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カテゴリー"楽器、器楽"の書籍一覧

      パリ左岸のピアノ工房

      村松潔 , CarhartThaddeus.

      4.7
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      •   セーヌ川は満身にピアノの音色を鏤める

         はじまりは耳からではなかった。
         子供の送り迎えごとに通りかかるなんの変哲もない小さなお店、ウィンドにただ〈デフォルジュ・ピアノ――工具と部品〉と書いてある。ウィンドのなかには赤いフェルトで覆われた小棚があって、チューニング・ハンマー、ピアノの弦、調律ピン、フェルトの材料見本、ピアノの内部のいろいろな部品といった、ピアノの修理に使う工具や部品がならんでいる。このあたりは音楽学校やコンサート・ホールや音楽関係の店があつまる地区から程遠く、わざわざこの店のまえに小型トラックを停めて、ピアノを積みこんだり手押し車で運んだりするのは不可解だ。もしかすると、密輸団の一味がひそむアジトなのかもしれない。想像力は日を追ってたくましくなるのだが、なかなか一歩を踏み出せない。わたしはピアノをもっていなかった。
         四月末のあるうららかな朝、たまらなくなってドアの向こうに飛びこむと
        「どうぞ、どうぞ、ムッシュー!」
        と、まるで待ち侘びていたかのような大声で出迎えられた。
        「質のいい中古ピアノを探しているんですが?」
        このわたしの質問にその男は驚いた顔をしてみせ、そういうことは人が想像するほどよくあることではない、あらためて出直してもらえれば、たまたま中古ピアノを売りたいお客が見つかるかもしれない、と教えてくれた。体よく断られて肩を落としたものの、それから一月のあいだに二度か三度店をのぞいたのは、もう一度、ピアノのある暮らしを送りたいと希うあこがれを心の底に沈めていたのかもしれない。おなじ返事を聞かされても、新規のお客は紹介状がなければと言われても、わたしはめげなかった。そうして、ある出来事が起こって方程式が微妙に変わりはじめる。
         ヴェロニックさんの紹介という入場券とともに店を訪ねたその日、やはり中古ピアノは見つからないと最初に出迎えてくれた男(オーナー)が拒否したあと、すでに顔なじみになっていた働き盛りの男が出てきてオーナーを説得し、わたしをお客として認めてくれた。そして彼に手招かれ、奥行きのある店の暗がりの、ガラスの天井から降りそそぐ光あふれる部屋へ抜け出ると、目のまえには40台、いや50台ものあらゆるメーカーのピアノが、さまざまな解体の形でならんでいた。案内してくれたリュックはピアノひとつひとつの個性を語ってみせてくれる。こういうとき、彼は探偵であり、考古学者であり、かつ評論家であった。わたしはリュックとの会話に夢中になっていたが、このときはまだ、このアトリエに強烈に惹かれていることに無自覚だった。ところが夏が早くやってきて、一月後、入口で挨拶したリュックが意味ありげな顔で言い漏らした。
        「あんたにぴったりのピアノがちょうど来たところなんだ。ちょっと見てくれ」

         ジャンルとしてはノンフィクション物で、著者はアメリカ人のフリーライター。もちろんパリ在住。アマゾンでも高評価ですが、わたしも最大限の賛辞を贈ります。読みすすめるうちに、ページを繰る指の動きが、まるで鍵盤のうえを小踊りしている風で、なんだかとても愉しかった。このあとの流れは、ベビー・グランドと呼ばれる大きさのピアノを買って、それを家族といっしょに使います。娘は習うようになるし、著者もレッスンを受けるようになる。しかし、それはあくまでも音楽を愉しむため。そして所々に、著者の若かりし日のピアノ体験や、ピアノを中心とした音楽史が挿しこまれる。村松潔さんの訳文もすばらしい。
         もしかしたら、はじまりは耳からだったのかもしれない。この本を読めばわかるように、セーヌ川に鏤められた音色に耳を澄ませたのはショパンだけではなかった。
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        2016/07/20 by 素頓狂

      • コメント 9件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

      古屋晋一

      3.5
      いいね! Tukiwami
      • 【もしもピアノが弾けたなら】
         私はピアノなど弾けません(一応、子供の頃習っていたことはあるのですが、赤バイエルで挫折!)。
         なので、超絶技巧を弾きこなすピアニストってどうなっているんでしょう?という興味から読んでみました。

         もちろん、ピアニストの方は長時間の練習を反復することにより手指の特殊な動きをマスターし、様々なテクニックを身につけるわけですが、それと共に脳にも変化が現れているんだよというのがこの本の趣旨です。
         確かに、それなりの技術を身につけているピアニストと、一般人の比較では、脳の反応等に違いが出てくるようです。

         また、長い曲や長時間のコンサートをこなすためには、それなりの「省エネ」の演奏方法も身につけているのだというお話も。
         「省エネ」というとやや語弊があるかもしれませんが、要は無理のない負担の少ない演奏方法ということですね(筆者もピアノを弾くそうですが、手を痛めたことがきっかけでこの分野の研究に進んだのだそうです)。

         はい。ピアニストは色々痛めたりもするのです。
         腱鞘炎などはもちろんそうなのですが、フォーカル・ジストニアというトラブルもよくあるのだそうです。
         これは、思うように指が動かなくなってしまうのだそうですが、その原因は、腱鞘炎のようなフィジカルな問題ではなく、脳の問題なのだそうです。
         つまり、過度の反復練習により、指の動かし方について脳内に過剰な「地図」といいますか、パターンが形成されてしまうのだとか。
         いや、そこまで練習するのね。

         音色の話もなかなか面白かったです。
         同じ音の大きさで演奏するという条件で、同じピアノで音色の違いは出せるのか?という問題です。
         演奏家は「出せる」と言い、音響学者は「物理的に不可能」と言っていた時期があったのだとか。
         私なんか、「音色の違いってあるじゃないの」って単純に思ってしまうのですが、確かにピアノはその構造上、鍵を叩けばハンマーが弦を叩いて音を出すわけですから、同じ大きさの音を出すのなら物理的に差は無く、同じ音色にしかならないじゃないかと言われるとぐっと詰まってしまうのですが……

         ですが、その後の研究により、弾き方によって、弦を叩くハンマー・シャンクのしなり具合が微妙に変わるので、それによって音色の違いが生まれる、鍵を叩くように弾くか押すようにして弾くかによって、キーに触れた時の「ノイズ」が変わり、それがピアノ本来の音と同時に聞こえるので音色も変わるなどということが分かってきたのだそうです。

         なかなか興味深い話題もありましたが、全体的には概ね常識の範囲内のお話でしたでしょうか。
         まぁ、そりゃそうだよね。
         目から鱗的なびっくり話とまでは行きませんが、それなりに興味深い一冊でした。
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        2019/07/17 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      爆音ギター女子図鑑 萌えるロックの名器たち

      岩高爆音部

      3.0
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      • 暇つぶしに買ってみたものの、解説が詳しく、かなりマニアックなメーカーまで紹介されていて勉強になりました。

        ただ、有名なギターよりアニメなどで使用されたもののほうが詳しく解説されており、SGスペシャルやムスタングがカラーでテレキャスターが二色刷りページで紹介ってどうなの?ということで評価は低めです。
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        2013/05/31 by janet

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    • 1人が本棚登録しています
      メキメキ上達!究極のアコギ練習帳

      野村 大輔

      3.0
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      • 最近忙しくってアコギまったく触れてません。
        不本意ながらエアギターだったりしますが、仕事の合間に読んでます。

        アルペジオ~!!!!
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        2012/05/29 by katsu

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    • 1人が本棚登録しています
      地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ ギター・マガジン

      小林信一

      4.0
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      • 当時流行っていましてネタで購入したギターの教本ですが、最初の1ページ目からアホみたいに難しくて笑いました。

        この本を購入してから4年近く経ちますが、未だに最初のトレーニングフレーズすら弾けません、メタルでピロピロ早弾きしてる人ってすごいんだなって思います。

        いつか弾けたらいいなと思いつつ本棚に眠っている一冊です。
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        2013/06/03 by janet

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    • 1人が本棚登録しています
      地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ

      小林 信一

      4.0
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      • 教則本なので、読書といえるか微妙ですが、、、
        ギター上級者に教則本としてお勧めだと教えられて購入。

        「地獄」と書いてある通り、素人には難しそうかと思いきや、各フレーズに難易度が松竹梅と設定してあり、レベルに合わせたトレーニングができそうです。
        途中に出てくる小話も面白く、おどろおどろしい表紙程は怖くないかもしれません(笑)
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        2013/05/08 by TORAZOO

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      プログラマーが教えるDTMテクニック99

      齋藤久師

      3.0
      いいね!
      • 良い本だった!

        わたしのように、適当にDAWはいじるけど基礎も技術もない・・・という初心者にはうってつけの本。

        ちゃんと、付録の99音源のほとんどを聴きました~。その音源も、変化がわかりやすいなど配慮が行き届いていて、わたしでも理解できました。

        印象に残ったところ、列挙します。

        ★本全体に、肯定感があること: 「こんな音はダメ」というような記述は一切なく、「味」「個性」という観点がしばしば述べられています

        ★本書のいいところ:擬音がわかりやすかったです。すでに一般名詞になっているのかもしれませんが、ディスコサウンドの「ツクチーツクチー」「チッチキチッチキ」、この擬音で、ああ、あれだ~ってすぐにわかります。「ワウ」「ピューン」「ブリブリ」はよく聞く擬音ですが、「チュン」は・・・・ああ、あれかと思って感激しました。

        ★前から疑問だったのが、リズムはMIDIですべきか、オーディオループですべきかという点でした。本書では「MIDIはカシっとしたトラック作りに、オーディオはなまなましいグルーブを出したいときに」とあり、また、両者を混在させても良いとのこと(潜水艦みたいな音を合わせたものもありました)。このページを見れただけでも、読んだ価値がありました!

        ★いきなり最初のほうで「適当打ち込み」「偶発フレーズ製作」のお言葉!・・・ランダム打ち込みはわたしもやってましたが、そうか、そういうことみんなやっていたのか、と嬉しくなりました。
        ハンドクラップによる予定調和・・・を崩すテクニックも面白かったです。自分がいかにリズムの整合性みたいなものにとらわれていたのかを痛感します。

        ★ボコーダー:もともと軍事利用だったのですね。使ったことなかったのですが、そろそろ挑戦したくなりました。

        ★生活音16個によるループサウンド:これも本の最初のほうで出てきて、すごい、面白すぎます!感動しました。

        ★ブレイク:キック抜き、小節の頭1拍を抜くのがヒップホップではよく使う。自分の音源でも良くブレイク使いますが、抜くものは何でもいいのかもしれません。

        ★ブロックからブロックにつながるところにオカズのSEとして・・・ホワイトノイズの上昇、など・・・なるほど・・・わたし、この音好きです。

        ★キックを重ねて重みを出す、スネアの分解能を高めることでフランジング効果が出る、リバースシンバルを自分で作る←やってみよう。

        ★リアルなストリングスのような倍音は出せないが、シンセらしい音は、「暖かく」「柔らかい」こともある・・・というのは、表現としては意外なようですが、わかる気もしました。ブリブリなノコギリ波のシンセベースの暖かさ。そして本書では、荒々しく前に出る効果のあるディストーションもときに「暖かみが出る」と書かれていました。

        ★チョップで切り刻み、部品を使ったり、切り刻んだ感じを楽しんだりする・・・楽しそうだなあ。本書では「白玉」を切り刻んだりするテクニックがいくつもありました。

        ちょっと書きすぎてしまいましたが、本当に良い本で、よしやってみようというテクニックがたくさんありました。
        そして、前書きを見たら「ダンスミュージックに特化したテクニック」だそうでした(笑)

        わたしのPCのDAWソフトは、なんか知らないけど波形を編集するとフリーズしてしまうことが多かったのですが、この良い本にめぐりあえたことをきっかけに、アップデートしちゃおうかしら、などと思いました。
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        2016/07/11 by みやま

    • 1人が本棚登録しています
      音を大きくする本 音圧をあげるための基本からプロレベルまでそのテクニックのすべて

      永野光浩

      5.0
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      • ミックスやマスタリングの本は数多く出ていますが、ただ純粋に「音を大きくすること」だけに焦点をあてた男らしい一冊です。

        この本に出会うまではただ音圧を稼ぐために漠然とコンプレッサーやリミッターを使用して潰せばいい、と考えていましたがそもそもコンプレッサーの意味や具体的な使い方まで丁寧に解説してあり、何をどうすればよいか判断できるようになりました。

        とても薄い本ですが、音圧を稼ぐためのことは詰まっておりますので音圧戦争に負けてしまいそうな人にオススメできます。
        >> 続きを読む

        2013/05/30 by janet

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    • 1人が本棚登録しています
      Sonar 8完全攻略ガイド

      平沢栄司

      4.0
      いいね!
      • DTMを初めてやる人、sonarを初めて触る人にオススメです。

        文章ではなく画像やイラストメインで一つずつ丁寧に解説されているまさに初心者向けの一冊。

        特にバンドサウンドの音楽を制作したい、という人に向いています。
        ギターや歌の録音や修正の仕方が事細かに写真付きで説明してあり、フリーソフトで挫折しかけた私を救ってくれた本です。

        ただ、DTM中級者以上の人には基本的すぎる内容なので他のDAWからsonarに切り替えたい、徹底的にsonarを使いこなしたいという人には

        徹底操作ガイド(リットーミュージック)
        MASTER OF SONAR(ビー・エヌ・エヌ新社)

        こちらのほうが向いているかもしれません。
        >> 続きを読む

        2013/05/30 by janet

      • コメント 3件
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