こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


カテゴリー"その他のゲルマン文学"の書籍一覧

      アンネの日記

      深町真理子 , アンネ・フランク

      4.7
      いいね!
      • 第二次大戦中、ドイツ軍による強制収容を免れるために、13歳から15歳という二年余りの多感な時期を隠れ家で過ごしたユダヤ人の少女による日記。

        テキストには、アンネが自分に宛てた原型となる日記(aテキスト)、戦後の公開を意識した清書版(bテキスト)、戦後ただ一人生還した父のオットーによって編集された短縮版(cテキスト)の三種類がある。一般に先行して流布したのは短縮版だが、ここではアンネの母に対する非難や性的な話題などが削除されたとされる。その後、この三種のバージョンとオットーが保存していた資料を元にアンネ・フランク財団によって編集されたのが、本書の底本である完全版。

        日記はアンネが"キティー"と名付けたイマジナリーフレンドに向けて語る形式をとっている。父の職場にあった隠れ家に移り住んだのは、アンネたちフランク家4人と、ファン・ペルス家3人、それに歯科医の男を加えた計八人。日記の主な内容は、隠れ家における生活の様子と住人たちのいさかい、母や一部の同居人への反発、はじめは興味がなかったファン・ペルス家の一人息子であるペーターに対する意識の変化、ラジオや協力者によって漏れ伝わる戦況とそれを知った住人たちの反応など。序盤わずか30ページほどには、隠れ家に移るまでの学校生活も描かれている。家族や同居人や同級生に対する辛辣な批評、異性であるペーターと性への関心、ユダヤ人問題を含む社会への思いなど、全編を通じて思春期の少女の心のうちが赤裸々に綴られている。

        あとがきには、その後の調査によって判明した、逮捕された住人たちの最期と、唯一の生存者であるオットーの後半生が付け加えられている。
        >> 続きを読む

        2021/01/03 by ikawaArise

      • コメント 2件
    • 他5人がレビュー登録、 19人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , 岩澤雅利 , LarssonStieg

      4.0
      いいね!
      • スティーグ・ラーソンの「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」(上・下巻)を読了

        月刊誌「ミレニアム」を舞台に、産業界に渦巻く腐敗や闇取引を暴露し続けてきたミカエル。
        だが、気鋭の経済ジャーナリストとして築き上げた信頼と名声は、今や地に墜ちてしまった。

        大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴いた記事が、名誉毀損と判断され、有罪判決を受けたのだ。
        失意の中、発行責任者の地位を降り「ミレニアム」から去った彼のもとに、ヴァンゲル・グループの弁護士から、仕事を依頼する電話が掛かってくる。

        凋落の一途を辿っているものの、かつては、スウェーデン経済の屋台骨と言われた、大財閥の元会長ヘンリック・ヴァンゲルからの依頼に、好奇心を刺戟されたミカエルは、北部地方にある彼が住まう小島へと向かった。

        そこで彼は、一族の忌まわしき過去を告げられた後、この中の誰が姪のハリエットを殺したのかを突き止めて欲しいと頼まれる。

        四十年前の一九六六年に、密室状態の孤島から忽然と姿を消してしまった少女ハリエット。
        一体何が、彼女の身に起きたのか?

        ヴェンネルストレムを失墜させる新事実の提供と引き替えに、ミカエルは調査を開始する。

        その頃、ストックホルムでは、一人の女性が重大な危機に直面していた。
        彼女の名前は、リスベット・サランデル。

        二十四歳だが、十四歳くらいにしか見えない少女のように華奢な体格に、赤毛を漆黒に染めたベリー・ショート・ヘア。

        鼻と眉にピアスをし、肩胛骨の間にドラゴンのタトゥーという、エキセントリックな外見からは想像も出来ないが、セキュリティー会社随一の腕利き調査員であり、実はヘンリックの依頼でミカエルの事前身辺調査を徹底的に行ったのも彼女だった。

        そんな彼女にとって悩みの種なのが、新しい後見人ビュルマンの存在だ。
        幼い頃から他人と打ち解けず、社会的精神的ケアが必要と判断された彼女は、いまだ後見人制度の適用を受けており、しかもビュルマンは篤志家の仮面を被った人間のクズだったのだ。

        ミカエルとリスベット、「庶民の貯蓄をばかげたITベンチャーへの投資に費やして金利危機を引き起こすような連中を監視し、その正体を暴くこと」を使命とする経済ジャーナリストと、「なされた不正を決して忘れず、受けた辱めを決して許さない性質」で、「うさん臭いものを暴くのが好き」な敏腕ハッカー。

        この魅力的な二人の主人公の軌跡が交わる時、四十年前の少女失踪事件の謎を巡る調査は、新たな局面を迎える。
        そこには、誰一人として想像し得なかった、おぞましい真実が-------。

        巨大企業の不正疑惑に挑むジャーナリズムという、社会派ミステリとして幕を開けた物語は、すぐさま胡散臭い、名門富豪一族の"戸棚の中の骸骨"探しという、古典的な本格ミステリの十八番へとスライドする一方、福祉国家スウェーデンが抱える闇を照射し、さらに別の貌---より深く根強い悪の物語を呈示する。

        幾重もの入れ子構造による、複雑にして精緻な構成、リスベットを始めとして、深く掘り下げられた登場人物が放つ、抗しがたい魅力。

        そして、芯を貫く社会意識の高さ、即ち、作者による現代社会が直面している深刻な問題---女性虐待、表現の自由、暴走する強欲な資本主義経済に対する確固たる批判精神。

        これら全てを完璧に組み合わせ、第一級のエンターテインメントに仕上げた作者の力量には、舌を巻くしかない。
        本当に凄い作家がいたものだ。

        ただ一つ残念なのは、そんな稀有な才能の持ち主が、もはやこの世にいないことだ。
        ワーカーホリックでヘビースモーカーだったスティーグ・ラーソンは、この作品の成功を見届けることなく、二〇〇四年に他界したのだ。

        >> 続きを読む

        2021/07/14 by dreamer

    • 他4人がレビュー登録、 17人が本棚登録しています
      殺人者の顔

      柳沢由実子 , MankellHenning

      4.2
      いいね! Tukiwami

      • ヘニング・マンケルの「殺人者の顏」は、地味な警察小説だが、そこはかとない味わいのある、なかなか読み応えのある作品だ。

        農家の老夫婦が惨殺され、その事件を捜査する小さな港町の警察官たちの奮闘ぶりが、丁寧に描かれていく。

        スウェーデンの警察小説と言えば、マルティン・ベックシリーズを連想するが、この本の主人公クルト・ヴァランダーは、同じ中年男ではあっても、マルティン・ベックとは雲泥の差があるような気がします。

        妻に逃げられ、娘も家出、老いた父親との関係もうまくいかず、おまけに中年太りだから、カッコよくないのだ。

        たまに妻に会うと、帰ってきてくれないかと泣き出したり怒ったり、それで美女と会ったりするとすぐその気になって、なんだかだらしのない中年男なのだ。

        もちろん、警察官としての情熱は熱く、諦めることを知らない男だ。
        この主人公の個性豊かな人物像は、等身大の人間として描かれていて、惹かれるものがあるんですよね。

        それから、マルティン・ベックシリーズがそうであったように、スウェーデン社会の現在を物語の背景に置いている点が、なかなかいいと思いますね。

        例えば、クルト・ラヴェンダーは、スウェーデン南部の小さな港町イースタの警察官なのだが、この港町はバルト海に面しているので、ドイツ、ポーランド、エストニア、リトアニアなど、さまざまな国から亡命者や経済難民がやって来て、それが社会問題になっているんですね。

        だから、外国人が容疑者として浮上しても、事がはっきりする前に漏れてしまうと、外国人に対して人種差別的な反感を持つ一部の人々を刺激する恐れがあるので、伏せておかなくてはならないので、捜査も大変なんですね。

        地味な作風ではあるものの、脇役たちもとても丁寧に描かれていて、その着実さに好感が持てるんですね。

        >> 続きを読む

        2019/01/06 by dreamer

      • コメント 1件
    • 他4人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      長くつ下のピッピ

      大塚勇三 , LindgrenAstrid

      4.0
      いいね!
      • ピッピは赤毛のひっつめ三つ編みがトレードマークの9歳の女の子。そばかすもだぶだぶの黒靴も片方ずつ色違いの長くつ下も、全部がお気に入り。

        お母さんはずっと昔に天使になってしまったし、船長だったお父さんは波にさらわれてしまって、帰ってきません。
        でもピッピはお父さんが黒人の島に流れ着いて王様になっていると信じていて、いつか迎えに来るはずだから、まったく寂しくないのです。
        小さな町のはずれにお父さんが残してくれた素敵な庭に建つ家「ごたごた荘」にニルソン氏という名のかわいいサルと馬と一緒に暮らしています。

        小学生のころ大好きだったシリーズ。
        大人が読んでも素晴らしい童話も数多いですが、これは子供のころに読んでほしいタイプの児童小説です。

        お行儀、衛生観念、社会規範、そんなもの、ピッピの前にはないも同然。
        馬を軽々と持ち上げる怪力の持ち主なので、怖いものなし。
        自活するに十分な料理の腕とお父さんが残してくれたトランクいっぱいの金貨があるので、何の不自由もありません。

        ピッピの破天荒な言動は時に眉をひそめたくなるでしょう。
        床でクッキー生地を延ばしてみたり、サーカスに飛び入りしてみたり。
        でも子どもってある点で過激なことだって、全然平然と受けとめるものですね。
        ピッピが教育上よくない子だなんて全く思ってもみませんでしたから。

        ピッピを見ていると「自由」という言葉が浮かんできます。
        何をどう受け止め、どう考えるか。
        実は世界は認識で成り立っている訳で、その認識が異なれば善悪も常識も変わってくる訳です。
        ピッピには孤児院も学校も何も「必要」ではありません。

        ピッピを指導しようとして逆にやり込められる大人たちを見ているととても愉快。
        子どもって実はこんな風に自分も大人をやっつけてやりたいと思っているのかもしれませんね。

        胸をときめかせる毎日は、自分の心が作るのです。
        何か面白いことはないかなあと、待ち望んでいたお隣に住むアンニカとトミーはピッピによって世界が変わりました。
        何が起きるかわからないワンダーワールドに!


        この本を再読すると大人になっちまった自分がちょっぴりうらめしいです。
        「コーヒーの会」でのピッピのふるまいは、トミーとアンニカのお母さんの立場についつい思いが行ってしまうのですよね。いくらなんでも、これでは、お行儀が悪いと、出入り禁止を食らうのも無理ないな…。なんて。
        でも、上品に悪口大会を繰り広げるご婦人と、大ぼらを吹いて盛り上げて楽しませようとするピッピと、心根はどちらがいいのか?と言われたら?
        結局常識なんてその程度の吹けば飛ぶようなものだったりするのですね。
        そして大人だったリンドグレーンがなんでこんなに子供心を持てたんだろうと。驚嘆するばかりです。

        今の日本の子どもは社会的な不自由はあまりないかもしれません。
        お金は自由に使えるし夜町中をうろついたり、といった自由はあるようですよね。
        その代わり、大人の干渉から逃れるすべを持っていないと感じることが多々あります。
        大人の論理をそのまま生きているように見えるんです。
        子どもだけの世界を持っていないような。
        大ぼらを吹いたり調子に乗ったり夢中になったり冒険をしたり。
        子どもにはいろいろな特権があるのにね。
        なんだか、子どもの特権を大人が奪って、いつまでも手放さない結果、子どもの住処が減っているのかな。とも思います。
        文明社会人に浸食されて滅びゆく原住民の話みたいですが。

        この本が時を越え、ずっと子供たちのそばにありますように!
        >> 続きを読む

        2018/08/24 by 月うさぎ

      • コメント 2件
    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      ムーミン谷の彗星

      JanssonTove , 下村隆一

      4.0
      いいね!
      • ムーミントロールがスナフキンと出会う記念すべき一冊です♪
        スナフキンの存在、持っている思想がとても好きです。それはトーベの生き方でもあるようです。

        『ぼくは、見るだけにしてるんだ。そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ。
        ぼくはそれで、かばんを持ち歩くよりも、ずっとたのしいね。』

        子どもたちの大好きな旅の冒険物語です。
        川を筏で下り、滝に落ちそうになり、怪物に襲われり、嵐に竜巻にとてもスリリングな展開。奇妙な妖精たちも多数登場しますし、スノークのおじょうさんとの淡い初恋も微笑ましいです。すてきな洞窟にも憧れますね。

        でもこの物語を覆う空気は禍々しさに満ちていて旅を気楽に愉しむことはできません。文中にもイラストにも彗星接近の不吉なムードが溢れていてトロールたちの小ささがあまりに頼りないのです。
        恐れ逃げ惑う人びと、枯れ果てた海、干からびた地面、赤く染まった空に徐々に大きく熱くなっていく彗星の姿。楽しい要素以上に不安なムードが勝ります。

        それでもこの小説が子どもの本として素晴らしいのはスニフのこどもらしさにあると私は思います。

        スニフは小さな生き物ですが、そのためにとても甘えた性格をしています。
        欲、虚勢や嘘、嫉妬、無謀さと臆病さ、困った状況を人のせいにする、自制心のなさ、弱音を吐いたり生意気な態度をとったり……。でも子供らしい純粋さ、正直さ、愛情にあふれているのもスニフなのです。そして愛されたいという熱望が伝わってきます。
        そう。スニフこそがこの作品の真の主人公なのだと私は思います。


        【ストーリー】
        「地球がほろびる」というじゃこうねずみの言葉に平和だったムーミン一家は不安に陥ります。
        そこで、星を観測して宇宙が本当に黒いかどうか確かめるために天文台へと向かうことになりました。

        ムーミントロールとスニフの二人の冒険の旅の始まりです。

        道中、ひとりさすらうムムリクのスナフキンから、彗星接近の危険性を知らされます。スナフキンに加え、スノークの兄妹とも出会い、仲間が増えてゆきます。
        道中のさまざまな危機を乗り越え、ムーミンたちは生き延びることができるのでしょうか?


        「一ぴきのムムリク」や「どなった」などの言葉のチョイスにちょっとだけ違和感。
        スノークのおじょうさんがムーミントロールに「あんた」と呼びかけること。ムーミンが「…だぜ」という言葉使いをすること。にも。あまりいい印象を持たなかったですね。
        子どもの本はできるだけフラットに訳してほしい。キャラを作らずに、素直に翻訳してほしいです。

        忘れちゃいけない、もう一つの魅力はムーミンママ。
        そのおおらかさや優しさ。しょうがビスケットやケーキなど心をそそる手作りのお料理もね。
        >> 続きを読む

        2016/01/24 by 月うさぎ

      • コメント 12件
    • 他2人がレビュー登録、 9人が本棚登録しています
      人形の家 三幕

      イプセン

      3.8
      いいね! Minnie
      • 2月の課題図書。イプセンの戯曲です。
        1879年に書かれたもので、ノラのとった行動に賛否両論がわき起ったとのことでした。
        女性の社会進出が目覚ましい今の時代に受け入れられる本かもしれない。そう思いながら読み始めました。
        …そう思ったのは最初だけでした。
        ノラの行動に全く共感できません。


        夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたノラ。この秘密を知ったとき、なんてことをしたのだと、夫は妻を罵倒します。その後事件が解決すると、ころっと態度が変わり、今まで通りかわいい子鳥さんと妻を呼びます。ノラはこの時、幸福な生活をしていたように見えて、実は夫のもとで人形のように生きてきたことを悟ります。人間として生きたいと願うノラは、夫と三人の子どもを捨てて家を出ます。
        これがこの作品のストーリーです。

        今まで父やら夫やらに、散々小鳥と言われ可愛がられ、甘やかされた女がこの先どうやって一人で生きていけるのでしょうか。どのようにして生計を立てるのでしょうか。「女性の解放」をテーマに感じるこの作品、つまり男性社会であるということ。今よりもっともっと、女性がひとりで生きていくには難しい社会なのではないでしょうか。それと、母親なら子供のことをもっと思ってほしかったです。稼ぐ夫がいて、乳母がいる家で、当時のことを考えるとそれが一番なのかもしれませんが。
        戯曲のためか、勢いでとった行動としか思えませんでした。人形の家を出て厳しい世の中を知った後、どうなったかが気になります。
        >> 続きを読む

        2020/11/05 by あすか

    • 他2人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , 岩澤雅利 , LarssonStieg

      3.8
      いいね!
      • ・軽い筆致なので5時間ほど(上下巻)で読了

        2018/02/11 by michi2011

    • 他2人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , LarssonStieg , 山田美明

      3.5
      いいね!
      • スティーグ・ラーソンの「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」に続くシリーズ第二弾「ミレニアム2 火と戯れる女」(上・下巻)を読了。

        この2作目も、前作同様、もう理屈抜きに面白い。
        特に、1作目で型破りのヒロイン、リスベット・サランデルの魅力に夢中になったため、この2作目もたまらない。
        なぜなら、この作品で、遂に彼女の謎に包まれていた過去が、明かされるからだ。

        前作のラストから一年。
        スウェーデン全土を震撼させた、経済不正工作"ヴェンネルストレム事件"の余燼がようやく収まりだした、新年のある日。

        「ミレニアム」編集部は、再び、国中を揺さぶる震源地になろうとしていた。
        フリー・ジャーナリストのダグ・スヴェンソンが、人身売買と強制売春に関する記事を売り込みにきたのだ。

        ダグは、顧客(その中には、警察官、検事、弁護士、裁判官、そしてジャーナリストもいる)に、インタビューし、「ミレニアム」誌上で、実名で告発したいと申し出る。

        実現すれば、前回の事件に勝るとも劣らない大スキャンダルになることは必至だからだ。
        ジャーナリストとしての姿勢に共感したミカエルは、敢えて渦中の栗を拾うことを決断する。

        ちょうどその頃、一年前にともに命がけで事件を解決する中で、深い関係になったものの、何も告げずにミカエルの前から姿を消してしまったリスベット・サランデルが、密かにスウェーデンに帰国してきた。

        ミカエルに対する想いに苛立つ彼女は、巨万の富を得たこともあって、自分の気持ちを整理し、今後の生き方について考えるために、世界中を旅して回っていたのだ。

        新たな住まいを購入し、家具を整え、普通の人がするのと同じような生活を始めようとするリスベット。
        だが、そんな彼女の平穏な生活も長くは続かなかった。

        前作で、彼女に叩きのめされ、復讐心に燃える、後見人のビュルマンが、偶然、リスベットの隠蔽された過去から、とんでもないネタを掘り起こしてしまったのだ。

        自らの周りに、不穏な動きがある事を察知したリスベットは、行動を開始する。

        一方、いまだに彼女のことが忘れられないミカエルは、職場を訪れた警察官の言葉に衝撃を受ける。
        なんと、彼女が三人を殺した凶悪犯として指名手配されたというのだ。
        果たして、リスベットの身に何が起きたのか?-------。

        前作が、複雑な入れ子構造で、様々なタイプのミステリ(本格もの、社会派、サイコスリラー)の魅力を味あわせてくれる、トラディショナルであると同時に、コンテンポラリーでもある作品であったのに対して、この作品は、一転してシンプルな構造になっている。

        だが、その分、物語としての力強さ、躍動感、緊張感、そして爽快感は、飛躍的に増加していると思う。

        リスベット・サランデルの生い立ちに何があったのか?
        彼女が、最初の後見人であるホルゲルに、たった一度語った十二歳の時に起きた"最悪な出来事"とは一体何なのか?

        この謎を巡るストーリーを主軸に、リスベットが、容疑者として追われることになる三重殺人事件の解明と、人身売買と強制売春の陰にちらつく謎の男"ザラ"の探索とが、三位一体となって、怒濤のクライマックスへと突き進んでいく。

        特に、第四部"ターミネーター・モード"に入ってからのリスベットの疾走感溢れる活躍は、読んでいて鳥肌が立つほど素晴らしい。

        たった一人で世界と戦うために、ミカエルに別れの言葉を残し反撃に出る、その決然たる態度の、なんと格好いいことか。

        因みに、近年、小説に限らずアニメや漫画、ラノベでも、闘うヒロインが目白押しだが、少なくとも、翻訳ミステリの世界において、リスベット・サランデルと肩を並べられるのは、キャロル・オコンネルが生んだ「氷の天使」のキャシー・マロリー刑事くらいなものだろう。

        >> 続きを読む

        2021/06/06 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , 岩澤雅利 , LarssonStieg

      3.8
      いいね!
      • ザラチェンコとの対決により大怪我を負ったリスベット・サランデル。
        入院する彼女をよそに、引き起こされた一連の事件の終決のため、周囲は次々と行動を開始していく。

        この一件を公にしたくないザラチェンコに関わるものたちは、一同を集め、事件を隠蔽するための行動を起こす。
        一方、ミカエルやアルマンスキーらは、その勢力に対抗しようと、警察の手を借りつつ、リスベットに課せられる裁判を有利に運ぶための計略を練る。

        そんな折"ミレニアム"の編集長エリカは、他の有力新聞社に引き抜かれ、そこで待望の編集長の職につく事になったのだが-------。

        スティーグ・ラーソンの「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」(上・下巻)は、とても面白かった。
        一人の亡命したスパイを始まりとする事件に、様々な要素を付け加えることによって、大きな事件とし、さらには多数の登場人物を用いて、大団円へと持ち込んでいく。

        ある種、壮大とも言える、このような物語をよくぞ作り上げたものだと、改めて感心する。

        この作品は、前作からの続きという内容であったので、物語にはすぐにのめりこむことができた。
        この作品は、1巻のようなミステリ的な内容でもなく、2巻のようなアクションシーン満載の動きのある内容でもなく、事態をどのように解決していくかという、対立する集団同士の謀略戦を描いた作品だ。

        この作品は(のみならず全体を通しても)、良くも悪くもジャーナリストという肩書きを持つ著者が描いた作品であるということが理解できる作品になっていると思う。

        この巻では特に、主人公であるリスベットを通して、スウェーデンにおける人権問題にメスを入れる内容になっている。
        このジャーナリストとしての独特な視点から創りこまれた物語ということが、目新しさとなり、ミステリ界において注目された理由になったのであろう。

        ただし、その反面、物語としては読みづらいと思われる部分も少なからずあった。
        この辺りはジャーナリストゆえに、詳細についてもこだわるべきところなのであろうが、それらの幾つかがリーダビリティを損ねていたということも確かである。

        とはいえ、全編を通してみれば、大満足のミステリ作品と言えよう。
        これほど多くの要素を詰め込みつつも、よくぞ物語をしっかりとまとめきったものだと感心させられる。

        ただ残念なのは、この作品が本国で刊行される前に、著者が既に亡くなってしまっているということだ。
        この作品の続編も含め、今後さまざまな目新しい小説を書いてくれたのではないかと思えるので、非常に残念なことである。

        このミレニアム3部作では、主人公であるリスベット・サランデルが、社会的に虐げられている状態からの脱却が、大きなテーマとなっていた。

        この巻の最後では、今まで虐げられていたことによる反発心から、社会不適合者のように振舞ってきたリスベットであったが、ようやく一般の社会人として生きることへの自覚が芽生え始めるのだ。

        要するに、これまでの3部作では、わがままな子供のような振る舞いを続けていたリスベットが、今後は大人としての責任を負い、しぶしぶながらも一社会人として生きていくということがテーマになりつつあったのではないかと考えられる。

        そうしたリスベットの成長を読むことができないという点は、なんとも残念でならない。

        著者の冥福を祈ると共に、このような素晴らしい物語を創ってくれた事に感謝をしたい。

        >> 続きを読む

        2021/12/21 by dreamer

    • 他2人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      ながいながい旅 エストニアからのがれた少女

      WiklandIlon , 石井登志子 , LagercrantzRose

      4.3
      いいね!
      • 作者の自伝的絵本。

        表紙に書かれている少女と犬。

        その成長と苦難も含め、時代の変化に翻弄されてしまうことの厳しさが、よく伝わってくる。

        いつの時代も、戦争は大きな暗い影となり、市井の人たちの暮らしを根底から覆してしまう。

        それでも、人は生き、明日にむかっていく。

        そんな希望も感じられるのが救い。

        今も、同様なことが、世界のあちらこちらで起きているのも現実。
        >> 続きを読む

        2016/07/18 by けんとまん

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      スナフキンの名言集

      渡部翠 , JanssonTove , MalilaSami.

      2.0
      いいね!
      • 期待はずれ。名言集と銘打ってあるものの、「名言」とよべるものはほとんどなく、大半が小説の中からただ抜き出しただけのどーってことない描写で埋め尽くされている。はっきりいって1,100円の価値はなく、よほどのスナフキンマニアでない限り、新品を買う必要は全くない。 >> 続きを読む

        2015/10/29 by Ada_bana

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      小さなトロールと大きな洪水

      JanssonTove , 富原真弓

      4.0
      いいね!
      • 「むかし、むかし、あるところに」で始まるようなおとぎ話を書こうと思ったのは、戦争のせい。
        画家としての仕事にいきづまり、暗い絵しか描けなくなってしまったトーベ。
        自分の心の中に住んでいた「怒った顔をした生きものを主人公にして」ハッピーエンドのお話を書こうと考えたのは1939年のことでした。
        子供から大人まで広く世界で愛されるムーミン童話の誕生の瞬間です。
        しかしこの童話は比較的最近まで知られていませんでした。
        第二次世界大戦直後の混乱期、1945年に小冊子として出版された後、1991年に再出版されるまでずっと絶版となっていたのです。
        このムーミン処女作にももちろん画家本人の挿絵がつけられていますが、鼻が長くて表情も暗く、私たちが知っているムーミンとは大部かけ離れた姿をしています。
        一家がムーミン谷に住み着く前のこの作品には、予想外の事実が語られています。

        それはなんとパパの不在なのでした。
        「ありきたりのムーミントロールではなかった」パパは、「いつでもどこかへいきたいと思って」いて、ある日ニョロニョロたちといっしょに旅に出てしまったのです。
        ママは「ニョロニョロがパパをだまして、つれていってしまった」と考えています。
        この物語には不思議な生き物がいろいろ登場してきますが最も象徴的で意味深なのがニョロニョロでしょう。
        「ふだんは目に見えない」「世界じゅうを放浪していて、どこにもおちつくことはないし、なにひとつまわりのことに関心をもたない。…感情というものが全くないんじゃないかしら」「口もきけないし耳もきこえない」
        このように「とてもかわった連中」なのですが。
        本当に変わっているでしょうか?
        意志を持たない群衆、地に足をつけることなくどこへでも流されてしまう集団。
        それは戦争やら経済の流れによっていとも簡単に漂白する人間の姿と重なりはしないでしょうか?
        そんなニョロニョロにそそのかされて姿を消したパパ。
        それは戦争に巻き込まれた多くの家族を象徴しているのかもしれません。
        ムーミントロールとママにはなぜか住む家も無いようなのです。
        パパを探すこと以前に、暖かな土地に家を作らなければと、そのために旅をしているのでした。
        これもどことなく戦禍での難民を思わせますね……。

        青く輝く長い髪をしたチューリップの花の中に住む少女チューリッパと、灯台の役目をする黄金の塔に住む赤い髪の少年とのロマンスや、年寄りの魔法使いの作ったお菓子の庭園や、おそろしい大ヘビやアリジゴクなどなど。
        基本は夢と冒険が詰まったいわゆる正統派の童話なのです。
        しかし普通の童話と違うのはママの存在でしょう。
        ママという大人は常に宿命的に現実的なのです。
        ママというものは決して夢を食って生きていけとは言わないものです。

        魔法使いの庭園では、雪はアイスクリーム、草はねじり砂糖、緑色のレモネードやミルクの川、木にはチョコレートやキャンディが実り、小石はアーモンドの菓子パン、ホイップクリームやママレードの池などなどなど。
        当然子どもたちは大喜びで食べまくります。
        でもお腹を壊したムーミントロールのためのおかゆの池はありません。
        太陽も本物ではなく黄色いランプでした。

        「あの子たちに必要なのは、ちゃんとしたあたたかいたべものなんです」

        ここで一見夢の世界に見える作り物のおとぎの庭は完全否定されてしまいます。

        本物の太陽の光、新鮮な空気の中で生きることの意味。
        冒険も夢の世界も大切な家族を見出し一緒に暮らすことの幸せに比べたら、どんな宝物も輝きを失うのだと。
        そして真の家族はたとえ離れ離れであってもお互いを想い合っているものであることを
        そんな幸せをトーベは「ハッピーエンド」だと定義しているのですね。

        だから最も美しいエピソードに思われるチューリッパと赤髪の少年のロマンティックな恋愛にも「生活」が与えられているのでしょう。
        花の妖精がエプロンかけて「海のプディング」作りをしている姿かぁ……。
        >> 続きを読む

        2016/01/04 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      絵のない絵本

      ハンス・クリスチャン・アンデルセン , 矢崎源九郎

      2.5
      いいね!
      • みにくいアヒルの子などの童話で有名なアンデルセンの本です。タイトルが絵のない絵本とあるように絵は一枚もありませんが、一つのお話が数ページほどなので頭のなかで情景を浮かべやすいです。
         読んでいると顔がほころんでしまうような心温まるお話や、才能がありすぎるあまり周りから疎まれてしまう人のお話など明るいお話もあれば現実的で心寒くなるようなお話もあります。
         これらのお話を話していているのはお月さまです。お月さまが見た世界中の様々な人のお話をしてくれます。アンデルセンはお月さまを話し手にすることで、私達の行いは全て天の上から見られているということを伝えたかったのではないかと思いました。
        >> 続きを読む

        2016/11/04 by taka0316

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      特捜部Q カルテ番号64

      吉田薫 , Adler-Olsen, Jussi

      4.5
      いいね!
      • ユッシ・エーズラ・オールスンの"特捜部Qシリーズ"の4作目の「特捜部Q カルテ番号64」を読了。

        警察署内でインフルエンザが猛威を振るい、カール、アサド、ローセらも、それぞれ病に悩まされつつも、新たな事件調査に乗り出すことに。

        ローセがひっぱり出してきた事件は、1980年代に起きた、クラブを経営していた女性の失踪事件。
        決して、失踪や自殺をするようなことはなさそうな女性が何故、突如、皆の前から姿を消したのか? 

        特捜部Qが事件の捜査をしていくと、同じ時期に失踪を遂げたものが、他にも数名いることが確認された。
        さらに、彼らの背景を調べると、現在躍進しつつある新進政党の幹部の名前が挙がってくることになり-------。

        この作品は、一人の女性の復讐劇と、別の面から事件を調べる特捜部Qの活躍を描いている。
        しかもこの作品では、デンマーク社会で起きた、不妊医療という人権侵害の闇を描いたものになっている。

        カール・マークらの活躍は毎度のこと。
        相変わらず、カールは昔の事件を掘り起こされたり、家族関係で悩まされたりして、私生活ではとんでもないことばかりが起こり続ける。

        そして、アサドの胡散臭さは相変わらずで、ローセの頑固さも変わらず。
        さらには、特捜部Qの面々の見せ場がしっかりと盛り込まれているというシリーズらしさ。

        この作品では、ニーデ・ローセンという一人の女性が、物語の大きな核になっている。
        1985年に起きたあることをきっかけに、復讐へと駆り立てられることに。

        彼女が何故、凄惨な復讐を行うかについては、さらに時間を遡り、ニーデが過ごしてきた凄惨な人生が語られていく。
        そのニーデの人生経験が、フラッシュバックされつつ、ニーデが淡々と復讐を遂げていく様子が描かれている。

        ただ、読んでいる途中疑問に思ったのが、この物語のもう一人の重要人物であるクアト・ヴァズは、何故ニーデの手から逃れて、普通に生活しているのかということだった。
        だが、それは物語のクライマックスにより、全ての真実が明らかになる。

        この作品は、終盤かなり派手な展開になってくる。
        特捜部Qの面々が命を狙われつつも、なんとか事件の真相を暴こうと奔走する姿は見物だ。

        これだけ大きな事件を挙げたことになれば、もう少し特捜部Qの待遇も上がってもよいのではないかと思えるのだが、次回作ではどうなっていることやら。

        >> 続きを読む

        2021/12/28 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , LarssonStieg , 山田美明

      3.6
      いいね!
      • ・リスベットは可愛らしく魅力的なヒロインだが、内容はよくあるパターン展開

        2018/02/11 by michi2011

    • 他1人がレビュー登録、 11人が本棚登録しています
      ミレニアム

      Hellen-HalmeMiho. , 岩澤雅利 , LarssonStieg

      3.2
      いいね!
      • ・何故、人気があるのだろう?

        2018/02/11 by michi2011

    • 他1人がレビュー登録、 10人が本棚登録しています
      特捜部Q 檻の中の女

      吉田奈保子 , Adler-Olsen, Jussi

      3.5
      いいね!

      • 映画化された作品を先に観て、あまりの面白さに、続けてユッシ・エーズラ・オールスンの原作小説「特捜部Q 檻の中の女」を読了しました。

        優秀な捜査官だが、性格的に難のあるカール・マーク警部補は、迷宮入り事件の再捜査のために新設された、特捜部Qに追いやられてしまう。

        不満たらたらの彼が、助手として配属されたシリア人アサドと共に最初に手掛けたのは、5年前にドイツに向かう途中で行方不明になった女性議員の事件だった。

        何物かによって拉致された彼女は、檻の中に監禁され、生き永らえていた。
        マークの一徹な捜査と、鬼気迫る状況下の彼女は、二人の時間が近づくにつれ、サスペンスを加速化させ、我々読み手に迫ってくる。

        加えて、訳ありの助手のアサドの存在が斬新で、主従逆転の活躍は、これまでの警察小説のパートナー関係にはなかった絶妙なパワーバランスを見せてくれる。

        とにかく、とても力強くて斬新で、ストーリー、キャラクター共に強烈な磁力を備えた、デンマーク発の極上のエンターテインメント・シリーズが始まったと思う。

        主人公のカール・マーク警部補が初登場した作品ですが、彼の存在は、ドーヴァー警部、はたまたフロスト警部の再来を思わせるほど、ミステリ好きのハートを熱くさせるんですね。

        加えて、彼とコンビを組む、シリア系助手のアサドの個性が紡ぎ出すユーモアと物語の緊張の対比が、実に絶妙なんですね。

        このキャラの立った二人の刑事の一挙一動が、実に楽しく、いわば、デンマーク版の「相棒」といったところですが、内容的にも、日本ではあまり知られていない人種差別の問題も浮き彫りにしていて、本当に楽しみなシリーズになりそうです。

        >> 続きを読む

        2018/07/31 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      湿地

      Arnaldur Indriðason , 柳沢由実子

      3.5
      いいね!
      • ガラスの銀賞2年連続受賞
        CWAゴールドダガー賞受賞
        いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人ついに日本上陸

        この帯を読んで期待して待っていた。久しぶりに完成度の高いミステリが読める。留守の間に来ていた図書館の予約確保のメールを開けてすぐに、借りてきた。
        ストーリーは分かりやすく、読みやすいのだが、悲しいかな舞台が北極圏に近いアイスランド、登場人物の名前が出るたびに、コツンコツンとぶつかり、慣れるまで流れに乗りにくかった。

        事件は、湿地帯に建った住宅地の中にある、石造りのアパートで起きた。
        半地下にある部屋は湿気と、猛烈な馬屋に似た匂いが充満した居間で、70歳前後の白髪の男が頭から血を流して倒れていた。

        レイキャヴィク警察の犯罪捜査官、エーレンデュルとジグルデュル=オーリ、エーリンボルクが男の過去、背後関係を調べ始める。

        異常な臭気から、湿地の上に建つアパートの床を調べ、破壊された下水道のために陥没した穴を見つける。

        殺されたホルベルクの港湾労働者仲間、エットリデ、グレータルを追う。エットリデは刑務所にいて、ホルベルクにはコルブルンのレイプだけでなくもう一件レイプ事件があったことを匂わす。

        40年前のレイプ被害者を探す。だが女性たちには家庭があり、難航する。

        最初のレイプ被害者のコルブルンは警察に届けたが、ホルベルクが、合意だった、誘われた結果だと主張して不起訴になっていた。
        もう一人の被害者にたどり着く。そしてその時期に生まれた息子がいるという。

        事件はホルベルクの過去とともに意外な展開を見せて終結する。

        アイスランドは10月の長雨で、垂れ込めた雲の下で暗い話が続いていく。
        小さな島国に暮らす人たちの生活が伺える。
        エーレンデュルはこの事件に関わる仕事にたまらなくうんざりして述懐する。

        ーーー「どうしたらいいのかわからない。もしかすると何もしないほうがいいのかもしれない。なにも手を出さずに、ことが起きるままにさせておくのがいいのかもしれない。全てを忘れて。なにか意味のあることをするのがいいのかもしれない。なぜこんな惨めなことに首を突っ込むんだ?なぜエットリアのような悪党と話をしなければならないんだ。エディのようなごろつきと取引をしたりホルベルクのような人間がどんな楽しみをもっていたかなど知りたくもないのに、レイプの報告書を読んだり、ウジ虫ののたくる肥だめとなった建物の土台を掘り返したり、子どもの墓を掘り返したり、もううんざりだ!」ーーー
        エーレンデュルは深いため息をついた。
        「この話はすべてが広大な北の湿地のようなものだ」

        かれは自分の仕事に飲み込まれないようにつぶやく。
        暗い悲惨な事件は、こうして彼の人となりも浮き彫りにする。

        エンターテインメントとして成功しているが、不明な部分もある。双子の姉妹を襲った迷彩服の男はどうなったのか。結婚式から消えた花嫁は何の意味があるのか。

        レイプ犯が集めた容量いっぱいのポルノ映像はいたずらに醜悪感を増すばかりで、殺された男の写真趣味も思わせぶりだ。
        話を人間の醜悪さに徹するなら、上記のような独白は警察官の感傷に思える。

        ストレートな簡潔なストーリーは面白いし、犯罪原因も目新しい。

        読むには値するが、少し期待が過ぎたようだ。
        >> 続きを読む

        2014/11/09 by 空耳よ

      • コメント 6件
    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      白い雌ライオン

      柳沢由実子 , MankellHenning

      4.0
      いいね!
      • ヴァランダー警部の元に、一人の女性が失踪したという事件が伝えられた。
        その話を聞いてみると、失踪した女性には子供がいて、その日は普通に働いており、なんら失踪するような兆候はみられなかったとのこと。

        ヴァランダーは、この女性がなんらかの事件に巻き込まれたのではと判断し、すぐに捜査を開始する。
        女性が最後に行ったのではないかと思われる場所を辿ってみたところ、すぐ近くの家屋で爆発騒ぎが起こり、その家屋からは、黒人の指が発見される。

        さらに失踪した女性は?
        知らず知らずのうちに、ヴァランダーは、南アフリカを取り巻く陰謀の渦中へと入り込んでいく事に-------。

        我々読者側は、事件の背景を知らされながら読み進めていくことになるのでわかるのだが、現場を担当している警官にとってみれば、スウェーデンで起きた失踪事件が、まさか南アフリカの、国家を揺るがす陰謀に関わっているとは思いもしないことであろう。

        隣国やヨーロッパで起きた犯罪に関連するというのであればまだしも、何しろ両極端に離れた南アフリカである。
        この事件の背景を予想しろというほうが、警察にとっては酷なことであろう。

        ただ、この小説で起こる事件は、大袈裟にしても、現在、様々なテロ活動が行われている中で、拠点となるのが、全く関係のない第三国であるというのは珍しくないという状況になりつつあるそうだ。

        そう考えると、このように国際的な犯罪がどこで起きても、不思議なことではないということになる。
        特に、入国しやすい国の一つとして、この舞台になっているスウェーデンが挙げられているのだが、こういった国は他にも色々あるのだろうと思われる。

        そういう中で、主人公のヴァランダー自身が、警察が関わる事件、捜査していく事件も様変わりしつつあるという事を痛切に感じている。

        この本は1993年に書かれているのだが、その時、読んでもぴんとこなかったかもしれないが、現在であれば、この本を読むことによって、世界というものが狭くなりつつあることを実感することができる。

        このように、このシリーズも第1作目を読んだ限りでは、普通のスウェーデンの警察機構を描いたものだと思っていたのだが、前作の「リガの犬たち」から、段々と国際的な事件を描いたものへと様変わりしてきたように感じられる。

        今後も世界の中のスウェーデンという視点から、描かれ続けていくのであろうか。
        益々、目の離せないシリーズになってきたと言えるであろう。

        >> 続きを読む

        2021/12/29 by dreamer

    • 他1人がレビュー登録、 3人が本棚登録しています
      小さい牛追い

      HamsunMarie , 石井桃子

      4.0
      いいね!
      • 読んだ後に、幸せな気持ちにさせてくれる本です。

        ノルウェーの、農場の、四人の兄弟姉妹のお話です。
        日々の出来事、子どもたちの遊びやケンカや、ちょっとした冒険が、描かれています。

        それから、ノルウェーの自然が豊かに描かれていて、すぐそこに、青々とした牧草地がひろがるよう。

        遠い国の話ですが、家族のあたたかさ、が、すぐそばに感じられます。



        >> 続きを読む

        2014/03/12 by ヒカル

      • コメント 4件
    • 1人が本棚登録しています

カテゴリー"その他のゲルマン文学"の書籍一覧 | 読書ログ

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚