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清水潔
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この事件を通して、当時、写真週刊誌FOCUSの記者であった著者が追ったものは、ストーカー殺人の犯人そのものと、被害者の求めに応じず、事件後も適切な対応を行わなかった警察組織の暗部、このふたつです。ストーカー事件における主犯者の異常性と卑劣さ、そしてもう一方では著者によって「人間がいない」表される、とある警察組織の事なかれ主義や出世主義による改ざん、隠蔽、無神経さ。二つの問題それぞれを通して、本書には見るべきところが多々あります。また被害者の遺族に対しては不謹慎にあたるかもしれませんが、ミステリー要素も含む読み物としても非常によくできいます。 >> 続きを読む
2020/07/27 by ikawaArise
目を引く表紙につられて購入。足利事件、確かに聞いたことがあったが、1人の記者の働きで冤罪判決まで向かっていったことは驚きだった。こういうものを見ると警察が信用できなくなるし、いざ自分がそうなったらと思うと非常に怖い。痴漢の容疑者になったら逃げろ、というのもわかる気がする。冤罪という可能性がある限り、「容疑者に死刑執行を!」と気軽には言えないと思った。後半、少し蛇足っぽくなってしまっていたのが残念 >> 続きを読む
2017/05/02 by highsee
平山夢明
『悪魔のいけにえ』『羊たちの沈黙』『IT』といった有名ホラー映画のモデル、素材ともなった、特異な犯行で知られる七人の殺人者たちを、記録をもとに調べあげたノンフィクション集で、それぞれ40ページ前後があてられている。彼らの犯行や成長過程における出来事や警察による捜査などを、グロテスクな小説作品を得意とする作者が、周囲の人物や犠牲者のセリフもまじえつつ小説風に仕上げ、読み手に臨場感を与える点が大きな特色。そのほか、各章ごとに類似の犯罪者や、犯罪心理の分析などを紹介しながら、犯行の特徴を解説する。本書のテーマとホラー作家による著述であることから、当然おびただしい数の残酷なシーンが次々に登場し、グロテスクさとその量の多さは著者の小説作品に優るとも劣らず、読み手によっては読み続けること自体が苦痛になるおそれがある。そして、このような類をみない犯罪を犯した加害者たちの共通点としては、やはりというべきか、生育過程において彼ら自身が被害者であったことが指摘されている。とくに『羊たちの沈黙』のレクター博士のモデルとなったルーカスについては、その凄絶な半生に言葉を失う。また、いずれの章でも、犯行の特徴として多寡の違いはあっても、人肉食について触れられることも共通する。記録を重視したノンフィクションを期待される向きには合わない恐れがある。以降は各章(殺人者たち)の概要。----------【1.人体標本を作る男/エドワード・ゲイン】米。1957年に逮捕。自宅には"人体部品の山"が見つかる。多くは墓地から掘り起こしたもの。認められた殺人は二件で、本書内では最少。遺体の皮膚加工などが、映画『悪魔のいけにえ』等のモデルとされる。【2.殺人狂のサンタクロース/アルバート・フィッシュ】米。1934年に64歳で逮捕。幼い子供を次々に誘拐し殺害する。自供では400人とされる。親しみやすそうな老人にしか見えないため怪しまれなかった。【3.厳戒棟の特別捜査官/ヘンリー・リー・ルーカス】米。1983年に逮捕。『羊たちの沈黙』レクター博士のモデル。全米30州で米国史上最多の360の殺人を犯したとされる。本書では母による壮絶な虐待の様子や、犯罪組織との関わりが描かれている。【4.ベトナム戦争は終わらない/アーサー・シャウクロス】米。1989年逮捕。「ベトナムにいた一年が、俺にとっては最高に幸せな時期だった」。帰国後しばらくすると各種の犯罪に手を染め、逮捕・釈放の後に11人の連続殺人を犯す。【5.赤い切り裂き魔/アンドレイ・チカチロ】ソ連。1990年逮捕。少女を中心に53人の女性と少年を殺害。ソ連体制を原因とする捜査の不備もあって、捜査開始から逮捕までに7年以上を要する。その間、複数の冤罪逮捕者とそれを原因とする自殺者を出す。【6.少年を愛した殺人ピエロ/ジョン・ウェイン・ゲーシー】米。1978年逮捕。ボランティアとして道化に扮する機会が多く、映画『IT』のモデルとされる。床下から多数の遺体が発見され、近隣にたびたび聞こえていた悲鳴は拷問に苦しむ少年たちの叫びだった。多重人格を主張。【7.人肉を主食とした美青年/ジェフリー・ダーマー】米。1991年逮捕。警察に助けを求めた男をきっかけに逮捕。強烈な異臭を放つ彼のアパートからは最終的に17体の遺体が押収された。部屋の食品はスナック菓子程度で、ダーマ―は人肉を主要な食料としていた。 >> 続きを読む
2020/10/15 by ikawaArise
奥野修司
大切な家族を、ある日突然誰かに殺されてしまったら。こういう想像を、軽くでなく真剣に我が事として考えてみるひとはいないだろうと思う。ひとは、殺人事件になど巻き込まれないと根拠もなく思い込んでいる。わたしを含めて。本書は、高校生になった少年が同級生に無残に殺された事件の被害者を丁寧に取材して書かれた一冊だ。こういった事件が起きると、わたしたちの関心は加害者の心情や背景にばかり行きがちだ。そういったものを知ることにより、自分や自分の関係者が加害者にならない術を見つけたい。わたしはそう思うことと、単純な好奇心から事件を扱うルポルタージュをよく読む。でも結局いつも、加害者の心情を知っても理解が出来たことなどまず無い。例えば誰かに絡まれて、振りほどいた手が強すぎたためか相手が転倒して頭を打って死んだ。こういった偶発的な殺人事件なら、どっちが被害者だかわからないということなどから加害者の気持ちも理解しやすい。しかし、はなから殺すつもり、それも恨みとかいったものでなく単に殺したいからという理由で殺人を犯せる人間の気持ちなど理解出来るわけがない。理解出来たときは、きっと自分も同じことをしているだろうから。本書で扱うのは加害者側でなく、被害者遺族だ。ここに本書を読んでおいたほうがいいと言える価値がある。殺された少年はとてもいい子で、といった被害者賛美で終わるのでなく、遺された家族の終わることのない苦しみが描かれていることが大切だ。事件を報道によって知った人間が、事件のことを忘れてしまっても被害者の苦しみは形を変えながらつづく。本書で扱うように、加害者が少年なら尚更悲惨なことだろう。僅か数年で加害者は何も無かった顔で社会に戻ってしまう。更生したということにされて。更生は、目に見えるものではないし、数値で表されるものでもない、試験もないのに何を基準に判断するのだろう。被害者遺族に、更生を認めますと決める権利もない。制度ありきの日本のやり方は、被害者遺族に皺がより過ぎている。本書は、司法にも一石を投じた一冊だ。ルポルタージュなら中立であることが前提だとは思うが、亡くなったひとは言い訳も出来ないのだから、どちらかに比重を置くなら被害者側だろうと思う。加害者の更生や社会復帰といった過剰な人権保護ばかりで、被害者遺族は置き去りという我が国の状況を僅かながらでも改善させるきっかけを作った。ひとを殺した人間には手厚く保護をするのに、殺された側の人間は勝手に乗り越えろということには憤りしかない。わたしは最近になって本書の存在を知ったのだが、ひとりでも多くのひとに読んでもらい、被害者遺族の気持ちを忖度することから始めてもらえたらと思う。 >> 続きを読む
2015/09/06 by jhm
末井昭
友人が数年前の2月に自殺しました。鬱でした。今でも友人のことを考えると「なぜ?」ということしか頭に浮かびません。鬱なんだからと思ってもやはり「なぜ?」と涙が出ます。母親がダイナマイト自殺した作者の末井さんが書いた「自殺」とてもやさしい文章で書かれています。色々な経験をしてきて、悲しさも苦しさも知った人が、自殺しようとする人を止まらせるために書いているやさしい文章だということが伝わります。「誰かのためになる、誰かのことを真剣に思うことで、人は孤独ということから逃れられ、気持ちが豊かになるのかもしれません」「人は自分のことしか考えないということが絶望だとしたら、人のことを真剣に考えることは希望です。だから世界は希望に溢れていると、僕は驚きながら思ったのです。」印象に残っている文章です。「なぜ?」の答えを見つけたくて選んだ「自殺」でした。しかし友人は失ったけれど、「なぜ?」と友人のことを真剣に考えている私は孤独ではない。そんなことを気づかせてくれた本でした。 >> 続きを読む
2017/02/16 by 寺嶋文
李小牧 , 根本直樹
一般人でも気軽に足を踏み入れる事のできる場所、歌舞伎町。でも裏にはこんな世界が広がっている。キャッチではなく、案内人。そこに彼のプライドが見える。一生知る事のできない裏社会を垣間見る事ができて非常にスリリングでおもしろい! >> 続きを読む
2012/07/20 by アスラン
月乃光司 , 西原理恵子
西原理恵子月乃光司のおサケについてのまじめな話 アルコール依存症という病気。西原理恵子先生の著書。アルコール依存症についての理解が深まる良書です。アルコール依存症のご家族をお持ちであった西原理恵子先生の実体験に基づくお話なので、とても参考になる内容ばかり。 >> 続きを読む
2019/01/13 by 香菜子
豊田正義
あまりに胸の悪くなる事件の内容に、読み続けることが苦痛なほどでした。そこからくる怖ろしさと憤りは、身体的な虐待ももちろんですが、それ以上にここで描かれる主犯の人物の、解説ではサイコパスとされる、あまりにもエゴイスティックな精神性のおぞましさによるものです。本書でもたびたび触れられるとおり、主犯は容姿に恵まれた爽やかな好青年でああることはネット上でも確認することができ、そのような人物が多くのケースで直接は自分の手を汚さず、「学習性無力感」状態に陥れた罪のない人々を「操り人形」として意のままに操り、凄惨な殺人を含む数々の凶行に及んでいます。そのような犯人の特徴を知るとともに、それが、本書とは直接は関連のない二つの著書で著されていた、以下のような「悪魔」の特徴と合致することに思い至りました。----------『悪の正体』佐藤優「何も命令せず、要請せずに、人を自在に動かす。権力における自らの優位性は手放さない。そんな人物には気を付けた方がいい。これこそ典型的な悪の技法にほかならない」『アンの愛情』のジェムシーナ叔母さん「わたしは悪魔がそんなにひどく醜いはずはないと思いますよ。もしもそんなに醜いなら、たいした害をしないわけですよ。わたしはどちらかといえば悪魔を美しい紳士としていつも考えていますよ」----------本書で扱われたのは、そう遠くない過去に、市井に暮らす普通の人びとを地獄に落とした、現実に起きた事件です。つまりこのような身近に存在するかもしれない「悪魔」による凶行が、誰の身にも起こりうるという事実に戦慄せざるをえません。 >> 続きを読む
長谷川博一
テレビのニュースや新聞で目にする凶悪犯罪者は残酷で気狂いで到底理解できない人だと思っていた。ところがこの本を読み、子どもの頃に父親の暴力や母親から愛情を注がれないなど家庭環境が悪かったり、身体障害が故に心無い言葉やいじめを受けたりと心に傷を負う「被害者」である彼らをみた。母親に「生まれてこなければよかった」と言われた思いは考えただけで涙が出そう。だからといって殺人は許されない。どうすれば彼らを、彼らのような人を「加害者」になる前に救えるんやろう。 >> 続きを読む
2016/11/26 by shiho
溝口敦
暴力団の基礎情報と、刊行時点での彼らの置かれた状況を伝えている。コンビニフランチャイズ的な組織構成、シノギ(稼ぎ)の分類、内部の人間関係、海外マフィアとの比較、警察の取り組みへの評価、半グレとの違い、一般人が対応する場合の心構えなど。まえがきに「美化せず、意地悪にも書いていない」とある通り、大半は中立的な見方で暴力団の一般的な実態や歴史が述べられる。しかし、終盤には、「暴力団は必要悪」という一般にもそれなりに流通している見解を誤りと断言し、暴力団に対する甘い見方を否定する著者のスタンスを明示。「政治家、商売人、警察官に良い悪いはあっても、暴力団だけは悪い暴力団しかいない」という、筆者が元暴力団幹部から聞取った言葉が代弁する。暴力団の置かれている立場としては、全体に苦境でジリ貧とする報告で一貫しており、今後は消えゆく存在を観察している心境を窺わせる。実際に、2011年刊行前の時点で7万人台までに減ったとされている勢力数は、このレビュー投稿時点で2万8200人と激減、15年連続の減少とある(Wikipedia、警察庁発表の2019年末時点)。本書を読む限りは暴力団の良し悪し以前に、経済的に厳しく、「使用者責任」により暴力での威嚇も困難で、新しい時代の商売に適応できず、入ると人権がないうえに抜けにくく、引退すれば食い物にされるなど、(下級構成員は特に)ヤクザであることのマイナス面ばかりが目立つ。 >> 続きを読む
2021/01/15 by ikawaArise
少年Aの父母
淡々と綴られる少年Aの父親の日記。当時、少年Aによるこの事件は衝撃的であった。現在では、犯罪の低年齢化が問題視されているが、この事件では、少年による猟奇殺人という点で衝撃的であった。日記によれば、少年Aが持つ火種はあった。しかし、残念ながら、異常性、猟奇性を探り当てるところまでは行けなかった。何十億人もの人間がいる現在において、大人であっても自分を制御できず、社会的規範から外れた行動をする人間はたくさんいるのに、自分を制御できない少年が大人と同じ異常性、猟奇性を持つというのは非常に怖い事だと思う。 >> 続きを読む
2016/11/20 by zunbe
佐木隆三
音羽事件の事が良くわかります。あまり作者の私情や考えなどが挟まれていないのが良かったです。裁判の内容が多く、結局のところ何故そうなったのかは分かりませんが、裁判は被告人の心情ばかりが話されているので、被告人に同情してしまいそうです。被害者の両親の気持ちを考えると、怒りを覚えます。被告人の気持ちの推移が、事件の日に近づくにつれて、恐ろしいものになっていきます。こんな考え方をする人が身近にいたらと背筋が凍る思いです。実際に理解するのは難しいでしょう。夫も理解出来なかったのですから。結果が全てで、幼い2才の子供を殺害した被告人が全て悪いのではないかと、理由はどうあれ、なくなった女の子が本当にかわいそうです。本当にあってはならない事だと思います。 >> 続きを読む
2015/09/05 by まめたん
九龍城探検隊 , 寺澤一美 , 可児弘明
【増殖に増殖を続けてカオス化した魔窟】 香港にあった九龍城はご存知でしょうか。 まさに魔窟と呼ぶのがふさわしい驚異的な建物です。 1993年に解体されてしまいましたが、本書は、この九龍城って一体どういう建物だったのかを図解した一冊です。 私は、これまでに何冊か九龍城の本を読んできました。 いや、とにかく恐ろしいほどにカオスな建物なのです。 その怪し気な魅力にはやられっぱなしでした。 九龍城は、1840~1842のアヘン戦争後に作られた城なのですが、太平洋戦争の時、日本軍によりその城壁は破壊されました。 その後、その跡地にバラックが建ち始め、無法地帯化すると共に鉄筋コンクリートのビルが建てられ、増殖に増殖を重ね、迷宮化、魔窟化していった建物なのです。 どんどん作られる鉄筋コンクリートビルの隙間にさえペンシルビルが建っていき、無計画な増殖を重ねたため、最早何がどうなっているのかまったく分からない状態になってしまいました。 本書は、そんな九龍城の中がどうなっているのか、外見はどう見えるのかを図解しているのです。 昔の少年漫画雑誌の後ろの方についていたような図解ものに仕立てています。 建物を真っ二つにしたイラストを添え、この建物の中にどんな人たちが何を生業として住んでいるのかが描かれています。 もう、全くの無秩序です。 一般の住宅もあれば、工場もある。 無許可の病院が入っているかと思えばストリップ小屋がある。 阿片窟のような麻薬部屋もあれば食堂もある。 一番高い建物は14階建てのようなのですが、エレベーターなどありません。 ゴミは上階から降って来ます(下までゴミを運んで出すなどということをする者はおらず、窓から投げ捨てるようです)。 そのため、低い建物の屋根にはゴミが堆積しています。 無計画に増殖しているため、高さが揃っていないのです。 ある所では1階なのに、その隣の建物が1階とは限らない。 張り出したバルコニーには、まるで鳥かごのような金網が張られ、その通路にはゴミや瓦礫が散らばっています。 採光も何もあったもんじゃありません。 いや、アヤシイ。 怪し過ぎます。 廃墟などではなく、現に人が生活していた建物だったのだから驚くほかありません。 非常に濃ゆい生活圏になっているのですよね。 めまいがしてきそうな九龍城を俯瞰できる一冊であります(イラスト図解は迫力がありますが、写真で詳細に見たいという方は他の類書の方が良いかもしれません)。読了時間メーター□□ 楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK) >> 続きを読む
2021/07/29 by ef177
つつみみか
オバマ政権が誕生する前の、ブッシュの時代に書かれたものだけれど、とても考えさせられる。 民営化してはならないものがあること。 市場化の結果としての、危機管理も医療も教育も、悲惨な状態のアメリカの現実。 日本はこうなってはならないと思うけれど、この方向に行ってしまってるかもしれないと読んでいて思った。 著者は、「経済重視型の民主主義」と「いのちをものさしにした民主主義」の二つの違いと対立を指摘している。 つまり、新自由主義の市場主義と、民営化してはならない領域については人権を重視する姿勢の二つである。おそらく、日本は、この二つがいませめぎ合っている状態なのだと思う。 いまSEALDsがやっているのは、後者の立場からの前者へのプロテストなのかもしれない。 この本には、経済的な苦境のために軍隊に志願せざるを得ない人々の様子が詳細に描かれていた。 安倍政権が労働環境の改悪と安全保障関連法案を同時に進めるのは、単に偶然ではないのかもしれない。 アメリカ式のそうしたシステム、苦境に陥った人々が結果として軍隊を志願せざるを得ないシステム、つまり「経済的徴兵制」の導入のためと考えると、わりとすんなりとこの二つがセットである理由がわかる気はしてくる。 うがち過ぎた見方だろうか。 しかし、この本を通じてアメリカの現実を見ていると、どうにもそんな近未来が心配されてくる。 この本の中に紹介されている、子どもの医療費のために借金を抱えたトラック運転手が、その返済のためにイラクで輸送の仕事をし、兵隊にはペットボトルが渡されるが運送業者は現地の水を飲まされ、劣化ウラン弾に汚染された水で白血病にかかったという事例は、悲惨過ぎて言葉を失う。 日本も安倍政権のもと、雇用環境の劣化と軍事行動の範囲拡大が進めば、自衛隊の行動にあわせて、アメリカのようにトラック運転手等が民間会社によって戦地に送りこまれ、悲惨な死や病気に陥る、ということも近い将来にありえるのかもしれない。 杞憂に終わればいいのだけれど。 日本の将来について考えさせられる、2000年代のアメリカの現実についての本だった。 多くの人に、あらためて一読をおすすめしたい。 >> 続きを読む
2015/07/22 by atsushi
本書を読むと、今の米国政府の背後にいる「巨大多国籍企業」の政治に与える影響力の大きさがよく分かります。 そして、それらの企業が行なう“貧困ビジネス”を政府が手助けする構図がくっきりと浮かび上がってきます。 まさに企業における経営者と大株主の関係です。お互い、持ちつ持たれつということですね。 政策や法律への無関心は、結局は自分たちの首を絞めることになります。日本も他人事ではありません。 現在の米国の姿は、日本の10年後の姿。「他山の石」として活かしたいところです。 詳細なレビューはこちらです↓http://maemuki-blog.com/shohyou/yononaka/tsutsumi-kabu/ >> 続きを読む
2013/08/03 by ヨッシィー
BatstoneDavid B , 山岡万里子
アメリカのリンカーン大統領が奴隷解放宣言を出したのは1862年であり、人類の歴史の中ではそれほど昔ではない。ちなみに日本では明治維新が起こり、元号が「明治」に改元されたのが1868年である。 少なくとも現代社会では「合法的な」奴隷制度は無くなり、一般的には奴隷は禁止されているというのが常識となっている。 しかしながら、違法行為だからといってそれが全くなくなったわけではないことは言うまでもない。 現代でも人身売買というものは行われている。もちろん昔のように奴隷市場があるわけではないが、金を出せば何でも買えるいわゆる闇市(ブラックマーケット)には、人間もまた取引の対象となる。そこに人権などない。 人身売買と言えば発展途上国や紛争国を想像される方もいるかもしれない。確かに本書で紹介される人身売買の多くは途上国が舞台となっている。だからといって先進国が全く関係ないわけではない。 本書の序章ではアメリカ合衆国における人身売買が紹介されている。具体的にはアジアやアフリカなどの外国から子どもや少女を「輸入」して、家事労働や性的な奉仕などをさせていた事例が紹介されている。 かつての奴隷、たとえばアメリカ南部の綿花農場で働かされていた奴隷には、屈強な男性が求められた。しかし今の人身売買の対象とされるのは、小さな子供や若い少女たちである。若い少女たちは売春の「商品」として、少年たちは工場の労働力、紛争地では兵士として売られたり、誘拐されたりする。 もちろん大人の人身売買が無いというわけではない。ただ、現代の人身売買の特徴としては力のある大人たちではなく、力の無い女性や子供たちを対象にすることが多い。 それは、生活力の乏しい子供や女性ならば、逃亡や反抗の危険性が少ないからだという。 こういった人身売買を可哀想とは思うけれど、外国の話なので自分たちには関係がないと考える人もいるかもしれない。しかし、先述したようにアメリカやヨーロッパでも人身売買で買われてきた人たちがいるのである。 経済や社会がグローバルになった分、国際的な非合法取引、人身売買だけでなく違法薬物や武器などの取引も活発化している。世界全体で進む極端な富の偏在(いわゆる貧富の差)もそういった違法取引を助長させる要因となっているのだ。 日本も例外ではない。日本社会は国際的に見ると子供や女性の人権侵害疎い部分があるといわれている。歓楽街で働く外国人女性のうち、一体どれだけの人が「合法的」に入国しているだろうか。また、たとえ合法的であったとしても(外国人妻など)、夫婦関係の不和などで苦境に立たされる人も少なくない。 経済的な問題は「自己責任」で切り捨てる人も日本では多いが、生活力の弱い女性や子供たちを見捨てていたら、暴力団やマフィアの食い物にされることは目に見えている。実際障碍者やお年寄りの年金やホームレスの生活保護を奪い取る違法組織の手口は何度も報道されているだろう。 現代社会は昔とは違う。世界は常に変わってきている。未来を担う子供や女性たちをいかに守り、いかに正義を構築していくか。これは国に関係なく、あらゆる人たちが考えなければいけない課題ではないだろうか。 >> 続きを読む
2015/08/17 by ぽんぽん
宮本照夫
前作に続き、暴力団と戦う飲み屋の店主の奮闘記。期待を裏切らないエピソードと登場人物で前作同様楽しめる。多少脚色を感じるが、あまりにも強烈なキャラクターが登場し、四苦八苦する著者の苦悩と捌き方に興味を覚える。書籍の魅力として「別の人間の人生を追体験できること」は非常に大きいと考えているが、本作でも全国に名を知られる歓楽街川崎で、暴力団関係者お断りを掲げ、飲み屋を経営する店長の生き様からは確実に得るものが有る。実は非常に重い内容が続いているのだが、読後に爽快感を感じるのが宮本氏作品の特徴と思われる。壮絶な戦いを軽妙に面白い作品に仕上げる技術は、既に飲み屋の親父の域を超えている >> 続きを読む
2012/09/11 by ice
飯干晃一
三代目組長を失い弱体化の一途を辿る山口組の実態。組織というもの、リーダーというものについての理解が深まる。反社会的組織では有るがヤクザ社会は一般社会を考える材料として有効と考えている。厳しい上下関係や盃による擬似的な親兄弟関係など、有る意味では一般社会よりも整然と統制された社会とも言える。本作では、歴史に名を残す名組長、田岡一雄氏の死去に伴う山口組激震を描いている。各所に田岡組長が偉大過ぎて四代目が育たなかったというような論旨が見られるが、誤解を恐れずに言えば、自分が死んだ後の組織運営までを考える必要は無いと思う。彼は戦後復興の中、全力投球して組織を磐石なものにして来たわけで残された者は当然その莫大な遺産継承に伴い、リスクは背負うべきと考えるからで有る。親分が育てなかったのではなく、子分が育たなかったのだと考えたい。一般社会でも、リスクは全く取りたく無いものの、会社から自分個人に対して、どれだけの利益を引き出せるかということに執着する者がいる。そもそも、そういう人間は人間としての品性が激しく低く組長の器ではないのは明白で有る。田岡組長は全く登場しないのだが、ますますその人物像に興味が沸く。 >> 続きを読む
2007/12/15 by ice
板谷利加子
レイプ被害者と専任警察官との往復書簡。非常に重いテーマながら、万人を勇気付ける感動作品。レイプの被害に遭ってしまった女性から、女性警察官のみで新設された性犯罪捜査係に所属する警察官へ手紙が届く。これがきっかけで往復することになる書簡をベースに、立ち直ろうと努力する女性と、真摯に励まそうとする警察官の心温まる交流。テーマがテーマだけに、目を背けたくなるような記述も存在するが、全体を通して2人の女性の優しさが溢れている。性犯罪の抑制や被害者を受け入れる社会の啓蒙という目的は、もちろん有りつつも、人と人との交流をテーマにした小説としても十二分に読み応えが有る。職業の範疇を大きく超えて、被害者の精神面の救済に情熱を燃やす警察官には頭が下がる。 >> 続きを読む
2011/02/16 by ice
志麻永幸
絶版でネットでは高額で売買される今作。たまたまブックオフをぶらついていた時に発見。競取りも一時期からするとブームが去った感があるが、やる人の気持ちがよく分かった今日この頃(今の所売る予定はない)。園子温の「冷たい熱帯魚」の元ネタで知られる今作。DVDで後追いで見たが、鑑賞後、本当に圧倒された。凄惨な描写も凄かったけれど、やはりでんでんのサイコパス演技が特に際立っていた。この本を読んで、「為になった」とか「人生に役立つ」なんてことは一切ないということを最初に断っておきたい。それでもこんなに一気に読まされてしまうのは、映画とほぼ変わらない、いやいや、むしろ映画より狂っている関根元という男のキャラクター性の強さ故。物語は殺人鬼・関根元の手伝いをさせられていた山崎の視点から書かれている。実は山崎はブルドックの繁殖事業で成功しており、いっぱしの実業家だったりするわけだが、基本的にはごく普通の一般人だといって差し支えないと思う。そんな彼が気がつけば殺人(正確には死体遺棄、作中でもそこがひとつ重要なポイントとなる)の片棒を担がされる。ふとした拍子に。やはり暴力の前では理性的であることがどんなに無意味かが書かれていて、くらくらする。向こうは当然、こちらの都合など一切関係がないのだ。世界的に起こってるテロなりなんなりの暴力も、関根元も、根本的には似ていると思う。私たちの感情なんて気にせず、それは突発的にやってくる。こちらの理屈などまったく関係ない。上記で、理性的であることは、理屈無き暴力の前で無意味だと書いたが、それでも理性的である以外に私たちに、彼らに対抗する術はない。こちらも暴力で返す訳にはいかない。一応、私もまだ人間でありたいから。 >> 続きを読む
2017/01/04 by れのお
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