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カテゴリー"小説、物語"の書籍一覧

      タタール人の砂漠

      脇功 , BuzzatiDino

      3.2
      いいね! Tukiwami
      •  幻想・不条理。イタリアのカフカ。

        「自分の人生は特別だ。いつかドラマティックな出来事が起こる。きっと自分は何かを手に入れ、何者かになることができる」
         そんな思いをバッサリと斬り払う一冊です。

         何かが起こるかもしれない、という微かな期待は誰しも心の奥に秘めていると思います。誰の中にも「タタール人の砂漠」は存在しているのです。何かを求めて「砂漠」へ向かうのも、無視して街で楽しく暮らすのも、あるいは「砂漠」を前にして考え続けるのも、一つの人生です。でも、一度は自分の中の「砂漠」について考えてみることが必要です。少しでも満足の行く人生を過ごすために。

         年代によって大きく感想が異なる本だと思います。そして同じ年代でも、どのような人生観を持っているかで、思うことは全く違うでしょう。「伝わるメッセージは同じでも、十人十色の感想を生む」これこそ良い小説だと思います。

        「この世の中において、私は決して主人公ではない」と私は思っています。でも同時に、「私の人生というちっぽけな物語の中では、きっと主人公になれる」とも思っています。
         まだ考えが若いでしょうか。

         容赦なく人生に影響する一冊です。人によってはかなりの殺傷能力があるので覚悟の上。
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        2016/03/20 by あさ・くら

      • コメント 7件
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      六人目の少女

      清水由貴子 , CarrisiDonato

      2.7
      いいね!
      • 途中まではとても良かったのだが…一言で言うなら「陳腐」。

        実際に起こった連続殺人の例を出し、それに絡めていく…のかと思いきや、単なる文字埋めなのでは?という描写も多々。
        どんでん返しもパッとせず、何故そうなるのか?という説明もない(そこがリアリティ、というならそれもまぁ…)。
        各々のキャラクターを活かしきれていない感も否めない。
        そもそもどこの国なのか?場所はどこなのか?そこをはっきりしてもらわなくては、感情移入もしにくいだろうに、全て伏せられたまま。
        終幕の投げかけも、一石を投じる、というよりは、ただひたすらに思い気分になるだけ。

        正直内容に星はつけられない。あの長さを訳した訳者さまになけなしの星ひとつ。
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        2017/07/14 by ふみや

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      猫とともに去りぬ

      RodariGianni , 関口英子

      3.5
      いいね!
      • 笑ってばかりの短編集だった

        1972~73年に
        本国イタリアの新聞に掲載されたもの

        「猫とともに去りぬ」
        広場の半分が本物の猫で
        人間から猫になったのが半分もいるのが
        笑けた

        「社長と会計係 あるいは 自動車とバイオリンと路面電車」
        一番すきかも、
        卑怯な社長とええヤツ会計係

        「チヴィタヴッキアの郵便配達人」
        寝すぎて何千年も過去に行ってしまうのも
        笑けた

        「ヴェネツィアを救え あるいは 魚になるのがいちばんだ」
        町が水没するなら
        魚になればいいという発想も
        笑けた

        「ピアノ・ビルと消えたかかし」
        何でシューベルトだけは弾かへんねん、
        笑ける

        「ガリバルディ橋の釣り人」
        魚を釣る為だけに
        過去に遡って、
        名前変えたりとか
        妹でなく弟が生まれるようにしたりとか
        とにかくツッコミ入れたくなった

        「箱入りの世界」
        何かの象徴のような
        風刺臭の強い16篇の中でも
        最たるものに感じた

        「ヴィーナスグリーンの瞳のミス・スペースユニバース」
        シンデレラと違って
        クリーニング店の預かったドレスを着ちゃったし、
        家来でなく憲兵だし、
        迎えに来られたら
        捕まえに来たと思うヒロインに
        笑けた

        「お喋り人形」
        こちらは16篇中
        一番、分かり易い寓話パターン
        …いや、寓話ですらない、
        そのものズバリや

        「ヴェネツィアの謎 あるいは ハトがオレンジジュースを嫌いなわけ」
        ちょっとしたミステリー風で
        面白かった

        「マンブレッティ社長ご自慢の庭」
        "一言"もそんな事いってなかった
        と、言われたら
        君は私の言葉を一々数えてるのか!
        って、のが
        笑けた

        「ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」
        オチはみんな分かるだろう、
        えっ、そうだったの
        って人はいるのだろうか

        「三人の女神が紡ぐのは、誰の糸?」
        自分と引きかえに
        誰かに死んで貰うという頭に来る男が
        ラスト、ざまみろ
        胸がすく

        著者はクラシック曲にも詳しいなあ、
        色々な短編の中に
        散りばめられている

        栓抜き部品工場の社長は、
        この中で2篇に出て来る

        因みに、
        わが国では
        失業保険は現在、
        雇用保険と言っています

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        2017/05/03 by 紫指導官

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      薔薇の名前

      EcoUmberto , 河島英昭

      4.5
      いいね!
      • このイタリアの記号論学者のウンベルト・エーコの大長編小説「薔薇の名前」上下巻を、今回じっくりと時間をかけて再読しました。

        この作品は、1327年のイタリアの僧院を舞台にして、若き見習修道士アドソの視点を通して、約800ページを費やして記された7日間の物語です。

        この作品の中で綴られるのは、宗教、記号論、暗号、迷宮、異端審問、そして、連続殺人------。

        この作品は、難解そうにみえますが、恐れることはありません。約20ページほどの前置きは確かに少々とっつきにくい感じはしますが、それを通り過ぎれば、後はもう、それこそグイグイとこのウンベルト・エーコの豊饒な物語の世界に引き込まれてしまうのです。

        なにしろ、重厚な小説であるわりには、非常に読みやすいのです。とにかく、物語の中に散りばめられた数々のエピソードが、実に面白いのです。

        例えば、冒頭で探偵役のウィリアムが、その卓越した推理能力を披露する場面がありますが、ワトスン役のアドソに対して種明かしをして見せる様子が、控え目なユーモアを交えて描かれていて、実にワクワクしてくるのです。

        とにかく、難解であるという先入観を捨てさえすれば、この作品ほど面白い小説は滅多にないと思います。

        もちろん、ストーリー自体も起伏に富んでいて、キリストの清貧とは何かを議論するだけの小説ではないのです。

        迷宮のような文書館の中へランプを手に侵入し、暗号を解いて「アフリカの果テ」を見つけようとするあたりは、まるで、モーリス・ルブランの「奇巌城」でも読んでいるかのような興奮を覚えてきます。

        連続殺人について言うならば、動機が奇抜ですこぶる面白いのです。犯行方法も、その動機に密着したものである点が、非常に素晴らしいと思うのです。

        そして、真相が明らかになった時点で、犯人の動機と手段に納得できるという、用意周到に計算され尽くした仕掛けになっているのです。とにかく、この緻密で、尚且つ大胆な伏線には、ただただ感心するしかありません。



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        2017/05/15 by dreamer

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      バウドリーノ

      堤康徳 , EcoUmberto

      5.0
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      • 記号論の世界的な権威であり、「薔薇の名前」で広く知られる小説家でもあるウンベルト・エーコの長編小説「バウドリーノ」(上・下巻)を時間をかけて読了しました。

        この作品は、中世ヨーロッパを舞台にした歴史小説であり、密室殺人の謎を解き明かしていく推理小説であり、様々な怪物たちが跳梁する「驚異の東洋」をめぐる冒険小説でもあり、はたまた幻想小説の味わいをも持っていると思う。

        1204年4月。ビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルは、第四回十字軍によって蹂躙されていた。
        その混乱の中、歴史家ニケタスの命を救ったバウドリーノという人物は、ニケタスに己の数奇な半生を語り始めるのだった。

        北イタリアの農民の子として生まれたバウドリーノは、気に入られて神聖ローマ帝国のフリードリヒ皇帝の養子となり、諸国をめぐり、様々な経験をしたというのだが-------。

        この作品は、複雑怪奇な政治が論じられ、神学が論じられ、宇宙の生滅が論じられる。
        笑劇であるとともに、無数の死体が無意味に積み重ねられていく、文字通りの悲劇でもあるのだ。

        つまり、著者のウンベルト・エーコは、一冊の書物の中に、近代が可能にした小説というメディアが持つに至った、あらゆるジャンルを取り入れ、あらためて一つに統合しようと試み、小説という枠組みを、表現の新たな次元に解放しようとしているのだと思う。

        そして、物語の中核に据えられるのは、「聖杯」の探求であり、「司祭ヨハネの手紙」に代表される、もう一つ別の世界、地上の楽園の探求なのだと思う。

        しかも、それらのテーマは、いずれも書き直され、解体し再構築されてしまうのだ。
        世界を活性化し更新する「聖杯」は、誰もが手の届くところにあり、その価値は謎の探索にあって、物自体にあるわけではない。

        中世ヨーロッパに「東方の驚異」をもたらした「司祭ヨハネの手紙」は、先行する無数の聖なるテクストの断片を糊で貼り合わせることによって作り上げられたものだと思う。

        主人公のバウドリーノがつき続ける嘘が、次々と実現されていくように、虚構と現実、時間と空間といったあらゆる差異が無化されてしまう。

        言葉をゼロから学び、その言葉によって世界を再創造していくことが、読むことによって追体験されるのだ。
        そして、追体験することによって、小説という精緻な作り物を純粋に楽しむことができるのだと思う。

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        2018/08/07 by dreamer

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      チポリーノの冒険

      RodariGianni , 関口英子

      3.0
      いいね!
      • 歌をしっていたので、手にとりました。
        子供向けなわりに、少々乱暴なことばもありましたが、楽しい冒険でした。
        モグラおばさんが、いい味だしてます。
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        2015/04/16 by chiiko

    • 2人が本棚登録しています
      聖女チェレステ団の悪童

      中嶋浩郎 , BenniStefano

      4.0
      いいね!

      • 孤児を主人公にした文学作品って結構あるもんですよね。
        思うに、やっぱり我々は、孤児の話が好きなんだろうって思いますね。

        なぜかと考えてみると、それはひとつには、大抵の人は主人公が成長する話を好むからという理由が挙げられるかもしれませんね。

        家庭というバックグラウンドを背負わない孤児の場合、その成長のさせ方の自由度が増すから、作者は書きやすいし、そして読者も楽しいだろうという訳なのでしょう。

        そして、忘れてならないのは、やっぱり憧れなんだと思う。
        「あーあ、ハックルベリー・フィンや長靴下ピッピみたいに、自由きままに遊んで暮らせたらなあ」と思わない子供時代を過ごした人がいるだろうか。

        私たちは皆、その実情は無視して、孤児になりたかった、と-------。

        このステファノ・ベンニの「聖女チェレステ団の悪童」にも、うっとりしてしまうくらい自由きままな孤児たちが登場するんですね。

        しかも、彼らはストリート・サッカーの名手だ。
        このストリート・サッカーというのは、通常のサッカーと違ってプレイヤーは5人。

        芝目の揃ったグラウンドなんてとんでもない、路上やドロドロの空き地といった悪条件の下で行なわれ、大抵の反則は許されるという、実にアナーキーなスポーツなのだ。

        不慮の出来事でプレイ自体ができなくなれば「コトニシヨウ」方式の試合さえ行なわれる。
        言ってみれば、想像によるゲーム。「〇〇というプレイをしたことにしよう」と言葉を応酬し合って決着をつけるわけなんですね。なんか実にいいなあと思いますよね。

        我らが愛しの孤児たちは、そのストリート・サッカー世界選手権に出場するため、肥溜めみたいに不愉快な聖女チェレステ孤児院から脱走するのです。

        追手は孤児脱走などという不祥事がバレては困る教会サイドと、謎に包まれたストリート・サッカー選手権の開催場所を突き止めようとするマスコミ。

        主人公たちは、仲間を増やしながら、敵のフェイントをかいくぐって、世界選手権に出場するのだが-------。

        教会や政治、マスコミに対する風刺も織り込まれていて、転がり続けるサッカーボールそのものといってもいいほどの饒舌かつ予測不能な語り口とは裏腹に、硬派なメッセージも読み取れるんですね。

        けれども、あくまでもこの作品の本領は、孤児たちの悪童ぶりと痛快無比なホラ話にあると思いますね。

        >> 続きを読む

        2018/08/17 by dreamer

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      クオレ

      杉浦明平 , Amicis Edmondo de

      5.0
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      • 『クオレ』は、小さい頃途中まで読んで、ずっと忘れていた。

        ふと、だいぶ前に、池上彰さんが小さい頃読んで感動していたと言っていたので、いつか読み終わろうと思った。

        それでちょっとずつ読んでいたのだが、とても良い本だった。
        児童文学の傑作だと思う。

        いろんな個性や境遇の子どもたちが出てきて、ときどきいろんなエピソードがはさまる。

        義侠心に富んだ少年がいじめっ子をこらしめたり、貧しい家の子がけなげに親のために働いたり、いろいろと感動させられる物語も多い。

        また、ちょうどイタリア統一の頃の物語なので、新しく国民国家をつくり同胞として愛し合おうという物語のはしばしに機運がみなぎっているし、少年でありながら戦場で命をはって任務を全うする美談もいくつか出てくる。

        国民国家、というと日本では戦後、批判的に語られることが多いのかもしれないが、クオレに描かれるのは、古き良き理想としての国民国家、遠く離れた地域の人も、ともに兄弟のように愛し合う、そして大国の支配に対して闘って祖国の独立と統一を守る、ということなのだろう。

        そして、クオレにおいて、そうした理念や理想が空疎や空虚になっておらず、生き生きと感銘を与えるのは、健全な具体的な友人との友情や家族愛や思いやりや義侠心と結びついているからなのだと思う。

        日本の現在においては、とかく愛国心や国民国家という言葉が、排外主義や差別と結びついて語られることがしばしばであることからすれば、クオレの登場人物たちはむしろ真逆で、日本における排外主義や差別を義侠心から正そうとする側の方であることは確かだし、そうであればこそ健全でかつ感銘深いのだと思う。

        そして、何よりこの本を読んでいてびっくりしたのは、このクオレの後半の中に、なんと『母をたずねて三千里』の物語があることである。
        クオレはいろんな物語が集まってできている本なのだけれど、なんと母をたずねて三千里はその中の一部だったのか。
        というわけで、クオレは、全部ではないとしても、少なくともその一部分は、日本人の多くが知っている物語だったということに、あらためて感銘を受けた。

        また時折読み直したい、良い本だった。
        子どもの時に全部読んでいたらなぁと思ったが、最初の方だけでも読んでいたため、どこかしら、私はクオレに出てくるような、国民国家や義侠心みたいなものが、心のどこかにずっと理想としてあったような気がする。
        そして、それは、善い方向で、昇華し、あたためていきたいことのように思う。
        今の日本では、馬鹿げた愛国教育などより、クオレをこそしっかり読んだ方が良いのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2013/11/19 by atsushi

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      神を見た犬

      関口英子 , BuzzatiDino

      4.0
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      • 幻想と現実とが交錯した世界での登場人物の恐怖感や不条理を描いた二十二篇の短編集。
        言い知れぬ恐怖から逃れられない、救われない結末の話は気持ち悪さは残るものの、読み始めから最後まで次が気になって一気に読めてしまった。 >> 続きを読む

        2013/07/27 by freaks004

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      おじいちゃんの桜の木

      NanettiAngela , BalbussoAnna , 長野徹 , BalbussoElena

      3.0
      いいね!
      • 小学生の頃、読書感想文のために読みました。

        主人公(小学生)の田舎のおばあさんが死んでしまったところから話は始まります。

        人は死んだらどうなるのか、生まれ変わって戻ってくるんじゃないか?そんなことを残されたおじいさんにきき、主人公は悩みます。
        のちにおじいさんも亡くなり、主人公はある行動にでるのですが…そこも見所です。

        この本のいいところは、家族の在り方や大切な人の死に対してどう思うのかというのを少年視点からまっすぐ見つめているところだと思います。
        何かに悩んでいるときなどに読むと童心に帰れていいかもしれません。
        >> 続きを読む

        2015/05/22 by かめこ

      • コメント 3件
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      デカメロン

      柏熊達生 , BoccaccioGiovanni

      4.0
      いいね!
      • ▶「BOOK」データベースより

        教会でたまたま落ち合った男3人、女7人が、毎日1人1話ずつ10日間話した100篇の物語。
        中世の終末と近代の人間解放を告げる最初の作品の一つといわれる。
        上巻では精力絶倫の修道士が自分の不行跡に修道院長を引きずり込んで罪をのがれる話、恋多き女が修道院を舞台に巧みに思いをとげる話など、人間本能を哄笑の対象として描く。
        >> 続きを読む

        2018/05/24 by rikugyo33

    • 1人が本棚登録しています
      薔薇の名前〈下〉

      ウンベルト エーコ

      4.0
      いいね!
      • 既に手元にない(図書館に返却してしまった)ので記憶を頼りにしたレビューというか感想となりますことをお伝えしておきます。

        非常に面白かったです!
        下巻巻末には訳者解説がついていたのですが、河島さんって、パヴェーゼの訳もされた方なんですね。イタリア文学の翻訳の方なのか。

        ミステリとしても、歴史小説としても楽しめました。相変わらず中世ヨーロッパの情勢が良くわからなくて、教皇と皇帝がいるとか、ヨハネスとか親しげに名前呼びされても、彼がどっちだかわからないですよ…(ヨハネスは教皇でした)

        異端審問の場面がお気に入りでした。あのベルナールとかいういけ好かないやつ、権力を笠に着て弱きものをいたぶり楽しむサディストですが、人間って愚かだなぁって思いますね。探偵役のウィリアムも、僧院長も厨房係も、それぞれ欠点はあって、しっかりと描写されているところがいい。
        特に人の弱さや愚かさを容赦なく書いています。そこがいい。キリスト教的にいえば、迷える仔羊を導く立場であるはずの修道士たちも仔羊の一匹でしかないというところでしょうか。うーん。

        ちなみに作品の舞台は14世紀なので、ルターさんはまだ生まれていないんですね。プロテスタントはまだ存在しない時代。大変だったんだろうなぁ…

        翻訳がまた良くて、ちょくちょく出てくる大仰な言い回し(倒置法を用いた、「○○だ、××であるからして」というような口調)が修道院っぽくて良かったです。

        薔薇の名前については解説本とか論文もいろいろ出ているようなので、それらを読むのも楽しめそうだなと思います。いずれ読んでみたいです。
        >> 続きを読む

        2016/03/21 by ワルツ

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      インド夜想曲

      TabucchiAntonio , 須賀敦子

      5.0
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      •  二、三年まえの雑誌『ユリイカ』に、わたしをウキウキさせる特集があった。アントニオ・タブッキの特集である。殊に、作家の堀江敏幸さんと、タブッキの翻訳も手掛ける和田忠彦さんの対談がおもしろく、それを読むあいだに多くの記憶が甦ってきた。
         わたしが最初に読んだ堀江作品は『熊の敷石』で、堀江さんはこの作品で芥川賞を受賞した。『熊の敷石』を読んでいるとき、わたしはタブッキの匂いを感じていた。もちろん、堀江さんは、わたしが名も知らぬフランスの小説を多く読んでいるはずなので、堀江さんとタブッキを結びつけることは性急にすぎた。しかし、この『インド夜想曲』と『熊の敷石』はじつに通い合うものがあるのだ。その謎がこの対談ですこし明らかになった。
         タブッキを読むとき、いや大抵の小説を読むときにいえることだが、あまり初読をあてにしてはいけない。たぶんナボコフの言葉にこんなのがあった。
         「小説を読むことはできない。小説は再読されるものだ」
        初読ではどうしても筋を追う読み方になるし、すぐれた小説の見るべきところは、いかんせん恥ずかしがり屋で、それを味わうためには再読が必要なのだろう。タブッキもそれを要求する。
         『インド夜想曲』も初読の段階では、インドを巡る幻想めいた冒険という印象を受ける。が、筋を忘れない程度に時間をあけてまた読むと、かなり違った読書体験になると思う。用意された容器に神秘的な水が注がれるように、タブッキの世界を味わうことができる。登場人物たちのやりとりや、たくさん出てくるホテルの情景に魅了される。幸い、この小説は短い。150ページだ。気になった人は是非、タブッキの本を手に取ってほしい。
        >> 続きを読む

        2015/02/18 by 素頓狂

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      インド夜想曲

      TabucchiAntonio , 須賀敦子

      4.0
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      •  友達を探す「僕」が、インドで幻想に触れる12夜。

         著者はフェルナンド・ペソアに影響を受けたということですが、ペソアを読んで、その流れで本書を読んだことが非常に良かったと思います。

        「私は成長しない。旅をするのだ」

        「旅をするには存在するだけで十分だ。〜想像すれば、私には見える。わざわざ旅などして、それ以上なにをするというのか。感じるために移動しなければならないのは、想像力が極端に脆弱な人だけだろう」

        「人生とは、私たちが造り上げたなにかだ。どんな旅も、旅人たち自身だ。私たちが見るものは、見られたものではなく、私たち自身でできているのだ」
        (全て『不穏の書、断章』より抜粋)

         これこれ! 多分こういうことが込められてるんだ! とペソアの言葉と照らし合わせて、興奮しました。その考えが合っているかはわかりませんが、きっと何かしら影響された部分はあるのでしょう。(……あると思いたい。タブッキさんに共感できたと思いたい)

         物語が進むにつれ、その幻想感は強くなるのですが、インドが元々持っている幻想的なイメージによって「インドならきっとこういう感じなのだろう」と、むしろ現実味が増しました。ラストは物語の全てが幻想の中に飛ばされるような締めです。結果、私の感覚は、現実と幻想のどちらとも言えないところに着地しました。
        「この不思議なところはなんなんだ?」
        「あ、これがインドか!」
         と、こんな具合です。自分でもしっくりきていないところはあります。でも、きっとそれでいい作品なのだと思います。

         旅先の夜に読めば至高ですね。
        >> 続きを読む

        2015/06/06 by あさ・くら

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      ピノキオの冒険

      InnocentiRoberto , CollodiCarlo , 金原瑞人

      5.0
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      • ピノキオは、たぶん誰もが一応は知っているはずの有名な童話。

        しかし、この本を読んで、私はこんなにも波乱万丈で深遠な物語だとこの年になってはじめて知った。

        読みながら、性懲りもなくまたラクなことや怠けに傾き、再三痛い目にあっていくピノキオを見て、なんだか自分によく似ている気がして、なんとも慚愧させられる。。

        子どもの頃に、もっとしっかりとピノキオの物語をしっかり知っていれば、もっと良い大人になれたろうか。

        しっかり働き、人に頼らず、怠けない人間になるべきことを、妖精やゼペットじいさんやコオロギが、何度となく、ピノキオに教え諭すところも面白かった。

        最後には、クジラの腹の中から勇気を持ってピノキオがゼペットじいさんを救い出し、かつ自分で働いて稼いだお金を困っている人のために惜しげもなく使うことで、人間になって、めでたし、めでたし、で終わる。

        ただ、それまでの波乱万丈なストーリーが、これほど生き生きと、また深いものとは、ぜんぜん知らなかった。

        また、この絵本は、ロベルト・インノチェンティの絵が本当に素晴らしかった。

        大人でも真っ向から読まないとなかなか読破できない重厚な絵本。
        すごい絵本である。
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        2012/12/24 by atsushi

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