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1951年12月発行の書籍

人気の作品

      卍

      谷崎潤一郎

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
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      • 一言で言えばレズビアニズムの2人の主人公を中心に展開される愛憎悲劇(喜劇とも言える)に近しい作品なのだが、作者がこの作品によって表現することを目指しているところの、その根源的なものは、あくまでレズビアニズムによる官能性にあるのではなく、そこから生まれ出た登場人物一人一人のサディズム、マゾヒズムにある。
        風俗的な官能性は、序盤の描写において早々にクライマックスを迎え、その後は個的な心理、耽美的なエロティシズムの根源に存在する性的衝動、衝動心理と言えるものが前面に押し出され交叉するドラマが物語られていく。この流れから、我々は悲劇か喜劇となる結末を予想する。しかし、主人公二人のように物語を生み出すという器量があるとは言い難く、物語の進行においてほとんど石地蔵に蜂であったり、むしろ破壊的であったりするが故に、前述のようにこの作品を悲劇や喜劇に近しくも異なる作品としてしまう、明らかに役不足である二人の男性の介入によって、その予想は覆されていく。さらに、全編が柔らかな印象のある関西弁で語られる説話体の文章であることも、それを助長することに繋がってしまっている。
        それこそが悲劇と呼べるものなのだが、しかし、そのハンデを逆手に取り、基本主題であったサディズム、マゾヒズムとそれに起因するレズビアニズムの描写をも放擲し、悲劇にも喜劇にもなり得ない空前の“虚偽”を生成したところにこの作品の素晴らしさがある。作品を、悲劇にも喜劇にもなし得なくさせる文体や登場人物を、しかしひどく人間的で滑稽、抱腹絶倒ものながら限りなく瀟洒な”虚偽の悲劇・喜劇“足らしめるものの生成に不可欠な存在に仕立てる谷崎氏の手腕は、流石としか言えないものであろう。
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        2017/12/15 by ヒズミ

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      ぼく東綺譚 (新潮文庫)

      永井 荷風

      5.0
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      •  少なくとも暦が一周するくらい年の差がなければ、自分の文章を磨くための手本にはならない、とわたしは考えている。世代や時代が変わると、それだけ書き言葉は変わっていく。話し言葉はあまり変わらない。わたしたちが江戸時代にタイムスリップしても、タイムスクープハンターのように普通に会話できると聞いた。それほど、書き言葉に宿る精神は独立しているし、それを味わうには冴えた語感が必要となる。故に、文体感覚を鍛えたければ、文士の名に恥じぬ人を訪ねることになる。
         わたしの好みは永井荷風。美文調にすぎる人は虫が好かない。おやっ、荷風は美文調ではないか?と異議が飛んできそうだが、荷風の美文は銀閣のような美であり、「枯淡」で「雅馴」な風情に、「茶目っ気」(これが大事)が加わる名人芸だ。つい背伸びして、どうにかして何か吸収したくなる。『濹東綺譚』を繰りかえし熟読する。たとえ月夜に提灯であっても、星空を仰げれば十分だ。
        『濹東綺譚』を愛読する訳には、わたしのE・M・フォースター好きも深く関係する。この小説の一節に
        「小説をつくる時、わたくしの最も興を催すのは、作中人物の生活及び事件が展開する場所の選択と、その描写とである」
        とある。フォースターも又、場所による啓示を受けた作家なのだ。詳しい解説は塩田伊津子さんの『E.M.フォースターと「場所の力」』に譲るが、フォースターが場所の力を小説に込めたことと、荷風の場所に重きをおく姿勢との共鳴はいたく感慨深い。しかも二人とも1879年生まれ。これはどういうことだろう?できることならフランス語を習得して、眺めのいい部屋に二人を招き、文学談義に花を咲かせてみたい。
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        2015/03/05 by 素頓狂

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