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1969年3月発行の書籍

人気の作品

      魔の山

      トーマス・マン , 高橋義孝

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【何度トライしてもどうしても読了できなかった本ってありませんか? 私にとってそんな本が「魔の山」でした。大分前に初めて読了できた時のレビューを再掲です。】

         3度目の正直!
         何度トライしても、どーしても、どうしても読めなかった本ってありませんか?
         この度、その一つをようやく読了できました。

         私は、結構しぶとく読み続けるタイプなのですけれど(それは良くないという指摘を頂くこともあるのですけれど)、そうやっていても、今までにどうしても読めなかった本がいくつかあります。
         その一つが、このトーマス・マンの「魔の山」でした。

         最初にトライしたのは、高校生位だった記憶です。はい、挫折しました。
         その後、多分、大学生だった頃か、就職した後に、もう一度トライしたと思うんですね。
         でも、やっぱり、あえなく再度挫折しました。

         で、その本は、「実家送り」になっていて、もう、何年もお蔵入りのままでした。
         だって、な~んにも起こらない物語なんですもの。
         いえ、それなりの出来事はあるのですけれど、なんていうか、結末に向かっての一貫した「流れ」のようなものはなく、ただただ、時が過ぎていくだけ。

         この度、実家を改築するという話が出て、学生時代に私が買った本が実家に溜まっていたのですけれど、その中で、必要な本だけ引き上げてきたのでした。
         その時の本を、最近読み直していたりします。
         「魔の山」も、そうやって戻ってきた本で、今回が3度目のトライ。
         今回は目出度く読了できました。

         主人公、というか、このお話の軸として描かれているのは、ハンス・カストルプという、何の変哲もないふつーの青年です。
         いとこのヨーアヒム・ツィームセンが、高い山にある国際療養施設、サナトリウムですね、「ベルクホーフ」に入院していました。
         ハンスは、これから造船会社に就職することが決まっていたのですが、ちょっと体調を崩したこともあって、いとこの見舞いがてらにこのサナトリウムで3週間の休暇療養を過ごすために高地を訪れました。

         ベルクホーフは、いたれりつくせりの施設です。
         毎日5回の、滋養に溢れる、贅沢な食事が振る舞われ、絶妙の寝心地を提供する寝椅子に、毛布にくるまって横になり、「水平生活」と揶揄されるような、穏やかな療養生活を送ります。
         滞在者は、みんな病気を抱えており、時々亡くなってしまう人のことも描かれますが、総じて「病人」というイメージは湧いてきません。
         多少の熱がある人でも、通常人と同じような生活(それも、とても贅沢な)を送り、優雅に暮らしている様が描かれます。
         それは、「下界」のことを忘れさせるような、素晴らしい体験であるように、「外来者」のハンスには思えました。

         しかし、いとこのヨーアヒムは、軍人志願で、もう、入隊が決まっていたのに、病気のためにそれも叶わず。
         ヨーアヒムとしては、病気を治すために与えられた日課をきっちりとこなし、一日でも早く「下界」に戻り、軍人としての生活を全うしたいと誠実な暮らしをしていました。

         最初は、「外来者」であったハンスですが、ここで、発病してしまうのですね。
         熱は下がらず、専門医の診断では間違いなく肺病だとか。
         最初は、3週間の見舞い療養だって長すぎると思って訪れたのに、ここで数ヶ月過ごすようにとの診断を下されてしまいます。

         さて、ここからが、「魔の山」の世界になっていくのですね。
         な~んにも起きません。
         いえ、起きますよ、日常生活の細々としたこととか、ハンスが知り合いになるセテムプリーニというイタリア人との形而上的な会話(……これは、その後、セテムプリーニの論敵であるナフタとの論争に発展します)、あぁ、クラウディア……いえ、ロシア人であるショーシャ夫人に惚れ込んで、恋してしまうハンスとか。
         それなりのエピソードはありますが、でも、それは完全に閉鎖されたサナトリウムの中だけのことです。
         また、全体を強く貫く物語全体に一本通った「筋」というものが見あたらないように思えるのです。

         最後まで読みましたが、最後のシーンに連なる伏線、あるいは、そこに導くためのストーリーなど、なにもありません。
         ただ、ただ、雪に覆われ、薄い空気を吸い、下界と隔絶された、サナトリウムの中の日々が連綿と綴られていくだけです。

         むしろ、この作品は、丹念に「時間」を書いているように思えました。
         ええ、作者も、読者に向かって、そういうことを書いていますし、ハンスの口や思考を借りて、そのテーマを論じてもいます。
         ベルクホーフ周辺の季節感もその伏線になっているように感じられます。
         季節感、と、書きましたが、実はこれが無い(狂っている)のです。
         夏のような、真っ青な空が広がる日々があるかと思えば、季節的には夏なのに、ひどく冷え込み、雪まで降ってしまう日もある。
         私たちが、時間を感じるよすがの一つでもある季節感が完全に狂わされています。

         そして、ベルクホーフの滞在者達も、そのような時間の流れに身を浸しきっているのでした。
         後半に出てくるちょっとしたエピソードですが、ハンスは、ある時、時計を落として壊してしまったのですが、もう、それをなおそうともしません。
         時間など、無くなってしまう世界なのかもしれませんね。

         私たちが、小説を読む時に費やす時間があるじゃないですか。
         でも、それは、時間軸で比べたなら、要領よく描かれている作中の人物達の時間の方が早く過ぎていくことでしょう。
         それは、「小説」というスタイルを取る以上仕方のないことなのですが、何だか、この作品は、ところどころで、そういうことに反旗を翻し、作中人物の時間と読者の時間を同じテンポで流しているのではないかと感じる部分があったりしました。
         それは、たとえば、セテムプリーニとナフタの難解な議論を丁寧に追って書き込んでいたりする部分など。

         でもね、いくら書いてみたところで、それは、彼等の思考の速度には追いつかなくて、だからどうしてもはしょらざるを得ないから、やっぱり作中の時間の方がどうしても早く流れてしまうのだけれど。
         作者が、そういう時間に論及するところもいくつかあります。
         特に、初期の頃など、そういう作品を目指していたのではなかったのだろうか、と思わせたりもします。
         何と、この作品を書き上げるまでに要した時間は11年程だったとか。
         ラストは、それなりの描写がありますが、やや強引に「閉めた」とも感じられます。
         きっと、そのままにしておいたら、「魔の山」は、いつまでも続く物語だったのかもしれません。

         長い長い物語でしたが、読了してみると得も言われぬ読後感があり、良い作品だなぁと感じました。
        >> 続きを読む

        2019/03/28 by ef177

    • 1人が本棚登録しています
      O・ヘンリ短編集 

      O・ヘンリ

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 最後の落ちがおもしろい。感動的なものから笑いを誘うものまであり、ぐっと引き込まれてふふっと笑ってさらっと終わる感じがとても良い。ほかの話も読みたい。 >> 続きを読む

        2018/04/05 by kzk

    • 6人が本棚登録しています
      宇宙をぼくの手の上に

      フレドリック・ブラウン

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 「宇宙をぼくの手の上に《Space on My Hands》」なんて素敵なタイトルでしょう♪
        フレドリック・ブラウンの奇想天外なSF短編集です。
        どれだけ奇想天外かというと……、そりゃ~読んでもらうのが一番ですが(#^.^#)
        それでは、彼の言葉を聞いてください!

        『月に思いをよせるハツカネズミ君に、救援にかけつけた怪物ベム諸君に、ゴキブリの思念投射に惚れこんだ男に、目だたない真紅の服を着た探偵氏に、ポルカ・ドットのネクタイを締めた駝鳥君に、サンドウィッチの中の宇宙船と、口のきけない雛(ひよこ)さんがたに、そう、ぜひ会ってください』
          ――序文 Introductionより

        上の言葉からもお分かりでしょうが、彼の魅力はシニカルではあってもユーモアと明るさを感じるところです。
        ネタだけではなく人間を描いているという部分も好きなところです。
        切り詰められた言葉には必要最低限の情報だけを込めていますが
        それがドライになりすぎることなく、結末もイヤな読後感を与えない。
        話のテンポが速いし意外な結末に気を取られて忘れてしまいがちですが
        彼の計算のしたたかさと文章の上手さ、構成の上手さは他を寄せ付けないものがあります。

        SFは世界自由に設定でき、それゆえ統一性と完全性を備えた作品を作り出すことができるのだと語っています。
        私もそう思っていますし、彼の小説はまぎれもなく一級の文学だと私は思います。


        【内 容】
        ☆緑の地球 Something Green
          私が最高に優れた短篇の一つだと思っているのがこの作品です。
          SFとしてのアイディアがというだけではありません。
          設定は宇宙とか惑星とかが舞台になっていますが、描かれているのは人間心理そのものです。
          人間性の本質、その儚さ哀しさ。
          人類にとって地球という星のかけがえのなさ。
          そこに想いを致すとき、全ての感情が溢れだすような作品だからです。

          でも実は、この作品は星新一さんの翻訳のほうが好きです。
          とても簡単な言葉を選んで訳していてとても優しい気持ちで、だから悲しさも倍になります。

        ☆1999年 Crisis
          1999年、「未来の」アメリカ社会を舞台にしたミステリ。
          嘘発見器を出し抜くことで訴追を逃れる犯罪者が多発しだした。
          このままでは警察機構が機能しなくなる。
          いわゆる探偵の探偵が活躍しますが、あまり捻った話ではなく、騙されたすっきり感もない。
          テーマはむしろ、罪と罰のお話しであるといえるでしょう。
          ブラウンお得意の逆説で、罪を犯した記憶も意識もない者を罰することに意味があるか?
          そして、最後には犯罪者に罠が仕掛けられているというオチが。

        ☆狂った星座 Pi in the Sky
          これを笑わずにいられる人がいるんだろうか?
          単なるおふざけ的なホラ話のようですが、これだって人間心理を突いた問題作なんですよ。
          大統領の決断は正しかった。
          (ただしこんな優れた決断ができるリーダーがいる訳がないという現実が悲しいですが)

        ☆ノック Knock
          星新一さんが影響を受けた作品のひとつ。超有名な短篇です。

          わずか二つの文章から成る恐怖物語の秀作がある。
          「地球上にのこされた最後の人間が一人で部屋の中に座っていた。
          と、ドアにノックがして……」

        ☆すべて善きベムたち All Good Bems
          主人公はSF作家。ブラウンをモデルにしているかのような仕掛けがみえ面白い。
          ユーモラスで嘘くさくて、なのに、ひょっとして…と思わせる技が絶妙です。
          ベムってBug-eyed monstersの略なんですね。でもこのお話のようなベムなら大歓迎です。

        ☆白昼の悪夢 Daymare
          そういえばブラウンはミステリーも書いていたんでしたっけ。
          木星の衛星都市で起こった久々の殺人事件はとんでもない展開をみせた。
          同じ人間が4通りもの方法で殺されるという現象が起きたのだ。
          しかしそれは単なる事件の始まりにすぎなかった…。
          SFの得意技のありえない犯罪、ありえない展開。
          主人公が翻弄されるさまがおかしくて、でもスリリングでもあるし不気味さも備えている。
          これ映画にしてもいいと思う。
          コメディーとシリアス両方のテイストのあるMen In Blackのような感じならぴったり。

        ☆シリウス・ゼロは真面目にあらず  Nothing Sirius
          フレドリック・ブラウンならではのおふざけ!
          冗談にしか思えない展開の中にも不気味さが忍び込み、予想外のオチのインパクトは最高。
          恋愛要素もあってロマンティックさもあります。
          シリウス(星の名前)とシリアス(真面目)のかけことば的ジョークがお気に入りみたい。
          他にもダジャレがたくさんでてくるので、英文で読んだ方がきっと面白いはず。
          笑った後、ちょっと考えさせられます。人間ってヤツは欠陥だらけだよね。って。

        ☆星ねずみ The Star Mouse
          マッド・サイエンティストっぽいオーベルブルガー教授とねずみのミッキーの心温まる
          …悲劇?
          独自で月ロケットを開発していた教授は家ネズミを搭乗させることを思いついた。
          計算通りに月を目指して飛行していたはずのロケットは予想外の場所についてしまった。
          小惑星プルクルスとはどんな星なのか?そこには何者がいて、ミッキーに何がおきたのか?
          ミッキーだけでなくてミニーも登場です!
          「スター」という言葉は星とスターの掛けことばだと思います。
          ミッキー・マウスはスターだから。

        ☆さぁ、気ちがいに Come and Go Mad
          ホラーテイストのSFです。鳥肌がざわざわ立つような不気味さがある、超一級の短篇小説。
          その怖さは例えばカフカにも似ていて。
          私、昔これ読んで以来昆虫恐怖症になった気がしています。
          すごい世界観を描いているのにSFってことでこんなに低い位置に甘んじていていいんでしょうかね?
          SFファンにも言いたい。
          SFをアイディアだけで勝負する文学と思ったら大間違いですよと。

        この短篇集は傑作ぞろいでお薦めです。
        しかし、星新一さんの訳文の方が「フレドリック・ブラウンにはぴったりする」と思うので、
        「さあ、気ちがいになりなさい」(早川書房)をぜひ一度読んでみて欲しいのです。

        この短篇集と収録作品が下記の4作ダブっています。
        「緑の地球」「ノック」「シリウス・ゼロは真面目にあらず」「さぁ、気ちがいに」
        翻訳であってもさすが星さんという文章なんですよぉ。

        「ノック」の星さんの翻訳の冒頭部分を参考までに。中村訳と比べてみてください。

           わずか二つの文で書かれた、とてもスマートな怪談がある。
           「地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋のなかにすわっていた。
            すると、ドアにノックの音が……」
        >> 続きを読む

        2014/12/27 by 月うさぎ

      • コメント 8件
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      らいおんみどりの日ようび

      中川 李枝子

      福音館書店
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • みどりいろのライオン。「らいおんみどり」という名前のライオンの、ある日曜日のお話

        らいおんだけど、ぜんぜん怖くない。トランプが好きで、食べるのは、キャベツ。朝も、昼も、夜もキャベツを食べている。

        この設定だけでも、かなり可笑しい。
        そのうえ、サーカスがでてきたり、そこで手品(?)を披露することになったりと、にぎやかで、ユーモラス。

        最後、みんなでトランプをしている場面が好きです。

        >> 続きを読む

        2014/02/26 by ヒカル

      • コメント 3件
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