こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


カテゴリー"イタリア"の書籍一覧

      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.7
      いいね!
      • 〇塩と魚しかなく、土台固めの木材さえ輸入しなければならなかったヴェネツィア人には、自給自足の概念は、はじめからなかったにちがいない。しかし、この自給自足の概念の欠如こそ、ヴェネツィアが海洋国家として大を為すことになる最大の要因であった。(P66)

        〇私は、マキャヴェリの言葉に示唆されて、ヴェネツィアという国家を、一個の人格として取りあつかうつもりでいる。(P78)

        〇しばしば歴史には、イデオロギーを振りかざす人がいったん苦境に立つや、簡単にその高尚なイデオロギーを捨てて転向してしまう例が多いのを思えば、ヴェネツィア人の執拗さは興味あるケースである。自分にとって得だと思うほうが、こうあるべきとして考えだされた主義よりは、強靭であるかもしれない。西と東の強国のいずれにも決定的に附かず、独立と自由を守り抜いたことによって、ヴェネツィア人は、やはりずいぶんと得をしたのである。(P126)

        〇現実主義者が憎まれるのは、彼らが口に出して言わなくても、彼ら自身そのように行動することによって、理想主義が、実際は実にこっけいな存在であり、この人々の理想を実現するには、最も不適当であるという事実を白日のもとにさらしてしまうからなのです。(P144)



        >> 続きを読む

        2017/03/01 by シュラフ

    • 他2人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.5
      いいね!
      • 資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。だからこそ彼らは現実的であり、合理的なものの考え方をする。例えば、聖遺物信仰についても生きた聖者に信仰を捧げて牛耳られないようにするものだ、と塩野七生は指摘する。なるほどと思う。塩野七生のこういうものの見方というのは大変に勉強になる。西欧とイスラムの対立の中、統治能力の優れた政府を持つ必要があったヴェネツィアが選んだ政体は共和制。共和国国会のメンバーを世襲制にして政治のプロ階級をつくることで個人の野心と大衆の専横を抑え込んだ、という。

        【このひと言】
        〇芸術家は、史実に忠実でなければいけないと言っているのではない。出来栄えさえ見事であれば、それで十分なのである。

        〇マルコ・ポーロの幸運は、大旅行を終えて後に、この時期しばしば起っていたヴェネツィアとジェノヴァの戦いに巻き込まれ、ジェノヴァの捕虜になり、牢の中で暇をもてあましていた時に、彼の話を聞き、それを書きとめておく気になった男に恵まれたことである。

        〇簿記の記入に不可欠なアラビア数字がヨーロッパにもたらされたのは、1200年代はじめのピサ人の功績による。はじめのうちは、憎っくき異教徒の産物ということで、教会関係者をはじめとする人々から、少なからぬ抵抗を受けたらしい。しかし、ローマ数字と比べれば、便利なことでは比較にならない。書きちがい読みちがいも少なくなるうえに、0という観念もある。それで、現実的な商人の間では、教会の妨害にもかかわらず拡まっていった。

        〇信者には信仰の対象が必要だ。それを信仰することによって、彼らは、心の平安を得るだけでなく、天国の席の予約もしたつもりになれるのである。この場合の信仰の対象が、聖者の骨ということになっている骨の一片や、キリストが架けられたという十字架の切れはしであったりすれば、これらはいかに信仰を捧げられても、その人々を扇動しようとはしないから実害はない。聖遺物購入に費用がかかっても、これならば安い代価である。一方、合理的と自認していたフィレンツェ人には、聖遺物信仰はなかったが、それだけに生きた聖者に信仰を捧げ、彼らによって牛耳られることがたびたび起った。

        〇資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである。都市国家や海洋国家の生命が短いのは、この理由による。
        >> 続きを読む

        2017/03/04 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.5
      いいね!
      • 地中海の覇権をめぐり、ヴェネツィアとジェノヴァとの戦いが苛烈を極める。航海技術などはジェノヴァのほうが上回っていたようであるが、ジェノヴァの欠点は個人主義的で天才型であるがゆえに、まとまりがなく内紛がたえない。結局、ジェノヴァは政局混乱のうえに消滅していく。ジェノヴァの自滅と、ヴェネツィアの勝利。勝利を決した要因は双方の国家の社会組織能力ということ。ジェノヴァの個人主義放任の害が国家に不利益をもたらしたと、塩野七生は指摘する。個人の利益と国家の利益をどちらを優先すべきか、それは間違いなく国家である。

        【このひと言】
        〇国力が昇り坂にある時は、個人主義放任も害を及ぼさない。それどころか、良い結果を生むことが多い。

        〇エリートは、修道僧の僧が神のために無償の奉仕をするように、与えられた名誉のためだけに奉仕すべきである、と言う人がいるが、このように言う人々は、まったく人間の本性に対して盲目であると言うしかない。修道僧には、神がいるのである。死後に天国での第一等の席も、保証されている。まあ、保証されていると信じることが彼らにはできるのだ。一方、キリスト教徒であっても、神に奉仕を誓ったわけでもない俗界のエリートたちには、無償の奉仕をするほどの理由はない。やはり、能力には、それにふさわしい報酬が与えられてこそ、彼らも、その才能をより以上に発揮する気持になるというものである。

        〇現実主義は、人間の理性に訴えるしかないものであるところから、理性によって判断をくだせる人は少数でしかないために、大衆を動員するためにはあまり適した主義とは言えない。

        〇戦争は悲惨なものである。しかし、その戦争にも、一つだけ積極的な意味がある。各人の欲望を単純化するという効能である。

        <解説>
        〇保守であれ、リベラルであれ、極端なイデオロギーのもとに「理想の追求」を急ぐときに大きな災いがもたらされることは、歴史の証明するところである。バーリンは、キリスト教を絶対視することなく、人間性の現実を冷徹に直視することを唱えたマキアヴェリを高く評価しているが、それはまさにこうした理由によるものであって、決して権謀術数的な政治手法の擁護にあるのではない。塩野さんがマキアヴェリを敬愛する理由も根源的には近いのではないかと私は推測している。

        >> 続きを読む

        2017/03/05 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.5
      いいね!
      • ただミラノの官吏によるエルサレムへの聖地巡礼のお話なのであるが、第九話「聖地巡礼パック旅行」に考えさせられてしまった。時代的には地中海では海賊が跋扈して、また西欧がトルコと対峙していた、という緊張の時代だったと思うのだが、なぜかのんきである。トルコの軍船の接近に恐怖し、船員の事故死を哀しみ、熱気に苦しむという苦難の旅ではあるのだが、それでも彼らはエルサレムに感動して、そして免罪を得たことを喜ぶ。あー、いったい人間とはなんなのだろうと思ってしまう。危険をおかしてまでわざわざ苦労などする必要はあるのだろうか。

        【このひと言】
        〇外交の重視は、その国が軍事力だけでは対抗できなくなったという証拠でもある。
        〇現実の同盟というものは、不幸にして、互いの立場を理解し、それを尊重し合う精神があるから結ばれるものではない。第三者に対する恐怖から結ばれるものである。そうでなければ、今のところ敵にまわす必要がないから、ひとまず結んでおく、という程度のものでしかない。
        〇権力者は、権力者同士の話し合いを好むものである。
        >> 続きを読む

        2017/03/11 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.5
      いいね!
      • 16世紀以降、ヴェネツィアは手工業部門にも積極進出。海洋貿易中心であったが、大航海時代による香味料貿易の危機に伴う方針転換。西欧諸国の戦乱を逃れてきた職人たちを受け入れた結果、ヨーロッパ毛織物工業の中心のひとつになるほど発展。さらに絹織物工業、石けん、ガラス工業、眼鏡、出版業など次々と展開。この海洋貿易から国内産業への転換について塩野先生は、ヴェネツィア人は資本の効率性を重視する民であるがゆえ、と説明する。時代環境が変わったことで産業構造が変化したということだろう。どうも塩野先生はホレた男に甘い気がする。

        【このひと言】
        〇歴史は複雑であることに醍醐味があるとは言っても、醍醐味が味わえる程度には整理される必要はあると思う。
        〇外交というものは、思っていても胸の中におさめて、口には出してはならない時もあるということを教えている。
        〇戦争でも平和でも、思いどおりに決められるのは、政治的能力によるものではない。軍事力である。量である。
        >> 続きを読む

        2017/03/12 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年

      塩野七生

      4.5
      いいね!
      • 1797年、ヴェネツィア共和国は滅亡する。直接的な原因はナポレオンのヴェネツィアへの進軍ということなのだろうが、経済・政治・軍事的に三流国に転落してしまっていたヴェネツィアにとって滅亡はさけられなかったように思える。ではなぜヴェネツィアはそこまで衰退したのか。塩野先生の見解は、ヴェネツィア人の精神構造の変化をもたらした投資対象の変移が原因だという。かつて海洋貿易国家時代には人材の上下への流動性があったものが、農工業時代になると動脈硬化のように社会が膠着化してバイタリティーが失われた。日本の教訓とすべき話。

        【このひと言】
        〇マキアヴェリの著作が、ルネサンス時代を代表するだけでなく、時代を越えて通用する政治哲学の古典となり得たのは、理想を述べたからではなく、現実を喝破したからである。
        〇投資の対象の変移は、それをする側に、その投資が定着するにつれて、精神構造の変移をもたらさずにはおかないものである。ヴェネツィア人は変わったかもしれない。だが、それは彼らが奢った結果ではない。投資の対象の変移につれて、彼らの精神も変わっただけなのである。一民族の衰退の原因を、その民族の精神的堕落の結果とするよりは、よほどこのほうが恐ろしい。
        〇独占の弊害は、それが経済的な必要以上になされることによって、社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局は、その社会自体の持つヴァイタリティの減少につながるからである。
        >> 続きを読む

        2017/03/12 by シュラフ

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      ルネサンスとは何であったのか

      塩野七生

      4.0
      いいね!
      • ルネサンスと呼ばれる中世ヨーロッパに起こった社会現象についての考察の本。

        ルネサンスとは何であったのかについて冒頭にまず会話形式にて纏められます。
        「見たい、知りたい、分かりたいという欲望の爆発こそが、高背の人々によってルネサンスと名付けられることになる精神行動の本質でした。」
        そして、創造することが理解の本道と。

        この本はルネサンスという現象とその時の人々の思いを記した本です。

        中世という時代は信じる事を強制する時代でした。信じる者は救われる。プロセスに従っていれば天国に行けるのです。運悪く天国に行けなかった場合は記録抹消されるだけです。そして大抵は細かい指摘の連続で天国へはいけませんと告げられる。あとは実在しない地獄という概念で脅すというわけです。死人に口なしですので非実在も証明できませんしね。ちなみに地獄という概念を最初に生み出したのはインドのようです。

        それに対しルネサンスというのはなぜそうなんだと問いかけ続け続けるという事です(whying)。要するに中世ヨーロッパの青春時代でした。

        コンスタンティヌスの寄進状、すなわちヨーロッパは教会のものという概念から崩されていきます。そして権力の実行力である聖務禁止令と破門の発令に対する冷めた視線。聖務禁止令がおこなわれると冠婚葬祭の一切がおこなわれなくなりますし、破門されると村八分です。

        ですが、こういったことをくっだらない権力闘争や政治劇、その時の気分(要は権力者の全能思想)で決められては庶民としては堪ったものではないでしょう。全く安定しない。だからルネサンスが発生したのです。

        本書は当時の時代を生きた人物の置かれた事情や組織の都合や考え方を追いながら、ルネサンスというレジスタンスを対話形式で語っています。

        ただ、この後には統一性を復旧させようとする旧体制派とルネサンス対応した新体制派の衝突による異端審問という恐怖による悲しい時代がやってきます。

        ですが、この時代に作られた芸術作品の巧緻なる事、華やかなる事の事実です。問いかけは社会全体として価値の無いものではないのでしょう。むしろ価値を生み出す根源となりえるのでしょう。

        ルネサンスという精神運動に興味を持った人にお勧めです。
        >> 続きを読む

        2013/11/23 by Shimada

      • コメント 6件
    • 3人が本棚登録しています
      塩野七生ルネサンス著作集

      塩野七生

      3.0
      いいね!
      • 塩野さんのというと”ローマ人の物語”シリーズが有名だが、それを書き始めるそものものきっかけは、ルネサンスに対する興味からだったそうだ。
        そのルネサンスに彼女はなぜ興味を持ったかの回答がこの本である。

        本の構成は、西洋では良く用いられる対話形式であるとのことだが、これがちょっと私の体質には、合わなかった様だ。
        多分、私が非常に日本人的だからであろうか?

        ただ内容については、非常に興味深く面白い本だと感じた。
        最初のルネサンス人として、聖フランチェスコを持ってくるあたり、塩野七生の感性の鋭さが感じられた。
        >> 続きを読む

        2018/01/04 by くにやん

    • 1人が本棚登録しています
      イタリアの中世都市

      亀長洋子

      4.0
      いいね!
      •  都市によって異なり、全体的な把握が難しい中世イタリアですが、それぞれの都市の大まかなイメージや、統治機構の発展の流れなどをまずはつかむことが大切かと思います。この本はそれを可能にしてくれます。中世イタリアや中世ヨーロッパの都市世界に興味がある人は手に取ってみるべきです。
         
        >> 続きを読む

        2017/05/08 by 理子*

    • 1人が本棚登録しています

カテゴリー"イタリア"の書籍一覧 | 読書ログ

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

できる子は休日に作られる