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1952年7月発行の書籍

人気の作品

      硝子戸の中

      夏目漱石

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 大正4年、夏目漱石が亡くなる前年に「朝日新聞」に39回に渡って連載された、最後のまとまった随筆です。漱石が自身のことや日常のことを語ること自体珍しく、晩年に病で自宅療養がちだった漱石をたずねて来る人々との交流を通して、心のやりとりや漱石の心の揺れ動きが大変細やかに描写されています。

        特筆すべきは、たとえそのやり取りが気持ちの良いものだったとしても、不満や後悔の残るものだったとしても、なお美しいと感じさせる文章でしょう。自身や登場人物の微細な心の動きの“表現”そのものに美しさを感じます。

        語られるエピソードからは漱石の人となりも見え隠れします。短冊や詩を書いてよこせと横柄に頼んでくる読者にいらいらしながらも何度も応える彼のお人よしな性格。恋愛に関する女性の人生の痛みに心から寄り添い、それでも生きるように諭す真摯な姿勢。複雑な家庭環境の中で、祖父母だと思っていた人たちが実は父母であることを、こっそり教えてくれた下女への感謝の思い。ある高校の講演で聴衆の一人から「難しくてわからない」と言われ憤慨しつつ、後々他の生徒が講演内容を実践するための教えを請いにやってくると、そのひたむきさに心を打たれる純粋さ。

        巻末の解説でも述べられていることですが、全編を通してみると、漱石が人との物理的、人間的な交流をこえて、心の琴線の触れ合いのようなものを求めていたように思えてなりません。そして、それがなかなかに頻繁に叶うことでもない故に、また自身の中にも不器用で愚かな思いがあることも知っているために、葛藤や苦しみも多かったことが窺えます。巻末、漱石自身も「私の罪は、もしそれを罪と言いえるならば、すこぶる明るい処からばかり移されていただろう」と評し、自分の愚かさの面を自身が思うほどには書ききれていないことを告白しています。
        また、漱石の死生観も窺い知ることができます。「死は生よりも尊い」としながらも、それでもなお今日を生きていく他なく、そうやって「生きる」という範囲の中でこそ、人はあらゆることを選択していくべきだ、と語られます。

        最後の第39回は、心の描写から漱石の日常の描写に切り替えられ、何気ない日曜朝の風景をここまで美しく描けるのか、と正直驚きました。春の訪れとともに、葛藤の先を見出したかのように硝子戸が開け放たれる様は、まさに清々しい、の一言です。人の心を感じたくなったとき、静かに穏やかな時間の中で、ゆっくりとページを捲りたい一冊です。
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        2017/02/14 by すみはむ

    • 他2人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      絵のない絵本

      ハンス・クリスチャン・アンデルセン , 矢崎源九郎

      新潮社
      2.5
      いいね!
      • みにくいアヒルの子などの童話で有名なアンデルセンの本です。タイトルが絵のない絵本とあるように絵は一枚もありませんが、一つのお話が数ページほどなので頭のなかで情景を浮かべやすいです。
         読んでいると顔がほころんでしまうような心温まるお話や、才能がありすぎるあまり周りから疎まれてしまう人のお話など明るいお話もあれば現実的で心寒くなるようなお話もあります。
         これらのお話を話していているのはお月さまです。お月さまが見た世界中の様々な人のお話をしてくれます。アンデルセンはお月さまを話し手にすることで、私達の行いは全て天の上から見られているということを伝えたかったのではないかと思いました。
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        2016/11/04 by taka0316

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      田園交響楽

      GideAndré , 神西清

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 3月6日(日)午後
        BOOK OFFで
        108円で買ってきた

        2016/03/07 by 孝志 松元

    • 5人が本棚登録しています

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