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カテゴリー"原子力工学"の書籍一覧

      原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か

      吉岡斉

      5.0
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      • とてもためになった本だった。
        単純な原発全肯定でも全否定でもない、是々非々の判断だが大事だという著者の態度はとてもうなずける。

        そのうえで、いかに日本の原発が「国策民営」・国家主導で行われてきたか、
        電力自由化が進めば、初期投資の高さとリスクから考えて脱原発が進むはずか、
        そのことが、この本を読むと、よくわかる。
        震災直前に出された本だが今こそ読まれるべき本だと思う。

        この本を読むと、東日本大震災が起こる前から、世界中で原子力発電事業は長期停滞傾向にあり、80年代以降原発の基数はずっと横ばいだったことがわかる。

        原発は、以下の四つの経済的な弱点があるという。

        1、 インフラストラクチャー・コストが高くつく(揚水施設など)
        2、 建設コストの高騰
        3、 最終的なコストが不確実
        4、 初期投資コストが格段に高く、高い経営リスクがある。

        こうしたことを考えれば、著者が指摘する通り、きちんと電力が自由化され、原発にまともな市場原理が働くようになれば、電力会社は原発に新規投資するとはあまり思えず、おのずと脱原発が進むと確かに思われる。

        しかし、日本の原発行政は、長い間、社会主義計画経済と見まがうばかりの国家の手厚い保護育成と主導のもとで行われてきた。
        この体制を、著者は「国策民営」、そして「核の四面体構造」と呼んでいる。

        「国策民営」とは、実質的に国家が主導し、民間企業であるはずの電力会社は国家の圧倒的な庇護と計画のもとで原発を進めてきたということである。
        さらに、所轄省庁・電力業界・政治家・地方自治体有力者の「核の四面体構造」が日本の原子力政策を決定してきたし、していることを、著者は指摘している。

        その他、この本を読むと、「機微核技術」ということ、つまり核兵器を開発するための技術の保持が日本の原発推進の背景にあったということについても、あらためて考えさせられる。

        また、原発の稼働率の低さは、今に始まったことではなく、震災前からかなり低かったこともよくわかる。

        さらに、原発は温暖化対策にならない、むしろ原発に熱心な国は温暖化対策が低調というデータに基づいた指摘も、大変興味深く、面白かった。

        考えて見れば、311の直後、菅首相は、この「核の四面体構造」に逆らい、独自の判断から政策を決定しようとしてきたのかもしれない。
        さらには電力自由化や発送電分離まで菅首相は提案したが、このことはまさに「核の四面体構造」の逆鱗に触れることだったろう。
        そのため、あのように、マスコミや政界や官僚からの猛烈な集中砲火を受けたのだろう。

        「日本の原子力発電事業の在り方は、日本社会全体の縮図である。従ってその問題点と解決策を明らかにできれば、その解決策は日本社会の抱える多くの問題にも適用できるはずである。」

        この本の中にあった、この一節は、この日本の現実を考えると、とても心に響き、考えさせられる一節だった。

        結局、菅首相がこの「核の四面体構造」に挑もうとしたことを、国民はあまりバックアップできなかった。
        この国の原発行政や、もっと言えば民主主義のありようは、結局は民度に大きく左右されるのだろう。

        この本の著者の吉岡斉先生は、原発事故調査・検証委員会のメンバーの一人に選ばれた。
        そのような菅政権当時の人選は、今後極めて難しくなっていくのかもしれない。

        東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会
        http://icanps.go.jp/
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        2012/12/22 by atsushi

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      原発とヒロシマ 「原子力平和利用」の真相

      田中利幸 , Kuznick, Peter J

      5.0
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      •  本書は序章「ヒロシマ・ナガサキからフクシマへ」第1章「アイゼンハワーの核政策『戦争』そして『平和』のための原子力利用」第2章「『原子力平和利用』とヒロシマ 宣伝工作のターゲットにされた被爆者たち」終章「歴史からの問いかけに向き合うとき」の4章から成っている。

         アイゼンハワーは広島と長崎の原爆投下を批判した唯一の大統領であり、一時は原子力が国際的に管理され、アメリカの核兵器を廃棄し、国連に引き渡すことを主張した大統領でもあった。しかし同時に核兵器を通常兵器として使用する道を開き、核兵器による脅し外交も使った。朝鮮戦争の停戦交渉が長びいた時に、沖縄の嘉手納基地に核爆弾を搭載した爆撃機B36を20機集結させ、カーチス・ルメイ(第二次大戦中に東京大空襲をはじめ日本の焦土作戦を指揮した爆撃軍司令官。ちなみに戦後、日本の自衛隊を指導した功績で、日本政府より勲章が贈られている)が報道関係者を招いてその様子を見学させた。他にもスエズ運河、台湾海峡の金門・馬祖島に使用すると脅したことがある。

         アイゼンハワーは核兵器への嫌悪感を消去するため、1953年12月8日「原子力平和利用(Atoms for Peace)」の演説を行った。しかし1954年3月にビキニ環礁での水爆実験が行われ、マーシャル諸島民を汚染し、日本の第五福竜丸の全船員23名が被爆した。世界中がパニックに見舞われ、アメリカは悪の代名詞のような扱いを受けた。

         アメリカは原子力の平和利用の宣伝のために、原爆の被害地である長崎・広島をターゲットにして原子力発電所を売り込むことになる。日本ではアメリカのCIAからの依頼で正力松太郎が中心を担って協力した。正力は日本のプロ野球の父で、読売新聞の経営者であり、日本テレビの社長も務めた。正力はA級戦犯として二年間の獄中生活の後、不起訴となり出獄した経歴を持つ。正力は鳩山一郎内閣時で原子力担当大臣に就任し、中曽根康弘などと結託して日本への原発導入を強力に推し進めた。正力は日本原子力委員会(JAEC)の初代委員長に就任し、科学技術庁長官も務めた。

         アイゼンハワー政権下で原子力の平和利用を謳いつつ、核兵器の保有量は増え続けた。アイゼンハワー就任時は1000発あまりだった核兵器は任期終了時には2万2000発になっており、彼の許可した核兵器の製造が1960年まで続き、ケネディ政権時には三万発を超えていた。

         広島のメディア・首長・団体などがアメリカ発、読売新聞を中心とするメディア戦略に乗って、原子力賛成の方向へ誘導されてしまう。

         筆者は最後にドイツでの教育と過去への真摯な向かい方と比較して、日本の建前に終始して本質的な部分に目を向けない姿勢を批判している。3・11以後、日本人は今度こそ向き合わなければならないのだけれど、さてどうだろうか。
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        2012/10/25 by nekotaka

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      ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ 原子力を受け入れた日本

      田口ランディ

      4.0
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      • 【世界で唯一、原爆を落とされた国が、なぜ原発大国になったのだろう? ヒロシマ・ナガサキとフクシマは、見えない糸でつながっている。そのつながりを、歴史を振り返り、圧倒的な想像力で描き出していく。これからの「核」の話をはじめるための、最初の一冊。】

        原爆と原発は利用の仕方が違うだけで、原理は同じ。
        原子力の恐ろしさを身をもって知っているはずの日本はなぜ、原発を受け入れたのか。
        何度も被爆し今もなお苦しみ続けている日本。5度目はフクシマの事故。
        なぜ懲りないのか。学ばないのか。
        ・・・といって、自分もフクシマまではあまり考えず、目の前のことだけに流されてた。
        でももう、アメリカや権力者の言うなりにならないように、誰も二度と悲惨な目に合わないように、自分の頭で冷静に考えなければ。

        第1章 核をめぐる時代のムード
        第2章 新しい太陽は、どうやって生まれたのか?
        第3章 核兵器に苦しんだ日本は、なぜ原子力を受け入れたのか?
        第4章 福島第一原発事故後をどう生きるか?
        第5章 黙示録の解放


        ナチスが核兵器を手に入れ戦争に使うのを防ぐため、アメリカに先に原爆をもたせ抑止力としたい、ということで原爆は作られたそうだ。(・・・結果は、アメリカが戦争に使ってしまった。「抑止力」というものについても、よくよく考える必要がある)

        アメリカは、すでに壊滅状態の日本に2度も、無警告で!原爆を落とした。
        無警告であったために、何も関係のない何万という民間人が逃げる間もなく犠牲になった。
        (何と非人道的! しかし、そもそも戦争自体が非人道的な殺人である・・)

        原爆投下は、日本をソ連ではなく、何としてでもアメリカが占領したい、日本がソ連の手に渡るのを防ぐため、ソ連に見せつけるためだったのではないか。(いまだにアメリカの属国のようなもの・・?)
        アメリカの権力者が自分たちの力を維持するため、アメリカの発展(国益)のために、何十万という命が犠牲になった・・。

        アメリカは自らが手に入れた力が恐ろしくなった。核を最も恐れていたのはアメリカだったのでは。
        そして、核兵器による最大の被害者である日本のこともとても恐れていたのではないか。
        アメリカは原爆とアメリカのイメージを切り離したかった。だから、日本に原発を押しつけてきた。
        未来のエネルギーという夢で洗脳しようした。そして日本人は洗脳された。
        自分の所属する国家を正当化するために、より強い愛国心を持つ。そして、正義、正義、正義で固める・・・。(どの国も権力者は同じような手を使う。みんな自分が一番だから・・)

        戦後に軍国主義から解放された多くの日本人は、自由な経済活動を行い、アメリカのようにもっと豊かになりたいと望んでいた。
        当時の経済人たちは「産業を発達させるには新しいエネルギーが必要だし、アメリカとの良好な関係を保たなければいけない」と考えた。国家の利益が、ほんとうに国民の利益に通じるのかどうか。
        でも、戦後はなにより国益というものを優先して政治が行われてきた。敗戦によって衰えた国土を復興し、経済を発展させ、皆が豊かになるためには、どうしても超大国アメリカの力が必要だった・・・。

        核に関することはいつも、正義のため、平和のためという名目で行われてきたことを考えれば、どれほど「正義」や「平和」が相対的で内実のともなわない言葉であるかがわかる。核競争が核による抑止という「安全」のために進められてきたことを考えれば「安全」という言葉の危うさも理解できる。
        (絶対的な正義も、絶対的な安全もない。平和はひとりひとりの心の中からつくり出すもの。いかなる場合も殺人に正義などない。)

        核に関する「倫理」を作ることが、人類史上最初に原爆を落とされた日本という国の義務ではないか。
        イデオロギーを超えて「核の国際倫理」の構築を目指すべきときではないか。

        日本が責任をもって"核廃棄物"を見守り続けるために必要なことは、"脱原発後"の長く不毛と思える仕事への社会的理解と共感。

        原子力はすでに存在する。発見された以上は消すことはできない。原子力への理解と、世界に通用する倫理の確立が必要。
        核の問題を根本から問い直し、よじれた糸をていねいにほどいていくことが、これからの日本の役割。



        とても理性的な考えだと思う。参考になる。(ちくまプリマー新書)
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        2013/09/06 by バカボン

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      「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか

      開沼博

      5.0
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      •  珍しく、社会科学の本を読みました。

         <原子力ムラ>という言葉は、原子力利権に群がる政、官、産、学の複合した排他的利益集団という意味で使われる言葉ですが、この論稿では、原発及びその関連施設を抱えた自治体及び周辺地域を「原子力ムラ」と表現し、それがどのようにして成立してきたかを掘り下げています。筆者は、「原子力ムラ」が、貧困ゆえに迷惑施設である原発を押しつけられた弱者であるとのステレオタイプな見方を排し、19世紀末にまで遡って、国(中央)─地方(都道府県)─ムラの関係の変遷を辿り、ムラが自ら原発を求め、原発と幸福に共存し、さらなる原発を求める姿を描き出します。

         特筆すべきは、この書の主要な部分は、2011年1月に東京大学大学院学際情報学府に提出された修士論文だということです。つまり、ここに描かれているのは、3.11直前のフクシマの姿なのです。
         戦後社会における地方のありようを原子力という視点から捉え直すこの試論において、なぜフクシマが分析対象となったのか。それはもちろん3.11を予見していたからではありません。日本最大の電力会社である東電が最も早く原発設置を決めて営業運転を開始し今日もそれが続いているのがフクシマであるから、反対運動の有無と設置との関係で3つの異なる経過がフクシマには含まれているから、と筆者はいいます。しかし、筆者自身が福島県の出身なのです。「原子力ムラ」へのステレオタイプな見方、一見同情的でありながら実は「原子力ムラ」を他者として切り捨てる言説への、福島県人としての苛立ちが、この研究の出発点にあったはずです。

         末尾の補章「福島からフクシマへ」は3.11の2ヶ月後に書かれています。筆者は、まさにその時点で世間に喧しい「東電・菅政権叩き」、「多重下請構造による労働システム」、「脱原発のうねり」を「生モノ」の議論と呼び、これまでさんざん指摘されてきた全く新規性のない議論なのだ、といいます。

         問題はもはや「新規性のない議論」自体にはない。その新規性のない議論をあたかもそれさえ解決すれば全てがうまくいくかのように熱狂し、そしてその熱狂を消費していく社会のあり様にこそ問題がある。3.11以前に、原子力をその基盤としつつ無意識に追いやっていた社会は、意識化された原子力を再び無意識のなかに押し込めることに向かいながら時間を費やしている。
         私たちは生モノが腐敗しきるのをただ座して待つことを避けなければならない。すなわち「生モノ」の議論から離れ、保存可能な「忘却」にたえうる視座を獲得し社会を見通すことを目指さなければならない。

         この補章が書かれてから2年。原発再稼働をすすめる与党自民党は参議院選挙で過半数を回復する勢いだとか。「生モノ」の賞味期限のなんと短いことでしょう。かくいう自分も、座して待つ以外にいったい何をしているのかと問われれば恥じ入るしかないのですが。
        >> 続きを読む

        2013/07/11 by 弁護士K

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      人形峠ウラン鉱害裁判 核のゴミのあと始末を求めて

      小出裕章 , 土井淑平

      4.0
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      • 『人形峠ウラン鉱害裁判 核のゴミのあと始末を求めて』
        (土井淑平/小出裕章 批評社)読了。

        核燃料サイクル機構の前身が動燃、そのまた前身が原子燃料公社。
        この原子燃料公社時代、鳥取県と岡山県の県境に位置する人形峠
        で発見されたウラン鉱床の採掘が行われた。

        アメリカのアイゼンハワー大統領が「Atoms for Peace(平和の為の
        原子力」を言い始めてから、日本でもかの中曽根康弘が無理くりに
        予算をつけて原子力発電所推進の旗を振った。

        原子力発電の推進は国策である。海外からの輸入ウランに頼らず、
        国内でウラン鉱石が出ればめっけものである。人形峠のウラン鉱床
        には大きな期待がかけられた。

        しかし、掘り出されたイラン鉱石は到底、採算に見合うものではな
        かった為、採掘は早々に中止された。

        原子燃料公社と、その後の動燃が後処理をきちんとしておけば問題
        はなかったのだろうが、ウラン鉱石を含む残土を長年放置した為に
        地元住民との間に残土撤去を巡っての訴訟が起きるまでになって
        しまった。

        本書では残土撤去を求めて立ち上がった地元住民や市民団体の動き、
        何度も約束を反故にして来た原子燃料公社及び動燃の無責任さを
        詳らかにしている。

        原子力発電所から出る使用済み核燃料が「出口のゴミ」なら、原子力
        発電に使用されるウランは「入口のゴミ」である。出口と入口の違い
        はあるが、最終的に「核のゴミ」をどうするかの問題は、未だに先送
        りになっているのではないか。

        どこの自治体だって「はい、うちが最終処分場を提供します」なんて
        言い出さない。仮処処分場の候補地がどうのこうのと言うけれど、
        これまでの日本の原子力政策を振り返ると、それが本当に「仮」なの
        か、信用できないのだ。

        国策企業を相手に残土の全量撤去を求めて闘った人形峠の人たちの
        憤りは伝わって来るし、原子燃料公社とそれを引き継いだ動燃の
        欺瞞・誤魔化し・データ隠しには呆れるほかない。

        本書では片山善博氏が知事になってから鳥取県の全面バックアップを
        受けて訴訟が起こされるまでになっているが、2004年に最高裁で撤去
        命令が出されている。

        ただ、この残土を焼しめたレンガが日本各地に散らばったことが気に
        なっている。そういや、ウランを含んだ焼物やガラスもあったよな。
        あれって使用しても人体に影響はないのだろうか。
        >> 続きを読む

        2018/09/01 by sasha

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