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1970年12月発行の書籍

人気の作品

      居酒屋

      古賀照一 , エミール・ゾラ

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【何たる悲惨な】
         以前、とある書評で読んで以来、ゾラ、読まなきゃなぁとずっと思っていたのですが、この度ようやく手にとってみました。
         その書評で書かれていた作品を選んだつもりだったのに、読了してようやく気づきました。あらら、あの書評で取り上げていたのは「ナナ」の方だったかと。

         とはいえ、「居酒屋」もゾラの「ルーゴン・マッカール叢書」の第7冊目ですし、ナナは、「居酒屋」の主人公であるジェルヴェーズの娘ですし(「居酒屋」にも登場します)、何よりも、「居酒屋」も評価の高い作品ですから良しとしましょう(「ナナ」はいずれまた読むことにして)。

         ところで、「ルーゴン・マッカール叢書」ってご存知でしょうか?
         ゾラが25年に渡り書き続けた一大連作で、ルーゴン=マッカール一族を描いた全20冊、登場人物は合計1200名にも及ぶという、まさしくライフ・ワークとも言うべき作品です。
         第1巻の設定は、父親が狂死し、その狂気の遺伝子を受け継いだアデライードが全ての発端となります。アデライードは、ルーゴンと結婚しますが、ルーゴンの死後、アル中であるマッカールと関係を持ち、その後代々この血筋が続いていきます。つまり、狂気の遺伝子か、アルコール中毒の遺伝子(ゾラは、アル中は遺伝すると信じていたそうです)を持った子孫達が延々と続いていくというおぞましいお話。

         さて、「居酒屋」ですが、主人公のジェルヴェーズ(ルーゴン=マッカールの血を引いています)は、父親の虐待のもとに育てられますが、14歳の頃、色男のランチエと関係を持ち、半ば騙される様にして家を出てしまいます。ランチエとの間には2児をもうけるのですが、放蕩者でほとんど詐欺師のようなランチエは別に女を作り家を出てしまいます。
         独り身になったジェルヴェーズは、この頃はまだ可愛らしく、健気で働き者でした。自分一人で何とか2人の子供を育てるんだと頑張り、洗濯女として甲斐甲斐しく働きます。
         そんなジェルヴェーズに惚れてしまったのがクーポーというブリキ職人でした。
         ジェルヴェーズに拒絶されるにもかかわらず、しつこく言い寄り、ついにはジェルヴェーズと結婚することになりました。
         クーポーは酒を飲まなかったので、この人となら真面目にやっていけるって思っちゃったんですね。

         ジェルヴェーズの夢は、贅沢なんてしなくていいから、真っ当に働き、ささやかな幸せの内に一生を終え、自分の家のベッドで死にたいというものでした。
         その夢は、叶うかのように思われたのです。
         クーポーも真面目に仕事に行きますし、少しずつお金も貯まってきて、知人の援助もあって、自分の洗濯店を持つこともできたのですから。
         ですが、ここから転落が始まります。
         ことの起こりは、クーポーが仕事中に転落して大怪我をしてしまうことでした。
         何とか命は取り留めるのですが、その後、すっかり怠け者になってしまい、なかなか仕事に行こうとしません。
         そして、あろうことか酒を飲み始める様になってしまうのです。
         ジェルヴェーズは、そんなクーポーに愛想を尽かすこともなく、洗濯店を切り盛りして何とかうまくやってはいたのですが……

         とにかく、ここに出てくる男達は本当にろくでなしばかりです。
         女を食い物にする、乱暴する(自分の奥さんを蹴り殺した上、その後、家のことを甲斐甲斐しくやっていた娘までなぶり殺してしまうアル中の男なんかも出てきます)、働かない、その他、これでもかというほどに醜悪な男達です。
         とは言え、じゃあ女性はしっかり者ばかりかというと、これもそうでもありません。
         本書の主人公のジェルヴェーズだってそうです。
         やはり、ルーゴン=マッカールの血がたたるのでしょうか?
         最初は本当に頑張っていたのですが、徐々にだらしなくなり、意地汚くなり、性格も歪み、ついには自分も酒を飲み始め……

         あぁ、そんな家に生まれたナナがどう育つかは想像に難くないですよね。
         「居酒屋」の中では、不良少女で、働きに出る様になると家出をくりかえし、どこかで身体を売っているような雰囲気。酒場で踊りを見せびらかす様な若い女性として絵がカッれています(「ナナ」では高級娼婦になるのですけれどね)。

         とにかく読んでいて落ち込んでいきます。
         悲惨極まりなく、とことん転落していくのですから。
         ですが、ずっしりとこたえる作品でもあります。
         さて、今度は「ナナ」を読まなければね。
        >> 続きを読む

        2020/05/10 by ef177

      • コメント 2件
    • 他1人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇

      菊池 寛

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 菊池寛が「フランダースの犬」を翻訳していたので、ちょっとびっくりした。高松出身の有名な作家、ぐらいしか知らなかったのだが、調べてみると・・・
        大映の初代社長で、文藝春秋の創設者でもあり、芥川龍之介とも仲がよく、芥川賞直木賞の創立者でもあるそうです。

        有名な作品を読んでみた。短篇なのであっという間に読めます。

        「恩讐の彼方に」
        【主君殺しの大罪を犯した市九郎は逃亡し、やがて出家して諸国を放浪していた。一方、殺された主君の子である実之助は長い仇討の旅の末、市九郎を洞窟で発見するのだが・・・。】
        自分の罪を悔いた市九郎は出家し、世のため人のためになることをと、たった一人で岩を砕き隧道を掘り続ける。 変人扱いしていた周囲の人もそのうち手を貸すようになるが、何年かかっても掘り進むのはほんのわずか。やがてみんなだんだんと手を引き、また一人に。そこへ仇討ちに来た実之助だが、そこで見たのは
        「もはや人間の心ではなかった。喜怒哀楽の情の上にあって、ただ鉄槌を振っている勇猛精進の菩薩心」であった。
        「すでに仏心を得て、衆生のために、砕身の苦を嘗めている高徳の聖に対し、・・・自分を顧みると、・・・実之助の心を散々に打ち砕いてしまった」
        で、一緒に岩を掘り続け、市九郎が掘り始めて21年、ついに隧道は完成したのであった。

        感動のお話でした。

        「父帰る」
        【小さな子供を残して家出した父親が突然に帰宅する。その父を巡って繰り広げられる人間模様を描く戯曲。】
        自分勝手な父。父に代わって弟や妹たちを養った長男の思い。父親がいなくても立派な大人になれるんだと、自分のことは諦め、母と共に苦労に苦労を重ねて頑張った。それを、年を取って心細くなったからと帰ってきて、当たり前のように父親風を吹かせて・・・。母も弟たちも、それでもやっぱり”父親だから””年老いてるんだから”世話をしてあげたい、という。葛藤する長男の思いに胸がつまる。
        そして、ラスト・・・(涙)。

        これも感動のお話でした。

        「藤十郎の恋」
        【時は江戸時代、ところは京都。座長の坂田藤十郎は近松門左衛門の新しい趣向の出し物の演出に詰まっていた。そこで、他人の女房に偽りの恋をしかけ、その仕草を学ぼうとする。】
        これはちょっとこわいお話でした。悲劇です。
        自分のために人の心を利用してはいけません・・・
        非道いなあ・・・

        「忠直卿行状記」
        【若くして国主となった徳川家康の孫、忠直はその荒々しい振舞いで問題児となっていた。】
        我が侭放題に大きくなった人の孤独。裸の王様。疑心暗鬼。
        これは忠直だけの問題じゃないと思うな。
        社会や組織がそういう時代だったのかもしれないが、気の毒だ。
        甘やかしすぎると、そりゃおかしくなるさ・・・。それにしても・・・。

        「形」は形式と中身、実力について考えさせる。

        「入れ札」は国定忠治の子分の話。


        菊池寛の作品、面白いです。
        >> 続きを読む

        2013/10/10 by バカボン

      • コメント 6件
    • 2人が本棚登録しています
      はけたよはけたよ

      神沢利子 , 西巻茅子

      偕成社
      3.0
      いいね!
      • この前、出張先の待合室で読みました。

        はけたよはけたよ~

        カワイイー♪って思ってたんですけど、明らかにはけてないですよね・・・

        実際にはけたのかはナイショでーす☆
        >> 続きを読む

        2012/07/10 by tamo

      • コメント 3件
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      カ−短編全集

      ジョン・ディクスン・カー

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 【そうかなぁ? そんなに傑作かなぁ?】
         ディクスン・カーの中・短編集です。全収録作をご紹介します。

        ○ 妖魔の森の家
         ヘンリー・メルヴェル卿(以下、H.M.)が初登場する記念すべき短編です。
         H.M.は、いきなりバナナの皮を踏んで転倒するというすごい登場の仕方をします(苦笑)。
         さて、表紙あとの扉では、本作を傑作中の傑作と褒め称えていますがそうだろうか?
         物語は全ての出入り口、全ての窓に内鍵がかけられている屋敷から女性が消えてしまい、その後、復活を予告する女性の声が屋敷の中に響いてきたり、H.M.の家にその女性の声で電話がかかってくるという謎が提示されます。
         巻末解説を読むと、確かにカーはかなり細心の注意を払って文章を綴っており、また、なるべくフェアになるように手がかりとなる言葉を作中にちりばめていることはその通りだと思うのですが、私の感想としては、物語としてそれほど面白くないという点が傑作として推せない最大のポイントだと思うのですけれどね。

        ○ 軽率だった夜盗
         あるお屋敷には高価な絵画が無造作に飾られていました。
         そんな風にしておくのは不用心だと言われてはいるのですが、屋敷の主は一向に頓着しない様子です。
         ある夜、遂に夜盗が侵入したのです。
         物音に気付いた屋敷に滞在中の人々がやって来ると、絵画の一枚が壁から外され、その傍に夜盗らしい格好をした者が血を流して倒れていました。
         その男をよく見ると……何と、屋敷の主なのです。
         何故、屋敷の主が夜盗の格好をしてわざわざ自分の絵を盗みに入らなければならないのでしょうか?
         絵画に保険金などはかけられていませんので、自分の絵を盗む理由が分かりません。
         ……これねぇ。何故屋敷の主が殺されていたのかという点はすぐに気がつくと思いますし、この主、夜盗を警戒してわざわざ警察官を屋敷に泊まらせていたというのですが、その辺りの処理がうまくないなぁ。

        ○ ある密室
         古書蒐集家が自分の書斎で撲殺されました。
         その書斎には被害者しかおらず、完全な密室になっています。
         唯一書斎に入ることができる扉の外は秘書達がいる部屋で何者も侵入していないと証言します。
         このトリックもなぁ……。かなり強引な気がします。

        ○ 赤いカツラの手がかり
         ダイエット体操を提唱してメディアで大人気の女性が被害者です。
         この女性が、ある冬の夜、住宅街の居住者だけが入ることができる中庭で、下着姿でベンチに腰掛けた姿勢で亡くなっているのが発見されます。
         被害者がこの中庭に入ろうとしている姿を巡回中の警察官が目撃しており、その1時間ほど後、被害者のことが気になったのでもう一度中庭に戻ってみたところ死体が発見されたということです。
         被害者は撲殺されているのですが、被害者の衣服はきちんと畳まれてベンチの上に置いてありました。
         また、衣服の上には被害者が使っているのを見たことがないという赤毛のカツラと眼鏡が置かれています。
         衣服のたたみ方は被害者独特のやり方だということで、どうやら被害者は自分で衣服を脱いだと思われるのですが、何故真冬の夜に戸外で衣服を脱いだのでしょう?
         探偵役の女性記者は、被害者が履いていたハイヒールのくるぶしの留め金が留まっていなかったことが全ての推理のポイントだと力説するのですが……う~ん……。

        ○ 第三の銃弾
         本書で唯一の中編です。
         ある離れの書斎で判事が射殺されました。
         犯人らしい男が書斎に入ろうとするまさにその場面を二人の警察官が目撃しており、その後を追ったのです。
         一人の警察官は男が入った東側の扉から入ろうとしたのですが、男は既に内鍵をかけておりそこからは入れません。
         もう一人の警察官は南向きの窓から被害者が顔を出したのを見ており、その窓に向かって走っている間に、被害者が部屋の中を振り向くようにし、その後2発の銃声が聞こえたのです。
         そのすぐ後に南側の窓から室内に飛び込んだところ、男が一人、38口径のリヴォルバーを手にして呆然と立っていました。
         室内に飛び込んだ警察官はすぐに東側の扉を開け、もう一人の警察官を室内に招き入れます。
         室内にいた男は、「自分は確かに判事めがけて1発撃ったが当たらなかった。その後、もう一発の銃声がした。室内に他の人間はいなかった。」と言い張るのです。
         室内を捜索したところ、38口径のリヴォルバーの銃弾は南側の壁に撃ち込まれているのが発見されました。
         また、室内は完全な密室状態です。
         さらに、部屋の北西角の大きな壺の中から32口径のオートマティック拳銃が発見され、撃ってから間もない痕跡がありましたが、その銃弾はどこからも発見されませんでした。
         死体解剖の結果、死因は射殺なのですが、体内から取り出された銃弾は空気銃のもので、その空気銃は室内のどこにもありませんでした。
         という、カーお得意の密室犯罪+何故拳銃が3丁も出てくるのか、その銃弾はどこへ行ったのか等の不可解な謎が提示されます。
         なかなか考えられた作品なのですが、これを実現するのは色々な意味で難しい気がします。

         全体を通じて読んだ感想としては、ちょっと無理が多いトリック、推理だなぁというところです。
         カーの作品にしてはそれほど良い出来ではないように思えます。
         『妖魔の森の家』が絶賛されていますが、私にはそれほどの作品とも思えませんでした。
         本書は、創元推理文庫なのですが、『カー短編集』の2という扱いになっていますので、カーがお好きな方でその著作を沢山読んでみたいという方向きかもしれません。
        >> 続きを読む

        2019/12/27 by ef177

    • 4人が本棚登録しています

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