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久保勉 , Plato
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愛と正義は命より重い!私達は皆国と国法のもとに生かされている。私達は私達を生かしてくださる国と神に背いてはならない。もし国や国法に難があったのなら、それを説きふせる。それでも正義を貫くためなら、ソクラテスも一度国法を破ることもした。しかしそれ以降死刑を宣告された後も、やはり彼は正義で国法に従い、処刑された。国や国法に背くべからず、とは福沢諭吉も言っていたが、彼もプラトンの本を読んでいたのかな?それともいろんな哲学書や社会学書に国や国法について書かれた本を読んでいたか。神に対する愛と正義に従う精神は、のちのキリスト教にもみられる。これらの関係も今後調べていきたい。 >> 続きを読む
2015/06/07 by Nanna
プラトン
古代ギリシア哲学の代表者、プラトンの著作の中でも最も有名なものの一冊。上巻は、魂の三分説や哲人政治が主な概念として登場する。 哲学書の邦訳と言えば、難解な内容を想像されると思われるが、論理性を重視するギリシア哲学の特性か、理路整然と書かれた文章はとても読み易い。 ただ、約2500年以上前の著作ながら、未だに研究され続けていることからもわかるが、内容の真意を十分に理解するのは容易いことではなく、繰り返し読みたい一冊だ。 >> 続きを読む
2017/04/01 by shinshi
ギリシア哲学の大家プラトンの代表作であり、現在の法政治の先駆ともされる著作『国家』の後半である。 後半で記される主な概念は善のイデア(有名な太陽、幾何学、洞窟の比喩もここで登場する)、哲人政治。 個人的に注目したのは、哲学が実利的でないという民衆の批判に対する、プラトンの「自称」哲学者たちの適切でない立ち振る舞い(相手を論駁することを目的とした議論を吹っ掛ける等)が元凶であるという指摘である。奇しくも約2500年後に極東の島国で同じような、文系科目不必要論が国単位で話題に上がっていることを知ったら彼は何を思うだろうか。と言っても、本書に述べられているが、真の哲学者は自然的素養と、学問にのみ打ち込める最適な環境からしか生まれないというのが本当なら、なかなか哲学の真価が日本で問われるのはまだまだ先になりそうか…。 >> 続きを読む
2017/04/05 by shinshi
Aurelius Antoninus,Marcus , 神谷美恵子
訳者後書きの、神谷さんの書評が素晴らしくてならない。 この作品は、この神谷さんの後書きがなければ格段に魅力を落とすだろう。 「マルクス・アウレリーウスはエピクテートスのあまりにも忠実な弟子であって、そこには思想的になんの新しい発展も無い」 「ストア哲学の思想と言うものが現代の我々にとっていかなる魅力を持つかと考えてみると、そこには自ずから限度がある」 「その説くところの物理学も論理学ももはや我々にとって殆ど意味が無い」 「この教えは不幸や誘惑に対する抵抗力を養うには良い。我々の義務を果たさせる力とはなろう」 「しかしこれは我々の内に新しい生命を湧きあがらせるていのものではない」 「そういう力の泉となるには、全人格の重心のありかたを根底からくつがえし、おきかえるような契機を与えるものが必要である。それはストア哲学には無い」 「しかしこのストア思想も、一度マルクスの魂に乗り移ると、なんという魅力と生命を帯びることであろう」 「それは彼がこの思想を身を持って生きたからである」 「想像力をあれほど排斥するストアの学徒でありながら」「すばらしい比喩がひらめいて思想を一つの結晶に凝結させる」 「自省録の思想内容には独創性が無い。しかしその表現にはたしかにある」 朴訥な作品ながら、序章が周囲の人への感謝の言葉で書きつくされているのがとても美しい。 こういう人に治められたら幸せで平和だろうと思う。 >> 続きを読む
2017/08/18 by フッフール
中務哲郎 , Cicero,Marcus Tullius
カエサルと同時期を生きたローマの哲学者、キケローによる老いと死をテーマにして書かれた本です。やはりこういう誰もが通る道にかんしてはどの時代の人も考えることは一緒なのでしょうか。 この本はキケロー自身が老いや死について直接的に述べるという形はとらず、キケローよりもかなり上の世代であるカトー(大カトー)というローマの政治家が、同じくローマの武将である小スキピオとラエリウスという2人の若者に対してテーマについて説くという形を取っています。つまりこの本の内容に書いてあることをカトーが思っていたかどうかなど推測すらできないのですが、話に説得力を持たせる1つの技なのでしょう。 この本が言いたいことを大雑把に纏めてしまうと「自分の老いを嘆くのは間違いである」となります。自身が若いころから研鑽を怠らなければ、喩え華々しい過去が無かったとしても老年期を穏やかに過ごすことができ、死も恐れることはないと(カトーの言という形をとおして)キケローは述べています。また、次世代のために残してやるものを育てなければならないとも書いてあり、2000年以上の前の本ながら思わず頷いてしまう部分も多くあります。 個人的な見解ですが、タイトルに反してこれは年老いてからというよりも若いころに読んでおく本ではないかと感じます。ページ数も少なく、また非常に読み易い訳し方がされているため、敷居も低いと思います。この本の続編にあたる「友情について」も含め、ぜひ一読をお勧めします。 >> 続きを読む
2017/04/02 by aokaze
初めて哲学書を読むとどきどきしながら手をのばした。読んでみると一つ一つの話はなんてことない話でちょっと考えさせられる程度。しかし後半になるにつれて少しの話が積み重なってくるので整理しきれなくなり、何度も前半を読み返す。やっとこさ読み終えて少しは哲学に触れることができたのだろうかとぼんやりと考えさせられた。 >> 続きを読む
2014/02/12 by kotori
アリストテレス
大学の前期が終わり、この学期に読み終えた本を、残された記録と記憶をたよりに記録していく。アリストテレスの『形而上学』については、古典ギリシャ語で原典を読み進めた。古典ギリシャ語は未習だったので、なんとか文法書と辞書を傍らに読み進めた。内容は、2400年前に書かれたものとは思えない明晰な議論が展開されており、短い章一つ読むのにも(日本語の場合でさえも!)とても時間がかかった。しかしながら、私自身の関心にも合致するアリストテレスの作品は、現代において、それこそ形而上学を学ぼうとする者にとっては必読書と言えよう。ただ、当然のことだが、なかなか難しい日本語なので、いくつか哲学書を読んで、慣れてから読むべきである。 >> 続きを読む
2018/08/02 by shinshi
Seneca,Lucius Annaeus , 大西英文
この本は、岩波文庫でわりと最近出た新訳。旧訳の『人生の短さについて』は今を去ること二十年ぐらい前、中学生の時に読んだことがある。当時、とても大きな感銘を受けた記憶がある。細かなところはほとんど忘れていたので、今回新訳で読み直してみて、あらためてこんなに良い本だったんだと、とても深い感動を覚えた。二十年ぐらい、時が経つうちに、いつの間にか細部を忘れて、セネカはあまり深くはない思想家で、なんだかしかめつらしく時間にけちな気難しい老人、ぐらいにいつの間にやら勘違いしてしまっていた。全然そうではなく、この本は、本当に珠玉の、人生論の真髄とも言うべき、本当に深い、そして新鮮な生命が脈打っている本だと思う。セネカが言っているのは、べつに人付き合いを避けて、時間にけちになって、世の中から離れて生きろということではない。そうではなく、本当に自由な人間として、主体的に、自分自身を尊び、与えられたこの人生の時間を活かして生きよ、ということなのだと思う。むしろ、無意味に忙しいことをセネカは「怠惰な忙事」として批判している。現代人の忙しさというものの実に多くは、この「怠惰な忙事」なのかもしれないと、読んでいて考えさせられた。閑暇がもしあれば、その閑暇を享受していることを自覚し、哲学に日々に近づき、生を不注意や浪費に任せず、活用し、今この時をこそ真実に生きようとし、精神の進歩がないままに生を終えることがないように心がけて生きること。それこそ、この本で、セネガが渾身の力をこめて力説していることなのだと思う。セネカが重要視する閑暇というのは、べつにただ単にさぼったり怠けて生きるということではない。英知(哲学)のために時間を使うことこそ、本当の閑暇だということを、セネカは明晰に言っている。そのことに、今回読み直していて、あらためて気づいた。「すべての人間の中で唯一、英知(哲学)のために時間を使う人だけが閑暇の人であり、(真に)生きている人なのである。事実、そのような人が立派に見るのは、自分の生涯だけではない。彼はまた、あらゆる時代を自分の生涯に付け加えもする。」(48頁)その他にも、「生のごくわずかな部分にすぎぬ、われらが生きているのは」「自権者」(sui iuris)として生きる事。「なぜぐずぐずしている、なぜじっとしている、汝がつかまなければ逃げ去るのだ。」などなどのメッセージは、あらためてとても心に響いた。また、アリストテレスに日々に親炙することが説かれていることが、とても胸に響いた。振り返ると、この本の影響のためか、あんまり私は世間一般的な娯楽や流行には背を向けて生きてきたとは思う。その点は良かったとは思うが、しかし、あらためてこの本を読んでいると、いかに多くの時間を無駄に費やしてきたかについても、あらためて深く慚愧される。今からでも、あらためて襟を正して、残りの人生の時間をしっかりと活用するように、この本を折々に読み直しながら生きたいと思った。また、この本には、『心の平静について』と『幸福な生について』というセネカの二つの著書も入っている。この二篇もとても良かった。『心の平静について』で説かれるtranquillitas、つまり平静さ、あるいは静けさ、という心のありかたの理想は、とても共感させられた。例としてあげられているカヌスの事例は、本当にすごいと思う。男ならばこのようにありたいと思った。また、『幸福な生について』の中の、「生を嘆くよりは、生を笑い飛ばすほうが人間的なのである。」(121頁)という言葉は、とても共感させられた。また、引用されている、「誰かに起こりうることは、誰にでも起こりうる」というプブリウスのことばは、以前、旧訳の方でも読んでとても感銘を受けたし、大きな影響を受けたことばだったけれど、あらためてそのとおりと思った。また、人は、「「精神を恃み、禍福いずれにも心構えて」いなければならず、生の創造者でなくてはならない。」(149頁)「自然は自分という一個人をすべての人に恵与し、すべての人を自分という一個人に恵与してくれたのだ。」(174頁)「英知とは、自然に悖らないこと、自然の理に従い、自然を範として、自己を形成することなのである。」(139頁)などなどのメッセージも、本当にそのとおりと思う。「生の一日たりとりも黒日とせぬよう」つまり、どんな日も、自らの精神力によって、善い一日としていくことこそ、賢者のなすべきこと、というメッセージも、本当にそのとおりと思った。最近、セネカの著作集が出たようだけれど、きちんと気を入れて読んでみようかなぁ。セネカとキケロとマルクス・アウレリウスは、ローマの最良の精神として、人生の伴として繰り返し読むべき本だなあとあらためて思った。 >> 続きを読む
2012/12/21 by atsushi
Seneca,Lucius Annaeus , 兼利琢也
とても考えさせられる、良い本だった。 セネカが言うには、怒りは何の役にも立たず、大切なのは理性と勇気とのこと。 怒らずに、叱る。 怒らずに、報復する。 怒らずに、正す。 セネカは、そうしたことを説く。 怒りは自らにも他にも害をもたらすだけで、賢者は怒らずに、理性でもってなすべきことをなすだけ。 「処罰は過去でなく未来を見据えたものでなければならない。それは怒りではなく予防である。」(180頁) これらのメッセージには、とても感心させられた。 古代ローマ人の真骨頂だと思う。 その点、とかく日本人は、頭に血が上りやすい、未熟なものかもしれない。 これらのことは、未だに多くの日本人が全然できていないことで、欠けがちなことかもしれない。 また、同書の中には、ローマの名将ファビウスが、 「将軍にとって最も恥ずかしい弁解は「思っていなかった」だ」 と言ったというエピソードが紹介されている。(178頁) つまり、「「想定外だった」と言うことは責任ある地位の者にとって最大の恥」いうことだろう。 責任ある地位の人間は、あらゆる想定をしておかなくてはならぬということ。 セネカは、「あらゆる事態を思い、予期しておきたまえ」と述べる。 ローマの賢人というのはそのような努力をいつもしていたのかもしれない。 それと比べて、日本の政治家・官僚・東電のお偉方は、そもそも想定外を恥という感覚はあるんだろうか。 311後、「想定外」がいかに日本に深刻な危機と被害をもたらし、またその後の責任の曖昧さやそもそも恥の感覚が長年原発行政を進めてきた人々にあるのかが疑問な状況を、セネカを読みながら、あらためて考えさせられた。 また、この文庫本には、セネカの『摂理について』と『賢者の恒心について』も収録されている。 この二篇も、これぞローマ人、と思わせる、本当に毅然とした、克己心と忍耐に満ちた、素晴らしい内容の文章だった。 特に前者は、古今の数多の書物の中でも、最も高みにある本のひとつだと思う。 多くの人にお勧めしたい、不朽の名著であり、古代ローマの賢人の精神の高みがいかなるものだったか、何よりも教えてくれる素晴らしい一冊だと思う。 >> 続きを読む
2012/12/22 by atsushi
三嶋輝夫 , 田中享英 , Plato
「クリトン」を読みました。「ソクラテスの弁明」のその後、という感じですね。合わせて読むのがおすすめです。とても読みやすくて、面白いです。(kindleで藤川大雪さんの翻訳で読みました。なぜか検索できません。)クリトンはソクラテスに死刑の判決が出たことに納得できず、脱獄を勧めますがソクラテスはそれは義に反することとして受け入れません。そしてクリトンに、法を無視して脱獄をすることは、いかに悪法であってもできないということを対話によって納得させるのです。やはり、賢い人はちがいますね。考え方が冷静で、理性的。信念がしっかりしている。「なんだってそんなに大衆の思わくを気にする必要があるんだい。考慮に値するのは優れた人物の思わくだけだ」本当に優れた人とは?(私は、優しく思いやりがあり物事を平和的に解決できる能力を持つ人だと思います。) 「ぼくはよくよく考えてみて最良だってことが明らかになった言論にしか従わない、他の要素はいっさいかえりみない」「ぼくにはね、君を説得したうえで行動を起こすってことが重要なんだ。君が納得してくれなきゃだめなんだ」「大切にしなきゃいけないのはただ生きることではなくよく生きること」「義に反する行いはどうあってもけっしてしてはいけないんだ」「たとえ義に反する仕打ちを受けても義に反する仕打ちで返しちゃいけないんだ」「義に反する仕打ちを受けて去っていくわけだが、これはわれわれ国法による仕打ちではなく、あくまで人間たちによる仕打ちなのだ」悪法は、手続きによって変えていくべきで、勝手に破るのは義に反するということ、ですね。(国の法律は不完全な人間が作っているのだけど、正しい方法で変えるべきだということ)生き方の基本ですね。読む価値のある作品です。 >> 続きを読む
2014/01/03 by バカボン
広川洋一 , Aristoteles
たまたま、図書館の本棚を見ていたら、アリストテレスの『哲学のすすめ』なる本があった。そんな本アリストテレスにあったっけ?と思って、手にとってみると、イアンブリコスの書物の中に引用されていた箇所をもとに、近年の文献学の発達によりほぼ完全に復元された本とのことである。古代世界ではよく読まれた本だそうで、長く失われていた本が、このような形で読めるとは、本当にありがたい。読んでの感想は、ニコマコス倫理学に比べてとても読みやすくわかりやすいということだ。ニコマコスはかなりの大部なので、読むのが大変だが、これなら気軽に読める。それに、アリストテレス本人によるものだけあって、そのエッセンスがある気がする。アリストテレスが言うには、身体や生活手段は一種の道具であり、使用方法を間違えるとかえって良くないという。そこで、単なる奉仕するための知識ではなく、命令するための知識が必要になる。その命令する知識が、哲学である。理知による観照こそが、人間に最も純粋な幸せをもたらす。それのみならず、この観照的理知による哲学こそが、何が正しいか、何が立派か、何が有益かを教えることにより、生き方や政治にも有益な知恵をもたらすという。正しく思考する人こそが、よりいっそう生きているということになり、最も深く真理に到達する人こそが、最も生きていることになると、アリストテレスは述べる。人間には、目覚めている人と眠っている人おり、魂を活動させている人と、ただ魂を持っているだけの人がいるが、人は哲学を通じて前者となると述べる。私たちが政治に正しくたずさわり、私たち自身の生を有益に過ごそうとするなら、われわれは哲学をすべきである。そうはっきりアリストテレスは述べる。これらの主張は、とかく哲学というと、生活から程遠く、人生とは無関係と思われがちな現代日本には、かなり面白い意見のように思う。さわやかな風が吹いてくるような文章だった。特に、印象的だったのは、以下の文章。「したがって、哲学が、われわれの考えるように、知恵の所持でありまたその使用であり、さらに知恵は善いもののうちの最大の類とするなら、われわれは哲学から逃げ出すべきではない。また、われわれは、財産のためにはヘラクレスの柱にまでも航海し、数々の危険を冒しながら、他方で、理知のためにはいかなる労苦も出費も払わないということであってはならない。またよく生きようとはしないで、ただ生きることをひたすら願い、また自分自身の意見にもとづいて多数者を評価することをしないで、ひたすら多数者の意見に追随し、また財物は追い求めるが、美しいもの、善いものにはまったく心を向けることがないというのは、奴隷のすることにほかならない。」(28頁)本当に、ただ多数の意見に従うのではなく、自分自身の頭で考えて、自分自身で判断して生きること。そのことの素晴らしさとよろこびを、あの古代において、アリストテレスは高らかに説いてくれて、この本のおかげでその声を現代日本人も聞くことができるのは、本当によろこばしいありがたいことだと思う。この本を読んだ上で、ニコマコス倫理学を読めば、より一層楽しく深く味わえるのかもしれない。 >> 続きを読む
2013/03/04 by atsushi
納富信留 , Plato
読みやすい良い訳だった。ひさしぶりにふと『ソクラテスの弁明』を読みたくなり、一気に読んだ。「吟味なしに生きることは人間として意味がない」こと。真実に生き、死をも恐れぬこと。あらためて、本当にインパクトのある名著と思う。知らないことを知らないと気付いて生きていきたいものである。 >> 続きを読む
2017/03/31 by atsushi
Plato , 中澤務
プラトンの代表的著作の一つ。内容は『国家』で語られたイデア論と本質を同じくし、愛(エロス)とは何かという問いを発端とし、最終的には愛とは美のイデアを追及することと結論付けられる。 この作品は同時代の知識人たちの思想が、議論として反映されており、特にアリストファレスの挿話が有名であろう。アンドロギュノスの話である。概要は、人間は元々、二人の人間(男女は問わない)がくっついている姿だったが、神により引き離された。よって、我々は片割れ(my better half)を探し求め、それを愛するというのだ。この話は後世の多くの作品のモチーフになっており、昨年に大流行した、新海誠氏の『君の名は。』も、もしかしたら影響を受けているかもしれない。 「愛」とは何か?という普遍的な問いに対して、約2500年前に既にここまで多くの考え方があったという事実に驚嘆するしかない。プラトンのイデア論を学ぶには、内容としてもそこまで難解ではなく長くもないので、哲学書学者にはおすすめの一冊である。また、光文社古典新訳文庫の訳は相変わらずわかりやすいものだった。 >> 続きを読む
2017/11/26 by shinshi
Aristoteles , 牛田徳子
万人にオススメしたい、永遠の古典。 政治学の淵源にして、おそらく今後も容易に乗り越え不能な高みに屹立する名著だと思う。一般的な教科書だと、六政体分類や共通善ということがアリストテレスの政治学について言われる。 もちろん、それらのことも書かれてはいるけれど、実際はもっと奥が深く複雑なことがこの本では書かれている。政体の分類も、本当は六政体ではなく、もっと多岐に渡る。 また、共通善や、善く生きるためにはポリスが必要、といった倫理的な理想が説かれる部分もたしかにある一方で、たとえば五巻の後半では、僭主制を維持するためのさまざまなノウハウが説かれ、まるでマキャヴェリをはるかに先取りするような政治的リアリズムと術策が説かれる。 国制は創設するよりも維持する方が難しく大切であるという観点から、いかにして国制を維持するかについても力説してある。とかくそうした地道な政治よりも、パフォーマンスや破壊に傾いて、とっかえひっかえ短命政権ばかり繰り返している日本人は、今こそアリストテレスによくよく耳を傾けるべきかもしれないと読みながら思えた。 現代においても、政治学においては、とかくデータの収集か、あるいは理念的な観点から現実を批判するかは、両極端になりやすい。地道にさまざまな現実や事例を集めて分類し、それを踏まえた上で、なおかつしっかりと理念や哲学を持って現実を批判的に吟味するというのは至難の業である。その点、アリストテレスは、理念とデータの収集の両方を緻密に組み立てており、まさに手本とすべき、本当にすごい思索力と思考力だと思う。 有象無象の本を読むより、このような真実の古典をこそ、人は丹念に読むべきかもしれないし、そうしてこそ、本当に思索力も鍛えられるのだと思う。 >> 続きを読む
斎藤 忍随
三嶋輝夫 , Plato
Seneca,Lucius Annaeus , 茂手木元蔵
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