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文学刑事サーズデイ・ネクスト

5.0 5.0 (レビュー1件)
カテゴリー: 小説、物語
定価: 2,730 円

わたしはサーズデイ・ネクスト。ついこのあいだまで、イングランドで暮らす一介の「文学刑事」だった。ジェイン・エアを誘拐した文学破壊凶悪犯ヘイディーズを倒し、ポーの『大鴉』の中で、卑劣な巨大企業ゴライアス社と対決したのはいいが、ひきかえに愛する人をうばわれてしまった。しかも記憶を操る怪女エイオーニスから、兄の仇と命を狙われる始末。そんなわたしに『大いなる遺産』の豪快なブックジャンパー、ミス・ハビシャムが助け舟を出してくれた。普通は現実世界の人間が入れない「ブックワールド」に匿ってくれるという。『ロビンソンクルーソー』の島で過ごすか『高慢と偏見』の中で優雅なドレスをまとうか迷ったが、怪しげな未完の小説のなかでしばらくのんびり身を隠すことにした。しかし運命はわたしに休息をゆるしてくれないらしい。小説世界でも刑事をやるんだよと、ミス・ハビシャムのしごきが始まった...。ヒースクリフから植物怪獣トリフィッドまで、文学オールスター勢揃いの「文学刑事シリーズ」第三弾。

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    「文学刑事サーズデイ・ネクスト」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 5.0

      【文学ネタ満載のこのシリーズ、こりゃあ、まだまだ続きますよ~】
       さて、上巻のレビューで、どうも第三巻はサーズデイが住む現実世界の事柄ではなく、サーズデイが『戦略的撤退』をした文学の世界(ブックワールド)のことばかり描かれていて、第二巻から持ち越しになっている問題の解決がなかなか進まないと書きました。
       また、その辺りがバランスを欠いていて、第三巻の評価を落としているとも。

       しかし、第三巻上下を通読して分かりました。
       このシリーズ、まだまだ続くようです!
       第二巻から続いている問題は、第三巻では解決されません。
       むしろ、作者は、第三巻は主にブックワールドでの出来事を中心に据えた構成にしていたようなのです。
       ですから、上巻で感じた不満も致し方ないところであり、第三巻をこれから読まれる方は、物語はまだまだ続くのであり、第三巻はブックワールドを中心に描いている巻なのだと承知して読まれることをお勧めします。

       さて、ではブックワールドで色々起きた事件はどういうことなのでしょうか。
       実は、これはブックワールドの枢要システムである小説OSのアップグレードと密接に関係しているということが徐々に分かってきます。
       詳しい仕組みはイマイチ分からないのですが、ブックワールド全体を統括しているオペレーティング・システムがあり、これまでにも何度もアップグレードされてきたと言います。
       それはまるでPCのOSみたいなんです。

       例えば、Windowsでも、「あのヴァージョンは良かったけれど、あれはクソだ」、「アップグレードしたら不具合が起きた」なんていうことはこれまでにもありましたよね。
       あれとそっくりな話になっているんです。
       例えば、過去のアップグレードがクソだったために、アレキサンドリア図書館を消失させてしまったとか……。

       で、今度は遂に通称『ウルトラワード』と呼ばれるOSにアップグレードが行われることになりそうなんですね。
       この『ウルトラワード』は画期的なOSで、処理能力も格段に向上するばかりか、これまでにないインタラクティヴな読書体験ができるなどなどの機能を備えていると言います。
       ただ、過去に痛い目にあったブックワールドのキャラの中には懐疑的な目で見ている者もいたのです。
       そして、詳しくは伏せますが、このアップグレードに関連して、これまで描かれてきた事件も起きていた疑いが浮上してくるという展開になります。

       そうか。
       最初は、サイドストーリー程度に考えていた『ウルトラワード』のエピソードが主筋だったのか!

       また、下巻に入っても文学ネタは猛烈にちりばめられています。
       大体、このシリーズのウリの一つは文学ネタなのですから、ここは外せないところですよね。
       これまでの巻でも、文学作品自体をネタにしたジョークは満載なのですが、作者や言語という視点からのジョークもあるんですよ。

       例えば、下巻で出てくるネタの一つに、「だったのだった」(had had)と「ことのこと」(that that)問題というのがおちょくられています。
       私、英文作品の原典を読んだことがないので分からないのですが、どうやらこの二つの表現は結構出てくるらしいのですが、これがあまりよろしくない表現だということがジュリスフィクションの会議で論じられていたりします。
       例えば、『デイヴィッド・コパフィールド』には「だったのだった」が63回も使われているんだそうですよ。
       その後、頭が痛くなるようなややこしい議論が展開されて笑いを誘うということになっております。

       また、文学賞ネタもあります。
       ブックワールドでも各種文学賞が表彰されるのですが、これが結構笑えます。
       『英語作品・最優秀章頭文』賞にノミネートされたのは、『アッシャー家の崩壊』/ポー、『ブライズヘッド再び』/イーヴリン・ウォー、『二都物語』/ディケンズで、最優秀賞に選ばれたのは『ブライズヘッド再び』なんです。
       なるほど、あの書き出しかぁ……(原文が太字で引用されているので思い出せますよ~)。

       また、『最優秀死人賞』に輝いたのは(これは作中のキャラに贈られます)、ドラキュラ伯爵(伯爵は昨年も受賞しているそうなのですが、毎回泣いてしまうそうです)。
       どんどんご紹介すると、『最優秀ロマンティック男性』賞は、『高慢と偏見』のフィッツウィリアム・ダーシィ(そうかなぁ?)、そしてそして、これまで77回連続で『狂乱ロマンティック主人公(男性)賞』を受賞しているのは……『嵐が丘』のヒースクリフ(爆!)。 もちろん、今年も受賞を狙っているそうです。

       そんなこんなの文学ネタ満載の作品なんですが、まだまだシリーズが続くとは予想していませんでした。
       第三巻が発刊されたのは2007年1月30日となっていますが、第四巻は出たのかしら?
       図書館にはどうも第三巻までしか無いようなんですけれど……。
      ネットで検索しても第四巻は見当たらないようなので、まだ出ていないのかな?
       これは早く出してくれないと困るですよ。

       おっと、そうそう。サブタイトルの意味も書いておきましょうか。
       本作では、ゴドーもジュリスフィクションの一員なんですが、ゴドーは会議にいつも現れないのです(そういう風に使うか!)。
       みんなゴドーを待っているというのに……というネタなんです。
       でも、最後にゴドーはとんでもない形で姿を現すことになりますよ。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
      >> 続きを読む

      2021/01/07 by

      文学刑事サーズデイ・ネクスト」のレビュー


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