こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


カテゴリー"芸術理論、美学"の書籍一覧

      「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫) 他二篇

      九鬼 周造

      5.0
      いいね!
      •  「いき」という言葉が表す意味を具体的な用例から意味を探っていく「内包的構造」、類似あるいは対立概念との比較から意味を措定していく「外延的構造」を述べ、さらに自然的表現(口調やしぐさなど表現に表れた「いき」)、芸術的表現(服飾、建築、音楽など芸術における「いき」)へと展開していく。

         面白いのはこの文章の書かれたのが九鬼がパリに留学中のことであるということだ。解説にも書かれているとおり、構造的なとらえかたは西洋哲学のそれだ。しかし西洋人にはこれを書くことはできないだろう。九鬼自身言っているとおり、「いき」を概念的に把握することと、「いき」を実感することとの間にはかなりの距離があるのだろうから。九鬼ははじめのところで述べているが、「いき」は日本文化独自のものであるといい、シックやコケット、エレガントなどを比較しながら違いを説明している。この辺の語感はフランスに留学していた人ならではのものだろうと思う。比較対象を持って相対化する視点がなければこういう文章は書けない。これを読むと新渡戸稲造の『武士道』を思い出す。あれは西洋人向けに英語で書かれたのだが、他の日本人の誰よりも武士道を正確に書いているだろう。あの本でもはじめのところで、騎士道精神と比較して論じている。

         「いき」の構造の一番面白いところは六面体で「いき」の意味的位相を説明した下りである。「意気」「渋味」「野暮」「甘味」「地味」「上品」「下品」「派手」を頂点とした四角柱でそれぞれの違いや近さを具体的な例を引きながら(江戸時代の文献や当時まで残っていた慣用表現)、「いき」(意気)の意味を限定していく。意味の相対性を考えれば、このモデル以外で説明するのは難しいだろう。しかし解説者も述べているようにこういう仕方で説明するのは日本の文化からはなかなか出てこないと思う。

         「いき」は「媚態」と「意気地」と「諦め」でできており、基本的に男女間の機微に関することだということが一番はじめに出てくる。しかも遊郭の遊女のことばが数多く引かれている。恋をして引かれていくが、一体にはならない。永遠にたどりつけない二元性を有するのが「いき」である。媚態がありながら、相手を拒絶する毅然としたところを持ち、それでいて苦界に身を沈めている自分の立場への「諦め」がある。この辺りの説明を見ていて思い起こしたのはフーテンの寅さんである。寅さんは決してマドンナと結ばれない。やくざな自分は相手を幸せにできないという思いから、肝心のところで身を引くのである。寅さんは多分に「おどけ」が入っていて滑稽味があるが、その裏には哀愁がある。そうでありながら、恋なしには生きられない、これは「いき」だと思う。

         九鬼はたくさんの例を引いて「いき」の説明をしているがその一つ一つが魅力的だ。中でも気に入った説明を挙げる。「『いき』な姿としては湯上がり姿もある。裸体を回想として近接の過去にもち、あっさりした浴衣を無造作に着ているところに、媚態とその形相因とが表現をまっとうしている……『垢抜』した湯上がり姿は浮世絵にも多い画面である……しかるに西洋の絵画では、湯に入っている女の裸体姿は往々あるにかかわらず、湯上がり姿はほとんど見出すことができない」こういう感覚は現代日本人にもかろうじて残っているのではないかと思う。九鬼は西洋風の短いスカートなどを「いき」でないと言っているが、そこで短いとされているのは、「膝まででるくらい」の長さである。現代の日本人を見たら、腰を抜かすかもしれない。

         筆者が男性であるからか、もともと「いき」は女性に多く使う言葉なのか、女性の用例が多い。もちろん建築や服飾(縞模様)色合い(灰色)なども書かれているので、必ずしも女性に限ったことではない。実際、「いき」な男性もいるだろう。
        >> 続きを読む

        2013/07/15 by nekotaka

      • コメント 4件
    • 7人が本棚登録しています
      「いき」の構造

      九鬼周造 , 藤田正勝

      3.5
      いいね!
      • 先日、学生が5分で愛読書をプレゼンする大会が開かれたというニュースを見ました。そこで初めてビブリオバトルという大会の存在を知りました。2012年の首都圏決戦の勝者がプレゼンしていたのがこの本です。

        日本の文化「いき」について哲学的に分析、考察しています。 

        テレビを見て「へー読んでみたい♪」という気軽な気持ちで手に取ったのですが、知識がなさすぎて私には難しすぎた…というのが正直な感想です。

        「いき」な男になりたい。
        >> 続きを読む

        2012/11/01 by ただひこ

      • コメント 5件
    • 4人が本棚登録しています
      イメージの歴史

      若桑みどり

      いいね! Tsukiusagi
      • 放送大学での講義。

        2012/09/18 by togusa

      • コメント 3件
    • 2人が本棚登録しています
      芸術人類学

      中沢新一

      4.0
      いいね!
      • 20代中頃に読んでから、長いこと人間に対する見方のフレームになっていた本。ちょっと人生狂わされた(笑)と思うくらい。

        文化人類学や考古学と大脳生理学や心理学を橋渡しし、現生人類に初めて生まれた脳の働き、つまり、ある出来事に適応するための思考(=論理思考)達を縦横に飛び越える働きこそ「心」の本質だとしている。そしてラスコーの壁画からみる芸術の発露の秘密や非論理的とみなされる神話が持つ「対称的」な世界観から、「心」の本来の動きや特徴を読み解いている。

        若い頃にチベットで仏教の修行を積み、心の深い層まで分け入っていくという方法で仏教という宗教を実体験してきた人間なので、この人の発言にはいつも「反社会性」が付きまとう。つまり社会を形成する仕組みや道徳が人間を圧迫するものになっていくことに言及し、心の基層となる生の部分をそのまま出せる世の中を作っていこうというのが一貫した行動原理。
        グローバリズムや価値相対化、リバタリアンやコミュタリアン、経済至上主義や地球に優しく等など、様々なことがドグマ化することで新たな問題や苦しみを作っていると考えていた若かりし日の自分にとって、そういったことへのカウンターとして信じるに足る考えを見つけたと有頂天になったものだった(笑)。


        ただ、今回読み直したところ、この人は文章が柔らくうまいので検証しないままふわっと頭に入ってしまう恐さがあって、その人たらし的な要素を自覚的に使っているのを意識しておかないと危ないだろうと感じた。
        チベット時代の修行を書いた本がオウム真理教のテキストにされていたり、麻原を宗教者として評価したということで世間に大変なバッシングを受けたこの人だが(世間の叩き方は的を射ていなかったと思うが。。)、自分の考えを広めるためにオウムを利用していた面があったかもしれないとも思うようになった。

        マルキストとしての要素を持っている人ながら、左右どちらのテキストを利用することも厭わずうまく統合してくすぐってくる辺り、今の自分は対峙するのを躊躇してしまう。
        とはいえ今回もふわっと高揚させられたことは否めないけれど。
        >> 続きを読む

        2011/09/14 by Pettonton

    • 2人が本棚登録しています

カテゴリー"芸術理論、美学"の書籍一覧 | 読書ログ

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本