こんにちはゲストさん(ログインはこちら) | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト →会員登録(無料)


1969年9月発行の書籍

人気の作品

      ペスト

      アルベール・カミュ , 宮崎嶺雄

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.6
      いいね! Minnie
      • 「われわれはみんなペストの中にいるのだ」
        「僕はヒロイズムというものを信用しません。僕はそれが容易であることを知っていますし、それが人殺しを行うものであったことを知ったのです」

        思いきり久々の再読。大好きなカミュの大好きな一冊。
        普遍性を意図した文章は作者の真意を理解するためにはしっかり読み込む必要があって、思いのほか時間をとってしまいました。あれ?こんなに回りくどい文章だったっけ?と感じたほど。
        けれど記憶にたがうことなくこの名作は完全に私好みの小説でした。
        ラスト近くのタルーの告白以後のスピード感はそれまでの手さぐりで夕闇を歩いているような中間部に比して、快感ですらあります。
        「異邦人」でも感じましたが、いよいよ大詰めを迎えての爆発的な感動はその前のつまらない部分を耐えてこそ(失礼)という気すらしてきます。
        結びの見事な事は指摘するまでもないでしょう。
        深い感動と共感。
        ああ、再読できてよかった。

        何よりもカミュの人間や人生や社会に対する姿勢や思想が好きです。
        「人は神によらずして聖者になりうるか」
        彼こそは真のヒューマニストではないでしょうか。

        ペストは過去の出来事ではありません。人を死に至らしめる病毒はいろいろな形で現代社会を覆っています。
        新しい感染症も出現し、交通の利便化で風土病も輸出されてしまっており、パンデミックの危機は一向に減っていません。
        細菌兵器や放射能汚染などの新たな厄災も加わりました。
        当然ながらより普遍的なのは地震などの天災でしょう。
        天災は、命の危険は一時で終わるかもしれませんが、地域社会の崩壊や生活の復興の困難はペスト以上の長期に渡る不幸であることを私たち日本人は既に知っています。
        そして最大の悲劇はなんといっても戦争です。

        社会的に隔離され個人の自由が束縛され未来もなく死刑宣告を背負って生きること。
        それはペストと何ら変わることはないのです。
        そしてこういった厄災が起きていなくても社会の中に「人を殺すシステム」が存在するという事実があります。
        それを放置している人間達の無関心と妥協の罪。
        むしろ彼はその現実にたいする無知をこそ問題視し罪であると言っています。

        カミュは外的、物理的な疎外だけではなく人間社会のシステムに組み込まれた人間性の疎外を直視し、堂々と疑問を突き付けます。
        社会を糾弾して快感を得る事は誰にでもできますが、カミュは個々人が人間としてどう生きるかを真面目にストレートに問いかけ、かつ答えているのです。

        「天災を受けいれることを拒みながら、医者となろうと努める」人々が必ずいること。
        「人間のなかには軽蔑すべきものよりも賛美すべきもののほうが多くある」


        彼の誠実さと明晰な頭脳と哲学的良心的な心を私は愛します。

        名作とはかようにいつの時代も息づき決して錆びつきません。
        それは素晴らしい事であると同時に悲しいことです。
        彼らが問題にした人間社会の脆弱さがまったく改善されていないことの証拠であるからです。

        せめて個人が自分の善行を果たす決意をすることです。
        彼が否定したヒロイズムに決して溺れることなく。
        >> 続きを読む

        2017/06/30 by 月うさぎ

      • コメント 4件
    • 他5人がレビュー登録、 22人が本棚登録しています
      或阿呆の一生・侏儒の言葉

      芥川 龍之介

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      •  私は、中学校から高校にかけて、芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ:1892-1927)のファンでした。それというのも、芥川は幼少時、彼の母が発狂し、頭をコツンと長ギセルで殴られたという体験談があります。これは小説「点鬼簿:てんきぼ」の記述から。(芥川は養子先の姓です。旧姓:新原。)

         私も、中学生時代に母が発狂し、その狂った矛先が私に向かい、私は苦しみました。そんな私にとって、芥川は身近な存在に思えたのです。

         世を拗ねた(すねた)視点・・・これこそが芥川の基本スタンスであったと思います。

        例えば警句集「侏儒の言葉:しゅじゅのことば」で、いろいろな事象を彼なりの犀利(さいり)な視点で料理しています。

         たとえば「ユートピア:どこにもない理想郷:トーマス・モアの造語」について「完全なるユウトピアの生まれない所以は大体下の通りである。――人間性そのものを変えないとすれば、完全なるユウトピアの生まれるはずはない。人間性そのものを変えるとすれば、完全なるユウトピアと思ったものもたちまち不完全に感じられてしまう。」と言った具合です。まるで数学の背理法のような論理で出来上がったこの一節を読んで、私は快哉を叫んだものです。「なるほど、その通りだ!」と。

         「人生は一箱のマッチ箱に似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい(ばかばかしい)。重大に扱わなければ危険である」

         「人生は一行のボードレールにも如かない」などなど。(←この言葉は「或る阿呆の一生」に見えます。)このボードレールの一節に関して興味があり、後にボードレールが始祖である「フランス象徴詩」(もしくは象徴詩)への関心にも繋がりました。

         あるいは、芥川の処女作であった「羅生門:らしょうもん」で、平安期、「悪事を働かなくては生きてはいけない」・・・門の上の階で、死んだ女の髪の毛を商売目的で剥いでいた老婆の言葉を聞き、「では、己が引剥をしようと恨むまいな。己もさうしなければ、餓死をする体なのだ。」と追いはぎをする男・・・彼の行く末には「外には
        、唯、黒洞々たる夜が広がっているばかりである。」という記述で、読むものを「厭世主義:えんせいしゅぎ・世の中をネガティブに見回す姿勢」に誘う何かがありました。

         私の場合、その厭世主義は、数学好きになって結実しました。数学は、嫌な現実から飛翔し、まさしくユートピアにあそべる側面を持っています。そんな訳で、中学3年生の時点で数学は高校2年くらいのレベルまでやりました。もっとも、東京大学に進んでみると、私より数学の出来る人がいくらでもおり、私は数学科を断念しました。(東大の場合、科類によっては思った進路に進めない制度・・・「進学振り分け制度」があります。入学後も専門決定までには厳しい競争があります。これが京都大学なら、大学入学の時点で、数学科に進めることは決定しているのです。)

         それでも、厭世的な気分は変わらず、東大マンガクラブに籍を置いていた私は「キャベジン」というペンネームで作品を描いていましたが、この「キャベジン」というペンネーム、やはり厭世的な、アンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」にでてくる「キャベツ:だいたい人間と同じくらいの大きさと知能程度の野菜」ということばをもじったものでした。

         私が、芥川とかビアスの厭世主義から脱するのは、専門が工学部都市工学科・衛生コースに決まり、専門が要求することでもある、粗い世の姿を正しく認識するように心がけてからです。

         私は、その当時読んだ中島敦(なかじま・あつし:1909-1942)の作品のなか、彼の遺稿だった「李陵(りりょう)」に出て来る、歴史家・司馬遷(しばせん)が漢の武帝の怒りに触れ宮刑に処され、その後の史記の完成までの厳しい戦いに、芥川の作品とは違う、厭世的ではない何物かを発見した思いでした。楽天的ではないけれど、芥川作品よりずいぶんポジティヴな作品だったのです。たとえ、生きていくのが苦痛であるとしても、ポジティブなのです。

         ここに、私は芥川龍之介を客観視できるようになったのです。芥川の悲惨な最期・・・遺稿「歯車」の最後に出てくる「僕はもうこの先を書き続ける力を持っていない。こういう気持の中に生きていうのは何とも言われない苦痛である。誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?」とのノイローゼの極致も、彼の路線の行き着く果てだったと思えます。そして彼は服毒自殺します。(睡眠薬を用いた)

        最後に:芥川龍之介は、歴史小説を沢山書きましたが、彼の作品はいわゆる「歴史ばなれ」の作品であろうと思います。歴史上の人物の精神構造を現代人に迎合させるという作りの小説で、森鴎外(1862-1922)がきびしく歴史小説を2つ・・・「歴史ばなれ」「歴史そのまま」に区分けした際、芥川の小説を標的としていたように思えます。中島敦の小説は「歴史そのまま」かと思います。
        >> 続きを読む

        2012/09/12 by iirei

      • コメント 3件
    • 2人が本棚登録しています
      このつぎなあに

      くりたやえこ , 山中恒

      あかね書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! foolman
      • 油断禁物、長いです。

        淋しいおじいさんと、化けるのが下手なたねきのコント絵本!?

        最後は素敵なので、読んで悔いなし(^_-)
        >> 続きを読む

        2013/04/01 by fraiseyui

      • コメント 4件
    • 3人が本棚登録しています

出版年月 - 1969年9月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

会員登録(無料)

今月の課題図書
読書ログってこんなサービス
映画ログはこちら
読書ログさんの本棚

レビューのある本

ビギナーズ・ドラッグ