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西野嘉憲
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海人(うみんちゅ)。何とも凄い人たちだ。それに、何ともいい表情というか、佇まいが味わい深い。自然の中で生きてきた時間が凝縮されているように見える。漁業のことはほとんど知らないが、それにしてもいろんな漁の方式があるものだ。複数名のチームワークでというのもあれば、一人でというのも。時代とともに、素潜りからアクアラングを使う時代にもなってきている。やはり、一番印象に残るのは、一人で何メートルもある銛を使いこなして、かつ、獲物の生態を知りつくての漁が。しかし、石垣の魚は何とカラフルなことよ^^ >> 続きを読む
2015/01/21 by けんとまん
森光子
大正末期、家が貧しいために吉原に身売りさせられた19歳の女性の日記である。作者の「森光子」という名前から、女優の森光子さんと関係があるのかと思ったり、表紙のこうの史代さんの絵から、中味は漫画なのかと思ったりしたが、大女優さんとはまったく関係がない同姓同名の女性の、フィクションではない記録であるそうだ。周旋屋に「お客にお酒を飲ませて楽しくしていればよいのだから」などとうまいことを言われ、いわばだまされて連れてこられた遊郭。着いてみれば、娼妓として働かねばならない身だった。借金のため、がんじがらめに縛られ、辛い思いをしながら働き、最後には逃亡を遂げるまでの日記。この生活の中、日記を書き続けたということ、わずか数世代前にこうした身売りがさほど珍しくなかったこと、いろいろと驚くことが多い。強欲な楼主、客を取るためには汚い手も使う同僚、病気でもゆっくり休むこともできないやるせなさなど、遊郭での暮らしが鮮やかに描きとられている。吉原が無縁者たちのかくれ里であるとする小説もあったけれど、説としてはおもしろいが、リアリティの点では本書に軍配を上げたい。本書の吉原は紛れもなく「苦界」だ。巻末の斎藤美奈子の解説によれば、彼女は逃亡後、歌人・柳原白蓮のもとに駆け込み、その後は外務省のお役人と結婚したそうだ。柳原白蓮は大正三美人の一人であり大正天皇のいとこにあたる人物である。大富豪と結婚したが、新聞記者との不倫の愛を選び、姦通罪があった当時、大騒ぎとなった。本書は大正15年に白蓮の序文を付して出版され、光子さんがいた楼では、この本に触発されて、ストライキのようなことも起こったのだという。この時代の少女たちってどのくらいの教育を受けられたものなのだろう・・・? 文章を書くのって結構訓練がいることだと思うのだ。光子さんは少なくとも読み書きが満足なくらいには教育を受けていたわけだ。辛い暮らしの中でも描き続けたということは、物を書くことによって、精神のバランスを取っていた面も強かったのか。この時代の吉原にきっとこういう少女が何人もいたのだろうと思わせる、強い説得力を持つ本だ。 >> 続きを読む
2016/05/11 by ぽんきち
三橋順子
「女装」の持つ歴史的、文化的な深みを自ら性別「越境者」である著者が緻密な分析と豊富な例証で語る。学問的にもきちんとした書物。 本書は古代から現代に至る「女装」の歴史を掘り起こし、女装の持つ文化性を明らかにし、近代化ともに貶められていった性別越境者への再評価を目的としているようである。筆者自身の体験は第5章に詳しく書かれており興味深いが、男性として生まれながら、内なる女性性との葛藤に苦しむあたりは本書では軽い筆致で描かれているものの、実際にはそうとうの苦しみだったと思われる。筆者が研究者であり、こうした文化研究を発表することは数多くの性別越境者への救いとなるだろうし、ヘテロセクシュアルな人たちの認識のバイアスへの救いともなるだろう。ポスト・モダンの哲学者たちが歴史の掘り起こしをし、私たちが「常識」と思っていることが近代以前においては通用しないことを明らかにしたように、筆者は性別の二分法の厳格化も近代以降であることを日本の性の文化史から明らかにしている。明治時代に主にドイツの医学を輸入した日本では、性別越境者が「変態性欲」「病気」「狂人」などのカテゴリーに押し込められる様子が法律の制定などを例証に引きながら詳細に論じられている。それ以前の生き生きとした性別越境者たちの活躍、またそれを享受する人々の存在は日本文化の豊かさを感じさせる。よくぞこんなにも集めたものだという資料・文献の数々は筆者の並々ならぬ情熱を感じさせる。 ヤマトタケルの女装から語り起こされる古代の女装文化の章では、「双性原理」という概念で性別越境者の特殊な位置を説明している。二つの性を持つ性別越境者には特別な力があり、超自然の存在として畏怖され、共同体の導き手、神の声を聴く巫女のような存在だったようだ。こうした習俗はアジア全体に今でも残っているそうで、殊にタイでは古代から現代に至るまで濃厚にその文化が残っており、筆者はそれを西欧の植民地にならなかったからではないかと推測しているが納得できることである。 中世・近世の寺社における女装と性愛の文化、芸能と性愛の文化は最も魅力的な章で、女性と女装した男がほぼ同じように扱われていること、今でいう風俗嬢と歌舞伎の舞台役者が交換可能な存在として社会に認められていることなど、狭苦しい倫理にがちがちに縛られた現代人の索漠とした感受性では受けとめきれない豊穣さを湛えている。こうした豊穣さは近代化とともに、犯罪的なものとして摘発され、処罰されアンダーグラウンド化していく。筆者は現代のそうした「闇」に追いやられながらも前向きに生きている「姐さん」たちに再び正統な位置づけを与えようとしているようだ。実際、女装した男を愛する男性はいつの時代にも存在し、同性にも異性にも相談できないことを「姐さん」に相談にくる若い女性は後を絶たないそうだ(この相談役としての性別越境者の存在はほとんど古代の巫女と変わらないと思う)。 >> 続きを読む
2013/08/29 by nekotaka
中野明
帰省ラッシュの渋滞の車中で人はいつから性的なことに恥を感じ始めたんだろうという話になったので、調べてみようとまず手を出してみたのがこの本。幕末に日本にやってきた西洋人の残したものを含む多くの文献から、公衆浴場や温泉での混浴であったり女性が屋外で平気で湯浴みをしていたこと、そして、坂本龍馬が妻のお龍とともに友人と風呂に入った等、当時の日本人が裸に対して性的な意味付けを強くは行なっていなかったことを納得させてくれる。ただし、地域によってはそれが許されなかったり、儒教が浸透していた層では忌避されていたことも示唆し、日本が一律、裸を意識しない社会だった訳ではないことも示されている。そこから、西洋人の視線を意識した日本人がどう変わっていくのかを現代まで追っていき、恥じらいのようなデリケートな感覚が、他者の目で、そして政治や世間の統制によって、いかに身体化していくのか再認識させてくれた。養老孟司の唯脳論と河合隼雄の中空構造に絡めて説明しようとしているところはもっと深掘りして欲しかったが、性をタブーとして隠蔽することで管理した西洋と、当たり前のものとして意識に上らせないことで管理した日本という対比は、一概に言えないにしろ示唆に富んだ指摘だと受け止めた。 >> 続きを読む
2011/08/21 by Pettonton
桐生操
タイトルがボーイズラブってなってるけど。ボーイズラブの捕え方が腐女子と違う!!(@Д@;ゲイの歴史本古代から現代までの著名人の男色エピソードがテンコ盛り!!イングランドのエドワード二世は焼けた鉄棒を尻の穴に入れられ処刑お相手の家臣は家臣は大事なとこを切り取られ、はらわた抉られて処刑その他『幸福の王子』を書いたオスカー・ワイルド『ティファニーで朝食を』のカポーティ有名なところではバレリーナのニジンスキーの話など…日本の章では稚児信仰、小姓、陰間とかの成り立ちとか弘法大師・空海が稚児さんの風習を広めた話とか小ネタがいっぱいって感じかな?西洋の話は爛れた愛憎劇って感じで それに比べたら日本の方がまだ潔いって言うかサッパリしてると言うか…お国柄なのか?「(ーヘー;) >> 続きを読む
2013/02/10 by あんコ
滝平二郎 , 加太こうじ
平成生まれの私が体験したことのない、大正から昭和にかけての子供達の遊び、暮らし。 中には一部私が子供の時と似たものもあったが、やはり時代が進むにつれて、オリジナルの味わいは薄れている気がした。 貧しさや病の問題など、辛くて不便なこともいっぱいあったと思うが、やはり昔の自然の豊かさと人情深さは羨ましい。 今は物質が豊かになり、医学も発達して人々の身体が段々と丈夫になっているようだが、心の健康さを失いつつあるように思える。 >> 続きを読む
2020/09/13 by Moffy
ピート小林
かかしの写真集。全国のかかしを分類してまとめてある。完成度の高いかかしが並ぶ。鳥等を追い払う為のかかしに、農家の人はなぜこれ程までにこだわるのか。と思いきや、「おざなり」という項を見ると、ただ服を干しているだけというかかし(?)も登場する。「マネキン」はホラーだし、「アヴァンギャルド」は芸術が爆発してしまっている。読み終わるとかかしを作りたくなるだろう。作者は分かっている。なんと巻末には「案山子のつくりかた」が載っている。まさにカカシバイブルだ。 >> 続きを読む
2011/08/27 by Iris
田中康弘
マタギ。独特の響きを持つ言葉。文化・歴史・伝統・・・というよりも、生き方といえばいいのか、そんな言葉が浮かぶ。等身大のマタギが、誇張されることなく描かれていて、まさに、生き方の一つとして浮かび上がってくる。ここには、我々が無くしつつあるものがたくさんあると思う。 >> 続きを読む
2015/07/21 by けんとまん
尾方孝弘
秘密基地。その言葉の響きの何ともいえないワクワク感、密やかさ、ドキドキ感がたまらない。小さい頃、秘密基地だあ~とか言っていた記憶が微かにだがある。樹の上だったり、田んぼの真ん中にあった小高い小山だったり、町内にあるお寺の周囲だったり・・・いろんなところがあったなあ~。そうそう、押入れも不思議な空間だった。確かに、こうやって作り方として提示されると、なんか作りたくなってしまうのは何故だろう?まだまだ、精神的年齢がこどもだからだろうか。まあ、それはそれでいいとも思う^^ >> 続きを読む
2014/10/13 by けんとまん
室町京之介
第一章の最後に、啖呵売番外編 湊川神社、新ネタ打ちおろしの巻というエピソードが紹介されています。 湊川神社のお祭りの日、演歌師渡辺忠正の粉浜の家に若い衆がゴロゴロしていた。 著者室町氏は「このかきいれ時に何遊んでるのか、湊川神社に商売に行かなあかん」と言って懐炉灰を買ってこさせ、それを下痢止めの薬に仕立てて啖呵を創作し、売りさばいて儲けたとか。 その後警察に取り調べを受けたが無事釈放されたという。 昔は灰を下痢止めに使っていたらしい。 さて、このように啖呵を創作して実際に香具師としても活動し、このような香具師の口上を集めて本にした室町京之介という方は、どのような方か? 本の記述から判断するに、その筋では大物の山田春雄親分の側近というか、身近にいた方のようです。 第三章の女寅さん物語では、室町師匠が山田親分の代理で家賃を集めに行く記述が出てきます。 さてその女寅さん物語、露天商から一旗挙げた小泉一兵衛・咲夫婦を主人公に、二代目広沢虎造やら山春親分やら著者自身まで登場するオールスターキャストでございます。 小泉咲が金歯の親方に相談に行くと、親方は森永の喫茶店で“川端先生”なる方と面談中。 何と川端先生とは川端康成のことで、小説の取材に来ていたとのこと。 その小説は『浅草紅団』として世に出たとか。 さらに、作家の武田鱗太郎は作者室町京之介師匠の酒と遊びの弟分だったとか。 第一章 香具師口上集 に、人間ポンプ有光敏雄の口上もあります。 人間ポンプの驚異の芸を見た著者室町氏はご本人に思ったことをズバリ指摘したという。 「もしかしたら、悲しい事だけど、生理的現象なんかじゃなくて、出生の秘密というか、生まれつきの欠陥、しかも現在の人間社会では極めて稀れな肉体の構成―それ以外は絶対に無いと思うんだ」「いいとこ見てますねえ。図星ですよ」と有光氏は種を明かしてくれたそう。 有光氏については納得したのですが、園部志郎師匠や安田里美師匠も同じような仕組みだったのでしょうか。 本書の終わりで室町師はこう書かれています。 「こう書き続けてきたけれど、私と坂野以外は凡てこの世の人ではない。でも、二人は生きて香具師のいろいろを追究している。しかし、香具師の現実は、千五百年伝え伝えた香具師文化の灯は、歴史と共に消えようとしている。」 http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170120/p1 >> 続きを読む
2017/01/21 by 荒馬紹介
宮本常一
中沢新一
井上章一
文芸春秋
KirshenbaumSheril , 沼尻由起子
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