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ブレイクの隣人

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: トレイシー シュヴァリエ
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    「ブレイクの隣人」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【歴史の流れの中には語られないエピソードが埋まっている】
       ウィリアム・ブレイク(1751~1827)は、イギリスの詩人であり画家であり、銅版画職人でもありました。
       本書は、1790年代初頭のロンドンを舞台に、ブレイクが住んでいた家の通り沿いにあったアパートに田舎町のドーセットシャーから引っ越してきた椅子職人ケラウェイ一家と、その周囲の人々を描いた作品です。

       この当時のロンドンの様子をまずご紹介する必要があります。
       隣国フランスではフランス革命が勃発し、イギリスでも対岸の火事と呑気にしていられない状況にありました。
       王政を廃したフランスの革命の火の粉がいつイギリスに渡ってくるかと戦々恐々としていた時代でした。
       そして、ウィリアム・ブレイクはというと、フランス革命を支持する赤帽子をかぶる急進主義者であり、権力に対する抗議をパンフレットの形で出版してもいました。

       この時代のイギリスを描いた作品は色々ありますが、例えばディケンズの『二都物語』やバロネス・オルツィの『紅はこべ』なんかがすぐに思い浮かびます。
       本書もそんな時代の物語なんですね。

       さて、ケラウェイ一家がロンドンにやってきたのには事情がありました。
       実は次男が梨の木から転落して死亡するという事故があり、母親はすっかり意気消沈してしまい、死んだ息子のことを思い出してばかりいたのです。
       ちょうどそんな時、近くにやって来ていたアストリーというサーカスの座長がケラウェイの作った椅子の出来映えを認め、ロンドンに出てこないかと声をかけられことをきっかけに、どうしても次男を思い出してしまう土地を離れてロンドンでやり直そうということで引っ越してきたわけです。

       ケラウェイ一家の末っ子のジェムは、近所に住む同年代のこまっしゃくれたおんなのこマギーとすぐに仲良くなり、二人してロンドンの町を探検したり、近所に住むブレイクのことが興味津々で、その後をつけたりしていました。
       3月になり、アストリー・サーカスがロンドンにやって来ると、最初は嫌がっていた母親もサーカスにすっかり魅了されてしまい、また、ジェムの姉のメイジーは、男前(でもすっごい女ったらし)のサーカスの座長の息子に一目惚れしてしまいます。
       父親も、サーカスの大道具係として雇ってもらうことになり、ロンドンでの生活も徐々に安定していくのでした。

       そんな中で、ブレイクはジェムとマギーの二人組に対して決して子供扱いせず、真摯に相手をしてくれたり、あるいはメイジーが座長の息子に酒に酔わされて犯された時にブレイクに助けられたりしたこともあり、ケラウェイ一家はブレイクに親しみを持つようになっていくのですね。

       ですが、世間は必ずしもそうは考えていませんでした。
       特に、フランスの革命情勢が逼迫してくるに連れて、ロンドン市内でも王政を擁護しようという動きが活発化し、『ランベス協会』なる組織が立ち上がり、周辺住民に王政擁護の署名を強要するようになっていくのです。
       ブレイクの家にも『協会』の面々が押しかけ、声高にブレイクを非難し署名を強要し始めるのです。
       ジェムとマギーは、ブレイクのピンチに……。
       そして父親のケラウェイも……。

       本書は、歴史の大きな転換点を背景としていますが、この物語の中では大きな歴史的事実が語られるわけではありませんし、ウィリアム・ブレイクのことについても、いわばお隣さんとして描かれるだけで、必ずしも焦点が当てられているというわけでもありません。
       むしろ、そんな時代、そんなロンドンでのジェムやマギー、メイジーの成長を描き、あるいは庶民の生活を描いている作品なんですね。
       その意味では地味と言えば地味な作品なのかもしれませんが、とっても良い雰囲気が漂ってくる佳作ではないでしょうか。
      >> 続きを読む

      2019/09/11 by

      ブレイクの隣人」のレビュー


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