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1970年11月発行の書籍

人気の作品

      クヌルプ

      高橋健二 , ヘルマン・ヘッセ

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.3
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      • 「クヌルプ」 ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳 新潮文庫

        第一部「早春」、第二部「クヌルプの思い出」、第三部「最期」の三部作仕立て。

        一八九〇年代の初め。第一次世界大戦前のドイツでしょうか。自然と歌と詩と踊りを愛する、流浪の靴職人、クヌルプの青年時代に始まり、彼の飄々とした生き様がドイツの牧歌的な自然描写と共にのんびりと描かれます。

        十三歳の時分のクヌルプは、フランチスカという二つ年上の女性に恋をしますが、いわゆる文弱ではない、職人などの「逞しい男子」が好きなフランチスカに相応しい男になろうと決心したクヌルプは、故意にラテン語学校でのラテン語の勉強を怠けるようになり、フランチスカの弟の国民学校に入ることになります。

        ですが、国民学校に入り、二ヶ月が過ぎた頃、フランチスカが技工職人の男とイチャついているのを目撃・・・クヌルプは失恋してしまい、これが彼の生涯に癒えぬ傷痕を残すことになります。第三部「最期」の終盤の「神さまとの対話」では、もはや社会的地位も何もない病身のクヌルプが、
        「私が一四歳で、フランチスカに捨てられたころのことです。あのときなら私はまだ何にでもなれたでしょう。でも、あれから私の何かがこわれてしまうか、台なしにされてしまいました。それ以来私はぜんぜん役に立たなくなりました。ーーーああ、なんということでしょう。まちがいと言えば、あなたが私を一四歳で死なせてしまわなかったということだけです! 死んでいたら、私の生涯は熟したリンゴのように美しく完全だったでしょう」と、神さまに駄々をこねる子供のような物言いを訴えますが、神さまはクヌルプに寄り添い、クヌルプが行く先々で芸事や遊興に興じ、人々に「喜び」や「楽しみ」を見せたではないか、と優しく諭します。このラスト七頁は、思わず感涙しそうになりました。

        神学校に進むも、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走した、本作の著者であるヘッセは、ある書簡では、
        「最も正しくて真理に充ちた唯一の宗教といったものは古今東西どこにもない、と私は考えている。各地にいろんな宗教があるのではなく、ヴェーダが必要だった時代もあり、仏教が必要だった時代もあり、キリスト教が必要だった時代もあっただけではないだろうか。」と論じています。

        しかし、第三部「最期」の「神さまとの対話」で描かれる「神さまのすがた」は、下記に引用する一節によるところに、まさしく「キリストの愛」です。
        ---「わたしが必要としたのは、あるがままのおまえにほかならないのだ。わたしの名においておまえはさすらった。そして定住している人々のもとに、少しばかりの自由へのせつないあこがれを繰り返し持ち込まねばならなかった。わたしの名においておまえは愚かなまねをし、ひとに笑われた。だが、わたし自身がおまえの中で笑われ、愛されたのだ。おまえはほんとにわたしの子ども、わたしの兄弟、わたしの一片なのだ。わたしがおまえといっしょに体験しなかったようなものは何ひとつ、おまえは味わいもしなければ、苦しみもしなかったのだ」--- 「解説」で訳者の高橋健二氏は、クヌルプを「人生の芸術家となった」と評しており、「得意の人」ではなく「失意の人」とも形容しておりますが、そうした人間も神は益として下さる、どのような生き様であってもすべての魂が、死せるその時まで「神の御心」によって用いられ、肯定される・・・こんな希望があって良いものでしょうか。

        神学校を脱走し、反権威主義的だったというヘッセの真意は分かりませんが、クヌルプの人となりにどこか相通ずるものを感じ、そして何よりもクリスチャンである私としては、終盤の「クヌルプと神さまとの対話」は、それだけで「福音的掌編小説」の価値を有している、自分の「生」が神によって限りなく肯定される思いが募った、素敵な作品でした。
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        2018/12/17 by KAZZ

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      キリスト教は信じうるか―本質の探究 (講談社現代新書 243)

      八木 誠一

      5.0
      いいね!
      • 救いの根拠を、歴史的な出来事ではなく、普遍的な構造に求めるという試み。
        考えさせられる一冊だった。
        前半部分の体験に基づいた箇所はわかりやすいが、後半はやや私にとってはまだ十分消化できていない難解な議論だったので、また時を置いて読み直してみたい。
        非常に重要なことを言っているとは思う。
        >> 続きを読む

        2016/06/09 by atsushi

    • 1人が本棚登録しています
      第四間氷期

      安部公房

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.3
      いいね!
      • 科学の進歩は人間の営みを変えてしまうのか?!というSF。
        水棲人とか出て、挿絵がシュール。
        物語が収集つかずじまいで、万人ウケは100%ないけど、
        機械の明確さへの恐怖とか、
        機会に人間が使われる構図への批判性にはハッとさせられる。
        >> 続きを読む

        2016/07/17 by botan

    • 6人が本棚登録しています

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