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カテゴリー"その他のスラヴ文学"の書籍一覧

      存在の耐えられない軽さ

      千野栄一 , KunderaMilan

      4.5
      いいね!
      • --ただ偶然だけが我々に話しかける・・・必然性ではなしに、偶然性に不思議な力が満ち満ちているのである--


        名著だなあと
        しみじみ感じます。

        もう4~5回目のように思います。
        ふとまた読みたくなってしまう不思議な魅力を持つ本。
        何度読んでも、味わい深い。。。

        題名もさることながら、章のタイトルがまた良い。
        第一部 軽さと重さ
        第二部 心と身体
        第三部 理解されなかったことば
        第四部 心と身体
        第五部 軽さと重さ
        ・・・

        今日は、理解されなかったことば、について。

        お互いを理解しあうためのツールとして存在するのが言葉
        そのはずなのに、言葉そのものが理解のすれ違いを作り出す皮肉
        言葉を紡ぎ合うよりも、ただ抱きしめ合っていた方が心が繋がれるのではないかと。


        35年生きて、色んな出会いと別れがあって、子どもへのまなざしを持つようになって
        最近はしみじみ思います。

        言葉にできない、ということは、全く大したことではないのだなあと。


        つい、
        言葉にできない=考えが無い、考えが弱い、
        とか
        言葉にしない=理解しあう気が無い、理解し合えない、
        とか、思ってしまっていました。

        特に20代、東京時代は、とみにそうだったように振り返ります。


        言葉など無くても、
        好きな人と、同じ風景を見ながら、ただただぼーっと横に座る
        泣き散らす我が子を、ただただぎゅーっと抱きしめる

        そんなことで、心はとても繋がるように思います。


        重さと軽さのいずれが良いか、
        筆者はこの問いを投げ続けますが、
        しかし筆者が繰り返し揺り戻して語るように、
        重さとは軽さの集合体たりえ、軽さとは重さへの連続たりえると。
        両者がお互いを包含する、二匹の蛇のような関係でしかなく、
        もしかしたらこの問いは単なる言葉遊びに過ぎないのかも知れないと。

        重さを求めたテレザが軽さの大切さに気づき
        軽さを求めたトマーシュが重さの価値を認める
        お互いがその気持ちに至れたのは、テレザとトマーシュが、物理的に寄り添って生きた先で、と描かれる結末。

        言葉以上に大切な、人と人との肉体的な距離間、
        これを、心と身体という表現で描いた作品

        そんな風にも読めるかなと、
        今回は感じました。
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        2017/08/18 by フッフール

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      ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)

      スタニスワフ・レム

      3.7
      いいね!
      • 【薔薇と真珠の海】
         もしも、二度と会えない人、二度と会わないと決めた人が、あなたの心の奥底に眠っていた人が、あなたの目の前に現れたらどうしますか?

         本作は、スタニスワフ・レム作のSFの古典的名作です。
         それは、時に、難解、哲学的と評されることもある作品ですが、決して読みにくい作品ではありません。

         惑星ソラリス。
         その地表の大部分は「海」に覆われていました。
         「海」と言っても、地球の海のように青い海ではなく、赤く、時に薔薇色や真珠色に輝く不思議な「海」でした。

         ソラリスの研究が進むに連れて、その「海」は液体ではなく、粘着性のあるゼリーの様な物質からできていることが分かります。
         さらに研究が進んで、その「海」は生物であり、知性を備えているという考え方が主流になってきます。
         そう。まるで惑星ソラリスを覆い尽くす脳のようなものだと。

         ソラリスの「海」の上空400メートルの地点には、人類のソラリスを観測するためのステーションが浮遊していました。
         ステーションには現在3人の科学者がおり、日々ソラリスの観測、研究を続けていました。
         そこへ地球から4人目の科学者であるケルビンがやって来たのです。

         ケルビンがステーションに到着してみると、一目で何か異変があったことに気付きます。
         本来なら忙しく働いているはずのロボットの姿は見えず、資材も乱雑に散らかされたままになっています。
         スナウト教授を見つけたので事情を聞いたのですが、酔っているのかまともに答えてはくれません。
         そして、ケルビンと知己のギバリャン教授は、今朝方亡くなったと言うのです。
         何故?
         詳しい説明は一切拒まれてしまいます。

         一体何が起きているんだ?
         その後、ケルビンは、ステーション内にいるはずのない黒人女性とすれ違います。
         一体誰なんだ?

         そして、ケルビンのもとにも、一人の女性が訪れます。
         それは、かつてケルビンが愛した女性でしたが、ケルビンがひどい仕打ちをしたため、自殺してしまった女性なのでした。
         君は……一体誰なんだ?

         その後、スナウト教授から、「君のところにもお客が来たかい?」と尋ねられます。
         どうやら、スナウト教授のところにも、もう一人のサルトリウス教授のところにも「お客」が来ているようなのです。
         「どうして説明してくれなかったんだ!」と迫るケルビンに対して、「そんなこと話したって、自分の目で見るまで信じやしなかっただろう!」と言い返すスナウト。
         これは間違いなく「海」がやっていることと思われますが、一体何のために?

         レムは、この作品を書いた意図について、大要以下のように説明しています。
         それは、人類と異星人とのコンタクトを描いたSFは沢山書かれているが、概ね3つのスタイルに集約されるように思われる。
         その3つとは、①人類と異星人が共生する、共生はできず戦いになり②人類が勝利する、③異星人が勝利する。
         しかし、必ずしもその3つのパターンになるとは思われない。
         人類と異星人が互いに共通の理解が可能であればそうかもしれないが、お互いの思惑、思考、意図が全く食い違っていたとしたら果たしてそうなるだろうか?
         その場合には、3つのパターンでは描けないコンタクトだってあるのだ、と。

         本作は、1961年に書かれた古い作品ですが、今でこそそれほど目新しいテーマではないものの、当時としては画期的な作品だったことが推察されます。
         もちろん、登場するギミックは古びてはいますが、でも、作品のコアなところは、今でも古くさくもないし、陳腐でもないと思いますよ。
        >> 続きを読む

        2019/07/30 by ef177

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      長い長いお医者さんの話

      CapekKarel , 中野好夫

      3.0
      いいね!
      • いぬいとみこさんの「ながいながいペンギンの話」のタイトルが
        「長い長いお医者さんの話」からとられたというエピソードを知り、
        子供のころに読んで両方とも好きだったことを思い出しました。
        当時から、そっくりなタイトルだなあとは思っていたのですが、
        本が書かれる背景なんて、子どもの興味を惹くものではなかったんですね。

        それで、この度再読してみました。

        ほぼ全編ホラ話。そういえばそうだったっけ。こどもって、ホラ話が好きなんですよね。
        起承転結なんかなくてもお話しそのものが面白ければいい。

        だからお話しの方はもう全然覚えていなかったけれども。
        現実世界へのアイロニーは、官吏が不親切で不調法だなどの当てこすりなどが
        時々チラリと出てきますが、おおむね楽しいお話しに徹していると言ってよいでしょう。

        魔法使い、妖精、王様と王女様、木こり、御者、おまわりさん、
        なかでもカッパの登場にはびっくり。
        チェコスロバキアにもカッパがいて、彼らはきちんとお仕事もしています。
        チェコの温泉はカッパが汲み上げているらしいですよ。(^^)


        「長い長いお医者さんの話」  ヘイショヴィナ山に住む魔法使いのマジャーシュは、
         ある日ノドに梅の種を詰まらせてしまって、お医者さんを呼びますが…

        「郵便屋さんの話」  夜中の郵便局では郵便局員の妖精が現れてお仕事をしているんです。
          彼らは封書を開けなくても中身を知ることができるのです。

        「カッパの話」  チェコのカッパはすごいんですよ。
          洪水を起したり止めたり、温泉を汲み上げたり!

        「小鳥と天使のたまごの話」 にわとり以外の鳥がなぜ空を飛べるようになったのか?

        「長い長いおまわりさんの話」  町を巡回するお巡りさんはいろいろな事件に出会います。
          ある時、お巡りさんが拾った卵から生まれたのはなんと9つの頭をもったヒドラの赤ちゃんでした。 
          トゥルティナさんは、ヒドラを引き取り、アミナと名付けて可愛がりますが、
          口うるさい世間がそれを許そうとしません。
          窮地に立たされたトゥルティナさんは?!

        「犬と妖精の話」  粉屋で働く犬のヴォジーシェク君。 ある時置いてけぼりにあい、一人でおうちにかえるハメになりました。
         森を通りぬけようとしたとき、犬の妖精たちに出会い、
         犬の妖精の長老の面白い話に心を奪われます。
         
         なんと犬のお願いを聞いて、神様が、犬以外の動物の骨を集めさせて作ったのが人間なんですって。
         だから人間にはあらゆる動物の特徴が混ざっています。
         ただ一つ犬の「忠実さ」だけを除いて。

        「宿なしルンペンくんの話」  無欲で正直者のルンペンくん。見知らぬ人からカバンを預かったら…
          大金を盗んだ罪で死刑を求刑されてしまいます!

        「山賊の話」  残虐非道の山賊の親玉が自分の愛息に教育をあたえたところ…
          オチが気の毒です。適材適所って大事ですね。

        「王女さまと小ネコの話」  王女さまのところに届けられた謎の生き物とは?
          おばあさんが謎かけをしたその動物は、皇太后の夢のお告げでも重大なカギを握っていることがわかりました。 
          ところがある日このネコが連れ去られ、その男(どうらやら魔法使い)を探し出すために探偵が動員されます。
          この事件と探偵たちの失敗を知りアメリカの名高い探偵シドニー・ホール君が、ついに立ち上がります。
          世界一周をする、という彼の計略とはいったい?

        「訳者のことば」 
          イギリス文学の翻訳で有名な中野好夫氏のは言葉のチョイスも渋いです。
          お子様ことばを使わずに漢字も多様せず、それでいて語彙が増えるようなそんな言葉使いを選んでおり、巧い翻訳だと思います。

        「チャペック童話に学ぶ」  
         「おうさまシリーズ」の寺村輝夫さんは童話の描き方をチャペックから学んだと語っています。
          確かに「ぼくは王さま」のほら吹き加減とか、影響があったといえばその通りかも。

        挿絵はヨセフ・チャペック、カレルのお兄さんです。
        ヘタウマの元祖のような子供っぽく、愉快な絵です。
        悲しいことにヨゼフはナチスドイツの強制収容所で命を落としました。

        カレルチャペックは、チェコスロバキアの国民的作家です。
        第一次大戦と第二次大戦の間の時代に、鋭い時代認識に巧みなユーモアを織り交ぜた幅広いジャンルでに活躍した作家です。
        ヒトラーとナチズムを痛烈に批判し危険人物と目されていたといいます。

        実は私がカレル・チャペックという名前を意識したのはこの本の作家としてではなくて、
        「カレルチャペック紅茶店」の店名からでした。
        この時のチャペックは「園芸家」の顔をしていました。

        童話や園芸のような暖かな顔のほかに辛い時代に生きた純粋な魂の作家の横顔を知って、
        彼の物語を読む目線も変わるでしょう。

        しかし、この童話は純粋に楽しくお読みください。
        子どもの本ですから。
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        2013/10/08 by 月うさぎ

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      コルチャック先生 子どもの権利条約の父

      BogackiTomek , 柳田邦男

      5.0
      いいね!
      • コルチャック先生の生涯を描いた絵本。

        絵もすばらしかったし、柳田邦男さんの翻訳もとても良かった。

        多くの人に読んで欲しい、素晴らしい絵本の一冊。

        コルチャック先生の魂が受け継がれていく世界であって欲しいと思う。
        >> 続きを読む

        2012/12/21 by atsushi

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      別れのワルツ

      西永良成 , KunderaMilan

      5.0
      いいね!
      • あいかわらず一般受けしそうにない本を読んでいる今日この頃です(-_-;)
        ところで、先日、ミラン・クンデラさんの「不滅」を投稿したことをふと思いだし、これだけはレビューしておいたほうがいいかもしれないと思い書いてみました。

        ご存じのとおり、「存在の耐えられない軽さ」と「不滅」は、クンデラの代表作として世界的にも有名です。ちなみに、「不滅」までの長編作品をみると、初作「冗談」、「生は彼方に」、「別れのワルツ」、「笑いと忘却の書」、「存在の耐えらない軽さ」、「不滅」となっていて、その後もいくつかの長編が続いています。

        クンデラ作品はどれをとっても同じパターンの描き方はありません。彼の本のページをめくるとき、私はいつもプレゼントの包みをあけるような高揚感を覚えます。この作品を開いて驚いたのは、いたってオーソドックスな描き方、そして、あらためてクンデラはなんと素晴らしいストーリーテラーであることか。
        テーマは一貫していて(キーワードも他の作品に比べて多くない)、時系列どおりにすすみ、舞台も固定され、時空の混在もなく、大変リーダブルな作品に仕上がっているのに、クンデラ独自の思弁がきれいに織り込まれて思索に富み、しかも軽やかなのです♫

        ***
        不妊症に効くとされる温泉保養地。祖国を捨てて亡命を決意したヤクブは、友人らに永遠の別れを告げるためこの地を訪れます。遠い昔、友人のDrスクレタが処方した自殺のための毒薬を未だに持ち歩くヤクブ。ちょうどそのころ、温泉保養施設で働いていた看護師ルージェナは懐妊し、その事実を高名なトランペット奏者に告げると、彼は甘い言葉を囁きながら中絶を迫るためにこの地を訪れます。ヤクブの持っていた毒薬の行方は? 果たして彼は亡命できるのか? サスペンス的要素も取り込みながら、8人の男女が織りなしていく切ない愛の物語です。

        この作品では、クンデラの他の作品に通奏低音のように流れているピリッとした、ときに胸苦しくなるような歴史の緊張感というものが希薄です(作品が冗漫でふにゃふにゃしているという意味ではありません)。そのため、どこか遠く懐かしい、郷愁を誘う作品に仕上がっています。きっとノスタルジックな心持ちでクンデラは書いているのだろうな~と思える作品です。

        クンデラ作品群を貫く精神性があるとすれば、人はどこからきてどこへ行くのか? 世界化した現代の実存や「生」の模索という宇宙的命題。抒情性を回避して詩作ではない散文でしか表現することのできない芸術美の探求、その結果はほとんど神業です。
        どちらか一方に秀でた作品は数多くあれど、深遠な精神性の発露と芸術性の昇華をともにみる作り手というのは、そうお目にかかれるものではありません。まさに鬼才だと感じます。

        お節介ながら、クンデラ作品に触れてみたいけど、何から読んでいいのかよくわからない…と躊躇している方の一助になれば幸いです。この「別れのワルツ」をお薦めし、もし興味が湧くようであれば、青春作品「冗談」⇒「生は彼方に」。このあたりからクンデラ独特の小説手法の萌芽が見られ、次の「笑いと忘却の書」で、時空を超えたポリフォニー的試作にチャレンジしています(ゲーテやボッカッチョやペトラルカなどを登場させて遊んでいます♪)。それらの手ごたえを経た上で、「存在の耐えられない軽さ」や「不滅」に昇華させています。

        ところで、先日、クンデラが書いた評論本を読んでみると、彼曰く、「別れのワルツ」は、愛着を覚えていて、書いていて楽しく嬉しいもので、他の小説とは違った心理状態で、出来上がりも早かった……(「小説の精神」より)。
        やはり、このような著者の感覚というのは、書物を通して読者にも伝わるものですね。
        興味のある方は、ぜひどうぞ(^^♪
        >> 続きを読む

        2016/03/29 by アテナイエ

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      ありのフェルダ

      関沢明子 , SekoraOndřej

      4.0
      いいね!
      • (図書館から借りて読む)この本の主人公ありのフェルダはたくましくて仲間から信頼され、物語の途中で罪人扱いにされてもめげずに頑張る姿に心を撃たれました。私もありのフェルダみたいに心強く生きてみたいとつくづく感じました。 >> 続きを読む

        2013/01/07 by xy-562244

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      あまりにも騒がしい孤独

      ボフミル・フラバル

      5.0
      いいね! Tukiwami

      • 20世紀を代表する作家のひとりで、チェコの国民的な作家でもあるボフミル・フラバルの「あまりにも騒がしい孤独」を、じっくりと味わいながら読み終えました。

        この作品の主人公は35年間、水圧プレスで故紙や本を潰してきた「僕」。

        毎日トラックで運ばれてくる故紙の中から好きな思想家や作家の著作を抜き出して読んできたので、心ならず教養が身についてしまった主人公のアパートには、そんな本が三トン以上もあり、いずれ本に押し潰されて死ぬんじゃないかと怯えているんですね。

        水圧プレスが発する騒音と駆除しても増えていくネズミたち、イエスや老子や死者が現われる白昼夢。
        そうした"あまりにも騒がしい孤独"の中、読書とビールの救けを借りて、終わりのない単調な肉体労働をこなす「僕」は、ゼウスの怒りをかって運んでも運んでも落ちてしまう、岩を山頂に上げ続ける罰を科せられたシーシュポスのようです。

        でも、シーシュポスは、岩を運び続けることで運命を投げ出さない姿勢を示し、神への復讐を遂げているという、カミュが「シーシュポスの神話」の中で述べた解釈に従えば、言論の自由が弾圧された1970年代のチェコにあって絶望から免れている「僕」は、小さな英雄だと私は思うのです。

        そして、この小さな英雄は、仕事をしながらいろんなことを思い出します。
        酒場のトイレに入った時、「ほとんど床板の穴にまで達した糞便のピラミッド」に長いリボンと髪飾りをつけてしまったせいで「クソまみれのマンチャ」と呼ばれるようになってしまった初恋の少女のこと。

        下水掃除人をさせられていた二人の元科学アカデミー会員のこと。
        そして、ある日、忽然と姿を消したジプシー娘のこと。

        孤独をかこっている主人公に、かつては愛する女性がいて、その彼女は「馬肉サラミ入りジャガイモのグラーシュを作り、炉に薪をくべ、秋には天空に凧を掲げる以上のことは、本当に望まなかった」のにナチスによって、強制収容所に連れて行かれてしまったのです。

        この「僕」と彼女が凧揚げを楽しむシーンの美しさは、この小説の白眉だと言えると思う。

        物語の終盤、主人公は自分が使っているプレス機よりも巨大で効率のいい機械の出現におののき、仕事を奪われ、深刻なアイデンティティ・クライシスに見舞われます。

        そんな彼を救うのは-------。

        自由化運動「プラハの春」の夢が、ソ連の軍事介入によって潰え、非人間的な社会主義体制下におかれた時代背景を用いながら、単なる告発小説には堕さず、不条理なあまりほとんどSFとも思えるようなストーリーに、苦いユーモアと節度ある感傷を織り込んで、ボフミル・フラバルは、とても個性的な小説を完成させていると思います。

        >> 続きを読む

        2019/02/27 by dreamer

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