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カテゴリー"記録、手記、ルポルタージュ"の書籍一覧

      モリー先生との火曜日

      AlbomMitch , 別宮貞徳

      5.0
      いいね!
      •  素晴らしいです。
        近年読んだ本の中で3本指に入ると思います。
        是非とも すべての人に読んでもらいたいです。

         本書はALSという不治の病にかかってしまった大学教授と、
        彼のもとを16年前に巣立っていった著者との再会から始まった
        「人生の意味」をテーマとした毎週火曜日のディスカッションの集大成です。
        著者とモリー先生は「ふたりの最終論文」と称しています。

         愛、仕事、社会、家族、老い、許し、そして死そのものにいたるまで、
        さまざまな題目に対し非常にニュートラルな価値観から講義が展開されます。

         そのすべてが とても真っ直ぐで理解しやすい言葉でかたられています。
        死を真正面から捉えて受け止めたモリー先生のつむぎ出す言葉は心の奥深くに届きます。
        そして、とても考えさせられます。

         オグ・マンディーノが気に入って最近 何冊か読みましたが、
        人生の素晴らしさや目的、意味をテーマにしていることは同じでも、
        内容・質はずいぶんと異なります。

         オグ・マンディーノの本は優しい言葉と雰囲気で
        ゆるやかに読者の思考を誘導するところがあり、
        成功を求める価値観がベースにあります。
        そしてキリスト教色が強くでているものが多いです。

         対して、本書はもっと素朴に普段着の文章で訴えてきます。
        少しでも宗教観ただよう本が嫌いという方にもおすすめできます。

         ネタバレはあまりしたくありませんが、
        本書のことばを少し引用して紹介の終わりにしたいと思います。
        「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べるんだよ」
        「用意はいいか?するべきことをやっているか?なりたいと思う人間になっているか?」
        「文化がろくな役に立たないんなら、そんなものいらないと言えるだけの強さを持たないといけない。自分の文化を創ること」
        「ほんとうに満足を与えてくれるものは自分が人にあげられるものを提供すること」

         あなたにとって 申し分のない一日 とはどのようなものですか?
        >> 続きを読む

        2015/02/01 by kengo

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      シ-ラという子 虐待されたある少女の物語

      入江真佐子 , HaydenTorey L

      4.7
      いいね!
      • 【私を見捨てないで! しぇきにんがあるんだよ!】
         子供に火をつけてしまった6才の女の子……というところから物語は始まります。
         主人公はシーラという6才の女の子。
         アル中の父親と季節労働者のキャンプで生活しています。
         ある日、近所に住む子供を連れ出し、火をつけてしまうという事件を犯し、警察に捕まります。

         彼女は精神病院に収容されることになるのですが、どこの施設も満杯。
         それで、作者のトリイ・ヘイデン(ノン・フィクションだそうです。作者は教育心理学者で特殊学級を受け持っていました。)のクラスに取りあえず入れられることになりました。

         シーラはとても不潔で反抗的で、そして何かにとてもおびえているようでした。
         作者はシーラに色々なことを教えようとしますが、どんなテキストを用意しても破って捨ててしまうような子供でした。
         シーラの……おそらく恐怖が、他の子供達にも伝染して、教室はパニックになったりもします。
         でも、作者はシーラの心の中にある、とても素晴らしい知性のきらめきに気付きます。

         さあ、そこからが忍耐です。
         作者は本当に根気強くシーラと接していきます。
         シーラも、自分のことを愛してくれる人がいるということに気付いて、徐々に心を開いていきます。
         シーラは児童虐待の被害者だったんです。
         満足な教育を受けられなかったばかりではなく、すさんだ家庭で、ひどい仕打ちを物心ついたころからずっと受け続けていた子供でした。

         作者がシーラに「星の王子様」を読んであげるところが印象的でした。
         …… 王子がキツネに「友達になって」って言います。
         でも、キツネは「「君に飼い慣らされているわけじゃないから、友達にはなれないよ」って答えます。

         キツネ:「人間っていうものは、この大切なことを忘れているんだよ。だけど、あんたは、このことを忘れちゃいけない。めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。まもらなきゃいけないんだよ。バラの花との約束をね…」

         このお話を聞いていたシーラが言います。
         「あたしもトリイを少しは飼い慣らした。そう? トリイはわたしを飼い慣らし、あたしもトリイを飼い慣らした。だから、あたしもトリイにシェキニン(言葉がまだ十分ではなく「責任」と言えません)がある。 そう?」
         「飼い慣らした責任」です……

         その後、シーラはどんどん素敵な女の子に成長していきます。
         シーラが成長するということは、周りの人達も成長するということです。
         作者も父親も、シーラと共にいた人達は、みんな成長していきました。
         父親も、ちょっとだけお酒を控えて、安っぽいながらもちゃんとしたスーツを着てシーラに会いにいったりもします。
         このまま、シーラはきっと素敵な女の子になっていけそうって思っていたのに……

         あぁ、でも、人間って奴は……
         叔父が幼いシーラを強姦してしまいます。
         ひどく傷つき、また元に戻ろうとしてしまうシーラ……
         何故こんなにひどい目に遭わなければいけないの?
         ひどすぎます。

         その後、作者が転任するエピソードがあります。
         シーラは、私を「飼い慣らした責任がある」と言って、作者を非難します。
         そう、愛情に飢えているのですよね。

         ご紹介はここまで。
         これも、読みながら何度も泣いてしまった作品でした。
         続編も出ています。
         興味をお持ちになったら、まず、この1冊から。
        >> 続きを読む

        2019/02/28 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      アウシュビッツを一人で生き抜いた少年

      渋谷節子 , 池田礼子 , BuergenthalThomas

      2.0
      いいね!
      • ポーランド系ユダヤ人を父に、ドイツ系ユダヤ人を母に持つ著者は
        チェコスロバキアで生まれた。そのチェコスロバキアにナチス・
        ドイツが侵攻して来る。

        一家はポーランドに移住するがそこにもナチスの脅威が迫る。父の
        機転で何度かの危機を脱するものの、ユダヤ人であることを唯一の
        理由として親子は強制収容所へ連行される。著者、5歳の時である。

        最初に母と引き離された。しばらくは一緒の収容所にいた父とも
        離れ離れになった。「子供は役に立たないから殺してしまえ」と
        の強制収容所を、奇跡的に生き延び、10歳で解放された回想録
        が本書である。

        貴重な回想録なのだろうと思う。アウシュヴィッツからザクセン
        ハウゼンへの「死の行進」では凍傷で足の指2本を失ったものの、
        他の子供たちのように命まで失うことはなかった。

        幸運だったと、著者は言う。確かにいくつかの幸運が重なって
        いた。アウシュヴィッツの医師は著者を守ってくれたし、ザクセン
        ハウゼンで知り合ったノルウェー人の青年は出来うる限りの気遣い
        を見せてくれた。

        ただ、著者が生き延びられたのは幸運だけではなく、離れ離れに
        なるまでに事あるごとに父が示してくれた危機を脱する際の冷静
        さや、生来の前向きな心持ちもあったのではなかろうか。

        「僕が諦めたら、奴らが勝つ」。そんな思いで、父の機転を受け継ぎ、
        著者は過酷な現実を生き抜いた。

        残念ながら著者に生き抜く為の手本を示してくれた父は収容所で
        亡くなっているが、母は生き残り、孫を抱きしめることが出来て
        いる。

        戦争と差別意識がもたらす悲劇の検証として参考になるのだが、惜しむ
        らくは翻訳が直訳っぽいところだ。

        英語が話せて読み書きが出来ても、商業レベルの日本語の文章を書く
        素養がなければ翻訳には手を出さない方がよかったのではないかな。
        ふたりの訳者の名前を見て、そう思った。

        プロの翻訳家による新訳で読みたいところだ。

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        2018/05/01 by sasha

    • 1人が本棚登録しています
      自閉症だったわたしへ

      ドナ・ウィリアムズ , 河野万里子

      4.5
      いいね!
      • 自閉症と診断された女性ドナ・ウィリアムズが、
        彼女の内側から見て感じた自閉症的世界を表現した作品。
        自閉症患者が文章を書くこと自体が一般に非常に困難なため、
        非常に貴重な資料になった。

        ドナは不幸にも親から虐待やネグレクトの待遇を受け、
        周りの人間の無理解や彼女を女として食い物にする男たちにいいように使われ、
        さんざんな人生を歩んでくる。

        ベストセラーになったのには、彼女の生い立ちの不幸さや
        性的虐待に近いセンセーショナルな内容が赤裸々に語られているから
        という側面がない訳ではない。ように思う。

        心の防御として、別人格の形成や、人となんとか関わるための「方法」を編み出すが、それは新たな障害を産んでしまったかのように思える。

        彼女のケースは、自閉症という診断が下されたことにより、
        自分の今までの「異常な世界」を客観視することができ、
        自分を「きちがい」「変人」ではなく、障害者であるととらえることで
        自分の過去を自分のせいではなく病気のせいだと割り切れ、
        社会に適応する道を見出せたところが素晴らしいと思う。

        「病気を肯定することからスタート」
        これは、自閉症患者にとって、見本となる先駆者的な役割を果たしただろう。
        かつては、親が精神障害を認めたくないがために子どもを病院に連れて行かないというケースが多かったのだから。

        「自閉症的」という傾向は健常なものの中にも存在する。
        社会性・興味・コミュニケーションの障害は、
        健常者から軽度自閉症者までの間にははっきりとした境界はなく曖昧だ。

        第一、ちょっとおかしな人など、どこにでもいる。
        自分の精神が強靭で健康そのものだと胸を張れる人が
        どれだけの確率で存在するだろう?

        しかし実際の自閉症は通常の精神病とは違い、後発性というものではない。
        そして、程度、傾向も各自多様であり、この本を読んで
        自閉症は克服可能だとか、自閉症全体がわかったつもりになるのはいかがなものかと思う。

        ドナは自分の内面から逃げずに闘ってきた。
        その勇気ある記録ではあるが、自閉症を克服した先勝報告ではないのだ。


        ドナの不幸は「自閉症だったこと」ではなく、愛情の欠如から正しい取り扱いを受けずに成長し、
        心を傷つけ重症化したことだと思う。

        なぜなら、彼女の「自閉症」はこの文章、そしてその後の社会復帰ぶりをみるからに、
        非常に軽度で知的障害もないことがはっきりしているから。
        だから私には高機能自閉症とかアスペルガー症候群とか言われる部類の精神障害ではないかと思える。


        重度の自閉症患者をかかえる家族の悩みはこの本でははかり知ることもできないだろう。
        そして、精神障害=不幸ととらえるのも正しくないだろう。
        >> 続きを読む

        2012/07/03 by 月うさぎ

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      奇跡の脳

      竹内薫 , Taylor, Jill Bolte

      5.0
      いいね!
      • 1.指を組んだ時、どちらの手の親指が上に来るか
        2.腕を組んだ時、どちらの腕が上に来るか
        ちなみに、私はどちらも右。
        と言う事は・・・インプット(1)も、アウトプット(2)も左脳派か?
        (どこまで当たっているかはわかりませんが。)

        左脳は論理的思考、言語感覚などが優位なデジタル脳、右脳はイメージや音楽などの芸術性が優位なアナログ脳、くらいの知識だった。
        しかし、本書を読んでその2つが真逆な働きをしながらも、人として無くてはならないバランスを取り合っているのだと知る。

        脳科学者である著者が、37歳で脳卒中により左脳機能を喪失。
        8年のリハビリを掛けて脳機能を再構築した記録です。

        脳内で出血が始まり、徐々に失われていく左脳の様々な認知機能、右脳だけで感じる世界観、そして開頭手術による血栓除去後の壮絶なリハビリ、左脳機能の再構築、右脳・左脳で感じる「心」の変化が、まるで脳内SFドラマの様に綴られている。

        右脳だけの世界は、まさに「涅槃」の世界。
        自分と外界をわかつ境界線が無くなり、自分が「流体」の様に感じられ、世界とひとつとなる感覚。
        時間の概念がなくなり、過去も未来も無く、まさに「今を生きている」感覚。
        それは究極に幸せで平和な世界なのだとか。
        宗教体験や臨死体験でよく聞くフレーズのようだ。

        左脳機能が徐々に回復するにつれ、不安や恐怖、怒りを作り出しているのは、明らかに左脳が作る「判断」なのだと自覚する過程はとても興味深い。
        右脳は、ただ「感じる」のみ。
        (ただ、あらゆるエネルギー体から感じるので消耗も激しい)
        著者自身、右脳の「涅槃」の世界を手放すのは、本当に寂しいかったと書いている。
        しかし、そのユートピア(?)を振り切って、以前の自分とは違う左脳を作り上げていく。
        常に止まらない「脳のお喋り」を止める方法、「判断」から来る負の感情をコントロールする術を
        新らたに発見出来たのは、脳を知りつくした科学者だったからこそに思う。

        巻末には、脳卒中患者のための病状評価や患者への接し方の付録がついている。
        一般的に、右脳は原始的な脳と言われたりするが、決して人間への尊厳を欠いてはいけないと戒めになる。

        それにしても、なぜ人類は右脳と左脳、ふたつに分かれて発達したのだろう?
        残念ながらその進化までの解説は無かったけれど。









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        2017/09/23 by FUKUchan

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      モリ-先生との火曜日

      別宮貞徳 , AlbomMitch

      5.0
      いいね!
      • すばらしい本だった。

        病気のため、死が間近いモリー先生が、人生とは何かについて、毎週火曜日に授業を行う。
        本当にあった実話。

        どれも本当にすばらしいメッセージの数々で、本当に感動した。

        特に、この国(アメリカのことだけれど、日本も全く同じだろう)の文化は常にお金や物について洗脳してきており、そうした文化による洗脳を自分でしっかりと見て考えて、自分自身の本当の文化を築くことの大切さを説いているところは、とても心に響いた。

        世間の人は死を見つめないため、半ば眠っているようなもので、本当に大切なことに気付かず、ただお金や物ばかりのためにあくせくとしている。
        しかし、死をきちんと見つめれば、ほとんどのことは問題にならず、自分にとって何が本当に大切かが問題になってくる。


        「いかに死ぬべきかを学べば、いかに生きるかも学べる。」

        「人を愛することにみずからを捧げよ、自分の周囲の社会のために尽くすことにみずからを捧げよ、自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすことにみずからを捧げよ。」

        「本当に満足を与えてくれるものは、自分が人にあげられるものを提供すること。」

        「ただ問題は、ありのままの自分を受け入れ、それを大いに楽しむことだ。」

        「三十代が今の君の時代、自分の今の人生のよいところ、本当のところ、美しいところを見つけなければならない。」

        「人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって外に出すか、どうやって中に受け入れるか、その方法を学ぶことだよ。」

        「人間はあぶないと思うと卑しくなる。危険を感じれば、自分のことしか考えなくなる。」

        「多くの人が無意味な人生を抱えて歩き回っている。自分では大事なことのように思ってあれこれ忙しげに立ち働いているけれども、実は半分寝ているようなものだ。まちがったものを追いかけているからそうなる。人生に意味を与える道は、人を愛すること、自分の周囲の社会のために尽くすこと、自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすこと。」

        「互いに愛しなさい。さもなくば滅びがあるのみです。」

        「逃げ出すより、自分なりの文化を創るのが肝心。」

        「われわれ人間の持っている最大の欠点は、目先にとらわれること。先行き自分がどうなるかまで目が届かないんだ。自分にはどういう可能性があるか。そのすべてに向かって努力しなければいけないんだ。」

        「死で人生は終る。つながりは終わらない。」

        「人生に「手遅れ」というものはない。」


        どれも本当に、心に刻むべき言葉と思う。
        >> 続きを読む

        2012/12/21 by atsushi

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      心臓を貫かれて

      MikalGilmore , 村上春樹

      4.0
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      • 殺人を犯し、自ら死刑を望んだ男とその家族について末弟である著者がまとめた作品。

        たしは結構犯罪マニアというか犯罪者心理や犯罪そのものに関心があるが、この事件と犯人については知らない。
        何十人と殺害したり死体の一部を記念として集めたりといった猟奇的な犯人に比べればこの犯人の起こした事件は珍しいものとは言えないから日本での報道は余り無かったのではないかと思う。報道があったかどうかさえ知らない。
        この犯人の特異性と言えば、自ら処刑を望んだことだろう。

        著者マイケルはモルモン教徒の多い地域で、非モルモン教徒である父親とモルモン教徒である母親とフランク・ジュニア、ゲイリー、ゲイレンの三人を兄としてギルモア家に生まれる。
        事件を起こした兄はゲイリーである。

        モルモン教とモルモン教徒についてはじめにページを割いて書かれている。
        日本人は信仰について関心のないひとが多いようで、キリスト教徒であることを話すだけで、輸血しちゃダメなんでしょと言われたりで、何かとゴッチャになっているひとも多いし、カトリックとプロテスタントの区別もよくわからないひとも多い。そういうことはもう慣れているので構わないけれど(ちょっと面倒ではある)。
        そんなこの国でひとりだけモルモン教徒のひとと話したことがある。正直モルモン教自体がよくわからないでいるのに、キリスト教徒であるとウッカリ漏らしたのが良くなかったのか自身の信仰について長々話されたことがあり、戸惑った憶えがある。
        モルモン教徒のかたはとても熱心な信者が多いのか、そのときもキリスト教に比べいかにモルモン教が素晴らしいかを語られ、どう対応したら良いのか悩み、内心ムッとするところもありながら日本人らしく曖昧な笑顔で終始流した。
        この本で少しモルモン教を知ったが、熱く語られたときに感じた奇異さのようなものの正体がわかったような気がする。

        本書では殺人犯の兄を持つ弟という立場であるマイケルが、出来るだけ冷静な視点で家族を描いている。母親の生育過程に始まり、母親が父親と出会い結婚し、家庭を持つといった一連の経過が丁寧に描かれている。マイケル自身は末弟であるので、実際に目にしたことよりも、恐らく多くは母親から聞いたことが大部分だろうと思うが、特定の誰かに肩入れしている様子は余り感じられないところが作品として良いと感じる。

        ギルモア家のことや全体の感想は下巻にて記載する。
        >> 続きを読む

        2016/02/29 by jhm

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      心臓を貫かれて

      MikalGilmore , 村上春樹

      4.0
      いいね!
      • 殺人事件を起こした兄を持つ弟が家族と兄、自分自身について綴った本の下巻も読み終えて感じたこと。

        詐欺と失踪を繰り返し支配的な父親、そんな男と別れることも出来ず流され精神的にも安定を欠く母親。
        こういう親になるには不適格とも言える人物の間に生まれて育つことにより、犯罪に手を染めやすくなることは容易に考えられる。
        ゲイリーはまさに絵に描いたようである。
        それでも、みんながみんな犯罪者になったわけではない。事実ギルモア家の兄弟で殺人を犯すに至ったのはゲイリーのみである。
        結局は、家庭に原因がある、そんな簡単なことではない。
        家庭によって犯罪者となる種は植え付けられはしても、その種を育ててしまったのは自分に他ならない。
        どんな犯罪者に関する書物を読んでも、やはりこの結論になってしまう。

        この本で、誰が最も気の毒としか言えないかというと、長兄フランク・ジュニアに他ならない。
        父親に疑いをかけられ暴力を受け(最も疑われたのはゲイレンだけれど)、庇うべき母親からも憎まれる。それでいて長兄であるという責任は負わされる。
        ただ理不尽としか言えない。
        それでもフランク・ジュニアは真っ直ぐ懸命に生きている。
        ゲイリーと同じように、いや、ゲイリーよりも多くの種が蒔かれているにもかかわらず、フランク・ジュニアは育てることはしなかった。
        同じ家庭で、より辛い目にあっても道を踏み外さないひとはいる。何がどれだけあっても自分の行為の責任は自分にある。免罪符にはならない。

        暴力を振るい支配するばかりであっても親は親。
        死ぬとなれば動揺するし悲しいし死なないで欲しいと思う。
        こういう感情は至極当然と言えば言えるけれど、不思議でもある。親子というものは他人にはわからないものだと思う。
        兄弟姉妹も血は繋がっているが、親子の関係とは明らかに異なる。
        夫婦や友達、親戚や社会など様々な繋がりはあるが、親子は一番不思議な関係なのかもしれない。
        親は選べない、これは本当にそうだとも思わされる。

        本書を書いたマイケルは、かわいそうな兄だから犯罪を犯しても仕方ないとは言っていない。それでも文中から謝罪する姿勢は窺えなかった。
        ゲイリーの母親も、息子が殺人を犯したこと自体に衝撃は受けても、殺されたひとや遺族に詫びたいというより息子を死刑にしないでと息子のことばかり考えている。
        ここもわたしには理解が出来ない。
        何よりまず申し訳ないという気持ちがあって当たり前だと思うが、そうではないようだ。ひとに尋ねられれば申し訳なく思っているとこたえるとは思うけれど、そうではなく自主的に思わないことが理解出来ない。
        こういう傾向は日本人でも同じような気がする。自分の子供を心配するのは普通だと言うひともいると思うが、普通でないことをした子供よりもまず考えなくてはならないことがあるはずなのに。親である前に人間として。

        犯罪を起こした家族を持つ人物の描く家族物語は、答えは何も教えてはくれないけれど、多くのことを考えさせてくれる。
        自分と家族との関係を見つめ直す機会にもなる本だと思う。
        >> 続きを読む

        2016/03/02 by jhm

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    • 2人が本棚登録しています
      空へ エヴェレストの悲劇はなぜ起きたか

      KrakauerJon , 海津正彦

      4.0
      いいね!
      • 商業公募登山隊の功罪について深く考えされられる

        2016/02/15 by erugus

    • 1人が本棚登録しています
      ぼくはお金を使わずに生きることにした

      吉田奈緒子 , Boyle, Mark

      5.0
      いいね! kentoman
      • いやあ~凄いなあ~ここまで徹底すると、こうなるのか。
        つまり、そこまで考えてみないと解らないということだ。
        逆に、それだけ、ものが見えなくなっているということだと思った。
        魚の切り身を見て、それが魚の姿だと思う子どもと同じこと。
        いろいろ苦労しながらも、楽しみを忘れない姿勢がいいなあ~と思うし、だからこそ、このような生活もできるのだろう。
        ここから学べることは多いと思う。
        ものは考えようだということ、それが根底にないといけないのだと思う。
        >> 続きを読む

        2014/08/14 by けんとまん

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    • 3人が本棚登録しています
      キリング・フィールドからの生還 わがカンボジア「殺戮の地」

      WarnerRoger , NgorHaing , 吉岡晶子

      5.0
      いいね!
      • ヴェトナム戦争は隣国であるカンボジアにも飛び火した。

        「いんですよ、そんなこと。あなたはちゃんと来てくれたじゃないか。
        シドニー、 あなたはちゃんと来てくれたんだ」

        映画「キリング・フィールド」のラスト。カンボジア内戦を取材して
        いたアメリカ人ジャーナリストとカンボジア人助手の再会のシーンで
        ボロボロと泣いた。

        カンボジア人助手を演じ、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞で
        助演男優賞を受賞したのがそれまで演技経験のなかった本書の著者
        ハイン・ニョルであり、彼も「キリング・フィールド」でクメール・
        ルージュ支配下のカンボジアを生き延びたひとりでもあった。

        アメリカの傀儡政権であったロン・ノル将軍を倒したポル・ポト率いる
        クメール・ルージュは農業重視の原始共産制社会を目指した。プノンペン
        などの大市都市の住民を強制的に農村に移住させ、集団農場で農業に従事
        させ、食糧の増産をはかった。

        事業で成功した父を持ち、自身も医学部に通い産婦人科医であった著者
        も例外ではなく、プノンペンを追われ、次々と農村を移動させられて
        クメール・ルージュの言う「自然への攻勢」に駆り出される。

        知識人階級を憎むクメール・ルージュに医師であることがばれれば
        即刻殺される危険がある。それが証拠に農村の共同体からは毎日の
        ように兵士によって何人かが森に連れていかれ、二度と帰っては
        来なかった。

        クメール・ルージュのスローガンとは反対に共同体は慢性的に食糧が
        不足し、共同食堂で出されるのは薄い粥だけ。空腹を満たす為に野生
        の食料を隠し持っていれば、それが処罰の原因になる。

        著者も3回、兵士に連行されている。1度目は隠していた食料を見つけ
        られたこと。あとの2回はプノンペンで医師をしていたことの密告が
        原因だった。

        連行された監獄などで著者が目撃した拷問や処刑の描写に吐き気がする。
        生きたまま足元から火と煙で燻される。生爪をペンチではぎ取られる。
        妊婦の腹を裂いて胎児を取り出し、その胎児をまるで戦利品のように
        監獄の軒下に吊るす。

        人間はどこまでも残虐になれる動物なのだなと感じた。

        なんともやり切れない現実だが、救いだったのは著者の妻であるフオイ
        の存在だった。しかし、そのフオイは子供を身ごもりながららも早産の
        為に命を落としてしまう。産婦人科医でありながらも、なす術もなく
        妻と子供を一度に失ってしまうなんて…。

        地獄のようなクメール・ルージュの支配も、長くは続かなかった。僅か
        4年で崩壊の足音が聞こえている。

        タイ国境を目指しての脱出行、難民キャンプでの暮らしを経て、やっと
        アメリカへの亡命が叶い、「キリング・フィールド」へ出演することに
        なった過程、撮影の裏話なども綴られている。

        映画初出演後もいくつかの映画に出演し、人権活動にも携わっていた
        著者だったが、56歳を目前にしてロサンゼルスの自宅近くで強盗に
        よりその生涯を閉じた。

        ヴェトナム戦争でナパーム弾で焼かれた少女は苦難の越えてカナダで
        幸せな暮らしを手にしたのになぁ。

        運命というにはあまりに辛いわ。
        >> 続きを読む

        2018/02/02 by sasha

    • 2人が本棚登録しています
      秘密工作者 チェ・ゲバラを殺した男の告白

      Rodriguez, Felix I , 落合信彦 , Weisman, John

      1.0
      いいね!
      • 凄い、凄い!何が凄いって表紙カバーに記されている訳者名が、
        著者の名前よりでかいのが凄いっ!

        さすが世界を股にかけて来たノビーだっ!CIAに200人の知り合いが
        いるとか豪語していたから、本書の著者も知り合いなのかしら?

        で、凄いのは表紙カバーのデザインだけで内容はというと「へぇ
        へぇ、そうでっかぁ」って感じ。

        革命家チェ・ゲバラと言えば日本でも人気があるからサブタイトル
        に入れたのだろうが、著者はCIAのエージェントしてボリビアでの
        ゲバラ拘束には関わっているだけで実際に射殺したのはボリビア
        政府軍の兵士だからね。

        ウソを書いてはいけません。あ、そうか。訳者がノビーだからウソ
        でもいいのか。だって、ノビーと言えば書店のノンフィクション・
        コーナーよりも空想小説コーナーが似合う捏造ジャー…(以下、自粛)。

        さて、肝心の内容。著者はカストロ憎しの亡命キューバ人。紆余曲折
        あってCIAに在籍することになった。そこで実際に携わった、ボリビア
        でのゲバラ生け捕り(ボリビア政府によって見せしめの為、処刑)や、
        カストロ暗殺計画、ヴェトナム戦争等について書かれている。

        フィデル・カストロがそのカリスマ性で革命後のキューバをまとめて
        行った一方で、革命前のバティスタ政権の富裕層でアメリカに亡命し
        たキューバ人から、その死を望むくらいに憎まれていた。

        だから、2016年にカストロの死が伝えられると狂喜乱舞する人々の
        様子が報道されたのは知っていた。豊かな暮らしを根本から覆された
        恨みなのだろうなと思って受け止めた。

        なので、本書ではアメリカの傀儡政権側を支持した人々がバティスタ
        時代をどう評価しているか知りたかったのだが、その点に関しては
        皆無だった。

        ただただ、カストロが憎いだけ。その恨みつらみが著者とCIAを繋ぐ
        ことになったのだろが、結局は638回もカストロ暗殺計画を立てて
        おきながらすべて失敗。カストロは天寿を全うしましたとさ。

        ヴェトナム戦争にしても同様。著者の言いたいことを簡単にまとめると
        「ヴェトコン殲滅に尽力しました」となるのだが、こちらもアメリカは
        撤退するしかなかったじゃ~ん。

        よくこんな作品を世に送り出したなぁと思う。CIAがただのオマヌケ
        集団に見えるし、キューバに関しては益々カストロに肩入れしたく
        なる不思議な内容だった。

        まぁ、キューバにしろ、ヴェトナムにしろ、アメリカという巨人に
        対峙した方に感情移入しちゃうんだよね、わたしゃ。

        書かれている内容のほぼすべてに反感を抱かせてくれる読書体験
        だった。めったにない体験をしたことだけが収穫かな。
        >> 続きを読む

        2019/03/09 by sasha

    • 1人が本棚登録しています
      満州奇跡の脱出 170万同胞を救うべく立ち上がった3人の男たち

      MaruyamaPaul Kuniaki , 髙作自子

      5.0
      いいね!
      •  第二次世界大戦後、
        満州に取り残された日本人の引き上げが
        単なる民間人である3人の男達の
        それこそ命がけの運動の果てに成されたものであるということを
        本書を読んで初めて知りました。
         
         しかも、それが実行に移されるまでには
        カトリック境界の大きな助力があり、
        実際の作業にはGHQが多大な助力をしていてくれたのだということも。
        トルーマン大統領の「中国に残存する日本勢力を排除したい」
        という意向があったからだとしても、
        マッカーサー元帥の人道的な理解と協力がなければ
        170万人もの日本人の引き上げは実現し得なかったでしょう。
        時間がたてばたつほどに、
        過酷な状況下にいた日本人達はどんどん亡くなっていた筈だからです。
         
         その非常な状況を目の当たりにしていたからこそ、
        なかなか動かない(動けない)日本国政府を頼らず
        丸山、新甫、武蔵の3名は文字通り必死で
        引き上げ運動を行ったのでしょう。
         
         満州での準備や引き揚げ作業中にかかった経費は
        日本国が後日 返済するという約束が
        四角四面な法律を盾に保護されたという酷い話も、
        結局その費用は3人の男達が資材をなげうって返済した
        という話も、本当に多くのことを
        本書を読むまで全く知りませんでした。
         
         日本は戦前・戦中・戦後のことを
        あまりにも語らな過ぎる国だと思います。
        GHQによるウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムが
        非常に周到で効果的なものであったとしても、
        戦後70年を経過した今 
        日本人は日本人であることにもっと自信をもって
        過去をふり返って良いのではないかと思います。
        と言うか、そろそろそれが必要な時期なのではないか
        といったことを本書とケント氏の本を読んで考えさせられました。
        できれば多くの方に手にとってみていただきたい一冊です。
        >> 続きを読む

        2017/05/28 by kengo

    • 1人が本棚登録しています
      ハンナのかばん アウシュビッツからのメッセージ

      LevineKaren , 石岡史子

      3.0
      いいね!
      • (図書館から借りて読む)一つの絵とカバンを手掛かりに、なぜ希望のある一人の少女がユダヤ人という理由でアウシュビッツ収容所で殺さなければならなかったのかと、この本のページをめくる度に悲しくもなり同時に憤りを感じてしまいました。 >> 続きを読む

        2012/09/15 by xy-562244

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています
      未解決事件 (コールド・ケース) 死者の声を甦らせる者たち

      CapuzzoMike , 日暮雅通

      4.0
      いいね!
      • 未解決事件の死者の声を蘇らせる者たちの話。
        ヴィドック・ソサエティという未解決事件捜査のための専門家が集まった会員制組織が創設され、事件捜査に活躍していく話は、ノンフィクションとは思えない程信じられないような内容で、600頁もある分厚い本に引き込まれた。
        と同時に世の中には凄惨な犯罪が数多くあり、解決に至っていないものも少なくないことに怖さを感じた。
        >> 続きを読む

        2013/07/27 by freaks004

      • コメント 7件
    • 2人が本棚登録しています
      リトル・トリー

      和田穹男 , CarterForrest

      3.0
      いいね!
      • 教科書に一部載っていたことから読んだ本。
        学生の時もとても好きだった。

        最近になって読み返したけど、今でも面白い。

        子どもの時よりも、時代背景や、大人の気持ちがわかって読めて、
        すごく感動した。

        男の子版ハイジのようで、主人公も魅力的だし、祖父母がとても素敵。

        最後は主人公がどう大人になるのか心配もしたけど、この著者が主人公自身だということなので、だいぶ大人になってから作家としてデビューしたということらしい。

        ものすごい時代背景。アメリカって大きい!!

        10歳くらいの主人公が経験したことを、私はまだ経験していないかもしれない。

        また読みたい。
        >> 続きを読む

        2017/04/14 by nanamu

    • 2人が本棚登録しています
      脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち (ヴィレッジブックス)

      スラヴォミール ラウイッツ

      4.0
      いいね!
      • 「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」驚愕の実話。第二次大戦中シベリアでの捕虜の決死の逃亡劇。

        レビューの続きはこちらへ↓

        http://youyou-bookmovie.blog.so-net.ne.jp/2016-03-10
        >> 続きを読む

        2016/03/11 by youmisa

    • 1人が本棚登録しています
      モリー先生の最終講義 死ぬこと・生きること

      松田銑 , SchwartzMorris

      5.0
      いいね!
      • 昨年の暮れの頃、たまたま、『モリー先生との火曜日』という本を読んで、とても感動した。
        そしたら、十四年ぐらい前に、うちの母がこの本を買っているというので、本棚に長く置きっぱなしになっていたのをこの前見つけて、やっと今日読み終わることができた。
        『モリー先生との火曜日』もとても良い本だったが、この本もとても良い本だった。

        モリー先生ことモリス・シュワルツさんは、もともとは社会心理学の大学の先生だったが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という少しずつ身体が身動きができなくなっていく病気になった。
        その中で、求めに応じていろんな人に人生のエッセンスを語った。
        それが大反響となり、これらの本になったそうである。

        この本では、率直に、人間がいかに病気や死を受け入れ、いかに周囲の人と関わり、自分の人生と関わり、あるいはもっと高次の存在と関わっていくかについて、簡潔かつ深い提言のメッセージが書かれている。

        静かに素直に人生の現実をあるがままに受け入れること。
        時には感情、特に否定的な感情も自分の一部だと認めて、吐き出して良いこと。
        そのうえで、気持ちを切り替えていくこと。

        それらのことがはっきりと、きっぱりと勧めてある。

        モリー先生のこれらの言葉の数々は、本当に深い諦観と智慧に満ちていて、読みながら、いろんなことを思いだし、そしてそのとおりだとうなずかせられた。

        周囲の人々や物事に、できるだけ広く心を開いていくこと。
        本当に共感できるものに惜しみなく心を開いていくこと。
        そのことも、モリー先生が身をもって実践し、伝えてくれていて、とても心に響いた。

        そして、他人に対する心構えと同時に、自分に対して親切にすることを明晰に書いてあるのには、とても共感し、考えさせられた。
        自分自身に対してやさしくするのは、自分の親になるのと少し似ており、親が子どもに示すような忍耐と励ましと親切を自分自身に示すべきだというメッセージは、本当に成熟した人間の精神の高みを教えられた気がする。

        自分が本当に興味を持っていることは何か。
        自分はどんな人間になりたいか。

        それらのことへの真摯な問いかけも、繰り返しこの本を読み直して、考えたいと思った。

        自分を客観的に距離を置いて眺め、何が起こったか、どうしたら距離をおいて観察できるか、それから私は何を学べるか?を考えるということも、とても大切な智慧だと思った。

        『モリー先生との火曜日』とともに、繰り返し読んでいきたい本だと思った。
        本当に稀有な達観と境地の本だと思う。
        >> 続きを読む

        2013/02/07 by atsushi

      • コメント 6件
    • 2人が本棚登録しています
      国境を越えて 戦禍を生きのびたユダヤ人家族の物語

      TanakaShelley , TaylorStephen , KaplanWilliam , 千葉茂樹

      5.0
      いいね!
      • リトアニアのメーメルというバルト海に面した港町に住む、カプランさんという夫婦と息子・娘の四人家族は、裕福に平和に暮らしていたら、1939年、ナチスドイツの侵攻を前に、祖父母が住んでいるカナダまで逃げていくことを決意する。

        しかし、リトアニアからソビエト・日本を経由していくためのビザは簡単には手に入らない。

        一縷の望みを託して、リトアニアにある日本領事館に行くと、何百人という人がすでに列に並んでいた。

        その時、黒塗りの車がちょうど領事館から出ていくところだった。

        カプランさんのお父さんは、ちょうど目の前にゆっくり来たその車の窓を叩き、必死にビザを頼むと、ちょうど本国の命令で領事館を出ることを命じられている杉原千畝の一家で、カプランさん一家のためのビザを書いてくれた。

        しかし、ソビエト国籍であるカプランさんのお母さんの分のビザはそこではもらえず、ソビエト大使館で再三頼み、やっと発行してもらい、ぎりぎりでシベリアを越えていく鉄道に乗り込む。

        途中、悪い車掌に荷物をだましとられたり、鉄道の旅の途中で仲良くなったユダヤ人の家族が、書類の不備で逮捕されたりといった大変な思いをする。
        日本に渡るために、出国許可証をもらうために有り金をはたいて役所にわいろを贈って、やっとソビエトからの出国が認められる。

        日本では、ユダヤ人の援助をするキリスト教の団体もあったそうで、束の間骨を休めて、また長い船の旅となり、ついにカナダに到着し、再び長く鉄道に揺られて、ついにおじいちゃんおばあちゃんが住んでいる町にたどり着き、苦労しながらも新生活を始める、というところで物語は終わる。

        この絵本の作者は、このカプランさんの息子さんの息子さん、つまりお父さんから見れば孫にあたる人だそうだ。

        実体験が元になっているだけに、とても読み応えのある絵本だった。
        平和に暮らしていた一家が、これほど大変な思いをして、地球の半分ぐらいの長い距離を旅して逃げなくてはならないとは、なんということだろうと思う。
        と同時に、この時にユダヤ人たちに手をさしのべた、杉原千畝や神戸の人々は、本当に立派だと、同じ日本人としてうれしい気がした。
        だが、杉原千畝は本国の命令に背いたということで、外務省をやめさせられ、名誉が回復されたのはずっとのちのことだったそうだし、神戸のユダヤ人を援助していた団体は、あとで弾圧を受けて解散させられたらしい。

        あの時代、多くのユダヤ人が、ナチスの手によって殺された。
        中には、このカプランさんの一家のように、幸運にも生き残ることができた人々もいたが、それらの人々も本当に大変だったことだろう。

        私たちは、それらの歴史を忘れず、何かの機会があれば、もっと多くの杉原千畝のような人が現れるような国や社会でありたいと、あらためて思った。
        >> 続きを読む

        2013/04/18 by atsushi

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