になると思うのですが、その時はこの綺想に驚き、何と不思議な本だろうと感動したものでした(所有している本の奥書を見たら……おぉ、初版本だ!)。
       今となっては細かい部分はすっかり忘れてしまっていましたが、とにかく奇妙な機械が次々と登場する物語という印象が強烈に残っていたのです。
       もちろん、当時は非常に面白い本だと惚れ込みました(この時点で☆評価をしていたら5つをつけたことでしょう)。

       さて、この度、久しぶりに再読してみて、本書は必ずしも奇想天外な機械ばかりの話ではないということに気付きました。
       まず、未読の方のために、本書がどういう内容かを簡単にご紹介しましょう。

       パリ郊外にあるロクス・ソルス荘(ロクス・ソルスとは、人里離れた場所という意味のラテン語)に、大富豪で天才的科学者のマルシャル・カントレルが住んでいました。
      カントレルは、広大な敷地に研究施設を整え、多数の助手と共に様々な研究をする傍ら、その成果とも言える奇妙な発明品を敷地内に展示していたのです。

       ある時、カントレルの偉業を一目見たいと考えた一行がロクス・ソルス荘を訪れました。
       本書は、その際、カントレルが自身の発明品などを案内して見せて回るガイドツアーの様子を綴ったものなのです。

       登場する発明品は、まあ奇妙なもので、壮大なほら話なわけです。
       例えば、カントレルは先々の細かい気象変動まですべて予測できるということで、敷地内の一角というピンポイントの地域における微風も含めた風向きや雲の動きまで予測し、その超精密天気予報に基づいて、微風でも動く超敏感な気球を使い、巧妙な装置によりその気球を自由自在に動かし、その気球に取り付けた装置により地上にまき散らした色とりどりの歯をつまみ上げては、キャンバスに見立てた土地に運んで落とし、手を触れることなく自動で歯によるモザイク画を描く装置を見せたりします。

       ルーセルは、この装置の構造や仕組みを念入りに描写するのですが、いや、もうついていけません。
       何がどうなっているのか、文章だけから把握することは至難だと思います。
       まあ、とにかくごちゃごちゃと入り組んだ装置であるということだけは了解できますが。

       また、何故そんなに大量の歯があるのか?と思いますよね。
       これはカントレルのもう一つの発明、磁気による無痛抜歯方法が関係するのです。
       この無痛抜歯方法が評判となり、多数の患者がつめかけ、その際に抜いた歯が大量に蓄積されていたということなんですよね。
       で、歯は人により様々な色合いがあることは分かるのですが、中には青い歯があるなんて書かれています。
       青い歯なんてある?

       まあ、こんな風に様々な発明品が出てくるのですが、中には醜悪なものもあります。
       初読の時にはあまり感じなかったのですが、今回読み直した際には、かなり悪趣味だと思ったものがいくつもありました。
       例えば、カントレルは断首されたダントンの首を入手し、それを特殊な水に漬けているのですが、最早表皮などはなくなっており、脳と筋だけになっている首が特殊な水の中を漂うのです。
       グロテスクじゃないですか?

       あるいは、死体を巨大な冷蔵庫に保管し、そこに特殊な電流を流すという装置もあります。
       こうすると、死体は人生で最も印象に残っている場面を繰り返し演じ始めるというのです。
       カントレルは、見物人が来る度に死体に電流を流してその者の人生の最も意味のあるシーンを再演させて見せるのです。
       これも相当に悪趣味ですよね。

       で、問題は、本書の内容なんです。
       私は、初読の時にはこれら発明品の奇想ばかりに目がいってしまったのか、とにかく奇天烈な発明品がずらずら出てくる物語という印象しか残っていなかったんですね。
       ところが、実は奇妙な発明品というのはある意味では話の枕であり、その発明品にまつわるエピソードこそが主役なのではないか?と今回の読書で思いました。

       例えば、先ほど書いた動く死体ですが、まずそれぞれの死体がどんな挙動をするのかが事細かく描写されます。
       それを読んでいるだけでは(いや、まず、この時点ではこれらの者が死体であるということは明かされていないので一体何をやっているのか読者には分からないのです)何だか役者が訳の分からない芝居をしているように思えます。
       その後、カントレルによる観客に対する解説が始まるんです。

       つまり、これらはすべて死体であり云々の説明から始まって、それぞれの者が再現している動作はどういう物語背景を持っていたのかが語られるのですが、そこが一つの奇妙な物語になっているというわけです。

       他の発明品についても同様で、先ほど触れた、ダントンの脳が浮遊する特殊な水の中には、様々な場面を再現した人形が動き回っているのですが、それがどういう場面で、どういう物語背景を持つのかが、やはり語られるわけです。
       そこが、例えばボルヘスに代表される奇譚のような話になっているわけです。

       こうしてみると、本作はともすれば奇矯な発明品にどうしても目が行ってしまうのですが、実はそれは従であり、その背景物語の方こそルーセルが書きたかった主なのではないかと思えてきたのでした。

       さて、再読してみてそんなことを感じたわけですが、どうも初読の時ほどの衝撃は受けませんでした。
       まあ、既に一度読んでいるのでそれも当然かもしれませんが、面白さについてもさほどでもないと感じてしまったのですね。
       微に入り細を穿った描写がうっとおしいと感じたこともその一つでしょうし、背景物語の奇譚についても、その後さらに優れた奇譚物語をあちこちで読んでしまっているので、初読時よりは評価が厳しくなっているのかもしれません。

       いずれにしてもかなりマニアックな作品であることは間違いないでしょう。
       特に、まだ読んでいないという方は一度はお読みになってみるのも面白いと思いますよ。


      読了時間メーター
      ■■■     普通(1~2日あれば読める)
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      2021/10/13 by

      ロクス・ソルス (平凡社ライブラリー)」のレビュー


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