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カテゴリー"商業史・事情"の書籍一覧

      中世イタリア商人の世界 ルネサンス前夜の年代記

      清水広一郎

      3.0
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      •  ジョヴァンニ・ヴィッラーニ著の『フィレンツェ年代記』を中心に、商人が主役となっていた14世紀のイタリア都市世界を描き出した作品。当時のイタリアは(今もかもしれないけれど)、本当に都市ごとに特色があったんだなと感じる。
         
         『フィレンツェ年代記』は、年代記(歴史を記録したもの)だが、いわゆる都市讃美の書の系統にも属する。都市讃美の書というのは、盛期~末期中世に、とくに北・中部イタリアで都市が発展するに際して、自らの都市の美点を数え上げ讃美した書物だ。当時、大概都市どうしが、周辺の農村地域の統治をめぐって等で争い合っていたため、自らの支配下にあることを根拠づけるべく、自らの都市の歴史やら美点やらを綴ったものであるともされる。教科書的には、教皇派と皇帝派が争っていた時代である。イタリアの都市は各々、いずれかの派が優勢であるか異なっており、小競り合いや党派争いは日常茶飯事であった。

         14世紀といえばルネサンス前夜。そしてルネサンスと言えばフィレンツェは、華々しい主役級の都市の1つとして想起されるが、意外なことに、そもそもイタリア都市の中で、発展が遅かった場所らしい。都市讃美の書、歴史書の類の洗練具合もいまいちだった。
         しかし、商人たちの活躍、力の伸長には目を見張るものがあり、商業関連証書への意識はとりわけ強かった。だからこそ、ヴィッラーニの『フィレンツェ年代記』も、同時代史の部分は、商業史料を用いており、また、商業や実務で用いられた俗語が用いられている。

         中世世界=キリスト教世界=宗教的世界(前近代的)のイメージがあり、商人=世俗世界=ルネサンス・宗教改革前史(近代、人文主義へつながる)のイメージがある。しかし、ヴィッラーニが『フィレンツェ年代記』を書くきっかけとして挙げているエピソードは、1300年の聖年に際した巡礼(その年に巡礼すれば贖宥が得られることを教皇が宣言した)である点からして、中世キリスト教世界と商人の世界は別々に考えるべきものではないのである。

         とはいえ、扱い方は困難である。ただ一つ確かなのは、ひどく世俗的に思われる事柄であってもすべて、キリスト教的思考に浸ったものである可能性があり、中世と近世の過渡期たる14・15世紀あたりは、扱いづらくも興味深い時代であるということだ。そして、イタリア都市はその題材として今後なお探究し続けるべきものを豊富に有していることが、ひしひしと伝わってくる、肉厚な1冊である。



         
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        2017/01/31 by 理子*

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