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ダーウィンの使者〈下〉

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: グレッグ ベア
定価: 1,728 円
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    「ダーウィンの使者〈下〉」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【読後感は良好な医療SF】
       本作の主人公となるのは女性分子生物学者のケイ、人類学者のミッチ、そして政府職員でウィルスハンターとして前線で情報収集活動をするディケンの3人です。
       ケイは、夫と共に製薬ビジネスに乗り出していたのですが、ビジネスが上手くいかなくなった際、夫は自殺してしまい、自分たちの企業も売り払われてしまいます。
       ケイは夫を愛する夫を失ったためにひどく傷ついてしまいます。

       ミッチは、過去に不正な調査活動をしたということで学会から爪弾きされている身でしたが、上巻のレビューでも書いたアルプス山中でのミイラ化した死体発見の際、ミッチに調査を依頼した者が勝手に幼児のミイラを持ち出していたことから再び不正行為をしたと糾弾され、学者生命を絶たれてしまった状態にありました。

       さて、問題のレトロ・ウィルスですが、政府の立場はこれは病原菌であるというもので、その治療方法を確立するという方向で活動しているのですが、ケイはもしかしたら病原菌などではないんじゃないかという考えを捨てきれずにいたのです。

       ミッチが発見したアルプス山中のミイラはその後正式に回収されて分析に回されたのですが、その結果も併せ考えると、ケイの仮説の方が正しいと思えるのです。
       このことを知ったディケンは、ケイとミッチを引き合わせ、3人はケイの仮説こそが正しく、今の政府の方針は誤っていると信じるようになります。

       このレトロ・ウィルスですが、感染した女性が最初に妊娠した子供は奇形児となって流産してしまいます。
       ところがそれから数か月で性行為抜きで第二の妊娠が始まるのです。
       今のところ第二の妊娠で身ごもった子供も奇形児で流産してしまうため、政府はこのウィルスは病原菌であると考えているのですが……。

       一時はケイの仮説を信じていたディケンですが、その後の調査、分析により、このレトロ・ウィルスが変異したということを知ります。
       そのため、ディケンはケイの仮説は崩れたと考え、再び病原菌説に舞い戻ってしまうのですね。

       一方のケイとミッチは、レトロ・ウィルスが変異した理由についてもケイの仮説で説明できると考え、政府の方針に反対の立場を取り、自分たちの仮説を支持してくれる学者らと協働し始めます。
       これは政府にとって目の上のたんこぶになっていくのですね。

       夫を失ったケイは、ミッチの本性に触れ、強く惹かれるようになり、ミッチもケイを愛するようになります。
       そして、ケイは、自分の仮説を証明するという理由もあって、ミッチの子供を産む決意をするのです。
       しかし、もし、仮説が誤っていたとしたら、ウィルスに感染して奇形児を流産することになるかもしれません。
       ケイの考えは具体的な証拠を伴わない仮説でしかないのです。
       感染してしまえば、治療方法が確立されない限りその後健康な子供を産むことは望めなくなるというのに……。

       このような状況に加え、全米各地で暴動が起き始めます。
       それは、レトロ・ウィルスに対する恐怖から、中絶薬を認めろと主張する団体による暴動もあれば、現在の災厄は神の意思によるものであり、ウィルスを封じようとする政府は誤っているという宗教的な主張によるものもありました。
       政府内部でも立場の相違があり、遂に大統領が殺害されてしまうという事態に陥ります。
       政府は、この事態を収拾するために妊婦を隔離するという強硬策まで打ち出そうとし始めるのです。

       この辺りはパニックものの様相を呈して来るところですね。
       有効な解決策を打ち出せず、遂に戒厳令を敷いてしまう政府、自分たちの仮説を立証するために身をもって妊娠するケイ、政府の妊婦隔離政策という強硬策にどうしても同調できずにいるディケン。
       この状況は打破できるのか?という展開になっていきます。

       本作は、かなりしっかりした科学的考証に基づいた作品ということで、ネイチャー誌でも称賛された作品なのだそうです。
       確かにしっかり書き込まれた作品という印象を受けました。
       また、かなり絶望的な状況になっていくのですが、ラストはきれいに収めており、読後感は良い作品になっています。
       SF的に言えばこの作品は〇〇〇テーマの作品なんですが、これを明かしてしまうとネタバレになってしまうので、この点はご容赦を。
       良く書けている佳作ではないでしょうか。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2021/10/07 by

      ダーウィンの使者〈下〉」のレビュー


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