こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1955年3月発行の書籍

人気の作品

      夜明け前

      島崎 藤村

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 重厚で、漢字も多く、かなりの長編ということもあって、なかなか読む気が起こらなかったが、読み始めてみると、スラスラ読むことができた。

        題材の面白さや、落ち着いた文章――派手さを抑え、実質のある過不足ない文書で、長編にぴったり――のおかげもあるが、なによりも、文の中に込められたリズムが良いからだと思う。

        島崎藤村は詩人から出発した人だから、当然である。

        長編のどこを取ってきてもいいのだが、たとえば、

         隆盛は寡言の人である。彼は利秋のように言い争わなかった。しかしもともと彼の武人気質は戊申当時の京都において慶喜の処分問題等につき勤王諸藩の代表者の間に激しい意見の衝突を見た時にも、剣あるのみの英断に出、徳川氏に対する最後の解決をそこに求めて行った人である。その彼は容易ならぬ周囲の形勢を見、部下の要求の制えがたいことを知り、後には自ら進んで遣韓大使ともなり朝鮮問題の解決者たることを志すようになった。岩倉大使一行の帰朝、征韓論の破裂、政府の分裂、西郷以下多くの薩人の帰国、参議副島、後藤、板垣、江藤等の辞表奉呈はその結果であった。上書して頗る政府を威嚇するの意を含めたものもある。旗勢をさかんにし風靡するの徒が辞表を奉呈するものは続きに続いた。近衛兵は殆ど瓦解し、三藩の兵のうちで動かないものは長州兵のみであった。(p123)

        または、

         つつましくはあるが、しかし楽しい山家風な食事のうちに日は暮れて行った。街道筋に近く住む頃ともちがい、本家の方ではまだ宵の口の時刻に、隠宅の周囲はまことにひっそりとしたものだ。谷の深さを思わせるようなものが、ここには数知れずある。どうかすると里の近くに来て啼く狐の声もする。食後に、半蔵は二階へも登らずに、燈火のかげで夜業を始めたお民を相手に書見なぞしていたが、ふと夜の空気を通して伝わってくる遠い人声を聞きつけて、両方の耳に手をあてがった。
        「あ――誰か俺を呼ぶような声がする」
         と彼はお民に言ったが、妻には聞こえないというものも彼には聞こえる。彼はまた耳を澄ましながら、じっとその夜の声に聞き入った。(p344-345)

        いずれも実に自然で、すっと入ってくる。
        こういう文章を名文というのだと思う。
        >> 続きを読む

        2017/09/19 by Raven

    • 2人が本棚登録しています
      新生

      島崎 藤村

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • うーん、主人公がクズっぽい。
        これは自伝小説なので、主人公=藤村ということですよね
        めちゃくちゃだな...。

        姪と恋愛関係になり、それを小説にして公表するなんて並外れてますよね。
        でも、藤村は常人とは違う価値観を持ったエキセントリックな人という感じはしませんでした。
        姪との関係に悩んだり、人生を良くしようともがいたり、不思議と共感できる部分もありました。

        特に憔悴した姪の写真をみて可哀想だと言いつつ、それを箪笥?の底に隠す場面は藤村の性格がよく出ている気がします。
        藤村を嫌う人は、そういうエゴイストっぽい、でも人間くさい部分に、嫌悪感を感じるんでしょうか。
        >> 続きを読む

        2018/11/04 by りっか

    • 1人が本棚登録しています

出版年月 - 1955年3月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本