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カテゴリー"小説、物語"の書籍一覧

      星を継ぐもの

      ジェイムズ・P・ホーガン

      4.3
      いいね! Minnie Tukiwami
      • 久々に二度読み。
        ラスト語られる真相とエピローグに心が落ち着かなくなり、再読せずにはいられませんでした。二度目も良かった!大満足&充実した時間でした。
        どこを重点的に読んで、さらっと読む部分もある程度わかったのであっさり読了できたし。
        それとこの作品、続編もあるのでちゃんと理解をしたかったというのもあります。
        まさかダンチェッカーがこんなにも重要人物だったなんて!最初に登場したときは高慢で視野の狭い人だと思っていましたが、木星の辺りからハントの良き理解者にジョブチェンジしていませんか?なんだか印象が違いすぎるのですが…。

        とにかく、とてもおもしろい作品でした。
        仮説仮説アンド仮説が続いていき、ラストで真実を究明する仮説。

        月面で発見された身元不明の死体、仮にチャーリーと呼ぶそのことにしたその死体は、五万年以上前に死んでいるものでした。チャーリーは外見のみならず、体の中も驚くほど人間に近い。彼の種族をルナリアンとし、ルナリアンはどこから、どのようにして月にやってきたのか。各専門領域からの情報を統括し、断片を繋ぎ合わせて解明する機関として、ヴィクター・ハントを中心に調査していきます。

        内容的に難しい部分も多かったのですが、頑張って、じっくり読んで正解の本でした。
        オープニングに繋がるエピローグの余韻がまだ残っています。
        ガニメアンについての謎はまだまだ解明されていないので、続編に期待。
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        2021/06/07 by あすか

      • コメント 2件
    • 他31人がレビュー登録、 98人が本棚登録しています
      アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

      フィリップ・K・ディック

      4.2
      いいね! pasuta KEMURINO
      • 【いやぁ映画ってほんっとうにイイですね!】
         本書は、映画「ブレード・ランナー」の原作本。電子書籍で再読しました。映画の方は私の大好きな映画です。
         とても素晴らしい!もちろん、その原作もとても素晴らしいのです。

         フィリップ・K・ディックの主旋律ともなっているテーマには、「アイデンティティ」があるのではないかと、以前から感じているのです。
         この作品だって、人間と見分けがつかないようなアンドロイドをテーマにしているわけですし。
         主人公デッカードは、そういうアンドロイドを抹殺するハンターです。
         法を破り、地球に来てしまったアンドロイドを始末する仕事。

         ですが、どう見たって人間と見分けはつかないわけですね。
         とあるテストをすることによって見分けようとするのですが、そのテストの信頼性だってどれほどのものか。
         アンドロイドはどんどん進化しているのです。
         最新型、ネクサス6型を見分けることができるのか?
         それを「始末」することは殺人と心情的にどれほど違うのか?

         デッカードは、ネクサス6型のアンドロイドであるレイチェルと身体の関係も結びます。
         それは好奇心?
         いや、それは……

         原作と映画とでは色々な所で違いがあるのですが、原作を改めて読んでみて(映画は何度も見ていますしDVDも持っています)、あの映画は本当に素晴らしく良くできた映画だと再認識しました。
         上手いのですよ。
         何よりも、街の表現が良いです。
         いつも雨が降っていて、ごみごみとした雑居で、猥雑極まりない街の風景。
         廃墟のビル。
         アンドロイド(映画ではレプリカントと呼ばれます)の悲哀も、本当によく描き出されています。
         原作よりもそこは映画の方がとても良いです。
         
         映画では、俳優さんを使う関係から、それぞれのレプリカントはみんな違う風貌をしていますが、原作では女性レプリカントはみんなレイチェルと同じ容姿をしていると描かれます。
         量産されているレイチェルを殺すという風に(そこは原作の上手いところ)。

         ラストの処理の仕方も、原作と映画とでは違います。
         ネタバレになるので書きませんが、私は、映画の方が好きです。

         原作もものすごく好きなので☆5つ評価していますが、映画はさらに好きです。
         原作を読んで、映画の良さを再認識しました。
        >> 続きを読む

        2021/05/25 by ef177

    • 他27人がレビュー登録、 82人が本棚登録しています
      老人と海

      アーネスト・ヘミングウェイ , 福田恒存

      3.7
      いいね! Tsukiusagi Minnie su-kun sunflower cocodemer niwashi ryoh3 Hyonmin
      • 【忘れていた物語】
         私の手元にあるのは、新潮社文庫で、福田恒存(本当はもっと難しい字なのですが出ないので勘弁)さんの訳のものです。
         表紙も、この現在の文庫の表紙とは全く違っていて、当時の新潮社文庫の表紙絵はヘミングウェイの顔が描かれていました。

         さて、私の中に残っていた『老人と海』は、年老いた漁師が一人で漁に出て、カジキマグロの大物を釣り上げる死闘を描いた……という印象、記憶でした。
         それはそれでその通りなのでしたが、私の記憶からはサンチャゴ少年のことが全く欠落していたのでした。

         主人公の『老人』は、かつてはマグロ捕りの名手でしたが、今は年老いてしまい、お金もなく、うらぶれてしまっていました。
         ですが、漁師見習いみたいなサンチャゴ少年は、老人のことが大好きで、何くれと無く世話をしてくれていました。
         サンチャゴ少年も今では『老人』とは別の船に乗り込む漁師の端くれです。

         『老人』は、かつてのように大物のカジキをつり上げることを願い、ある日、一人で漁に出ます(漁ったってボートのような船ですよ)。
         そこで、大物のカジキをつり上げ、その後の死闘が描かれるという物語でした。

         幾日にも及ぶ死闘で、年老いてもうしびれて駄目になってしまった片腕を叱咤しながら何とか浜にカジキを持ち帰ろうとする『老人』が描かれます。
         『老人』は大リーグの野球が大好きだったんですねぇ(すっかり忘れていました)。
         大好きだったディマジオのことを考えながら自分を励ましたりもします。

         『魚類』との壮絶な戦いと言えば、すぐに思い浮かぶのは『白鯨』(鯨はほ乳類ですね)ですが、あれとは全く違うテイストの作品となっています。
         悲壮さがないのですよ。
         いえ、確かに壮絶な戦いなのですが、何故か乾いている……つまり、カラっとしているように感じました。

         結末はすっかり忘れていました。
         あぁ、こうなっちゃうんだっけ。
         短いお話ですので、私のように完全に忘れてしまった方は是非読んでみてください。
         敢えて結末は書きませんので。
        >> 続きを読む

        2021/05/24 by ef177

    • 他25人がレビュー登録、 91人が本棚登録しています
      わたしを離さないで

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ

      4.4
      いいね! KEMURINO
      • 限りなくフィックションの小説に何を求めて、本を買ったり、借りたりするのか? 

        それは、いまだ知り得ぬ世界を見れるかも? という勝手な期待感に尽きるんだ、という小説の面白さを改めて実感した個人的に記念すべき本に出会えた。

        これまで、著者の作品は3作読んだが、いつも頭の片隅にノーベル文学賞受賞者作品という余計な冠(情報)がつきまとっていた。

        今回は、その冠をまったく気せず、予測不能の物語の行方に翻弄され、読み進んだ。この吸引力こそ小説の楽しさだぜ!と実感。

        1990年代末、イギリスという設定で静かに始まる「です」「ます」調、主人公目線の手記タッチ。アンを思わせる、施設で暮らす思春期少女の成長記と思いきや、「提供者」「介護人」「保護官」という関係性が飲み込めない違和感に引っ張られながら、第20章あたりから、「えー!マジ! 聞いてないよ!」と驚愕。

        登場人物たちの言動、感情など、それまでめくってきた全ページが、歩に落ちる、物語構成に打ちのめされた。

        ノーベル文学賞ってSF、純文学、大衆文学なんていう狭いカテゴリーをはるかに超越した世界を創造できる人に与えられるんだぁ、と納得。映画もぜひ観たい。
        >> 続きを読む

        2020/09/15 by まきたろう

      • コメント 2件
    • 他23人がレビュー登録、 64人が本棚登録しています
      そして誰もいなくなった

      アガサ・クリスティ , 青木久恵

      4.1
      いいね! chao sunflower tadahiko tomato Minnie napori Tukiwami akino ooitee
      • クリスティの作品群でも1,2を争う位有名な作品。

        もはや手垢がついているし、知られ過ぎているトリックだが、生まれた時代を考えても、やはりすごいアイデアである。

        島に集められた10人が1人ずつ殺されていく。
        クローズドサークルであり、見立て殺人の走り。

        なぜ集められたのかや、普通に考えれば最後に残った人物が犯人のはずだが、それを覆すエピローグの真相。

        しっかりと伏線も張っているし、犯人を示唆する証拠も抜かりなし。
        再読だけど、忘れていた細かい点も見れてやっぱり面白いという結論。
        >> 続きを読む

        2021/03/25 by オーウェン

    • 他21人がレビュー登録、 94人が本棚登録しています
      夏への扉

      福島正実 , ロバート・アンスン・ハインライン

      3.7
      いいね! kimiyasu Tsukiusagi snoopo HRJNK
      • ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」は、ストーリー自体は、SF物の中でも最も人気のあるといってよいタイムパラドックス物だ。 

        舞台はまず1970年、この作品が書かれた年からみれば、13年先の未来ということになる。

        現在の時点で読むと、既に遠く過ぎ去った1970年の社会が、未来社会として描かれているという、なんだか不思議な面白さがある上に、ああ、人はわずか13年先の未来さえ、この程度にしか想像できないし、未来像などというものが、いかに頼りにならないものかとも思う。

        その辺りの楽しみが味わえるのは、作品誕生時には、超未来とも思えた現代に我々が生きているからだろう。

        主人公ダンは、天才的な発明家、技術者だ。
        彼が発明した家事ロボットは、彼とその共同経営者である友人、そして、彼の婚約者の会社に莫大な利益をもたらしている。

        しかし、ある日ダンは、その婚約者と友人の信じられないような裏切りによって、会社の支配権を失い、会社から体よく放りだされてしまう。

        失望に沈むダンが考えたのは、コールドスリープという人工冬眠装置に入ることだった。
        ダンは、愛猫のピートとともに、2000年迄の30年間の冬眠に入る。

        2000年に目覚めた彼が知った世界は、彼が全財産を遺したはずの愛する姪である、リッキーの生死も行方も分からなくなっているという悲惨なものだった。

        ダンは、どこでどう間違いが起き、リッキーはどうなってしまったのかを知る為に、再びタイムマシンを使って、コールドスリープに入る直前の1970年の世界へ戻る。

        再び1970年に戻ったダンには、微妙に以前いた1970年とは違った世界があったのだ。
        愛するリッキーも、実はコールドスリープで、2000年に旅立っていることを知ったダンは、再びコールドスリープによって2000年の世界で目覚めると-------。

        タイムマシン物、タイムパラドックス物のお手本とも言うべきSF小説だが、作品に描かれている超未来である2000年も、既に21年も前に過ぎ去っていることを思うと、この物語が想定した幾つかは、実際に実現し、又幾つかは、全く違っているということが、なんとも面白くて、SF小説というジャンルの新しい面白さに気付かされる。

        この小説の中で、ハイラインが繰り返し言っている、「未来は常に現在より明るい」というポジティブな見方が、この物語、いやSF全体に対する人気を、半世紀以上にわたって持続させている要因なのだとも思う。

        >> 続きを読む

        2021/06/30 by dreamer

    • 他17人がレビュー登録、 67人が本棚登録しています
      アルジャーノンに花束を

      ダニエル・キイス , 小尾芙佐

      4.4
      いいね! momomeiai Minnie sunflower tadahiko Erika
      • 知的障害者(主人公)の日記を通じて、手術前後の生活が分かるお話。
        本だからこそ表現できる、日記の「誤字」が良かったです。

        映画「レナードの朝」(1991年)に、お話が少し似ています。

        所有していた本でしたが、友達に貸して、戻ってきませんでした。
        2019年、図書館で借りて、再読しました。
        >> 続きを読む

        2020/02/08 by mirio3

    • 他17人がレビュー登録、 70人が本棚登録しています
      停電の夜に

      小川高義 , ジュンパ・ラヒリ

      3.6
      いいね!
      • 2000年度のピュリッツァー賞を始め、O・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞、The Best American Short Storiesを2年連続で受賞するなど、アメリカで高い評価を受けたジュンパ・ラヒリのデビュー短編集「停電の夜に」を読了。

        著者のジュンパ・ラヒリ自身は、ロンドン生まれで、現在はニューヨーク在住らしいですが、両親は、カルカッタ出身のベンガル人とのこと。

        この本には、9編の短編が収められていますが、その全編に共通しているモチーフは、インド。

        インドを舞台にした物語もあり、アメリカに移住したインド人、もしくは、その子孫の物語が登場する物語もあり、インドの色彩や香りが、濃厚に漂ってきます。

        淡々とした語り口は、そっけないほど無駄がなく、しかし印象的。
        読後に深い余韻を残します。
        特に、大きな展開もないのに、不思議な味わいがあり、癖になってしまいますね。

        読んでいると、インドとパキスタン、インドとアメリカ、インドとイギリスと、どこかはっきりと、立ち位置を決められないような、不安定さがつきまといます。

        インド人である両親とまるで同じに見えながらも、インド人ではなく、パキスタン人であるピルザダさん、外見はインド人でありながらも、その中身は、完全にアメリカ人となっているインド系の2世たち。

        そんな彼らの揺らぎが、淡々とした文章で、ありのままに描かれていくんですね。
        そして、中でも表題作の「停電の夜に」の、ゲームめかした問答の中で、さらりと明かされていく残酷な真実。

        「病気の通訳」での、カパーシー氏のささやかな夢と現実、そして残ってしまった混乱。

        「セン夫人の家」で、セン夫人が振るう包丁に篭められた思いと、それを見るエリオットの気持ち。

        「三度目で最後の大陸」で感じられる時の流れが、強く印象に残りました。
        読んでいると、夫婦という限りなく親しい存在のはずの二人も、本当は他人だということを、強く感じさせられます。

        特に「三度目で最後の大陸」で分かるように、アメリカにおける一般的な恋愛結婚と違い、インドでの結婚は、お互いの親に決められたという面が大きく、それでも、妻は夫のいるアメリカへと旅立つことになります。

        周囲に誰一人知った人間のいない孤独、一番身近にいる夫ですら、まだまだ未知の存在という生活の中で、夫を信じてついて行くことのできる女性の強さというのも、実に印象的でした。

        >> 続きを読む

        2021/07/08 by dreamer

    • 他16人がレビュー登録、 30人が本棚登録しています
      日の名残り

      土屋政雄 , カズオ・イシグロ

      4.4
      いいね!
      • カズオ・イシグロの1989年度のブッカー賞受賞作品「日の名残り」を読了。

        この作品は、スティーブンスがコーンウォールへ車で旅行しながら、ダーリントン・ホールが華やかなりし頃の出来事を回想するだけの物語なのですが、とても美しい作品です。
        良い小説とは、こういった作品のことを言うのかもしれませんね。

        スティーブンスの執事としての誇り、執事に大切な品格の話なども興味深いですし、気さくにジョークを飛ばす新しい主人に戸惑い、もしやジョークを言うことも執事として求められている仕事なのかと真剣に考えてしまうスティーブンスの姿が微笑ましいです。

        ここには、慇懃でもったいぶっていて、少々頑固な、古き良き英国の執事の姿が浮かび上がってきます。
        20数年前、ダーリントン・ホールに来客が多かった時期の回想では、第二次世界大戦前から戦時中に行なわれた会議のことも大きく語られます。

        世界的に重要な人物たちを招いた晩餐での、スティーブンスの仕事振りは、実に見事です。
        慌しい中で冷静沈着に全てを取り仕切り、そのプロ意識は、父親の死さえ看取ることを彼に許さないほどなのです。
        回想ながらも、その緊迫感や、見事に仕事をやり遂げたスティーブンスの高揚感が十分伝わってきます。

        そして、一番面白かったのは、スティーブンスとミス・ケントンのやりとりですね。
        最初はことごとく意見が対立し、冷ややかなやり取りをする二人ですが、カッカしている二人の姿が、実に可愛いのです。

        美しい田園風景が続いたドライブ、そして最後の夕暮れの中の桟橋の場面に、スティーブンスの今までの人生が凝縮されて重ね合わせられているんですね。

        最高の執事を目指し、プロであることを自分に厳しく求めすぎたあまり、結局人生における大切なものを失ってしまったスティーブンス。
        老境に入り、些細なミスを犯すようになったスティーブンスは、恐らく今の自分の姿を父親の姿とダブらせていたことでしょうね。

        今や孫もいるミス・ケントンに対して、自分はあとは老いるだけだということも-----。
        もちろんスティーブンスの中で美化され、真実から少しズレてしまっている出来事も色々とあるのでしょうけれど、無意識のうちにそうせざるを得なかったスティーブンス自身に、英国という国の斜陽も重なって見えてきます。

        第二次世界大戦後のアメリカの台頭と英国の没落。ダーリントン・ホールの今の持ち主もアメリカ人。
        こうなってみると、戦前に行われた重要会議でのやりとりが、実に皮肉です。

        そして、英国では最早、本物の執事が必要とされない時代になりつつあるのです。
        そんな中で「ジョークの技術を開発」するなどと言ってしまうスティーブンスの姿が、切ないながらも可笑しいですし、作者の視線がとても温かく感じられます。

        >> 続きを読む

        2021/02/24 by dreamer

    • 他16人がレビュー登録、 36人が本棚登録しています
      一九八四年

      高橋和久 , ジョージ・オーウェル

      4.0
      いいね! Tukiwami
      • 【絶望的な未来社会】
         ディストピア小説の古典的名作をようやく読んでみました。
         舞台となるのは世界が3大国家により分割統治されている未来社会です。
         時代は……おそらく1984年。
         「おそらく」というのは、主人公が住んでいるここオセアニアでは、年代が故意にぼやかされているようで、実のところ何年なのかよく分からなくなっているのです。

         オセアニアは、党による独裁がしかれており、全体主義、社会主義国家になっています。
         主人公のウィンストンは、ロンドンで党外郭の人間の一人として真理省に勤務しています。
         ウィンストンがやっている仕事は過去の歴史の改竄です。

         党が将来の経済などを予測して発表するわけですが、そのとおりにはならないわけですね。
         そうすると、真理省が過去に発表した将来予測を書き換えてしまうのです。
         それだけではなく、都合の悪い過去はどんどん改竄され、最初からそういうものだったとされてしまいます。
         ですから、過去がどんな状態だったのか、今はいったいいつなのかなどが分からなくなってしまっているのです。

         そんなことをしても人間の記憶は消せないのだから無意味だと思いますよね。
         でも、オセアニアの人たちは、『二重思考』と呼ばれる現実隠蔽の考え方を叩き込まれており、実際のところがどうであれ、党が発表することが真実なのだと頭から思い込み、それに反する思考はすべて自分の中でシャットアウトするようになっているのでした。

         町中至る所に『テレスクリーン』と呼ばれる装置が設置されており、これは双方向のテレビのようなもので、人びとの姿や声は四六時中党によって監視されています。
         万一、党の方針に反するようなことを言ったり、党の指示に従わないような行動が見られた場合には、即座に『思考警察』がやってきて抹殺されてしまうのです。
         そう、もとからそんな人間などは存在しなかったものとされてしまうのですね。

         この世界を支えているのは人口の約85%を占める、プロールと呼ばれる下層民です。
         彼らは、劣悪な環境で、労働力としてだけ存在意義を認められており、党もプロールが何をしようがどんなことを考えようが、そんなことは知ったことではないのです。
         叛乱など起こさず、従順に労働さえすればそれでよろしい。

         世界は、もう何年も前から戦争状態が継続しています。
         しかし、一体どこの国と闘っているというのでしょう?
         昨日まではユーラシアと闘っていたはずなのに、ある日突然、敵はイースタシアであると党のアナウンスがあり、そうなんだとみんな頭から信じ込んでしまうというとんでもない世界です。

         この世界のリーダーは、『ビッグ・ブラザー』と呼ばれている人物なのですが、実在するのかどうかも不明です。
         ただ、町中に『ビッグ・ブラザー』の、じっと見つめるような肖像写真が貼られまくっているのですが。
         
         この様な世界に反対する勢力もいる……とかいないとか。
         かつて、エマニュエル・ゴールドスタインという党中枢にいた人物が、革命に反旗を翻し、世界のどこかに潜伏して反革命活動をしていると言われてはいるのですが。
         党は、人民に対して、ゴールドスタインを徹底的に憎むように教育しており、毎日『二分間憎悪』と呼ばれる、洗脳的なプログラムを強制しているのです。

         ウィンストンは、この様な社会の有り様に疑問を抱き始めています。
         党により過去の歴史が改竄されていくことが納得できず、日記をつけ始めてしまうのです。
         もし見つかりでもしたら、すぐに『思考警察』がやってきて抹殺されてしまうような危険な行為です。
         自分でも何のためにそんなことをしているのかよく分からないのですが、『テレスクリーン』から隠れるようにして日記をつけ続けてしまうのですね。

         ある時、ウィンストンは同じ真理省に勤務するジューリアという女性からラブ・レターを密かに受け取ります。
         これも完全に反党的行為であり、見つかったら処刑されるでしょう。
         はじめは、ジューリアこそが思考警察であり、自分を罠にはめようとしているのではないかとの疑いをぬぐい切れませんでしたが、ジューリアも反党的な思想を持つ女性だということが分かったのです。
         二人は、人の目を避けるようにして危険な逢瀬を続けます。

         という、大変恐ろしい未来社会が描かれた作品です。
         そこには何の望みも、楽しみもなく、ただひたすら党に服従することだけが求められている世界です。
         物質的にも、わざと窮乏するような生産調整が行われており、党外郭の人間は、自分をプロールと比較することによって、幸せなのだという錯覚をして生きていくだけなのですね。
         あぁ、恐ろしい。
        >> 続きを読む

        2019/10/13 by ef177

    • 他15人がレビュー登録、 60人が本棚登録しています
      アクロイド殺し

      アガサ・クリスティ , 羽田詩津子

      4.6
      いいね! chao Minnie shikamaru
      • 恥ずかしながら初めてアガサクリスティの作品を読みました。
        フェアかアンフェアか当時議論を呼んだとあり、ミステリー小説の歴史を感じます。
        ネタバレさせたくないのであまり書けませんが、イギリスでまさか麻雀をしてるなんて!ビックリしました。ひさしぶりに麻雀したいなあ。卓を囲んでおしゃべりするのが楽しいんですよね。だから負けてもいいのです笑
        >> 続きを読む

        2019/12/24 by たい♣

      • コメント 2件
    • 他14人がレビュー登録、 44人が本棚登録しています
      ティファニーで朝食を

      村上春樹 , トルーマン・カポーティ

      3.8
      いいね! Minnie
      • 「いつの日か目覚めて、ティファニーで朝ごはんを食べるときにも、この自分のままでいたいの」

        とてもチャーミングなオードリー・ヘップバーンがこちらを見つめる有名なジャケットは、映画を観ていなくても誰しもが知っているでしょう。
        一目見て、忘れられなくなるくらいキラキラしています。
        でも、映画を観ていない私が本書を読んだ脳内映像の主役は、マリリン・モンローでした。
        型破りで自由奔放、一つ一つに色気のあるしぐさはオードリーではありませんでした。

        ここまでホリー・ゴライトリーの印象が違うと、映画→原作の人は困惑するだろうし、原作に満足してしまうと映画を観ようという気は起らなくなるかもしれません。
        私は後者です。
        収録されている短編3作を含め、雰囲気が良くて、おしゃれで、登場人物と共に会話を楽しんだり、悲しくなったり。
        本を読んでいて、とても満たされました。
        囚人宿舎の中でギターを弾く新人囚人により、生きていることを思い出した風景(『ダイアモンドのギター』)、花盛りの家、親友とクリスマスツリーを切りに行った日のこと(『クリスマスの思い出』)、なんて色彩が豊かなのでしょう。
        それと、どれもラストが好みでした。

        ホリー・ゴライトリーには、自分らしく幸せであってほしい。
        主人公の想いに共感しました。
        それぞれ短編の主人公にも同じことを思いました。
        >> 続きを読む

        2018/07/07 by あすか

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      幻の女

      ウイリアム・アイリッシュ

      4.2
      いいね!
      • 「夜は若く、彼も若かった---」という切なく美しい出だしが印象的な「幻の女」。

        人街をさまよっていたスコットは、奇妙な帽子を被った女を誘い、数時間を共に過ごす。

        しかし、女と別れて帰宅すると、妻が絞殺されていた。
        訴えも空しく、彼は犯人として逮捕され、死刑判決を受ける。

        死刑執行が迫る中、無実を信じる者達が、彼のアリバイを証明できる帽子の女を必死で探す。

        果たして、彼女はどこに消えたのか? そして、スコットを待つ運命とは?

        ミステリとして満点のスリルと恐怖、そして、詩情を湛えたリリックな文章が魅力的な、タイムリミット型サスペンス小説の傑作だ。
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        2021/06/21 by dreamer

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      春にして君を離れ

      アガサ・クリスティ , 中村妙子

      4.3
      いいね! Minnie MissTerry chao bakabonn Tukiwami
      • 【クリスティだけどミステリではない。しかし、とても恐ろしい作品である。】
         以前、『アガサ・クリスティー完全攻略』という本をレビューしましたが、その本では著者がクリスティの邦訳されている全作品を読破した上で、ベスト10を選出していました。
         著者が選んだベスト10は、私の感覚とは異なるものではありました。
         ただ、その中には私が読んでいない作品が上位にランクされていたことから、「そんなに高評価ならば読んでみなくては」とも思ったのです。
         ということで、本作は第5位にランクインしている作品で、図書館にもありましたので借りてきてみました。

         さて、本作はクリスティの作品ではありますが、ミステリではありません。
         殺人などの何の事件も起きません。
         強いて言えばサスペンス的な要素を持っているとはいえるかもしれませんが、それもさほど強いものではなく、一般小説として読まれるべき作品でしょう。

         主人公のジョーンは、弁護士の夫と3人の子供を持った主婦で、これまでうまく人生を生きてきた、自分はあれこれのことに気を配り、子供を上手に育て上げ、幸せな家庭を築いてきたという自負を持った女性です。
         彼女は、結婚して嫁いでいった末娘が急病になったという知らせを受け、単身ロンドンを発って末娘家族が住むバグダッドへ行ってきた帰りでした。
         末娘の容体はそれほど案ずるほどのことでもなく、あれこれと世話を焼いてロンドンに帰るところなのでした。

         ジョーンは、帰路の途中で立ち寄った鉄道宿泊所で、偶然、女学生時代の同級生のブランチと再会します。
         ブランチは、女学生時代、生徒たちの憧れの的であり、家柄も良く、幸せな将来が約束されたような女の子だったのです。
         ところが、実際には、ブランチはろくでもない男に夢中になり、また、自分が生んだ子供の面倒をみることを放棄して別の男に走るなど、ジョーンからすれば散々な人生を歩んだ女性でした。

         今、こうしてブランチの姿を見ると、年齢の割にはすっかりくたびれ果てて老け込んでおり、服装もみすぼらしく思えました。
         それに比べて、鏡に映る自分の姿は、まだ若々しく、身なりもちゃんとしているではありませんか。
         結局、本当の幸せをつかんだのは自分なのだと思うジョーンでした。

         ジョーンを見かけたブランチは気さくに声をかけてきて、一緒にお茶を飲もうと誘ってくれました。
         ブランチは、自分の人生がどういうものだったかについてあけすけに語るのですが、どうも大して後悔もしていないようにジョーンには感じられました。
         あるいは露悪趣味?
         そんなブランチの姿を見るにつけ、ジョーンはつくづく自分はしっかりと生きてきたんだと安心するのでした。

         ジョーンは、ブランチに対して、自分は毎日毎日、地区病院の理事職、施設の評議員、ガールスカウトのリーダーその他もろもろの仕事で忙しくしているので、一週間でも良いから何もせずにぼんやり過ごしてみたいなどとも言うのです。

         翌朝、ジョーンはブランチと別れて一人で自動車で鉄道駅へ向かうのですが、生憎の雨のため旅程が遅れてしまい、駅に着いた時には乗るはずだった列車は既に出発してしまっていました。
         仕方なく、駅の宿泊所に泊まることになったのです。
         列車は週に三便しかありません。
         宿泊所周辺は良い天気なのですが、その他の地域では雨が降り続いているらしく、列車は遅れに遅れていて、いつ到着するか分からないというのです。

         それなら、ブランチに話したような、何もすることがない時間が望み通り手に入ったのだからと考え、ジョーンは宿泊所近くで無為な日々を過ごし始めたのです。
         最初のうちは、こういう何もしなくても良い時間は良いものだなどとも考えもしましたが、すぐに飽きてしまいました。
         持ってきた本もすべて読んでしまい、何もすることが無くなってしまいます。

         ジョーンは有り余る時間を潰すために色々なことを回想し始めるのです。
         ところが、思い出すことは不愉快なことばかり。
         幸せな人生を歩んできたはずの自分なのに、何故こんなに嫌な事ばかり思い出してしまうのだろう?
         それとも、自分の人生というのは本当は幸せなものではなかったのだろうか?

         子供たちはみんな良い子で、私を愛してくれていたのに、幸せじゃないなんていうことはあり得ない。
         でも……、あの時、あの子が言った言葉の意味は、本当は……。
         私は、愛する夫をしっかりと支え、夫がろくでもない農園を経営したいなどと言い出した時も、しっかり引き留めてちゃんと弁護士事務所に勤めさせた良い妻ではないか。
         でも、本当は、夫は……。

         ジョーンは、徐々に、自分の人生が本当に正しかったのか、自分は良い妻だったのか、自分は幸せだったのか等について疑いを抱くようになっていきます。
         自分一人だけが何も分かっていなかったのではないか、と。

         これまで確固たるものと信じていたことが、突然根底からぐらつき始めるというプロットは、クリスティはミステリの中で使ったことがありましたが、本作は、それを何の犯罪も起きない一般小説の中で語っているのです。
         これは、大変恐ろしいことではないですか。

         さて、本作についてどう評価するか。
         まず、ラストがどうなるのかが読んでいる途中から気になり始めました。
         あっちへ持っていくのか、それとも……。
         そして、読み終えた後、最後に書かれているエピローグは必要だったのだろうかとも考えました。
         もちろん、エピローグを書いた方がクリスティの意図は明確になるでしょう。
         ですが、私は、あるいはエピローグは不要だったのではないかとも思えました。

         大変恐ろしい、また、読んでいて辛さを伴う作品だったと思います。
         本作に高い評価を与える読者がいることも理解できるところです。
         ただ、私がこの作品を好むかというと……。

         なお、蛇足ですが、文庫版の表紙に描かれている女性(これってジョーンですよね?)って、何故ビーサンのようなサンダルを履いているんでしょうか?
         私、どうもそこが気になってしまって、気に入らない点の一つなんですが……。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
        >> 続きを読む

        2020/10/13 by ef177

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      仕事は楽しいかね?

      DautenDale A , 野津智子

      3.7
      いいね!
      • 2019年16冊目。特に何かで当てて成功したいという願望はさらさらなく、就職試験の失敗から年齢の割に現実を知らなさすぎる自分を反省して色々とこれまで手に取らなかった本をいつもの読書と並行して読んでみようと思ったのが動機。そんなわけで、この本に関しては自分の心に響く部分とそうでない部分があり、参考になったかどうかは疑問符が付く。ただ、「明日は今日と違う自分になる」「試すのは簡単だが、変えるのは難しい」などのフレーズが自分の心に響いたかなと思う。もう一度時間をおいて再読してみようと思う。

        >> 続きを読む

        2019/02/16 by おにけん

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      白い犬とワルツを

      テリー・ケイ , 兼武進

      3.4
      いいね!
      • 57年間連れ添った、最愛の妻コウラに先立たれた81歳のサム。
        彼自身、片足が不自由で、ここ数年、歩行器にすがる生活だ。

        独立した娘や息子たちは、一人になった父を心配して、入れ替わり立ち代わり、世話をしようと訪れてくるが、サムは、妻の思い出とともに、一人でやって行こうと決意する。

        コウラの葬儀の後、サムのところに真っ白な犬が訪れてくるようになるが、その犬はサムにしか見えない。
        父がおかしくなったのではと、子供達は心配し始める。

        老人の一人暮らしの孤独、死を迎えつつある老境に押し寄せる、過去の日々の追憶、最愛の人を失うことの悲哀といった、この物語のテーマは、国境を超えた共感を呼ぶのだろうか、この物語は、日本でもロングセラーであるという。

        作者は、あとがきで、この物語を敢えてフィクションであると言わないと言っているとおり、57年間連れ添った最愛の妻コウラに先立たれた、老人サムの物語は、サムにしか見えない、白い犬の存在によって、メルヘンチックに描かれてはいるものの、作者自身の父をモデルにし、その父を気遣う娘や息子たちとは、作者自身とその兄弟姉妹たちの実話であろうことが、ひしひしと伝わるほどに、リアルでもある。

        白い犬が物語の後半では、娘や息子たちにも見えてくる。
        それは、サムの思いが娘や息子、そして、読者である我々にも現実に伝わったということではないだろうか。

        苗木を育てる仕事でも有名にもなり、最愛の人と幸せな結婚生活を送り、長男を不慮の事故で失った悲しみや、様々な苦労もあったが、良い人生だったと思える一生を終えようとしている男。

        サムのような老境に憧れる人は多いことだろう。

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        2021/07/05 by dreamer

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      クリスマス・キャロル

      チャールズ・ディケンズ , 村岡花子

      4.1
      いいね!
      • クリスマスも終わり、ようやく忙しさも落ち着いたのでたまった感想をボチボチまとめる。今年の感想は今年のうちに。

        クリスマスの準備に教会への行き帰りに毎年読むクリスマス・キャロル。
        今年は新たに村岡花子さんの翻訳でも読んでみた。
        少し古さを感じさせると聞いたことがあり避けていたけれど、実際読んでみるとそんなに古臭くなかった。寧ろ好み。
        改訂がなされているからかもしれない。

        小さい頃、テレビでクリスマス・キャロルのドラマを観た。
        とにかく泣いたことを憶えている。そして教会に行って司祭に自分の想いを喋りまくった。
        そのときの印象がずっと残り、いつしか待降節には欠かせない読み物になった。

        物語は簡単に言えば、守銭奴の老人が失ったやさしい心を取り戻して残りの人生を生き直すというもの。
        勿論、意外な展開も衝撃の結末もなし。

        ディケンズがクリスマス・キャロルを書いた時代背景や世相といったものから掘り下げて読むのも良いと思うけれど、そんな難しいことを考えて読まなくてもいい本もあると思う。
        クリスマスが近づいてきたら、わたしは自分の出来る範囲でひとを思いやりたいと思った昔の素直な自分を思い出したい。それだけだ。

        ひとは生きていくうちに多くのものを得ると共に、多くのものを失う。
        中には取り返しのつかないものもあるだろう。
        それでも、自分の心だけは自分次第で取り戻すこともできる。
        日常の煩雑さに、自分を思い出し見つめなおす機会はなかなかないかもしれないけれど、忙しくなりがちな年末に敢えてゆっくり人生を振り返り、残りの人生を考えなおしてみるのも悪くないと思う。
        毎年そうさせてくれるこの本が、わたしはやっぱり大好きだ。

        今年ももう少しで終わりますね。
        >> 続きを読む

        2015/12/27 by jhm

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      赤毛のアン

      L・M・モンゴメリ , 村岡花子

      4.6
      いいね! Minnie peace_1987 Moffy
      • 中学生(?)高校生(?)以来の再読。なんてすばらしい物語なんだろうと、あらためて感じた。アンの人となりのすばらしさ、プリンス・エドワード島の美しい自然のすばらしい描写、アンの周りの大人の精神的な成長など、すべての要素がバランス良く、物語の進行に欠かせない。このあたりが人気たる所以か・・・。とにかく大好きな小説だと再認識。ぜひぜひ子どもたちにも読んでもらいたいので、我が家の本棚に大切に保管。そして、シリーズ最後まで読んでみようと思った。 >> 続きを読む

        2019/06/24 by URIKO

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      グレート・ギャツビー

      F・スコット・フィッツジェラルド , 村上春樹

      3.5
      いいね!
      • 語り手のニック・キャラウェイは戦争従軍後、証券会社で働くためにロングアイランドのウェストエッグに引越してきた。
        彼の隣に住むのは大規模なパーティーを毎晩のように開催する謎の大富豪、ギャツビー。
        彼の招待に応じてパーティーに参加する機会を得るが、その参加者はギャツビーについて正確なことは何一つ知らず…

        前半は読みづらさを感じ、なかなか物語に入れずにいました。いろいろな人物が登場しましたが、結局のところはニックとギャツビーの他はブキャナン一家、トム・ブキャナンの愛人のいるウィルソン一家、ニックの恋人ジョーダンに集約されます。
        ギャツビーがどのようにして成功者として成りあがったのか。そこから見えてくる当時のアメリカの景況感、東部と西部の格差、富裕層と貧困層の格差が浮き彫りになるのが興味深い。ギャツビーはトム・ブキャナンの妻デイジーを昔も結婚後も愛しており、彼女と恋に落ちることで、彼自身の人間の理念は失われてしまいました。その後いろんな不遇が重なり、彼の人生は混乱をきたし、秩序をなくしていきます。一人の手に入らない女性を純粋に愛する姿はロマンチックなようで、それが滑稽にも感じてしまう悲しさを伴うのは、デイジーがギャツビーのように純粋ではないから。いろんな物事をひっかきまわしておいて、あとは知らん顔をして奥に引っ込んでしまう「思慮を欠いた人々」だから。
        「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではない」という父の教えがあったニックが、最後までギャツビーの傍にいたことが救いでした。

        ギャツビーが呼びかける「オールド・スポート」について、村上さんは「おそらく英国人の当時の言い回しだったのだろう」とあとがきで述べています。アメリカに帰ってきてからも、身に付いた口癖として、ある種の気取りとして、ギャツビーの生来の演技性を呼びかけの言葉で示唆していたと。なるほど、私も訳さない方がこの作品に合っていると思います。その言葉の曖昧さで受け取る方が、これという日本語に当てはめられるより伝わってくるような気がします。なんとなく、意味合いもわかりますしね。
        それにしても、このあとがきの長さですよ。村上春樹さんのこの作品への思い入れの深さが伝わってきます。

        映画「華麗なるギャツビー」のニックがトビー・マグワイア、監督がバズ・ラーマンということを今さら知ってドキドキしています。観たい!たぶん観ないけど!爆
        映画から遠のいて十何年…以前はアカデミー賞授賞式までチェックしていましたが、興味がなくなるとこんなもんです。
        >> 続きを読む

        2021/10/06 by あすか

      • コメント 4件
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      幼年期の終り

      アーサー・C・クラーク

      4.3
      いいね!
      •  異星人との接触で人類は成功を約束されたと思いきや、実はそんな事は些細なことであり人類の未来は全く違っていたという題名通り、壮大な物語。オーバーロードの謎と動向を楽しく考えながら一気に読めます。謎は全て解けて満足。再読するとオーバーロード視点でまた別の感じを(悲哀)受けそうなので後で読もうと思います。
        >> 続きを読む

        2018/08/02 by pasuta

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