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ブックストア―ニューヨークで最も愛された書店

4.0 4.0 (レビュー1件)
著者: リン ティルマン
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    「ブックストア―ニューヨークで最も愛された書店」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 4.0

      【本と書店を愛するすべての人へ】
       私は、子供の頃、書店に行くのが大好きでした。
       生憎、住んでいた場所の近くにある小さな商店街には書店が無く、一番近い書店でも家から歩いて20~30分はかかったのではないかと思います(もう一つの書店はさらに遠くにありました)。
       それでも、お小遣いもないのに足繁く書店に通い、もし買えるのならどの本が良いだろうかと熱心に書棚を見て歩いていたのでした(今から思うと書店にとっては迷惑な子供だ!)。

       図書館に行くこともできたのですが、何故か図書館よりも書店に行く方が好きでした
       また、当時の書店は店ごとに個性があり、○○系の本ならA書店、でも××系ならB書店の方が充実しているという具合でした。
       今のように、どの書店に行っても同じような品揃えになっていて、しかも売れ筋のコミックと雑誌ばかりが場所を取っているようなことは昔の書店はなかったように思えます。

       待ち合わせをしたり、時間を潰さなければならない時も、可能なら絶対に書店に行きました。
       書店に行くのは、もちろん欲しい本を見つけるためなのですが、既に決めている自分の欲しい本を探している間に、自分の知らなかった本を見つけてさらに読みたい本の幅が広がっていくというのも書店の魅力ではないでしょうか。

       さて、本書は、1978年から1997年まで、ニューヨークのマディソン街で営業していた『ブックス・アンド・カンパニー』という独立系書店の物語です。
       この書店を経営していたのはジャネット・ワトソンという女性でした。
       彼女は裕福な家の生まれでしたが、決して金持ちの道楽で書店経営を始めたわけではなく、彼女にとって理想的な書店がこの世に無いと感じたため、そんな理想的な書店を作りたいとの思いから、自ら書店経営に乗り出したのです。
       彼女にとっての理想の書店とは、人々が集まるコミュニティであり、サロンでもあり、また何かを発見できるようなそんな場所だったというのですね。

       もちろん、彼女には書店その他の店舗を経営した経験もなければ、何か事業をやった経験もありませんでした。
       ですから、最初のうちは採算を度外視したようなこともしてしまい、多額の借金も背負ったりしました。
       しかし、徐々に経営を学び、書店経営も軌道に乗っていったのです。

       そうして『ブックス・アンド・カンパニー』は、人々に愛される書店になっていきました。
       ニューヨークには多くの作家が住んでいましたが、たくさんの作家がこの店を愛してくくれました。
       『ブックス・アンド・カンパニー』は、ベストセラー本を山積みにするような、大手チェーン店のようなことはしませんでした。
       そうではなくて、ジャネットや書店スタッフが売りたい本、読んで欲しい本を仕入れ、他の店では取り扱っていないような本でも良い本であればどんどん店に置く、そんな書店だったのだそうです。

       ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』やパトリック・ジュースキントの『香水』が出版された時には(どちらも私の大好きな本です)、通常このクラスの書店が仕入れる数の何倍もの冊数を仕入れ、そしてそれを顧客に強力にプッシュして完売してしまったのだそうです。
       また、サルマン・ラシュディの『悪魔の詩』がイスラム勢力から非難され、ラシュディに死刑宣告がなされ、この本を取り扱った書店が爆破された時も、『ブックス・アンド・カンパニー』ではショー・ウィンドウに『悪魔の詩』をずらっと並べ、店に置いた大量の『悪魔の詩』を売り切ったのだそうです。

       『ブックス・アンド・カンパニー』では作家達によるリーディングの催しも頻繁に行っていました。
       顧客もそれを楽しみにし、随分多くの人たちが詰めかけたのだそうです。
       協力したのは作家だけではなく、例えば、ダスティン・ホフマンも朗読に協力してくれたのだとか。
       あるいは、マイケル・ジャクソンがふらっとやってきて、一度に1.000ドルもの本を買っていってくれたのだとか。

       『ブックス・アンド・カンパニー』は、人々にとって居心地の良い場所だったのでしょう。
       そして、ジャネットが願ったとおり、そこはニューヨークのコミュニティになり、文化を提供する場所となったのでした。
       しかしながら、ニューヨークの地代は高いのです。
       遂に高騰する地代を支払い続けることができなくなり、『ブックス・アンド・カンパニー』は惜しまれながらも20年の歴史に幕を下ろしたのでした。

       この作品は、ジャネットらを語り手として、『ブックス・アンド・カンパニー』の歴史が綴られ、それぞれのエピソードごとに、この店に関わった作家その他の著名人、店のスタッフ、顧客などなど、様々な人のコメントが添えられているという構成になっています。

       本を読んでみて、この時代のニューヨークの書店の営業の仕方や顧客のニーズは、日本のものとは随分違うのだなとも感じました。
       書店店員は、かなり積極的に顧客に働きかけて良いと思う本を勧めますし、顧客の方も店側のアドバイスに随分期待しているようなのですね(20ドル以下の本という条件だけで、店が勧める本を内容も確かめずに買っていく顧客というのもいたのだそうです)。
       作家も、自作の朗読会などを積極的に書店で行うことが自身の販促活動として当たり前という風潮もあるようで、書店を巡る文化の彼我の違いというのも興味深いところです。

       日本でも、近時は昔に比べて随分書店側からの情報発信が増えたように思います。
       特に昔の小さな書店だと、店の奥に店主が一人で黙って座っていて、客の方から話しかけでもしない限り何も言わないし、本を勧めるようなことも何もしないというのが普通でした。
       しかし、今は、書店スタッフがお勧めの本に手製のpopをつけ、あるいは書店員が選ぶ○○のような企画を行い、店内の一角には企画コーナーを設けて積極的に棚を作るなどするようになっていますよね。
       もちろん、本書に出てくるようなより強い勧め方ではないにしても(あちらでは、店員が声を大にして「この本を読んで下さい!」と店にやって来た顧客に声をかけまくるらしいです)、静かに、押しつけがましくなく、店側の『意思』を伝えるようになってきたのではないでしょうか。

       それは営業のために必要な部分もあるのでしょう。
       だって、特に地方都市に行くと、パチンコ店ばかり目につくけれど、書店がなかなか無いという所が結構あるように感じています。
       数少ない書店に行っても、最初の方に書いたように売れ筋の本しか置いておらず、自分の欲しい本、あるいはこれは面白そうだと思えるような本がなかなか無いというような状態で、そのため顧客も書店で本を買わなくなり……という悪循環に陥ってしまっているように思えます。
       そんな状況を打破するために、決してベストセラー本じゃないにしても、良い本を勧めよう、読んでもらおうという書店側の熱意に触れると、「あ。このお店いいな。また来てみたいな。」と思ったりするのでした。

       書店というのは不思議なところで、その空間には本が好きな人しかいないのですよね。
       この本の『ブックス・アンド・カンパニー』のように、人々に愛され、足繁く通いたくなるような書店が少しでも増えることを願ってしまうのでした。
      >> 続きを読む

      2019/08/01 by

      ブックストア―ニューヨークで最も愛された書店」のレビュー

    • >どの書店に行っても同じような品揃えになっていて、しかも売れ筋のコミックと雑誌ばかりが場所を取っているようなことは昔の書店はなかったように思えます。
      ですよね~。┐(´-`)┌
      こうなる原因は、出版物を書店の注文とは無関係に配る「配本制度」にあると、かなり以前から指摘されていますね。本の流通を取り仕切る大手2社のせい。
      それと返品OKという出版社泣かせな古い商習慣。(これは文具店も同様です)
      大部分の本はお金を出して仕入れておらず、本を預かっているだけだから、本屋も手抜き営業できた訳。責任もリスクもない。立ち読み客をハタキで追い払うのが本屋の店員の役目(笑)

      つぶれる本屋が後を絶ちませんが、一方で本屋さんを開くのが夢。という方も依然多いんですよね。
      最近、駅前や商業地ではない場所に個人経営の個性的な書店がオープンしています
      書店の店主の趣味や眼力やイベント力でファンを獲得している様子。
      昨年うちの近所に、大手書店の店長さんだった方が独立して小さな本屋(2階建て)を開きましたが、個性的なよいお店です。
      日本の本屋さんも頑張っているのですね。
      そんなお店を応援したいものですね。
      >> 続きを読む

      2019/08/01 by 月うさぎ

    • 良い本屋さんを見つけたら応援したいですね。

      2019/08/02 by ef177


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