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捨てる女

著者: 内澤 旬子
定価: 1,728 円
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    「捨てる女」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 評価なし

      イラストルポライターである著者が、仕事の資料や、旅行先で集めた趣味の製法工芸に纏わる装丁本などでカオス化してしまっていた部屋のモノを捨てていく、「捨て暮らし」を綴ったエッセイです。

      冷蔵庫の中身を皮切りに、生活用具、家具、長年蒐集してきた本類、さらには東日本大震災をきっかけに「トイレットペーパーを使う生活」さえも捨て、はたまた配偶者まで、ありとあらゆるモノと訣別してゆく様子が事細かに描かれているのですが、実はその内容の大半は、捨てる「モノ」よりも遥かに多い、著者の千々に乱れる心模様なのでした。

      者の「捨て暮らし」のそもそものきっかけは、乳癌の病気体験を機に感じたカオス部屋への息苦しさであり、もうこれ以上の重荷を背負いきれないという、「ストレスからの脱却」でもありました。その日々は、思い出や経験、実績など「これまでの自分」が積み重ねてきたものや下してきた決断の価値を問われることでもあり、著者はそのたびに動揺し、自己嫌悪し、悩むのです。

      生きていくだけでモノは増えてゆきます。そこから自分にとって価値あるものを選び取るということの、なんと大変であることか。モノを整理することすなわち、人生の収支決算なのだと感じました。その意味で、とても興味深く読める内容ではあるのですが、著者の文体が全体的にあまりにも自嘲的で、過剰なやさぐれ具合に、少々げんなりさせられました。

      おそらく、物が散らかっていることに我慢がならない人は「あ~鬱陶しい!さっさと捨てろ!」といらつくでしょうし、物を捨てることに後ろめたさを感じるような人は「わかる…」と感じるかもしれず、読み手によって著者の逡巡への賛否がはっきり分かれる作品ではないかと思います。

      私はと言えば、モノへの執着心が薄く、ホテルのようなミニマルな空間が心地良いと思う性分ではありますが、著者の言うとおり「捨てることで得られる精神境地がワンランク上の状態かの如くかかれているのには、どうにも賛同できな」いという意見には賛成です。

      やましたひでこさんの唱える「断捨離」のコンセプト自体には異論を持ちませんし、危険を伴うほど物の氾濫した空間は論外ですが、それに便乗した「部屋を片付けさえすれば幸福になれる!」といったプロパガンダ的な風潮には違和感を感じます。精神衛生上すっきりとした部屋だけがいいという人ばかりでもあるまいし、「さっぱりはするだろうけど、そのさっぱりってそんなに偉いものか?」という著者の言葉が印象的でした。(※この作品で、著者が「断捨離」の概念について言及しているわけではありません、念のため。)

      個人的に最も目を引かれたのは、「自慢じゃないけど体重や脂肪ならば、サクサク減らす自信があるんだけど」という一文でした。羨ましい。目下、私が真っ先に捨てるべきなのは、モノより何よりこの脂肪なのでした…。
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      2015/10/10 by

      捨てる女」のレビュー


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