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カテゴリー"歌舞伎"の書籍一覧

      絵本夢の江戸歌舞伎

      服部幸雄 , 一ノ関圭

      5.0
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      • 現代、歌舞伎といえば伝統芸能・古典芸能で、いくぶんか取っつきにくい感じがしますけれども、江戸の人々にとって「芝居」は身近な娯楽で、芝居見物に行く前日は眠れないほどわくわくしたものだそうです。芝居小屋はハレの日の歓楽を提供する祝祭の場でした。
        人々を虜にしていた江戸の芝居小屋がどんな風だったか、ちょっと覗いて体感してみましょうか、という絵本です。

        本書では、堺町(現在の東京都中央区日本橋人形町3丁目)にあった「中村座」をモデルにしています。当時、江戸の街には公に許された大きな芝居小屋が3つあり、江戸三座と呼ばれていました。中村座、市村座、森田座です。中でも中村座は早い時期に興行の許しを得ており、伝統を誇りとした一座でした。

        前半は、興行の準備から、華やかな舞台、裏方で支える人々、興行が成功を祝う宴、千秋楽の後の片付けまで、15の場面を描く精緻な絵です。
        芝居の中心は役者さんたちですが、彼らだけでは芝居は成り立ちません。絵師が背景を描き、衣装係が衣装を整え、鬘師が役者の頭に合わせて鬘を調整しなければなりませんし、刀や張り子、調度や牛車、演目に合わせて、さまざまな大道具・小道具が必要です。
        目の肥えた江戸っ子たちをあっと驚かせるには、同じ演目でも前の興行とは違う、新奇な趣向を考え出さなければなりません。
        今でも人気の演出である宙乗りや回り舞台、はては客席に橋を架ける演出まであったといいます。
        そんな様子が緻密に細かく賑やかに描き出されています。
        文と解説は歌舞伎研究者であった服部幸雄さん、絵は漫画家の一ノ関圭さんです。

        前半を眺めていくだけでもおもしろいのですが、後半は詳細な解説。場面ごとに、部分部分に何が描かれているのか、きちんと細かく絵の背景が説明されていきます。
        江戸歌舞伎は、文献は残っていても芝居小屋自体があるわけではないので、意外にわかっていない点も多いのだとか。推測で描いた部分はその論拠も示されていきます。
        前半の絵、後半の解説と、行きつ戻りつ眺めていると、次第に江戸歌舞伎の賑わいの中に吸い込まれていくようです。

        タイトルに「夢の」とありますが、これはもちろん、江戸の芝居小屋が今はないということ、それから、隅田川での船乗り込み、年末の顔見世興行での桜の演目など、実際には行われていなかったけれども、もしもあったとしたらこうでもあったろうか、という想像を交えています。少々の虚構を混ぜ込むことで当時の歌舞伎の雰囲気をより色濃く感じられる仕組みになっています。

        個人的に最も驚いたのは、当時も宙乗りがあったことです。本書では、そのからくりの一例が示されていますが、仕組みは1つではなかったようで、さまざま工夫があったのでしょうね。でもこれ、見るからに危ない感じがします。ときには役者さんがお客の上に落っこちてくるなどという事故もあったのではないかなぁ・・・。それもまた臨場感のうちでしょうかね。
        回り舞台も奈落も人力で動かしていたというのもすごいです。なるほど、電気があるわけではなし、スイッチ1つで、とはいかないでしょうね。

        描かれている役者さんたちは、概ね、(特に立役は)顔がばんと大きく立派な押し出しです。
        昔の時代劇映画などを見ていると、小顔とはほど遠い、大作りの役者さんが目立つのですが、確かに大きい顔の方が舞台映えしそうな感じがします。

        絵本は、狂言作者の見習いとして鶴屋南北に入門したばかりの千松が案内役です。群衆の中に、千松が必ず描き込まれているため、「ウォーリーを探せ」のような楽しみもあります。千松のほか、当時の有名人、葛飾北斎や小林一茶、杉田玄白なども描き込まれていますよ。さぁ、何人見つけられるかな。

        芝居見物は、とっておきのお楽しみの日。何を着て行こうか、何を食べようか、とお客の方も目一杯楽しもうと期待に胸を弾ませています。
        これを迎える興行側もあの手この手でお客を楽しませよう、喜ばせようと、趣向を凝らします。
        両者の思いが作り上げる祝祭空間。
        その華やぎと賑わいが生き生きと感じられる1冊です。
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        2016/05/22 by ぽんきち

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      歌舞伎 家と血と藝

      中川右介

      5.0
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      • 先般、某落語家さんが書いた本とは、雲泥の違い。

        力作で、5年後も10年後もずっと読み続けられる素晴らしい本でおます。


        歌舞伎の世界で繰り広げられた世襲と門閥。

        “家系”“血統”“芸”の継承
        歌舞伎座の舞台では、血統にによる世襲と門閥主義により、幹部役者の家に
        生まれた者でなければ主役は演じられない。

        また、その血が絶えることは、一門の歌舞伎界での勢力争いに負ける事であり、
        実の子は元より、妾の子でも、あるいは一門であれば、
        甥や従弟にいたる者までを養子にしてまで、後継者をつくりだす。

        それは、芸の継承というより名跡の継承、しいては一門が絶えることない為である。

        そして、昔からそこに小屋主、興行主の思惑も絡み、襲名一つとっても兄弟といえども
        争いごとになり、勝者と敗者に別れる。

        一番の頂点は、劇界の最高位である歌舞伎座で主役を演じられること。

        明治以降のこの「権力闘争」でもいうべき歌舞伎界での動きをこと細かに紹介している。



        例えば、今年の4月から6月までの3カ月間の、歌舞伎座の杮茸落興行の21演目で
        主役に据えられたのは10名。

        最後に、列挙すると、七つの家からの10名。

        市川團十郎家(海老蔵)
        尾上菊五郎家(菊五郎)
        中村歌右衛門家(梅玉、橋之助、坂田藤十郎)
        片岡仁左衛門家(仁左衛門)
        松本幸四郎家(幸四郎)
        中村吉右衛門家(吉右衛門)
        守田勘彌家(坂東玉三郎、坂東三津五郎)

        やはり、耳にしたことのある役者さんばかりですが、

        この中の、幸四郎、吉右衛門のように血統上は兄弟なのに家はバラバラ、
        玉三郎と三津五郎は家系上は同じ家ながら、血統は繋がっていない、

        この複雑な関係がいかにして起こり、なぜ形として継続されているのかを
        著者“市川右介”さんが丁寧に解説してくれるが、余りの複雑さにいったりきたり
        家系図と見比べながらの読書、頭の整理を兼ねて是非お試しあれでおます。
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        2013/10/22 by ごまめ

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      勘三郎、荒ぶる

      小松成美

      4.0
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      • 読めば読むほど、勘三郎(勘九郎)さんの早すぎる死が惜しまれます。

        伝統の古典芸能でありながら、、
        平成中村座、NY公演、コクーン歌舞伎と次々、と「時代の遺物にしてはならぬと、
        常に「今」を考え生きた演劇とチャレンジし続けた勘三郎さん。

        時代物、江戸の世話狂言、上方狂言、新歌舞伎、そして舞踊と、
        多彩に各分野で圧倒的な芸の力をみせる。



        歌舞伎役者には爆発的な瞬発力とともに、それを押しとどめる静かな力が必要だと・・。

        「観ている方は不思議に思うかしょうが、激しく見える立ち役より、
        穏やかな女形の方が筋肉を必要とします。中腰の姿勢をとりながら、
        なめらかに流れるように動かなければならない。力を込めて一瞬見せる大きな動きより、
        ゆっくりとでも低い姿勢をとりながら持続する動きの方が筋肉への負担をしいる」

        このまえ、文楽劇場で花柳の踊りをみたところなので、
        「鏡獅子」同様、可憐で優美な「娘道成寺」の舞も過酷な運動量が必要なんだと、納得。

        人脈の広さというか、芸を究めたいという一心で、歌舞伎以外の人でも、
        良い舞台を創りたいと思えば、垣根隔てなく一緒にやろうと、お声掛けする。

        演出家の串田和美さん、野田秀樹さん、現代役者の笹野高史さん、大竹しのぶさん、
        、藤山直美さん、柄本明さん、舞台はご一緒してないが、談志さんに鶴瓶さん、
        襲名の襖絵を書いた金子國義さん、どんどん思いの大きさだけ人の輪が繋がっていく。



        一度も観ずして終わってしまった、勘三郎さんの舞台。

        同じ時代に生きながらと、大いに後悔致しております。


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        2015/09/29 by ごまめ

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      歌舞伎のぐるりノート

      中野翠

      4.0
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      • 歌舞伎のおもしろさを、素人目線で伝えてくれる。

        いるけど、いない人と黒子の存在にいたく感心を示す。
        黒子の存在こそ歌舞伎のらしいものはないと・・・。

        成駒屋=六代目歌右衛門の所作や表情にグロテスクを感じると、
        十七、八の小娘がいう様なことを平気で還暦過ぎの著者がいう。
        この、玄人なのか素人なのか、解らぬ曖昧さが中野翠さんの魅力か。

        名ゼリフに痺れてでは、
        「せまじきものは宮仕え」「腹が減っては戦ができぬ」
        「とんだところへ北村大膳」「お若えのお待ちなせえやし」
        「待てとおとどめなされしは、拙者が事でござるかな」
        「月も朧に白魚の・・・・」

        落語の「稽古屋」にでてくる、
        「世辞でまろめて浮気でこねて、小町桜の眺めに飽きぬ」これも「喜撰」の清元
        歌舞伎の裾野は広いもんだと・・・。

        そして、巻末には、1991年の勘三郎(当時勘九郎)さんとの対談も・・・、
        勘三郎さん、当時いかに歌舞伎の裾を広げたく思っているか窺える。

        全編に亘って、歌舞伎はこんなにおもしろいもんだと、
        外国人向のガイダンスみたいで、
        単純かつ、意表のつく視点で歌舞伎のおもしろさを紹介してくれまっせ。
        >> 続きを読む

        2013/05/21 by ごまめ

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      歌舞伎をつくる

      服部幸雄

      5.0
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      • 映画や小説と共に、歌舞伎も大好きな私にとって、「東海道四谷怪談」は、数ある演目の中でも特に好きな演目ですが、「髪梳き」「戸板返し」「提灯抜け」「仏壇返し」のトリックには、いつも驚き、あれは一体どういう仕掛けになっているのだろうかと興味を持っていました。

        この「東海道四谷怪談」ほどケレン味の強い芝居ではなくても、歌舞伎を観ていると、大道具、小道具、衣装、鬘などに様々な相違工夫がこめられていることがうかがわれ、是非とも「裏方さん」たちの仕事の方も知りたいと常々、思っていました。

        文学座や俳優座などの新劇や、その他の商業演劇などを観ても、そういう気持ちはめったに起こらないのに対して、「裏を観たい」という気持ちをかきたてられるところは、やっぱり歌舞伎は世界的に見て特殊な演劇なのかも知れません。

        この全編、座談会形式の「歌舞伎をつくる」は、歌舞伎ならではの興味----、「裏を観たい」という興味に丁寧に答えてくれている本なのです。

        とにかく、座談会形式なので読みやすく、実にありがたい本なのです。1960年代の末に雑誌「歌舞伎」に連載されていた座談会を中心にして一冊にまとめられたもので、その常連メンバーは、八代目・坂東三津五郎、大道具の十七代目・長谷川勘兵衛、小道具の四代目・藤浪与兵衛、この本の編集をされた服部幸雄の各氏で、仕掛けの説明図や写真も多くて、実に素晴らしいのです。

        舞台に降らせる雪は、もとは元結の廃物利用だったとか、荒事の見得のかたちや筋隈は、仏像をヒントにしたものだとか、----、初めて知ったことばかりで、もうこのような職人話の面白いこと。

        歌舞伎において黒という色は、「無」を象徴していますが、その「無」というのは、「何もない」ではなくて、「あるけれど、見えない」という種類の「無」なのです。そこから、黒幕だとか黒衣というものも考え出されたんですね。

        そして、歌舞伎の黒には"江戸の闇"のイメージが貼り付いている----という話や、宙乗りやセリ上げは、スーッと滑らかなのよりも、昔風に山車の人形のようにギクシャクしている方が面白いのではないか----という指摘にも思わずハッとさせられました。

        歌舞伎というものの奥深さの一端を、垣間見せてもらったような、そんな心が豊かになる対談集だと思います。
        >> 続きを読む

        2017/03/05 by dreamer

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