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ファントマ

3.0 3.0 (レビュー1件)
著者: マルセル・アランピエール・スヴェストル
定価: 2,750 円
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    「ファントマ」 の読書レビュー (最新順)

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    • 評価: 3.0

      【怪人二十面相ではなく、怪盗ルパンでもなく、ファントマだ!】
       ファントマという名前を聞いたことはないでしょうか?
       1911年2月、フランスで『ファントマ』という小説の第一巻が刊行され、作者自身(共著です)さほど売れるとは思っていなかったのに何と大人気になり、以後、32巻まで刊行された小説です。
       また、映画化もされ、我が国でも1915年に映画のノベライズ小説が出版されたのを皮切りに、久生十蘭が翻案小説を書き、南洋一郎が子供向けにリライトし、早川書房から原作縮約版の1~3巻までが出版されるなど、その名は知られてきました。
       本書は、そんなファントマの第一巻完訳本なのです。

       ファントマは大衆小説として書かれたのですが、それにしてはとんでもないヴォリュームの作品で、完訳版の本書も上下二段組みで約400ページという、大衆小説としてはかなりの厚さです。
       そんな長大な作品だということも影響してか、本国のフランスでも、各国翻訳版でも、もっぱら縮約版が流通しており、なかなか完訳版にはお目にかかれなかったようです。

       ファントマをご存じないという方のために若干説明をすると、ファントマは大犯罪者で変相の名人です。
      その姿はタキシードを着てマスクをしたイラストで紹介されたこともあり、大体そんなイメージとして定着しています(ただし、このイラスト、本来は薬のポスターとして描かれたけれどボツになったものをそのまま流用しちゃったものらしいです)。
       映画では、タキシードの盛装姿だけではなく、黒装束に身を包んだ姿も見せていたそうで、そういうイメージもあるのだとか。

       変相の名人の犯罪者というと、怪人二十面相やルパンが思い浮かびますが、ファントマが彼らと決定的に違う点は、二十面相やルパンは怪盗であり、決して人を殺さないという矜持を持っていましたが、ファントマはそんな高潔な存在ではありません。
       自分の欲望のために、あるいは保身のために(はたまた何のためなのかよく分からないのに)いとも容易く凄惨な殺人をやってのけます。

       本書には含まれていませんが、巻末解説によると、パリの有名なデパートで、造花に毒を仕込んでそれを嗅いだ客を殺したり、店頭に並べられていた靴の中に剃刀の刃を仕込んで試し履きをした客の足を血まみれにしたり、香水に濃硫酸を仕込んで試した客の顔を焼けただれさせたり、しまいには天井の鉄骨を落下させて客や従業員を惨殺するなどというとんでもない事件を起こす巻もあるのだとか。
       本書の中でも、自分の保身のために自分が変相した者が死んだように見せかけようとし、客船を爆破して乗員乗客約150人を殺すなんていうとんでもないことをしでかしています。

       そもそもが大衆小説であり、とにかく荒唐無稽でいい加減な話なのです。
       どうしてそんなに人気が出たのかよく分からないところなんですが、小説としてはさほど期待できるようなシロモノではありません。

       本作も、ファントマはろくでもない動機で殺人を繰り返し、偶然や都合の良い展開が続き、事件は起きるものの大した謎解きもなく、ファントマの宿敵であるジューヴ警部も変相の名人という設定であるため、追う者も追われる者も双方変相しているという何ともけったいな状況になっていたりします。
       描写も冗長で文章も上手くなく、プロットも子供だましレベルで、小説としての出来はろくなもんじゃありません。
       作者は読者を騙しているつもりなのかもしれませんが、普通の読者ならどの登場人物がファントマの変相なのかはすぐに気が付いてしまいます。
       ですから、内容に期待して読むような作品ではないんですね~(江戸川乱歩やモーリス・ルブランの作品には比べるべくもありません)。

       もう一つ特徴を書いておくと、二十面相やルパンは、変相の名人ではあっても、作中で素の二十面相、ルパンが描かれ、彼らがどういうキャラクターなのかは読者にも分かるようになっていますよね。
       ところがファントマの場合、徹頭徹尾、変相した者のキャラクターとしてしか描かれず、素のファントマがどういう人物なのかは全く分からないのです。

       第一作で言えば、まぁ、あるいはあの人物は素のファントマとして書いているつもりなのかもしれませんが、明示的にはそう書かれていないため、仮にそれが素のファントマだとしても、そんなのは作者の筆先三寸で「あれも変相だった」と書くのは容易いことになってしまっています。
       ですから、キャラクターの真の姿に対する読者の共感とか愛着を呼びにくい構成になっているのですね。

       いずれにしても、有名な怪人を主人公にした完訳版という点に意義のある本であり、私もそれ故に読んでみた作品です。
       しかし、内容はご紹介した通りですので、作品自体の面白さや小説としての出来の良さに期待して読むと裏切られます。
       あくまでもマニアックな興味、あるいは古い時代の冒険活劇小説に対する懐古といった観点でお楽しみになる方がよろしいと思います。
       ちなみに、表紙のイラストは横尾忠則さんが描かれていますよ~。


      読了時間メーター
      □□□     普通(1~2日あれば読める)
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      2020/05/24 by

      ファントマ」のレビュー


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