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1967年9月発行の書籍

人気の作品

      ハムレット

      ウィリアム シェイクスピア

      新潮社
      カテゴリー:戯曲
      4.2
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      • 勝手な「ギリシャ・ローマ古典の旅」の終着駅は、文豪ゲーテとなりましたが、実はもう一人、世界屈指の文豪がいますね~ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616年)。英国で後期ルネサンスを華々しく飾った劇作家・詩人です。彼にインスパイアされた芸術家は数知れず、もちろん後進のゲーテもその一人です。

        劇作家だからなのか? 当初、シェイクスピアという人は、古典文化の影響を受けていない孤高の芸術家だと勝手に思い込んでいたのですが、よくよく読んでみますと、そうではないことに恥ずかしながら気づきました。しっかり古典芸術を継承しながら、生の横溢をあますところなく描いた巨匠です(ゲーテの言うとおりでした……反省(-_-;))。

        でも、シェイクスピア作品群のほとんどは戯曲のため、観劇しなければそのよさは伝わらず、しかも訳文ではもっと伝わらない……という悲しい限界はあるかもしれません。もっとも16世紀の古典英語は、現代のネイティブスピーカーでもかなり難解のようです。日本人が1700年代の「奥の細道」をすんなり理解できないのと同じかもしれませんね。ということで、優れた訳者に身を委ねて愉しみました。

        シェイクスピアの作品をあらためて読んでみると、繊細で珠玉のような言葉の数々、人間観察の鋭さと内面を抉り出すような描写、ときに宇宙観さえ漂う壮大さに思わず唸ってしまいます。悲劇・喜劇問わず、まるで羽のような軽やかさ♫ きっとシェイクスピアには詩の女神ムーサが降りたに違いありません、モーツァルトにアポロン神が降りたように(^^♪

        1595年「ロミオとジュリエット」を発表後、1599年「ジュリアス・シーザー」を皮切りに、シェイクスピアは毎年のように悲劇作品を発表する「悲劇時代」に突入します。
        順に「ハムレット」、「トロイラスとクレシダ」、「オセロー」、「リア王」、「マクベス」、「アントニーとクレオパトラ」、「コリオレイナス」、「アテネのタイモン」。
        そのうち、「ハムレット」、「オセロー」、「リア王」、「マクベス」が、有名な4大悲劇と呼ばれていますので、レビューしてみます。

        「ハムレット」は1600年~1601年の作品。
        偉大なデンマーク王が急死し、そのわずか2か月後、王妃は亡王の弟と再婚します。王子ハムレットは、父王の急逝と王妃(母)の不条理な再婚に悲嘆する日々……。そんなある日、城に現われた父王の亡霊は、弟に暗殺されたと息子ハムレットに告げます。母と叔父の卑劣な裏切りに、怒り狂わんばかりで復讐を誓うハムレット。自ら狂気を装い、美しいオフィーリアとの恋も潰え、ついに復讐を果たすものの自らも毒刃にかかってくずおれてしまいます。

        いやぁ~グレート! 素晴らしい♫(独りで盛り上がってごめんなさい)
        この作品は、その直前作「ジュリアス・シーザー」の場面を適宜引きながら、ギリシャ悲劇の世界を彷彿とさせます。例えば、10年に及んだトロイヤ戦争から凱旋帰国したギリシャ軍の総大将アガメムノンは、彼の従弟と不義の妻に謀殺され、王位も簒奪される数奇な運命を辿ります。その後、亡王アガメムノンの王子オレステスは、姉のエレクトラとともに復讐を果たすというギリシャ神話は有名です。

        彼の初期の習作時代は、ギリシャ・ローマ文化の影響を受けてはいるものの、はやりシェイクスピア独自の才気は溢れていますね。劇作家として名をはせても、決して留まることを知らず、常に作品を進化させているよう。少々固くて男性的な政治悲劇の「ジュリアス・シーザー」に比べると、「ハムレット」の詩的で流暢なセリフは飛躍を遂げていると感じます。

        黙々と煩悶する、独りぼっちのハムレットは、クライマックスに至ると己の宿命に毅然と挑みます。苦悩に満ちた内面を抉り出していることもあって、健気なハムレットに共鳴する読者は一体化しやすく、筋もシンプルでわかりやすい作品だと思います。

        「もともとやくざな古木に美徳を接ぎ木してもはじまらぬ。結局、親木の下品な花しか咲きはしない」

        「地球という素晴らしい建物も、自分にとっては荒れ果てた岬のように見える」

        「悲しみというやつは、いつもひとりではやってこない。必ずあとから束になって押し寄せてくるものだ」

        私の印象では、高貴で繊細で聡明なハムレットですが、少々激情的で陰気な気質です。叔父と母の裏切りで極度の人間不信に陥ると、さらに拍車がかかったのでしょうが、もともとの性癖も大いに影響しているという点では、運命に流されるギリシャ悲劇とは異なる「性格悲劇」の典型だと思います。そのため、細かな筋論はさておき、ハムレットという男に共感できるかどうかが評価の分かれ目になりそうです。

        ハムレットの装った狂気は演技なのかしら? いやいや性格そのものではないのかな? それにしてもこの破綻ぶりはちょっと心配よねぇ……もしや、ほんとに人格破壊されちゃったのかな? とぶつぶつ言いながら、終始目が離せず、ハラハラ怖くて面白い……。

        少々残念なのは、ハムレットと愛しいオフィーリアとの悲恋の描写が薄弱で、本当にハムレットは彼女を愛していたのかしら? オフィーリアはどうなの? う~ん、実のところよくわかりません。このあたりの男女の心理描写は、後の悲劇「オセロ―」や「アントニーとクレオパトラ」の甘美で複雑な愛憎描写と比べてみても、少々荒削りです。それゆえにシェイクスピアは進化の路を歩み続けるのでしょうか。

        直前作「ジュリアス・シーザー」を星3つとすれば、人間描写の素晴らしさと詩的で活き活きとしたセリフの数々、ということで、勝手に採点、星★★★★(^o^)
        >> 続きを読む

        2016/02/12 by アテナイエ

      • コメント 6件
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      トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

      トーマス・マン

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.7
      いいね!
      • 【何度目かの読み直しです】
         新潮文庫には、『トニオ・クレーゲル』と『ヴェニスに死す』の二編が収録されています。

        ○ トニオ・クレーゲル
         14歳のトニオ・クレーゲルは、北ドイツのリューベックに住む裕福な家庭の子供でした。
         詩が好きで、あまり友人達と交わろうとしない、周囲からは変わった奴と思われているような少年。
         同い年のハンス・ハンゼンも裕福な家庭の息子でしたが、トニオとは対称的に、活発で聡明で、誰からも好かれる美少年でした。
         トニオは、ハンスに恋しており、何とか自分の世界に引き入れようとするのですが、それは叶わないこと。

         トニオはまた、16歳になった時、金髪のインゲボルクという少女に恋をしました。
         しかし、インゲはトニオに何の関心も抱きません。
         トニオはある時、ダンスのレッスン中にインゲとカドリールを踊ることになりました。
         舞い上がってしまい、女性のパートを踊って赤恥をかいてしまうのです。
         そっとみんなの前から離れて行くトニオ。
         こんな時、インゲがやってきて、「みんなの所に戻りましょう」と声をかけてくれたら良いのに、そんなことは起きるはずもない……。

         成人したトニオは、詩によってその名を轟かすようになりました。
         そしてある時、ふとデンマークへ旅行することを思い立ちます。
         その旅の最初には、自分が生まれ育ったリューベックに立ち寄ることも含まれていました。
         念入りに身支度をして訪れたリューベックの町はすっかり小さくなってしまったように見えました。
         以前、自分が住んでいた家も人手に渡ってしまっていました。

         デンマークに着いた後、逗留先のホテルに旅行者の一団がやって来ました。
         どうやら一晩中舞踏会をして楽しむのだとか。
         その一団の中に、ハンスとインゲの姿を認めたのです。
         こうしてまた、少年時代の情景が再現されることになってしまうのですが……。

         トニオは、成功者ではあるわけです。
         ハンスやインゲよりも成功したのでしょう。
         トニオには、自分を受容しないハンスやインゲを見返してやりたいという気持ちもあったと思われます。
         それが詩人として大成する原動力にもなったのかもしれません。
         しかし、それは結局は空しいだけのことなのですよね。
         結局、トニオは、知人の女性画家が見抜いたように『道を踏み迷った俗人』だったのでしょうかね?

        ○ ヴェニスに死す
         今回読み直してみて、作家のアッシェンバッハが50歳(代?)だという設定に気付き驚きました。
         もっと老年だとばかり思い込んでいたのですよ。
         若い頃に読む『50代』というのはおしなべて『老人』とひとくくりにしてしまう年代だったのかもしれませんね。
         しかし、もちろん、今読むと、「50代はそんなに老人ではない」と思うわけですが。
         ですから、作中でのアッシェンバッハの振る舞いは私がイメージする50代よりも年老いて感じられたのです。

         一方の美少年のタドゥツィオ(一般にはタージオという名前で知られていると思いますが、新潮文庫のこの版ではタドゥツィオとされています)は14歳。
         14歳というのは、少年が美しくいる年齢なのでしょうか?

         アッシェンバッハは、ヴェニスに向かう船の中で若者の中に混じってはしゃいでいる若作りをした老人を見て何と醜悪なと思うわけです。
         髪を染め、入れ歯を入れ、涎を垂らしながら若者に混じって媚びを売る老人。
         しかし、ヴェニスでタドゥツィオを見そめた後、自分の老いをまざまざと知ったアッシェンバッハは、足繁く通うホテルの美容室で、遂に髪を染め、若作りの化粧をしてもらうのですよね。

         ヴェニスではコレラが流行り始めており、ホテルからも次々と客が姿を消していきます。
         アッシェンバッハも、ヴェニスに到着した当初、その暑さと、風が無くよどんだ空気の中に漂う悪臭に気分が悪くなり、ホテルを引き払おうとしたものの、タドゥツィオの近くにいたいばかりに滞在を引き延ばしてきたのです。
         
         アッシェンバッハがホテルのベッドで見た夢は、コレラで皆が逃げ出し、あるいは死んだ後に、自分とタドゥツィオの二人だけが残されるという、願望めいた夢なのでしょう。

         しかし、結局、タドゥツィオの家族達もホテルを引き払うことになり、それを見送るようにしてアッシェンバッハだけがコレラに罹患して死んでいくというストーリー。

         死んでいくアッシェンバッハは、船の中で見た、醜悪だと思った老人と同じように、髪を染め、若作りした姿で死んでいくわけですよね。
         あぁ……。
        >> 続きを読む

        2019/12/20 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 7人が本棚登録しています
      オイディプス王

      ソポクレス

      岩波書店
      カテゴリー:ギリシア文学
      4.2
      いいね! Tukiwami
      • エディプス・コンプレックスの語源として、ストーリーは知らない者はいない著名な作品
        話のあらすじはもちろん私も聴いたことはあった。
        しかし、実際に読んでみると、想像以上に本当にすごい作品だった。
        圧巻。
        悲劇の神髄、名作中の名作と言えようか。

        たとえて言うならば、ミケランジェロの彫刻はすごいけれど、なおその上をいく奇跡のような作品にラオコーンがあるように、シェイクスピアの悲劇はすばらしいけれど、なおその上をいくのがソポクレスの『オイディプス王』と言えようか。
        ラオコーンといい、『オイディプス王』といい、古代ギリシャのすごさにはただただ驚嘆する他はない。

        さまざまな天災に見舞われるテーバイの様子が、読みながら今の震災と原発事故に苦しむ日本に重なって見えて、それで一層感情移入しながら読めた。

        シェイクスピア劇が、劇のストーリーだけでなく、その中に散りばめられる無数の格言や台詞が何よりも面白く心に残るのと同様に、ソポクレスの『オイディプス王』もその中にいくつも印象深い台詞がある。

        「堪えるに難き苦しみも、正しきかたへとなり行くならば、すべて幸いに終わるであろう」

        「この地(くに)には、ひとつの汚れが巣食っている。
        さればこれを国土より追いはらい、けっしてこのままその汚れを培って、不治の病根にしてしまってはならぬ。」

        「人がおのれの持つ力によって、世のためにつくすのは、何よりも美しいつとめであろうに」

        「わが内に宿る真理(まこと)こそ、この身を守る力なのだから」

        「ただ、不確かな憶測により、勝手に罪を着せるのだけは、やめていただきたい。
        故なくして悪人を善人とみとめ、善人を悪人とみなすのは、共にこれ正しからざるところ」

        「げに何ごとも、潮時が大切」


        不確かな憶測により、勝手に人を罵倒するのをやめて、原子力政策のありかたを見直し、不治の病根とならぬように、この国のありかたそのものを改めていくことが、これからの日本はできるだろうか。

        そんなことを考えさせるのも、この作品が並外れたパワーと新鮮さを持つからなのだろう。
        話しの筋は知っているから、などという思い込みは捨てて、一度は読んでみるべき作品と思う。
        >> 続きを読む

        2012/12/21 by atsushi

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