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1975年1月発行の書籍

人気の作品

      猫は知っていた

      仁木 悦子

      講談社
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
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      • 懐かしい仁木悦子さんを再読。
        中学生になる頃に仁木悦子さんを知った。面白く夢中になって読みふけった。
        多分、全ての仁木悦子作品を購入した。
        中学生の小遣いでは文庫であってもなかなか痛む出費ではあったけれど、その頃既に知らないひとが読んだ本は嫌だと思っていたので仕方ない。
        今わたしの手元にある仁木悦子さんの本は、日焼けしてはいるけれど汚れや破けもなくきれいだ。大切に読んでいたんだなと思い出す。

        素人探偵仁木兄妹シリーズ。
        仁木兄妹が、兄雄太郎の友人の伝手で下宿先である箱崎医院に越してくる。妹である悦子が箱崎家の娘のピアノの稽古をすることで下宿代を安くしてもらえるからだ。
        仁木兄妹が越してくると間もなく、箱崎医師の妻の母親の遺体が庭に遺されたままの防空壕内の抜け穴から発見される。

        発行されたのが昭和32年であり、防空壕や下宿といった古さを感じさせるところはあるものの、日本のクリスティと言われた仁木悦子さんの推理作品としての素晴らしさには古くささは全くない。今でも遜色なく楽しめる一級のミステリーだと思う。
        伏線の回収は見事だし、トリックにやや無理がないこともないが、それはミステリーにはありがちなことだろう。そこが推理小説の華とも言える。
        この作品が仁木悦子さんのデビュー作なのだから驚きだ。

        引退した元警部の口添えで素人である仁木兄妹が捜査に介入するというのは現代では考えられないことではあるけれど、当時ならそういうこともあったのかもと思わせる。
        実際、横溝正史作品での金田一耕助は捜査に口を出しまくりだ。

        タイトルにあるように猫が事件の鍵を握っているわけだが、肝腎な部分で登場するだけで事件自体には関与しないし、赤川次郎さんの三毛猫ホームズのように猫が事件を解決したりはしない。丁度良い加減で猫が出てくる。
        ラストがまさに猫は知っていたという感じになっているところが絶妙と言える。

        仁木悦子さんの素晴らしさは仁木悦子さん自身にもある。
        仁木悦子さんは4歳のときにカリエスに罹り寝たきり生活になってしまう。就学することもかなわない悦子さんの勉強を、旧制高等学校に通う兄がみてくれた。
        兄が戦争のため出征してしまうと独学で学びつづけた。
        自分の目で外の世界を見ることは殆どなかった仁木悦子さんは、書物やラジオ、兄や姉の話から情報を得てこの作品を書いた。
        中学生のわたしは仁木悦子さんのエピソードに衝撃を受け、不自由な暮らしの中で学び、本まで書いてしまうことに深く感動した。仁木悦子さんのおかげで頑張れたと言っても過言ではない。

        仁木悦子さんは本書の設定で、仁木兄妹を大学に通う兄と音大に通う妹としている。
        この兄雄太郎はきっと仁木悦子さんに勉強を教えてくれた優しい兄のことだろうし、妹悦子は仁木悦子さん自身だろう。
        妹悦子は足が速くとても健康的に描かれている。病床で寝たきりの仁木悦子さんの代わりに本の中で悦子が元気に走り回る。自分には叶えられない様々を、本の悦子に託しているのだろうかと思うと、単なる推理作品というだけでない作者の深い想いが伝わってくるようだった。
        仁木悦子さんを思って胸を熱くした中学生のわたしをも懐かしく思い出す素晴らしい読書だった。


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        2016/03/29 by jhm

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      石が書く (叢書 創造の小径)

      ロジェ・カイヨワ

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      • <原題:L’écriture des pierres>

        稀覯本である。1975年発刊で現在は絶版。古書もあることはあるが、かなり高値がついている場合が多い。

        ロジェ・カイヨワは、フランスの文芸批評家、社会学者、哲学者、という。若い頃はシュルレアリスムに参加していたが、後に袂を分かち、バタイユらとともに社会学研究会を創立している。

        ・・・というような著者背景を知らなくても特に問題はない。
        この本はカイヨワの著作の中では特異なものとされているようだ。
        訳者あとがきによれば、他の著作のように「透徹した分析を支えとして、緻密な論理を展開していく」のではなく、「石の示す驚異をひたすら凝視しようと」しているのだという。

        さほど長くはない本だが、ほとんどがカイヨワ自身のコレクションだという石の写真が数多く収録されている。
        その石の文様をカイヨワが「読み解き」、通訳のように人の言葉に移し替えていく。

        あばらや石(風景が入った大理石、paesine)、瑪瑙(agate)、玉髄(calcédoine)、縞瑪瑙(onyx)、亀甲石。
        自然の造形の妙に目を見張る。
        中には、石の模様に人が絵や書を描き込んだものもある。石と人の織りなすハーモニーである。

        石は、おそらく、それを十分に凝視したものにだけ、その物語をそっと差し出すのだ。
        特に、オレゴン州の碧玉を凝視して著者が書き取った石の「言葉」は圧巻である。大きくうねり、たたみ掛ける波のように、読者を不思議な世界に押し流していく。
        こんな言葉を聞き取れる人はそう多くはあるまい。

        原文は「鉱物のように硬質で、水晶のように透明で、宝石のように純乎として輝きを放っている」という。
        訳出が十全であったか、訳者は謙遜されているが、その香りは十分に伝わっているように感じる。

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        2016/05/13 by ぽんきち

    • 1人が本棚登録しています
      妻たちの二・二六事件 (中公文庫)

      沢地 久枝

      中央公論新社
      4.0
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      • 二・二六事件で“至誠”に殉じた熱血の青年将校たち。遺された妻たちは事件後、どのような人生を歩んでいったのか。困難な取材をねばり強く重ね、文字通り足で歩いて検証した、もう一つの二・二六事件。衝撃と感動を呼ぶ、ノンフィクションの金字塔。
        〈解説〉中田整一
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        2018/05/25 by rikugyo33

    • 1人が本棚登録しています
      おはん・風の音 (中公文庫)

      宇野 千代

      5.0
      いいね! Tukiwami
      • 高校の図書館の文学全集には、著者の顔写真が最初のページに、1ページ全の大きさで載っていた。岡本かの子も迫力があったけど、宇野千代は断然に美人で、その名が記憶に残りました。その後しばらく経って、毎日新聞掲載の「生きて行く私」で宇野千代顕在を知り、長生きされているのがうれしかったです。

        宇野さんは着物のデザインをされたり、小説以外にもいろいろと活躍されていたようですが、やはり小説がわたしは好きです。「色ざんげ」と「風の音」に共通するのは、自分の好きな男が他の女性に夢中であるのを、じっと観ていること、だろう。

        ブサイクには起こりやすい立場だが、美人でもやっぱりそれは起こるらしい。
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        2016/05/20 by まるち

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      竜馬がゆく

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
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      • 2018/9 7冊目(2018年通算133冊目)やっと大政奉還というキーワードが出てくる。昔歴史で習ったイメージとしては、薩長などの雄藩から突き上げられて幕府が仕方なく大政奉還に応じたという感じがした。だが日本が清やインドのようにならないようにする為という点と、将軍家を守ろうとした点など、どの陣営にも悲惨な結果(幕府と戦うために軍備を補強していた薩摩と長州は貧乏くじを引く羽目になるが)にならないようにする為の策というのが興味深かった。歴史はこの通りに展開するのだが、あと1冊その行方を読んでいきたいと思う。

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        2018/10/01 by おにけん

    • 2人が本棚登録しています
      竜馬がゆく

      司馬遼太郎

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 2018/10 1冊目(2018年通算134冊目)。大政奉還という大きな仕事をやり遂げた龍馬。日本がこれから新しい道を歩んでいき、新しい社会を見ることが出来ずに暗殺されてしまうのは残念でならない。もしこの人が明治の時代を生きていたのなら、日本はどうなっていただろう。そう思うと複雑な気持ちになった。さて約一か月かけて「坂本龍馬」の話を読んだが、変革という志は持っていたが、思想的にではなく商業的に活動して幕末の歴史を変えていったという点は意外に思った。とはいえ、この辺の歴史の流れが頭に入っていないと、半分も楽しむことが出来ない。自分自身の歴史観のなさを痛切に感じる。もっともっとこの時代のことが知りたくなったので、この辺の歴史が俯瞰的に読むことが出来る副読本があれば、それを読んでまた挑戦してみたいと思う。感想はこんなところです。 >> 続きを読む

        2018/10/05 by おにけん

    • 2人が本棚登録しています
      淋しいアメリカ人

      桐島 洋子

      文藝春秋
      3.0
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      • 40年も前の本なのですが、子供の頃に、話題になっていて、
        大人たちが眉をひそめて書評していたので、
        ずっと気になっていた本です。
        やっと、この年になって読めた(笑)

        内容は読み始めは、かなり刺激的ですが、想像の範囲内。
        当時の日本人たちには、驚異的な内容かもしれませんが、
        40年のうちに、かなりその文化は輸入されつつあり、
        こういうことは、多少免疫ができているように思います。

        それよりも、驚いたのは後半のアメリカ人たちの、
        子供に対する考え方の方でした。
        養子縁組が盛んに行われているとは聞いていましたが、
        日本とは、本当に感覚が違うのですね。
        こういうのをカルチャーショックというのかしら?!

        色々と勉強になりました。
        >> 続きを読む

        2016/05/07 by きりちょん

    • 1人が本棚登録しています
      ババ-ルのこどもたち

      BrunhoffJean de , 矢川澄子

      評論社
      4.0
      いいね!
      • ババールの子どもたちが谷底に落ちそうになったり、キリンさんに助けてもらうシーンがお気に入り。 >> 続きを読む

        2015/02/03 by ぶぶか

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