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カテゴリー"植物学"の書籍一覧

      花の日本語

      山下景子

      5.0
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      •    足もとの小宇宙をひも解けば

         久しぶりに自然科学の読み物が並べられた書棚を訪れたのは偶然だった。ここ最近はあまり図書館で暇をつぶすこともなく、淡々と与えられた役割をこなすだけの、たとえるなら車にガソリンでも給油する心持ちでペダルを漕いでいた。暢気なものである。さすがにこれでは不味いと思って、いまでは指に馴染まなくなった科学書の棚に立ち寄ると、詩的な書名に目を奪われた。その名は『足元の小宇宙』。副題には「82歳の植物生態写真家が見つめる生命」とあり、著者は埴沙萠さん。わたしは存じ上げないけれど、ネットで調べるとNHKスペシャルで特集されているから、この道では知る人ぞ知る人なのかな? よく分からないが、植物学の本に焦点をしぼることにした。理性に基づく科学よりも情緒を働かせる科学が好きなのだ。
         ところで、まったく個人的な感覚だけれども、愛する草花を眺めるときの心の安らぎと、気のある女性を見つめる胸の高鳴りには相通じるものがあって、どちらも既視感という圧迫を覚えることが少ない。どうして好みの顔だちの女性を見かけるたび、あのはじめての土地へ踏みいるときの、何もかもがリセットされたような視界になるのだろうか? それはまるで何度地面を蹴り上げても頓挫した逆上がりが首尾よく決まり、目に映る世界がまわって瞬く間に視野さえも拓けてゆく感覚。 この目あたらしい景色はいつのまにか西武線の車窓の眺めへと移ろいゆき、秋の大泉学園、冬の仏子、春の羊山公園、秩父にある関東でも指折りの芝桜の丘までつながっているので、近隣に住んでおられる方はどうぞお運びください(ちょっと遅いか)。
         手に取った一冊は山下景子さんの『花の日本語』。心のこもった読み物なので、パラパラめくるうちに胸の奥のほうが仄温かくなる。始めに言葉ありき、先ず言葉より始めよ。ということで借りてみた。
         やはり第二章の「恋する草花」がおもしろい。落花流水の情といって、川面に落ちた花びらが、気持ちよく水に身をゆだねる姿と、互いを思いあう男女の結びつきを古来の人々が重ねあわせたように、草花と人間は単におなじ時を流れてきたわけではない。そこには多くの語りぐさがある。たとえば錦木は、日本各地の山野に生える、高さ二メートルほどの落葉樹で、秋の紅葉が錦のように美しいのがその名の由来。厳密には現在のものとは区別されるが、平安時代の和歌にも出てきます。そのむかし陸奥の国では、男性が思いを告げる代わりに、女性の家のまえに日ごとに錦木を置いたようです。受け入れる場合はその枝を家に取入れ、断るときはそのまま放置する。そしてその制限がなんと千本だったいうから驚きです。その証拠に、

         にしきぎの  千束に限り  なかりせば  なほこりずまに  たてましものを
                              (賀茂重保 『千載和歌集』)

         注釈を加えると、錦木に千本という制限がなければ、いつまでもあなたの家に参りますのに、くらいでしょうか。この逸話に吐胸を突かれる思いをするのは僕だけではないはず……と思ってこの本をレヴューしたんですね。人間の時間感覚が緩やかだったときには、これほどまでに人を愛することができたという話です。いいや、忙しい現代社会でも不変の愛は存在するといった嬉しい反論、心待ちしております。
         この本のなかで最も好きな花は凌霄花。読みは「のうぜんかずら」ですね。これから来る真夏、灼熱の太陽の下で大空を凌ぐほど天高く伸びてゆく花です。こういう生き方に憧れます。

         火のごとや  夏は木高く  咲きのぼる  のうぜんかづら  ありと思はむ
                                     (北原白秋)


        付記
         とてもいい映画監督に出会いました。ロドリゴ・ガルシア監督です。お父さんが20世紀を代表する小説家なのに、この最近知りました。「美しい人」という映画がほんとうにおもしろくて、四回も観ただけでなく、べつの作品もレンタルして観るつもりです。父親も変わった魔法使いだったけど、その息子は日常に寄り添ったマジックを、映像の裏から小気味よく披露してくれます。
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        2016/06/04 by 素頓狂

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      雑草博士入門

      岩瀬徹 , 川名興

      3.0
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      • 今のシーズンは暑くて山歩きに出掛ける気になりませんけど、涼しくなって来たときの準備のために読みました。

        「きのこ」とか「つくし」は好きなんですけど、それじゃあ世界が狭いなぁということで、雑草をお勉強してみました♪

        ただの写真と説明文の羅列じゃなくて、「似た草をくらべる」とか「雑草のくらし発見」とか、読み物風になっているのも楽しいですね♪

        ただ、説明が細か過ぎて、お花をバラバラにしているのが少し悲しく感じました。

        あとは、当たり前ですけど、きのこが載っていないので、少し切なくなりました。

        やっぱり、きのこが好きです♪
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        2013/07/30 by makoto

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