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1953年6月発行の書籍

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      武蔵野夫人

      大岡 昇平

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 大岡昇平は初でした。戦争の小説を書く人というイメージが強かったので、ちょっと敬遠していた。
        なんで読もうと思ったのかちょっと覚えてないのですが、図書館で、タイトルだけ見て選んだように思います。結論から言うと、読んでよかった。

        もともとフランスの非常に冷静な恋愛小説が好きで、心の動きを冷徹にこれでもかと描写していくスタイルが好きです。
        いわゆる神の視点から、本人の意識無意識にかかわらず、いろいろな登場人物の心の動きを描写して、事の推移を記録する。
        貞淑な妻と奔放な妻、それぞれの夫と復員した若い男。舞台は自然豊かな武蔵野というのも、フランスの郊外のようで雰囲気あります。
        文章がうまいのと、心理描写が巧みなので、ぐんぐん引き込まれて一気に読みました。

        貞淑な妻を、ただの善人としてではなく、貞淑な中に自己保身やら自己欺瞞やらが隠れているのを指摘しているのが面白いと思いました。個人的には男性作家というのはどうもロマンチズムに走るきらいがあると感じているのですが、この人はだいぶ冷静なように思います。男性の登場人物にも、女性の登場人物にも、等分に距離を置いて描いている感じ。さすが。

        大岡昇平という人についてはよく知らなかったのですが、スタンダールを訳してるんですね。スタンダールの思考をトレースしたことがあったから、ここまで冷静な心理恋愛小説が書けたのでしょうか。

        しかし秋山はつまらない男でしたね。研究するだけでは恋愛はできないってことですしょうか。勉君の方が断然いい男で、恋するがゆえに忍耐してしまうというのが実に良いです。道子のいい奥さんぶってるところは富子にとっても女性読者にとっても癇に障るところですが、作者自身がいい人なだけじゃないよ、という書き方をしているのでそこまで気にならなかったです。自身の悪いところを自覚している富子のほうが個人的には好きですが、近くにいたらハラハラすることでしょう…。


        ちなみに、ままならぬ恋に苦悩して死を選ぶのは、日本の小説では割とありがちです。でも恋情だけではなく、お金がなくてという理由が含まれていたところに、西洋っぽさを見ました。だいたいミステリでも、海外物は利権が絡んでいるのです。放蕩の末借金まみれになって病に倒れるのも海外もののパターンの一つですし。武蔵野夫人については、お金があればわざわざ死ぬ理由もなかったという意味のことがちゃんと書かれていますし、こういうところが戦後風な感じがしました。新鮮。
        >> 続きを読む

        2015/10/10 by ワルツ

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