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1956年2月発行の書籍

人気の作品

      草の花

      福永 武彦

      新潮社
      4.0
      いいね! niwashi
      •  古い文庫本のカバーを捲ってみると、昭和55年1月5日の日付がありました。36年ぶりの再読です。

         この小説は福永武彦の第2長篇であり、彼の作品の中では最も知られているものではないでしょうか。当時、新潮文庫の100冊にもリストアップされていたと思います。ぼくもこの小説から福永武彦の世界に入りました。
         と、いうのはあまり正確ではありません。高校時代のぼくは、そこに描かれたあまりにプラトニックなボーイズラヴ(という言葉は当時なかった)を理解できずに途方に暮れたのでした。日付の下に、自分には遥か遠い世界だという趣旨の書き込みが残っています。
         この作家を見直したのは約1年後に、「愛の試み」というエッセイを読んでからのことであり、その後、ポツリポツリと小説も読みましたが、いずれにせよ、さほど熱心な読者ではありませんでした。

         今年に入ってふとこの作家のことを思い出して読み始めたのは何故なのか。
        「風のかたみ」、「忘却の河」、「海市」と読み進めているうちに、その理由らしきものがだんだん分かってきたのですが、そうだ、そうだったのだと膝を打ったのは、「草の花」の中に、こんな文章を発見した時でした。

        ───僕はね、音楽のような文学が書きたいと思うんだ。ちょっと矛盾したような言葉だけど、文学の中に、音楽の持っている要素を自由に流し込めたら、どんなにか素晴らしいだろうと思うよ。
        ───その文学というのは詩のこと?
        ───うん、詩は文学のジャンルの中で一番音楽に近いけどね、だけど日本語ではどうだろうか。僕は色んな国の詩を原語で読んでみたけど、日本語というのは短歌や俳句の世界から一向に出られないような気がしてね、つまり魂の内部を描き切るには、現代の日本語を使ったんじゃ気の抜けた自由詩にしかならない、といって醜の御楯とか、なりにけるかも、じゃ滑稽だしね。だから僕は、日本語で詩をかくつもりは今のところないんだ。僕は小説を書いてみたい、それも音楽のような小説という、謂わば不可能なジャンルを可能にしてみたいと考えているんだ。

         昨年末から今年はじめにかけて、素頓狂さんのミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」のレヴューで、「音楽の状態に近い小説」というコンセプトを巡るコメントをやりとりしていたのですよね。
         ぼくはこの「草の花」の中の文章を、一度読んだきり忘れていて、そのコメントを書くときにも頭に浮かべることはありませんでした。しかし、その素頓狂さんとのやりとりが、ぼくの潜在的な記憶を刺激したことにより、ずいぶん永らく再読していなかった福永武彦の文庫本に手が伸びるということになった模様です。その後によんだ「幻影」という短篇(これは今回初めて読みました)には、主人公と後輩とがハクスリー(素頓狂さんが「音楽的な小説」の例として挙げていた「恋愛対位法」の作者)の新作の技術的価値を論ずるという場面もあって、なるほどなるほど、すべては繋がっているのだなといたく感心いたしました。

         で、この「草の花」という小説において、その試みが成功しているかというと、必ずしもそうとは思えません。それがある程度成功しているのは、「忘却の河」、「海市」ではないかと思われます。それならそちらのレヴューを書けと言われそうですが、最後に残している大作「死の島」の再読まで終えた後、改めてこの作家について考えてみたいと思っています。
        >> 続きを読む

        2016/01/23 by 弁護士K

      • コメント 3件
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      夜間飛行

      堀口大学 , サン・テグジュペリ

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! u-ma
      • あとがきにこの作品は読者に精読を要求する作品だと書かれている。ということは自分は精読しないまま卒読してしまったということなのだろう。サラっと読んでしまった...小説読むのって難しい。 >> 続きを読む

        2013/06/15 by freaks004

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