こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


カテゴリー"小説、物語"の書籍一覧

      変身

      フランツ カフカ

      3.6
      いいね! chao Minnie Outsider
      • 読む年齢によって印象が異なる不思議な傑作。若き日に読んだときは、アナーキーな異端児に思えた。

        が、歳を積んだ今、引きこもりや不登校を超えてしまった主人公像が、ちくちくと胸に刺さった。

        角界、プロ野球界などで第一線を牽引した人材を辞任に追い込む組織の都合や、東京五輪に向け古い文化と体質を一掃しようと躍起になっている国策と横並びの世論にたちうちできない個人の閉塞感。

        リアル社会と、家族と社会から隔離されてしまう主人公グレーゴル・ザムサが生活してきた重苦しい陰鬱な部屋が重なってちくちくした。

        いつ読んでも現社会をリアルに映す面白すぎる傑作だぜ。
        >> 続きを読む

        2018/10/14 by まきたろう

      • コメント 1件
    • 他23人がレビュー登録、 70人が本棚登録しています
      モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)

      ミヒャエル・エンデ , 大島かおり

      4.2
      いいね! Minnie chao kuuta caramel sunflower Ringo oriedesi Tukiwami
      • 子供向けの本ですが、大人が読むと読後の解釈が変わって来ると思います。時間泥棒は今に通づるものがあると思います。面白いです。 >> 続きを読む

        2019/02/21 by naaamo

    • 他21人がレビュー登録、 80人が本棚登録しています
      モモ

      ミヒャエル・エンデ , 大島かおり

      4.2
      いいね! tadahiko Moffy
      •  星8つぐらいつけたい!素晴らしい一冊!
         現代の私たちにも当てはまることがたくさんたくさん書かれてあって、風刺表現に「うっ」と心刺されたところがいくつもありました。

         スピーディーに生活できるようになって、私たちは自分が時間を節約して気持ちになり、得したと思っている。けど、生活として、命を感じた生き方は既に失われ、節約と思っていた生き方は実は一番時間を無駄にした生き方となっている。しかも、多くの人は多分まだそれに気が付いていない。
         もちろん夢を叶えるため、目標達成の為には時間の節約が必要だ。けど、何事を行うのも機械的ではなく、心を込めたものでなければならない。
         本書に時間は心で感じるものだと書いてあった。
         心を失われた人には、時を感じることもない、時を失う、ということだろう。
         それは本当に生きているとはいいがたい。
        >> 続きを読む

        2018/03/09 by deco

    • 他9人がレビュー登録、 29人が本棚登録しています
      デミアン

      高橋健二 , ヘルマン・ヘッセ

      4.0
      いいね! Outsider Tukiwami
      • 究極の自己探求の物語。
        読了後、価値観を揺さぶられるような圧倒的な力があった。

        『いつも正しく、堅実な父母と姉妹。綺麗で清浄なものだけに包まれた家で、平和で安穏とした生活を送っていた少年シンクレール。

        しかし、その明るい世界の傍らには、もう一つの世界が存在している。一歩家を飛び出した先の路地や隣家では、押し込み強盗や殺人等、煤にまみれた背徳的な世界が広がっているのだ。

        正反対のように思えるそれら二つの世界は、隣り合わせに存在していた。明るい生活に属しながらも、どこか暗い世界の闇に心惹かれてしまう。繊細な筆致で描かれる、少年の心情の機微。

        そんなある時、シンクレールは不良少年に絡まれ、その時に放ってしまった心にもない嘘から、罪の意識に苛まれるようになる。誰にも相談できず独り苦しみ続けてきた彼の前に現れたのが、転校生のデミアン。彼は、シンクレールに、明るく綺麗な世界とは異なる、別の世界を魅せることになる』

        人間として生まれてきた意味。
        人は、人生で何を為すべきなのか。

        この本は、誰しもが一度は悩んだことのあるこの大きな問いかけに、真剣に挑んでいる。何のために生きているのか、そういう悩みを一度でも抱いたことのある人には是非手に取っていただきたい。ある一つの指針を示してくれると思う。

        たしかに、難解で、何度読み返しても中々頭に入ってこないねっとりした文章の数々が並んでいる本だとも思う。それでも、私は読むのをやめられず、夢中で読んだ。文章の持つ独特の雰囲気に圧倒され、惹きつけられ、なんとか書かれてあることの意味を理解したいという気持ちが昂ってきて、何度も読み返した。読み込むうちに、自分なりにこういうことなのかなと解釈できた時には、感動とともに深く胸に刻まれた。

        薄い本なのに、驚く程読むのに時間がかかる濃密な物語だった。自己の内面を徹底的に追及しているという意味では、物語というよりも、哲学的な色合いが濃いかもしれないけれど。

        自分らしく生きることの大切さ、そして、その困難。
        心底、出逢えて良かったと思える本だった。

        『あるものをぜひとも必要とする人が、この必要なものを見出したとすれば、それを彼に与えるものは偶然ではなくて、彼自身、彼自身の願望、必然が彼を導くのである』
        『各人にとって本当の天職は、自分自身に達するというただ一事あるのみだった』
        >> 続きを読む

        2018/06/24 by *久里*

    • 他6人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      若きウェルテルの悩み

      高橋義孝 , ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

      3.7
      いいね! Minnie oriedesi Fragment
      •  ああ、若きウェルテルよ、君はあまりに純粋すぎる……。


         巨匠ゲーテの出世作です。書簡体形式の作品なので、ウェルテルの思いの丈が言葉としてダイレクトに伝わってきました。当時は、本作の影響で若者の自殺が社会現象になったとか。

         あえて多くは語りません。実はウェルテルの若さと悩みについて長々と書いていたのですが、ここに載せるのは止めることにしました。なぜなら、気付けば書いていたのは自分のことばかりだったからです。

         ゲーテ本人は、「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じる時期がないならば、その人は不幸だ」と言ったとか言わないとか。本作を語るとき、恐らく多くの人は自分を引き合いに出してしまうのではないでしょうか。それだけ幅広い人の心に届く普遍性を持った、まさしく名作といえる物語です。国や時代が違っても、人の心は変わらないものなんですね。国境や時間を超えて、多くの人に読まれ、これからも読み継がれていくだろう作品を読むというのは、なんだか不思議な気持ちになります。

         悩める若者たちに幸あれ。
        >> 続きを読む

        2016/10/07 by あさ・くら

      • コメント 4件
    • 他6人がレビュー登録、 23人が本棚登録しています
      朗読者

      ベルンハルト・シュリンク , 松永美穂

      4.0
      いいね!
      • 読後に自分の中でたくさんの宿題が残るストーリー。
        切なさとやり切れなさでいっぱいになった。

        舞台は第二次世界大戦後のドイツ。
        主人公ミヒャエルが15歳の時に愛し合った
        36歳の女性ハンナが突然姿を消してから、
        皮肉な事に法廷で再会する。
        ナチ時代の強制収容所裁判の傍聴者であるミヒャエルは、
        戦犯として裁かれているハンナの秘密を知る事になる。

        戦争においては“正義感”というものが、
        いかに主観だらけの曖昧なモノかを思い知らされる。
        人の生活だけでなく心までも奪ってしまう。

        戦後、ハンナのような生涯を終えた人は
        きっともっとたくさんいるのだろう。
        私達はたとえ何もできないとしても、
        その事を知っておかないといけない。

        この本は、世代を飛び越えていつまでも読み継がれてほしい。
        >> 続きを読む

        2019/01/28 by NOSE

    • 他5人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      飛ぶ教室

      KastnerErich , 丘沢静也

      4.0
      いいね!
      • メリークリスマス!
        クリスマスにふさわしい一冊ですね。
        小学生のころ、児童文学の定番として買い与えられていたので、何度か読んでいます。今回は数十年ぶりでの再読でした。

        「飛ぶ教室」って実はあまり面白いと思っていなかったんです。
        ケストナーではなんてったって「ふたりのロッテ」が一番のお気に入りでした。
        「点子ちゃんとアントン」もステキなお話しです。
        私は女の子だったから、主人公が少年の話に馴染まなかったのか?という訳ではないのです。
        少年が主人公の話はいくらでも読んでいましたし、
        同じくギナジウムの寄宿生の少年たちの物語で「犬のウォータンは同級生」という小説があるのですが、これはそれこそ何度も読み返しているほど大好きで、つい先日も図書館で探して読んだのですが、やはりとびきり楽しい小説でした。
        「飛ぶ教室」より、ずっとずっと面白いと今でも断言できます。

        成績はいつもトップで絵も得意でリーダーシップもあって貧乏で奨学金をもらっているマルティン。
        大食いで喧嘩がめちゃくちゃ強くて、勉強は全然できないけれど弱いものに優しいマティアス。
        親に捨てられて善人の船長に引き取られ、作家を夢みるジョニー、好奇心旺盛で読書家で頭の回転が早く口が立つ(口がすぎる?)ゼバスティアン、ひ弱で弱虫コンプレックスを抱えているウーリの5人組がメイン。
        舎監の先生で少年たちに圧倒的に慕われている「正義さん」とあだ名されるベーク先生。
        世捨て人のように市民菜園に置かれた列車の禁煙車両で暮らしている「禁煙さん」
        魅力的な若い大人も子供たちに重要なかかわりを持っている。

        これで面白くないわけがない。のですが。

        子ども心に戻って「飛ぶ教室」を味わいつつ、不満な点を挙げてみます。

        まず、真面目過ぎるんですね。
        学校同士の出入りの喧嘩にしても弱い者いじめの話にしても、親子の問題にしても。
        正しいことがある。という前提です。
        喧嘩でさえも、味方と敵。敵でも、立派なリーダーとクズ。のような色分けがあります。
        チビのウーリは、蛮勇を見せて自分に自信を持つことができるようになりますが、彼を好きになれないんですよね。
        しかも彼は元々貴族で支配階級の人間であることが仄めかされています。

        教師も全て善人です。
        子どもの為に良かれと思ったことを成すのが教師です。
        しかし子供に都合の良い事ばかりが起こるのは、現実的ではありません。

        確かに、子どもたちは常に正しくありたいと思っています。
        でもそれができない自分もわかっています。
        世の中が「正義」と「不正」に色分けできないことだって、実は知っているのです。
        だから「飛ぶ教室」の主人公たちのように個性はバラバラで欠点だってあるけれど決して「悪」ではない子どもや先生たち。
        それは子どもにとってはフィクション(憧れるけれど現実ではない)なんですね。

        こどもというのは、もっと大嘘な小説をたくさんよんでいるために(小公女や小公子、フランダースの犬とか長くつしたのピッピだとか15少年漂流記だとか王子と乞食だと宝島とか、そういう数奇な運命や冒険の物語がいっぱいありますからね)
        マルティンの貧乏やジョニーの孤独などは、子どもにはどの程度の深刻さかなんてわからなかった気がします。
        愛するお父さんお母さんがいて、休暇に会えないだけなのに。もっと可哀想なのは、親に愛されている確信が持てない子どもでしょうに。とか。

        大人になってから読んだ方が感情移入できるように思える部分がかなりありました。
        親の目線で子どもを思いやることが今の私にはできるからです
        禁煙さんと正義さんの古い友情についても、大人になればこその味わいを感じることができました。

        しかし、犬が物語を盛り上げてくれることもあって、プロットとしては「犬のウォータン」の方が面白いんですよ。

        「犬のウォータン」にも体格がよく勉強ができない落第生とひ弱な少年の対比がでてきます。ひ弱な少年はそういえば、これもやはり木から落ちるんだった。よく似ていますね。
        でもキャラクター設定が全然違うんです。
        力自慢の少年は親との関係が悪く、落第も親を困らせる為でした。
        赤毛でひ弱な少年も、めちゃくちゃ向こうっ気は強いんです。口もたちます。仲間内で喧嘩もします。
        主人公はごく普通の男の子。双子の姉妹たちの中でたった一人の男の子で、女の子にちょっとウンザリしています。
        つまり、人間的により身近な感じがするのです。
        先生達も長所も短所(クセというべきか)も持っている、同じ人間って感じがします。


        ストーリーよりも、事件が起き、それについて、誰が何を語ったか?
        これが「飛ぶ教室」の胆です。
        ウーリのはしご飛び降り事件のあとのゼバスティアンの名言
        「ウーリのほうが恥を知ってるってことなんだよ」
        禁煙さんの「金や、地位や、名誉なんて、子どもっぽいものじゃないか。おもちゃにすぎない。そんなもの、本物の大人なら相手にしない」

        それ以上に作者ケストナーの言葉
        「人生で大切なのは、なにが悲しいかではなく、どれくらい悲しいか、だけなのだ。子どもの涙が大人の涙より小さいなんてことは絶対にない」
        「自分をごまかしてはいけない。ごまかされてもいけない。災難にあっても、目をそらさないで。うまくいかないことがあっても、驚かないで。運が悪くても、しょんぼりしないで。元気をだして。打たれ強くならなくちゃ」

        子ども時代を決して忘れないと約束してもらいたいというケストナー。
        その人の生き方そのものが小説の形で魅力として迫ってくるから、彼の小説が今でも読まれ続けているのです。
        歌が、その技術以上に、歌い手の人間性や想いを伝えるものであるように、小説にも作家その人の想いが読み手に流れてくることがあります。

        ケストナーは子どもに期待したのでしょう。
        よりよく生きるように。世の中をもっと明るく強いものにしてもらいたいと。

        「どんな迷惑行為も、それをやった者にだけ責任があるのではなく、それを止めなかった者にも責任がある」
        クロイツカム先生の罰則は、メッセージの一つ。
        ナチスの暴走を止められなかったドイツの同朋への批判でもある訳です。
        どうか、同じ過ちを繰り返さないで。
        ああ、今の時代にも、この言葉は伝えたいですね。

        だからこの本は、親が子どもに「読ませたい本」であり続けているのです。

        ケストナーの反骨精神は、確かに打たれ強かった。
        そしていつも市民の側にいた人でした。
        彼の本も同じですね。

        ちなみに「飛ぶ教室」というのは彼ら5人が脚本から演出から舞台美術、役者まで自分たちでやる、クリスマス祭に体育館で上演する演劇のタイトルです。
        >> 続きを読む

        2018/12/25 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 他5人がレビュー登録、 14人が本棚登録しています
      車輪の下

      ヘルマン ヘッセ

      3.8
      いいね! Minnie
      • 大人が良かれと思って行動しても、実際に子供のためになるとは限らない。
        周囲の大人は勉強を教えるだけでなく、その楽しみ方を教えなければならなかった。そうすれば、ハンスはもっと違った人生が歩めたのではないだろうか。
        大人は子供に対して何から何まで指示するではなく、子供の意思を尊重し間違った道に進みかけたときに声をかけてやるのが大切なのではと思った。
        >> 続きを読む

        2017/03/09 by ダイジュ

    • 他4人がレビュー登録、 32人が本棚登録しています
      香水 ある人殺しの物語

      SüskindPatrick , 池内紀

      4.4
      いいね! Tukiwami
      •  時は18世紀。場所はフランス。
         当時の衛生観念なんて今から思えば不潔極まりない状態でした。
         かのベルサイユ宮殿だって、ろくにトイレもなく、園遊会などに招かれた貴族達も、庭園の茂みで用を足すというのが当たり前(いや、これ本当)。
         ましてや、庶民が住む町などはそれはそれはという状態で、町中悪臭が立ちこめていました。ペストなどの悪疫が流行するのもさもありなんです。
         
         物語は主人公が産み落とされるところから始まります。
         主人公の母親は魚屋で生魚を捌いていました。
         陣痛が来ましたが、何、いつものこと。
         彼女はこれまでも何人もの子供を産み落としてきました。
         そう、いつものこと。いつものように、魚を捌いている包丁で産み落とした子供と自分をつなぐへその緒を切ってしまえばよいこと。
         その後、産み落とした子供は、地べたに放り出してある魚の臓物と一緒にして捨ててしまえば良いこと。
         時には、魚の臓物と一緒にそばを流れるセーヌ川に放り込めば手間もかからない。

         もちろん、今度だって同じこと。
         いつものように、へその緒を切って地べたに捨てた。
         でも、今回はちょっと違った。
         どういうわけか出血がひどくて。ついふらふらと倒れてしまった。
         それに気付いた周りの人間が「どうしたんだ」と駆け寄るけれども、「どうもしないよ。何でもないさ。」と言うだけ。
         でも、その時、産み落とした赤子が泣き出したんだね。
         それで全てがばれてしまって、(当時は拷問のようなこともしたのでしょうね)、母親はこれまでに産み落とした何人かの子供のこともしゃべってしまい、死罪になったそうです。

         さて、生まれてすぐに身寄りの無くなった主人公は、修道院に預けられます。
         修道院とて、慈善事業じゃやってられない。
         わずかな金を与えて、乳が出る女にそういう身よりのない子供を預けます。
         主人公もそうやって、とある「乳母」(と、いうのだろうか?)のもとに預けられます。

         しばらく後、その乳母は、主人公を突っ返しにやってきます。
         「子供はさ、子供の匂いがするもんじゃないか。こいつは何の匂いもしやしない。恐いんだよ。」
         そう言って、給金を上げてやるという司祭の言葉も聞き入れず、主人公を押し返してしまいます。

         時は流れて、主人公は革のなめしやにほとんど売られるようにして連れて行かれます。
         それはそれは重労働で。
         でも、彼は、自分がどういう人間かということに気付いていたのです。
         自分は、毒虫の様な奴なのだと。
         だから、何を言われても、どんなにひどい仕打ちを受けても、じっと毒虫のように身を固くして耐えていました。

         とある時、あるきっかけで、彼は自分の秘められた才能に気付きます。
         その才能とは、匂いに極めて鋭敏だということ。
         どんなにかすかな匂いでも、どんなに混じり合った匂いでもたちどころにかぎ分けてしまえたのです。
         たとえば、吝嗇家が家のどこかに隠した金貨の匂いだって分かってしまいます。そこに金貨を隠してあるのだって、忽ちお見通しになってしまうのでした。

         そして、「毒虫」は蝶(なのだろうか? あるいは毒蛾?)に成長します。
         過去の名声だけはかろうじて保っているけれど、もう力も何もなくしてしまった香水の調合士に取り入ることに成功します。
         正に天職! 彼は素晴らしい香水を次々と調合していきます。
         そして、それを師とした調合士の名前で売り出すことだって許します(というか、それが条件なのでしょうね)。

         彼の鋭敏な嗅覚はさらにすごい「香水」を作り出すようになります。
         人間の感情さえも左右してしまえるような「香水」です。
         さらには、「とある」香りに魅せられてしまうのでした。
         その香りを定着させるためにはどうすれば良いのか?
         彼は、従順を装い、師からその技術をある程度まで学び取ります。
         しかし、それでもまだあの「香り」を残すことはできない。

         何という小説でしょう。
         ある意味、猟奇的です。
         心地よく読める本をお探しでしたらお薦めしません。
         ですが、不思議な魅力をもつ作品です。
         詳しくはお話しできないのですが、まぁ、なんていうことを……
         物語としてのおもしろさは十分にあります。
         大変インパクトの強い作品だと思います。
         ここまでのご紹介文を読んでピンと来たら読んでみても損はないと思いますよ。
        >> 続きを読む

        2019/03/07 by ef177

    • 他4人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      犯罪

      SchirachFerdinand von , 酒寄進一

      3.7
      いいね!
      • 12月といえばシーラッハかな、と思って、図書館で借りてきました。不穏な表紙が実によい。

        連作短編集なのですが、一貫して事件に関わった弁護士の視点で語られます。犯人たちは弁護士には本当のことをいったり、あるいは黙っていたり。文章が実にうまいのは、翻訳も良いんでしょうね。著者のシーラッハ自身が、弁護士です。

        ミステリの一種ではありますが、ミステリに区分するのはちょっと違う気がします。冒頭の「フェーナー氏」は妻の支配に耐えかねて妻を殺した医者をどのように裁くか、という話なのですが、こういう高瀬舟的な話が続くのかと思ったらそういうわけではなかったです。知恵を働かせて陪審員を出し抜く話とか、追い詰められて犯罪を犯したその顛末が淡々と語られる話とか、無罪を証明するために語り手の弁護士が探偵役のようなことをしたり、いろんなケースがあります。
        全編通して、なんらかの犯罪の判例が続きます。

        しかし、正直私は、自分が被告人として法廷に立つようなことは絶対にしないとはいえません。人だって、殺してしまうかもしれない。被告人は私かもしれない、少なくとも彼方の誰かといえるほど遠いものでもない、状況によっては誰だってそういう状況に陥ってしまうかもしれない、というのをひしひしと感じる短編集でした。

        シーラッハはドイツの作家なのですが、祖父がナチスの高官だったんですよね。それをわざわざ著者経歴に書いているんです。
        あの時代、ナチに加担せずにどうやって生きていけたでしょう?
        戦争は津波のように、一般市民には抗え切れない罪を背負わせるもののように思います。幸い経験したことはないのですが。
        シーラッハの経歴を思って読むと、いろいろ考えます。
        >> 続きを読む

        2016/12/03 by ワルツ

      • コメント 2件
    • 他4人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      飛ぶ教室

      KastnerErich , 池田香代子

      4.2
      いいね! Moffy
      • 本書のまえがきを読むと著者の人生と正義に関する読者への痛切なメッセージがあり、何かただならないものを感じる人も少なくないと思います。
        それはこの本が書かれた時代を反映しています。
        それは、著者の母国ドイツでナチスが台頭し、世界中が人類史上最悪の戦争に向かっていた時代です。
        著者はナチスに迫害されながらもドイツに留まり続け、次世代を担う子供たちの為に、メッセージを送り続けていたのです。

        元気の良い男子寄宿学生たちが繰り広げる物語。

        読み終わって感じたのは、懐かしさでした。
        昔の子供達ってこんな感じだったよなとしみじみ感じました。
        様々な背景を持った少年たちが一緒に喜んだり悲しんだり、時にケンカもあったりで、ちっともじっとしていない。
        生命力にあふれた少年たちの物語は、クリスマス集会での「飛ぶ教室」という題の劇の上演に向けて集束してゆく。
        彼らは、様々な経験をし、また人生の師とも呼べるような大人たちとの出会い等を通して人として成長してゆく。
        物語のエンディングはクリスマスにふさわしい素晴らしいもので、図らずも少しほろりとしてしまいました。
        >> 続きを読む

        2017/12/28 by くにやん

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      大どろぼうホッツェンプロッツ ドイツの新しい童話 (1))

      中村浩三 , TrippFranz Josef , PreusslerOtfried

      4.4
      いいね!
      • 人気だなぁと前々から気になりつつ未読だった本。
        おいしい食べ物、音楽が鳴るコーヒーひき、ドキドキの展開とお話の世界にぐんぐん引き込まれました。

        続編も楽しみです。
        >> 続きを読む

        2016/04/09 by terra

    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      ちいさなちいさな王様

      ミヒャエル・ゾーヴァ , 木本栄 , 那須田淳 , HackeAxel

      3.4
      いいね! Moffy
      • 表紙インパクト過ぎて思わず手に取りました。^ ^

        難しい言葉はほとんどなく、とても読みやすい一冊です。
        丸々太ったグミベアファンの王様。
        不思議に、誰もかもかつては心の中に、こんな王様が住んでいたように思えた。
        大胆で想像力豊か。
        好奇心いっぱいで自信感に満ち溢れ。
        目に映る世界はどこもキラメキそのもので、
        毎日が大冒険。

        でも年が重ねるにつれ、王様は小さくなっていく……
        「僕」は本当にラッキーボーイだ。王様が見えなくなる前に、また見つけてあげたのだから。
        忘れさえしなければ、もしかしたら私たちの周りにも、ひょっこりそいつは現れるかもしれないね。
        >> 続きを読む

        2017/10/28 by deco

    • 他2人がレビュー登録、 13人が本棚登録しています
      城

      フランツ・カフカ , 前田敬作

      4.2
      いいね!
      • --彼の歩いている道は、村の本道なのだが、城山には通じていなかった。ただ近づいていくだけで、近づいたかと思うと、まるでわざとのように、曲がってしまうのだった。城から遠ざかるわけではなかったが、それ以上近づきもしないのだ。Kは、ついには城の方に折れる箇所に出くわすに違いないと、たえず期待していた。その期待のためにだけ、歩き続けていった--


        城とは何か。

        Kは夜半に村の宿場につく。
        閉鎖的な城下村ゆえ、外界の人間の宿泊を厭う。Kに出て行けと迫る。
        Kは、「仕事で呼ばれてきた。後から助手も来る」と嘯く。
        宿が城に問い合わせると、否定の後一転して、「Kを仕事で呼んだ」と追認される。
        「来る予定の助手」も城からあてがわれる。
        Kは驚くと共に、この追認は、城がKを低くみたからこその扱いとむしろ憤る。
        そして城に自分を見せつけてやると意気込んで城に向かう。
        城への道は続いているように見えて続かない。
        城はそこに見えるのに近づかない。しかし遠ざかりもしない。
        村人は一同に冷たい。助手は脚を引っ張る。
        前に進まない苛立ちと真冬の寒さに心身が磨り減る。
        そのうち、城からの官吏が村で使う定宿につく。
        城の官吏は人との接触を徹底的に厭う。
        Kは目当ての長官の部屋に辿り着くも、鍵穴を通じて長官の寝顔を除く以上には近づけない。
        一層の接触を画策し、長官の恋人である定宿の女を誘惑し婚約に至る。
        しかしその女性が長官との接触手段を持たないことを知って幻滅する。
        幻滅しながらも、恋愛の甘さにほだされ、寒さをしのぐ二人の住居を得るために、待てども来ない「測量士」の仕事を諦め、提案された「学校の小間使い」の職に就く。
        それでも、安寧に堕することを恐れ、城への接触手段を模索して動き回る。
        自分を手段として観ていただけだと悟り、女がKのもとを助手と共に去る。
        Kが女を取り戻そうと奮闘すると、長官の助手に呼ばれ、女との婚約を破談するように通告を受ける。
        Kは疲労困憊で何もできずにただ通告を受け取る。
        しばし眠った後、再度城への道を模索して動く・・・未完・・・


        カフカは描く。
        城の鐘の音について
        --ひたすら憧れながら、叶えられるかどうかおぼつかないものに脅かされているような気持ちだった。事実この鐘の音には、なにやら悲傷の響きが籠もっていた--

        城からの妨害について
        --Kは、現実的な強制力・・・そんなものは、恐ろしいとも思わなかった。・・・しかし、意気を阻失させるような、ふやけきった環境の圧力、幻滅になれてしまうことや、微細かも知れぬが、たえず襲ってくる色んな影響などが及ぼす力、Kが恐れたのは、そのような圧力に負けてしまうことだった--

        その道程について
        --その頃の僕は、夕方ちょっと散歩に出るくらいの骨折りでどんなことでも達成できると思い込んでいた。ところが、もともと実現不可能だったことがはっきり不可能だったと分かったとき、それを彼のせいにして、恨みに思ったんです--
        --実のところ、Kの心を乱し・・・妨げたのは、彼女の言葉ではなく、彼女の容姿であり、こんな場所にいるということがいけなかったのだ--

        常に彼方に見えるのに道がない。
        近づけども近づかない。遠ざかって視界から消すこともできない。
        現実的な困難ではなく、日常への安寧や惰性、周囲からの評価や恋愛、そうしたものこそが城への障害。

        この格闘が人生を指していることは無論疑いない。
        それでは城とは何か。

        訳者後書きではこれを、「存在・実存」と捉える。
        自分を自分たらしめるもの。
        そういう場所への道のり、苦闘。

        勿論これに私も異論はない。
        それでも、存在・実存は分かるようで遠い。
        殆ど同じ意味かもしれないが、私は、憧れや夢・理想、というものを城に置いてみたい。


        幼少期に、将来は○○になりたい!
        と深く考えずに言う夢。
        大きい仕事してやるぜ!でもいい。

        なれるわけないだろ、という大勢の声に交じって、
        なれるもんならなってみたまえ、と、
        そういう声が届いたのが、冒頭の宿屋でのシーンと見られないだろうか。


        自分の理想や夢、憧れ。成りたい姿。
        自分自身にも現実感がなく、普段は口にも出せない。
        それがふとした拍子で、若気の至りで口を出る。
        冷笑と共に世界がそれを迎える。
        完全否定ではない。
        なりたいならどうぞ。道はあるので後は君次第ですよ、と。
        丁重な姿勢を見せながら徹頭徹尾の嘲笑を投げつけてくる。
        若さ故に刃向かう。
        すぐそこにあって、すぐに手が届くと思い飛び出す。
        道は曲がる。
        辿り着かない。
        それでも、景色からは消えない。
        現実的な要請や、世俗的な安寧が自分を取り巻く。
        心がいつしか、折れる。
        それは、能力への失望ではなく、違う「幸福」による「挫折」。


        良いではないか、家庭のために生きる。
        人から評価される仕事に生きがいを見いだす。
        これのどこが「挫折」か。


        カフカは厳しい。
        「変身」で彼が描く青年は、家庭のために精一杯働いていた。
        彼の家庭はそれで幸せだった。しかしある時、青年は、「家族のためでなかったらこんなことは一切終わらせたい」と思ってしまう。翌朝、彼は虫に変身する。

        誰かのために生きる生は、真の生ではない。

        これがカフカの終生のテーマであったことは間違いない。
        普通、誰かのためにしか人は生きられない。
        ならばこそ「審判」でカフカは生を、「覚えがないのにいつの間にか逮捕されている」と表現する。


        後書きで、「城」は世界文学史上、「カラマーゾフの兄弟」に匹敵する唯一の作品と称えるが、私はこれに深く同感する。
        >> 続きを読む

        2017/12/12 by フッフール

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      はてしない物語

      ミヒャエル・エンデ , 佐藤真理子 , 上田真而子

      4.3
      いいね!
      • 12月の課題図書。

        最初読んだときは「なんてファンタジーなんだ!」「もっと人間の奥底深い話が読みたいんだ!」「子供だましか!」「ハリーポッターと変わらないじゃないか!」なんて思いながら読んでいた。

        このファンタジーな感じ、懐かしかった。
        子供の頃はハリーポッターやダレンシャンが大好きでファンタジーに胸を躍らせていたが、今はもっと人間の深層が知りたいなんて思ったりして「たかがファンタジー」と思っていた。

        でも読み進むにつれてどんどん引き込まれていく。

        年末、大掃除をしていてもファンタージエン国について考えてしまう。
        「それで一体どうなるんだろう、早く続きが読みたい!」なんて思いあっというまに上巻を読み終えた。

        今日から下巻を読む。
        これが一体私の何に作用しているのかわからないがとりあえず、斬新で面白い構成なのでどのように終わるのか楽しみだ。
        >> 続きを読む

        2015/12/31 by snoopo

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      はてしない物語

      ミヒャエル・エンデ , 佐藤真理子 , 上田真而子

      5.0
      いいね!
      • 下巻読み終えた。

        下巻になると更に面白くなってくる。

        最後は心がジーンと暖かくなる終わり方で親子っていいなと思った。

        心に深く深く刻んでおきたい物語だった。
        古今東西の文学や思想がいたるところに散りばめられていて優しく、時には厳しい文章に出会い、本当に良かった。

        この年末年始の連休は「はてしない物語」を読んだだけで終わったようなもんだが、そのおかげでたぶん忘れられない年末年始になったような気がする。

        これは児童文学?みたいだけど、結構長く文章もびっしりなので優秀な子供しか読めないんじゃないかと思ったり…

        少なくとも私が子供のころなら読了できてないと思う。
        「わかったさんシリーズ」や「かいぞくゾロリ」を読んでいたレベルなので…汗

        でも子供の頃に読んでいたら、また読後感は違うものになっていただろうなと思い、もう少し早く出会いたかったなぁと思った本だった。
        >> 続きを読む

        2016/01/03 by snoopo

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

      ゲーテ

      5.0
      いいね!
      • ウェルテル効果のせいか、マイナスイメージで語られるのがもったいない一冊。座右の書の一冊 >> 続きを読む

        2015/03/05 by ぽんた

      • コメント 1件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      カフカ短篇集 (岩波文庫)

      カフカ

      3.0
      いいね!
      • 匿名

        読むのが苦痛。
        まったく面白くない。
        なぜか?
        物語にテーマがあるわけじゃない
        寓話的な面白さなのか?

        解説に宮沢賢治との類似性と書いてあった。
        なるほど、確かに似ている気がする。
        >> 続きを読む

        2016/02/10 by 匿名

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      アルプスの少女ハイジ

      関泰祐 , SpyriJohanna , 阿部賀隆

      5.0
      いいね!
      • 昔から知っているタイトルだったけど、アニメしか知りませんでした

        大人になって初めて読んだのですが、アルプスの美しい景色や美味しそうな食べ物の描写が素晴らしくて、一気に読んでしまいました
        特にハイジの目に映る大自然の生き生きとした美しい景色の描写は素晴らしくて、私もそこに立って絶景を眺めているようでした
        食事の話も読んでいてお腹が鳴ってしまって…あー、アルムおじいさんのご飯が食べたい!笑

        でもそれ以上に人の優しさとか思いやる気持ちの大切さや美しいと思う綺麗な心のあり方がわかりやすく書かれていて、何年たっても色んな人に愛されるお話だよな~としみじみ思いました

        大人になってから児童文学を読むと、子供のとき以上に沢山得るものがあると思えた一冊でした
        >> 続きを読む

        2016/07/13 by MOMIX

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      クヌルプ

      高橋健二 , ヘルマン・ヘッセ

      4.3
      いいね!
      • 「クヌルプ」 ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳 新潮文庫

        第一部「早春」、第二部「クヌルプの思い出」、第三部「最期」の三部作仕立て。

        一八九〇年代の初め。第一次世界大戦前のドイツでしょうか。自然と歌と詩と踊りを愛する、流浪の靴職人、クヌルプの青年時代に始まり、彼の飄々とした生き様がドイツの牧歌的な自然描写と共にのんびりと描かれます。

        十三歳の時分のクヌルプは、フランチスカという二つ年上の女性に恋をしますが、いわゆる文弱ではない、職人などの「逞しい男子」が好きなフランチスカに相応しい男になろうと決心したクヌルプは、故意にラテン語学校でのラテン語の勉強を怠けるようになり、フランチスカの弟の国民学校に入ることになります。

        ですが、国民学校に入り、二ヶ月が過ぎた頃、フランチスカが技工職人の男とイチャついているのを目撃・・・クヌルプは失恋してしまい、これが彼の生涯に癒えぬ傷痕を残すことになります。第三部「最期」の終盤の「神さまとの対話」では、もはや社会的地位も何もない病身のクヌルプが、
        「私が一四歳で、フランチスカに捨てられたころのことです。あのときなら私はまだ何にでもなれたでしょう。でも、あれから私の何かがこわれてしまうか、台なしにされてしまいました。それ以来私はぜんぜん役に立たなくなりました。ーーーああ、なんということでしょう。まちがいと言えば、あなたが私を一四歳で死なせてしまわなかったということだけです! 死んでいたら、私の生涯は熟したリンゴのように美しく完全だったでしょう」と、神さまに駄々をこねる子供のような物言いを訴えますが、神さまはクヌルプに寄り添い、クヌルプが行く先々で芸事や遊興に興じ、人々に「喜び」や「楽しみ」を見せたではないか、と優しく諭します。このラスト七頁は、思わず感涙しそうになりました。

        神学校に進むも、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走した、本作の著者であるヘッセは、ある書簡では、
        「最も正しくて真理に充ちた唯一の宗教といったものは古今東西どこにもない、と私は考えている。各地にいろんな宗教があるのではなく、ヴェーダが必要だった時代もあり、仏教が必要だった時代もあり、キリスト教が必要だった時代もあっただけではないだろうか。」と論じています。

        しかし、第三部「最期」の「神さまとの対話」で描かれる「神さまのすがた」は、下記に引用する一節によるところに、まさしく「キリストの愛」です。
        ---「わたしが必要としたのは、あるがままのおまえにほかならないのだ。わたしの名においておまえはさすらった。そして定住している人々のもとに、少しばかりの自由へのせつないあこがれを繰り返し持ち込まねばならなかった。わたしの名においておまえは愚かなまねをし、ひとに笑われた。だが、わたし自身がおまえの中で笑われ、愛されたのだ。おまえはほんとにわたしの子ども、わたしの兄弟、わたしの一片なのだ。わたしがおまえといっしょに体験しなかったようなものは何ひとつ、おまえは味わいもしなければ、苦しみもしなかったのだ」--- 「解説」で訳者の高橋健二氏は、クヌルプを「人生の芸術家となった」と評しており、「得意の人」ではなく「失意の人」とも形容しておりますが、そうした人間も神は益として下さる、どのような生き様であってもすべての魂が、死せるその時まで「神の御心」によって用いられ、肯定される・・・こんな希望があって良いものでしょうか。

        神学校を脱走し、反権威主義的だったというヘッセの真意は分かりませんが、クヌルプの人となりにどこか相通ずるものを感じ、そして何よりもクリスチャンである私としては、終盤の「クヌルプと神さまとの対話」は、それだけで「福音的掌編小説」の価値を有している、自分の「生」が神によって限りなく肯定される思いが募った、素敵な作品でした。
        >> 続きを読む

        2018/12/17 by KAZZ

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています

カテゴリー"小説、物語"の書籍一覧 | 読書ログ

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本