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谷崎潤一郎
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再読。文豪・谷崎の代表作である。非常に薄い本だが、内容の濃さは異常である。舞城と同様改行がない文体(本当に一切ない)、段落の終わりに句読点をつけない文体であり、形式的にも異色であるが、中身は異色どころではない。三味線師匠春琴と奉公人佐助の師弟愛が主題だが、春琴の嗜虐性は苛烈極まりなく、「痴人の愛」のナオミのサディズムは笑えるが、「春琴抄」の春琴のサディズムは全く笑えない。佐助の「眼」のシーンでは「イタタタ」と声に出そうなほど、臨場感があった。谷崎の作品は「春琴抄」「卍」「痴人の愛」と異常性が際立つものが多く、ノーベル文学賞候補に7回も挙げられながら、受賞することができなかったのも納得できる。ただ、代表作「細雪」は一般人にも安心して薦めることができる傑作であり、日本純文学の頂点に位置する作品であると思っている。まさに天才としか評することができない才能の持ち主であろう。 >> 続きを読む
2019/05/28 by tygkun
ギッシング
『ヘンリ・ライクロフトの私記』(ギッシング/平井正穂訳) <岩波文庫> 読了です。作家家業がうまくいかず、ずっと貧困に苦しんでいた"作者"が、友人から遺産年金を送られ、田舎で悠々自適の暮らしを満喫できるようになった、という内容です。これだけの紹介だとなんだか詰まらなさそうですが、"作者"の本への愛や散策での自然描写が素晴らしく、これぞ読む価値のある作品です。中には政治や経済、イギリスの国民性などを熱く語った、あまり興味の引かれない節もありますが、それを差っ引いても本好きの方(ただし購入派に限る!)、自然の好きな方には必読の書だと言って過言ではありません。章立ても序文は別にして「春」「夏」「秋」「冬」となっており、それだけでも何か惹きつけられるものがあります。 >> 続きを読む
2015/11/17 by IKUNO
堀辰雄
軽井沢を舞台とした風景描写に定評のある、サナトリウム文学ともされる二つの中編作品です。『美しい村』で主人公が親しくなる少女と『風立ちぬ』の婚約者のモデルは同一人物とのことで、宮崎駿監督のアニメ映画『風立ちぬ』は、本書の二作品を連続した話としてとらえて、エピソードを追加して物語の一部に組み込んだものとして受け取れそうです。『美しい村』は少女との出会い、『風立ちぬ』はサナトリウムへの転地と婚約者である節子の病状の変化が作品中の重要なトピックとしてありますが、その点を除けば両作品ともに出来事は少なく、その大半は舞台となる高原を対象とした風景描写と語り手の心理描写で埋められており、基本的には技巧を凝らして作り込まれた詩的な小説作品として味わうべきなのでしょう。ただし、「私」が看病をする婚約者である重病の節子と仲睦まじく愛し合う日々を美しく描く『風立ちぬ』の終盤、小説家である「私」が最愛の人に起こる不幸をも題材として物語を構想し、仕事に心を奪われるあたりに、創作者としての業の深さを窺えます。その点において、アニメ『風立ちぬ』において何よりも飛行機づくりを優先した二郎の姿と重なって見えました。作中の「風立ちぬ、いざ生きめやも」というポール・ヴァレリーの詩句の訳については、反語である説と強い意志の表明とする説の二通りの解釈があるようです。 >> 続きを読む
2020/09/08 by ikawaArise
出版年月 - 1951年1月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト
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