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1976年4月発行の書籍

人気の作品

      幻の女

      ウイリアム・アイリッシュ

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.2
      いいね!
      • 【どうして誰も覚えていないんだ!】 
         アイリッシュの古典的名作です。
         主人公のスコットは妻との関係が冷え切っており、離婚を申し出ています。
         ところが妻がなかなか承知しないため、今夜は一緒に食事に行って、ショーでも見て、ちゃんと話をしようと思っていたのですが、妻は一向に出かけるそぶりをみせません。

         頭に来たスコットは、捨てぜりふを残して家を飛び出るや、適当なバーに入り、そこで見かけた見ず知らずの女性を食事とショーに誘います。
         二人は互いに深入りしないことを約束し、名前も教え合わずに食事とショーを楽しんで分かれます。

         スコットが家に戻ってみると、何と、妻が殺されているではありませんか。
         状況からしてスコットが犯人と疑われます。
         スコットは、自分にはアリバイがある、バーで知り合った女性と一緒にいたと主張するのですが、何故か、バーテンダーもレストランの従業員も、途中で乗ったタクシーの運転手もスコットのことは記憶しているのに、連れの女性などいなかったと口を揃えます。なんで~?
         ついにスコットは裁判にかけられ、死刑を宣告されてしまいます。

         本書の各章の見出しは、スコットの死刑執行までの残り時間が記されています。
         誰も知らないというその「幻の女性」を見つけ出さないことには無実の罪で死刑になってしまいます!

         最初はスコットを逮捕した警察官も、徐々に疑問を持ち始め、あるいはスコットが言っていることが正しいのではないかと考えるようになり、スコットに面会して、力になってくれる親友に助力を頼むように助言します。

         そこで表れたのがスコットの親友のジャック。
         彼はスコットの無実を信じ、「幻の女」の捜索に乗り出してくれます。
         が、しかし、良いところまで追い詰めると途端にその手がかりが途切れてしまうことの繰り返し。
         スコットの死刑執行までの残り時間はあとわずかです。
         ……そうして、最後の大どんでん返し!

         トリックがやや都合良すぎで、そんな風になるかなぁと思うところはあるものの、楽しく読める作品であることは間違いありません。
         本書は、江戸川乱歩が相当に高く評価して我が国に紹介したことでも有名な作品です。
         古い作品ですので、やや時代がかったところがあるのは致し方ないにしても、古典的名作であることは間違いないと思います。
        >> 続きを読む

        2019/09/28 by ef177

    • 他9人がレビュー登録、 20人が本棚登録しています
      さらば愛しき女よ

      レイモンド・チャンドラー

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • なぜこれほど「探偵フィリップ・マーロン」は人々の心を掴むのか、はっきりいって分からない。でも何故か憎めない事は解かる。本文も事細かい文章で情景が頭に浮かぶ。マーロンも人間味に溢れて少しだらしない所がまたいい。なぜか病みつきになる。これが、「レイモンド・チャンドラ」の世界観ですね。 >> 続きを読む

        2017/10/08 by rock-man

    • 他3人がレビュー登録、 8人が本棚登録しています
      長いお別れ

      レイモンド・チャンドラー

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね! Tukiwami
      • 『長いお別れ』(レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳)<ハヤカワ・ミステリ文庫>読了。

        初めてのハードボイルド。

        ハードボイルドというと、クールでニヒルな主人公が金と女と暴力の世界でカッコいいセリフを吐く、というものだと思っていた。
        どこが違うのか、と言われると具体的に指摘できないが、ちょっと思っていたのと違う印象だった。

        私にはハードボイルドはあまり合わないのかもしれない。
        >> 続きを読む

        2019/03/02 by IKUNO

      • コメント 2件
    • 他2人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      興奮

      ディック・フランシス

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね! Tsukiusagi Tukiwami
      • 「いい男」を知りたければフランシスを読めばいい。
        私が知っている限り、最高にかっこいい男はこの小説の主人公。ダニエル・ロークです。
        彼に逢いたくて何度この小説を読んだことか。(笑)
        ディック・フランシスの小説のヒーローはどれも実に魅力的なのですが、こと「格好よさ」に限れば本作「興奮」が最高だと信じます。

        『オクトーバー伯爵が初めて私の前に現れたときは、うすいブルーの古びたホールデンに乗っていた。危険と死がひそかに便乗していた』

        主人公のダニエル・ロークは若干27歳にしてオーストラリアの生産牧場の牧場主。
        両親が事故で亡くなり、幼い弟妹を育てるために学業をあきらめ、仕事と子育てに身を捧げ牧場経営を成功させた彼の元に、ある日英国から紳士が訪ねてきます。
        英国の競馬界に起きている不可解なドーピング事件を解明するため、潜入捜査に協力してほしいと…。
        自分の関与する問題ではないし、仕事も家族もある。

        『常識の告げるところでは、アイディア自体が狂気の沙汰であり、オクトーバー伯爵は無責任な精神異常者で、自分が世界中を遊び歩いている間家族を放置することは許されず、唯一の途は現在の生活を守って満足を覚えるようになることだ、と言う。
         常識が負けた。』

        しびれます!第一章の終わりの一文がこれ。
        まさにこの文体がフランシスなんですね~。
        この文章で心を持っていかれない人がいたとしたら、ハードボイルド小説は読むだけ無駄。
        私小説でもエッセイでもラノベでも読んでいてください。

        彼がなぜ危険で心身ともに厳しく辛い仕事に手をだしたのか。
        それは「冒険」がしたかったから。
        努力して築いた安定した仕事と収入。名誉と家族との愛。
        でも彼はまだ20代なのです。
        親の役目から解放され本来の自分の性格に立ち戻って生きてみたい。
        そんな彼の「自己再生」がこの小説では描かれていくのです。

        任務に伴う苦しい状況に耐え、危機を乗り越え、ついには最悪のどん底に落ち込み、そこからまた自分を奮い立たせて立ち上がり自分を決して諦めない。
        決して鉄人ではない。格闘のプロでもない。
        素人スパイの物語なのがまた、一層ハラハラなんですよ。

        サディストの悪役の所業がまたひどいのなんの。
        美女も絡んできますが、彼の紳士ぶりがまた最高に男前

        ダン(ダニエル)は年齢よりも若く見える好男子なんですが、
        女性からはセクシーに、男性からはワイルドで危険な感じに見せることができる「役者」なんですよ~。

        「天使のような手綱さばき」と乗馬スタイルを評され、悪人として潜入するためには乗馬法を変えなければならないと指摘されると、誇りを傷つけるように思えるとか。甘いことをいうところがまたカワイイ♡のです。
        フランシスは文体は武骨ですし、物語もゴツイ、しかも暴力的で痛い話が多いのですが、主人公の心理描写が実に繊細で人間的なのです。
        直接、哀しいとか怒るとかの激情を表す言葉を用いるのではなく、遠回しで抑制のきいた表現を使うことがとても多いです。

        「競馬ミステリー」というシリーズになっていますが、むしろフランシスは「ヒーロー・シリーズ」だと思います。
        どの小説も実に素敵な男たちがでてきます。
        いずれも克己心に富むストイックで誠実な主人公。
        そんな共通点があるので、フランシスの小説はどれも一緒という悪口もありますが、そんなことはないですよ。
        冒険もの、競馬、ハードボイルドと、男性読者が圧倒的に多いジャンルではあるでしょうが、
        主人公のステキさを考えれば、女性ファンが夢中になってもおかしくない。
        私も20代から30代のころにド・ハマりしていました。
        翻訳が出るのが待ち遠しくて原書を読もうとしたくらいです。

        特に本書はフランシスの初期の大傑作
        最もキャッチーな小説です。入門の一冊に最適かと。

        1965年の作品 デビュー3作目にして 英国推理作家協会のシルヴァー・ダガー賞受賞作品
        日本では本作が最初に翻訳されフランシスのシリーズ第1弾として出版されました。

        名作は古びません!

        展開もエンディングも予想を超えた意外性充分。
        ああ、彼の物語の続きが読みたい…と思うはず。
        (続きはありません)
        これを読んで他の作品に手を伸ばさないなんてこと、できるわけがない。

        「興奮」は見どころてんこ盛り大サービスな作品です。
        これを読まずしてどうする?!という月うさぎイチオシの冒険小説です。
        ぜひぜひ手に取って読んでみてください!
        >> 続きを読む

        2019/03/30 by 月うさぎ

    • 他2人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      クレーヴの奥方 他二篇

      ラファイエット夫人

      岩波書店
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • ▶Wikipedia
        『クレーヴの奥方』(クレーヴのおくがた、La Princesse de Clèves)は、ラファイエット夫人が書いた17世紀末のフランスの小説である。フランス文学史においては最初期の小説の一つであり、「恋愛心理小説の祖」とも言われる。1678年3月、匿名で出版された。1世紀前、16世紀のアンリ2世の王宮が舞台で、その時代をきわめて緻密に再現している。ヒロインほか数人を除く登場人物は実在の人物で、そこで起きる事件も歴史に忠実に展開される。

        17世紀末の出版当時、商業的に大変な成功をおさめた。「パリの外側」ではこの本を手に入れるのに、何ヵ月も待たなければならなかったほどである。この本の著者が誰なのか、奥方はどうして夫に不倫感情を告白する気になったのかなど、さまざまな論争も起こった。
        >> 続きを読む

        2018/05/25 by rikugyo33

    • 1人が本棚登録しています
      木はいいなあ

      西園寺祥子

      偕成社
      カテゴリー:芸術、美術
      3.5
      いいね! kentoman
      • 自宅の敷地には木がある。
        小さい頃、増築される前ははもっとあった。
        よく、木に登った
        今は、風を防いでくれるし、大根を干すのにも使っている。
        木がないのは、考えられない。
        ボランテイアで、森林の整備に入るようになり、ますます身近なものになった。
        木はいいなあ~。
        それにしても、味わいのある絵だ。
        >> 続きを読む

        2014/08/12 by けんとまん

      • コメント 3件
    • 2人が本棚登録しています
      知的生活の方法

      渡部 昇一

      講談社
      カテゴリー:読書、読書法
      5.0
      いいね! Tukiwami
      • 先程レビューを書いたのになぜか全部消えたので再度書き直し。

        私が生まれる前に書かれた本ですが、とても新鮮で良い本でした。

        今も昔も人間に対する問題点はそんなに変わらないのだなぁと感じました。

        特に私の響いたのは
        「本当に自分の心に響くところがあっての勉学でなく、有利な社会コースに乗るための、目先の手段としてだけの勉強という要因が多いのではないだろうか」ということです。

        特に大学生などそのような傾向があるような気がします。
        大学ってそういうところなんでしょうか…?

        そしてもう一つは
        「昔から日本人は学校を出ると本を読まないが、それに反して外国人はガリ勉はあまりしないが、本を読み続けると言われてきたものである。」

        不景気なせいもあるかもしれないが、なんだか表面的に自分を守るためだけの世の中になったのかなぁなんて感じます。

        途中、本を書くためのノウハウみたいな感じであまり私には必要な情報ではありませんでしたが、それ以上にたくさん得られ、考えさせられる本でした。
        とても良かったです。
        >> 続きを読む

        2014/10/14 by snoopo

      • コメント 1件
    • 4人が本棚登録しています
      フラニーとゾーイー

      サリンジャー

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      3.8
      いいね!
      • 【感覚的でデリケートな言葉の奔流】
         読了後、「これはレビューが書けないなあ」と感じてしまったのですが、しばらくして(それなりであれば)何となく形にできるかもしれないと思い直し、書き始めてみました。

         まず、本作に登場するフラニーとズーイがどういう人物なのかからご紹介しましょう。
         彼らはグラス家の7人の子供たちのうちの2人です。
         グラス家の子供たちは皆天才揃いなのです。
         長兄のシーモアは、サリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』にも登場しましたが自殺してしまいます。
         この物語は、シーモアが自殺してから7年後の物語なんですね。
         次男のバディは、大学に在籍したまま作家活動を続けていますが、どうやら人里離れた場所でまともな電話も引かずに生活しているようで、連絡が取れないことに母親はやきもきしています。
         長女のブーブは結婚して三児の母親になっています。
         その次の子供、ウォルトとウェイカーは双子なのですが、ウォルトは軍務に就いていた際に事故死しており、ウェイカーはローマ・カソリックの司祭になっています。
         その次の男子がズーイで、華奢な体つきながら美貌の青年で俳優をしています。
         末子がフラニーで、美人女子大生ということになっています。

         彼ら兄弟姉妹は、いずれも『イッツ・ア・ワイズ・チャイルド』というラジオ番組にレギュラー出演していた経歴の持ち主で、その早熟の天才振りをいかんなく発揮していたとのこと。
         そのために、幼少時から様々な医学的検査などを受けさせられていたと言います。

         さて、本作は、『フラニー』と『ズーイ』という二部構成になっています。
         第一部の『フラニー』では、フラニーが週末にボーイフレンドのレーンを訪ねてくるエピソードが語られます。
         フラニーもレーンも、週末を楽しく過ごそうと思っていたのにどうもうまくいかないのです。
         二人で行ったレストランで、フラニーは内心悪いと思いながらも、理屈っぽくスノビッシュなレーンの話が鼻についてしまい、つっかかるような会話になった挙げ句、気分が悪くなり店内で失神してしまいます。
         かくて、楽しみにしていた週末が散々なものになってしまうというお話。

         物語の大半は、レストランでのフラニーとレーンの会話で占められています。
         どうも、レーンも一言多いというか、身勝手で自分の理屈で言い負かさないと気が済まないタイプの男性に思えてしまいます。

         さて、弟二部の『ズーイ』に入ると、ズーイが両親と暮らしている実家にフラニーが帰ってきている状況から話が始まります。
         フラニーは、レーンとの一件のせいもあってか、実家に戻ってきて以来ろくに食事もせず、何かぶつぶつとつぶやき続けたり横になって泣いたり眠ったりし続けているようなのです。

         母親はすっかり心配してしまい、ズーイに対して色々と(口うるさく)相談をもちかけるのですが、ズーイは持ち前の冗談と軽口で応対してしまい、母親を安心させることができずにいます。
         しかし、ズーイももちろんフラニーのことを心配しているのです。

         第一部でも出てくるのですが、どうやらフラニーは大学生活に失望し、それまで打ち込んでいた演劇もやめてしまったようなのです。
         そういうことはエゴなのだと、頭の良いフラニーには思えてならなくなったようなのですね。
         そのきっかけは、どうやらシーモアら兄のところにあった宗教書を読んだせいらしいのです。
         そのことにはズーイも気づいており、フラニーに対してそんな祈り方は間違っていると説得するのですが……。
         演劇をやめようとするフラニーに対して、シーモアから言われたという『太っちょのおばさん』の話を出して説得しようとするズーイとそれに打たれるフラニー。

         弟二部は、序盤は母親とズーイのやり取りが描かれ、その後はずっとフラニーとズーイの会話が続きます。
         フラニーもズーイも早熟の天才という設定ですし、二人ともシーモアやバディから宗教的、哲学的英才教育を受けていたようですので、その会話は時に抽象的、観念的ではあるのですが、それだけではありません。
         彼らの会話は非常にデリケートで、感覚的でもあるように感じました。

         物語の設定としては、ごくごく限られた場面だけが描かれ、しかもそのほとんどが圧倒的な量の会話だけなので、何か大きな出来事が起きるとか、動きがあるということはないのですが、どういうわけか、思わず知らず、その会話に引き込まれてしまうような不思議な魅力がありました。

         フラニーとズーイとの間で交わされる宗教的な会話が理解できたとは思えませんし、また、二人の感情を追い切るにも一読しただけでは不十分と感じました。
         また、そもそも本作は、サリンジャーの他の作品とも関連しているのですが、私は関連する作品としては『ナイン・ストーリーズ』しか読んでいませんので、本作を十分に語ることはできません。

         そういう意味もあって、どうもこの作品のレビューは書けないと感じてしまったのですが、とは言え、みんながみんな、サリンジャー作品を読み込んだ上で本作を読んでいるというわけでもないでしょうし、関連作品の中で最初にこの本を読んだ(読もうと思っている)という方もいらっしゃるでしょうから、とりあえず、本作を読んだ限りのレビューでも良いかと割り切ってレビューを書いてみました。

         はなはだ不十分なレビューであることは承知の上なのですが、少なくとも本作にはどんなことが書かれていて、どんな内容、雰囲気の作品なのかだけでも伝えることができれば良いかなと思ってのレビューなので、ご了承下さい。


        読了時間メーター
        □□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)
        >> 続きを読む

        2020/03/27 by ef177

    • 11人が本棚登録しています
      大穴

      ディック・フランシス

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 満身創痍というのはまさに彼のことでしょう。
        冒頭から腹を拳銃で撃ち抜かれ、意識不明の状況から目覚めるシーンで始まるのですから。
        ということは、これから彼にもっともっと困難な事件が降りかかることを読者は覚悟しなければならないのです。
        フランシスなんで!(笑)

        シッド・ハレーはフランシス作品の中でも最も人気の高い主人公です。
        40作ほどあるフランシスの長編のほとんどの作品は一話完結で主人公が各々異なります。
        例外の2人のうちの一人が彼「シッド(シドニー)・ハレー」
        特に本作「大穴」「利腕」の2作の評価は抜群です。
        彼の作品を読まずしてフランシス・ファンというなかれ!というほどの圧倒的支持を得ています。

        チャンピオン・ジョッキーだったシッドは、絶頂期に落馬事故により何よりも大切だった騎手という天職を失い、左手の自由をも失います。
        その直前に妻とは最悪の状況で破たんしていたという間の悪さ。
        その後の2年間を「ラドナー探偵社」の「競馬部」に席をおいてはいたものの何も仕事をさせてもらえないまま、過去の栄光と愛とにさいなまれ、絶望のあまり31歳の若さで生ける屍のようになっていました。
        このように弱さをさらしながらも、彼がヒーローとして愛されるのはなぜでしょうか?
        それは「弱さ」を抱えているからこそ。彼を私たちと同じ同朋だと思えるからです。


        (ストーリー)
        「あの銃弾は私自身にとっては人間解放への第一歩であった」
        単なる脅迫事件と思われたこの一件は殺人事件に繋がり、競馬場の乗っ取り計画の裏には悪どい裏工作が仕組まれていた。
        この事件の黒幕が明らかになった時、もはや後に引けない状況になっていた。
        シッドはシーベリィ競馬場を救うことができるのだろうか?
        いや、その前に窮地から逃れる術はあるのだろうか?

        本作の悪役のおぞましいことこの上なしです。
        基本、フランシスの悪役はサディストで憎々しいヤツが多いのですが、このハワード・クレイと妻ドリアは本物のSM夫婦です。SMプレイだけでは気が済まなくて、他者への暴力行為が快感という本物のサディスト。暴力が暴力を呼んでさらにエスカレートするような危険でアブノーマルな状況で餌食にされるシッド。
        ああ、シッドが可哀想…。痛すぎる。


        運命の困難は自分ではどうしようもない事です。
        しかし、どん底に落ち、それでも生き続けるには勇気が必要で、それは自分でなんとかするべきものなんです。
        苦難を乗り越えるというのは言うほど簡単ではありません。
        フランシスはそれを知っているのですね。

        「私はきみがレースに出ていた姿を見ているのだよ、いいかね。誰の目にも、火が消えたのはわかるものなのだ。感じのいい、気のきいた冗談を言う灰がオフィスの中を漂っていたのだ。それだけのことだった」自分の文学的な表現をはにかむような微笑を見せた。彼は言葉で絵画的表現をするのが好きなのだ。そのために仕事時間がずいぶん無駄になった。
        「じゃあ、また火がついたと考えてください」私はニヤッとした。

        わくわくする一瞬です。こういう描写がフランシスはすごくうまい!
        生き生きとし始めたシッドは「かっこいい」んですよ。

        シッドは自らの不幸を克服するのではなく、受け入れる努力で立ち直る道を選びます。
        未練、プライド、自己憐憫、羨望、嫉妬、そして恐怖。
        それらを自ら認め直視するのはなんと辛く厳しいことでしょう。
        でもシッドがそれを私達の代わりにやってくれる。我らがシッド・ハレーに幸いあれ!
        その読者の熱い想いが続編を生んだに違いないです。
        これが作家デビュー4作目なんですって?!
        しかも「興奮」と同じ1965年に書かれているんですって?!
        フランシスの作家レベルの高さがわかりますね。

        レビューは「利腕」に続きます♪
        >> 続きを読む

        2019/04/23 by 月うさぎ

      • コメント 2件
    • 2人が本棚登録しています
      警官嫌い (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 13‐1))

      エド・マクベイン

      4.0
      いいね!
      • 久しぶりにエド・マクベインの"八十七分署シリーズ"のシリーズ第1作の「警官嫌い」をじっくりと読み返してみました。

        「この小説に現れる都会は架空のものである。登場人物もすべて虚構である。ただし警察活動はじっさいの捜査方法に基づいている」と、本の扉に必ず断り書きが記してある、このシリーズの舞台になっている都会、なかでも、特に八十七分署の管轄区である"アイソラ地区"の描写は、非常にリアリティに満ちあふれていると思います。エド・マクベインの鋭い作家的嗅覚と、ジャーナリスティックで的確なディテール描写が光ります。

        このシリーズに登場する刑事たちは、お馴染みのスティーヴ・キャレラ、マイヤー・マイヤーなどが主人公となって毎回、事件の捜査にあたりますが、視点を変えれば、このシリーズの真の主人公はアイソラの街ではないかと思っています。

        なぜ、そのように考えるのかというと、それまでのミステリーでの情景描写は、ほとんど室内描写に限られていたと思います。つまり、静的にものの描写に限られていたと思うのです。

        ところが、第二次世界大戦後の警察ミステリーは、探偵役の名刑事の一人舞台の活躍から、警察機構をフルに活用し、捜査方法もより現実に近づいたドキュメンタリー・タッチのミステリーへと移行していったと思います。

        そして、捜査官の私生活が事件の捜査と同じように重要視されることになり、遂に、刑事とはよれよれのレインコートを着て、街角でハンバーガーを食べるといったイメージの描写が見られるようになっていくのです。そして、その旗頭とも言えるのがエド・マクベインの八十七分署シリーズではないかと思います。

        七月二十三日午後十一時四十一分、汗にまみれて眠る妻や子供たちを置いて、夜間勤務につくため道を急いでいたマイク・リアダンは、後頭部を何者かに撃ち砕かれて殺害された。マイクは、八十七分署の刑事だった。享年三十八-------。

        七月二十四日午前一時、八十七分署の刑事スティーヴ・キャレラが恋人のテディと愛し合っていた時間に、母親の待つアパートへと帰る途中のデヴィッド・フォスターは、四発の銃弾に胸を焼かれて死んでいた。このフォスターも八十七分署の黒人刑事だった-------。

        事件のてがかりは、何もなかった。このアイソラという街を襲った熱波は、じっと上空にわだかまったまま、八十七分署の刑事たちに憎しみの眼を注いでいるようだった。

        そして、目撃者もいなかった。殺人現場に残されていた薬莢と弾丸は、同一犯のしわざであることを指していたが、石膏で足跡をとってみても、また殺された刑事二人がそれまでに扱った事件から共通点を割り出そうとして前科者記録カードをくってみても、犯人の目星はまるでつかなかった。

        警官嫌いの狂気のしわざか? -------。

        新聞は、警察の無法地帯と書き立て、腐敗した警察の汚職のうみが警官連続殺害事件の原因だと一大キャンペーンを張ります。同僚を殺され、やっきになって参考人を追い回す八十七分署の刑事たち。

        だが、この管轄区の事件はそれだけではないのです。暑さにうんざりしているチンピラたちは、ことあれかしと暴れる機会を狙っているし、酔っ払って街灯を打ち壊しながら歩いていた男も出てくる。気の変な女が「あたしのテレパシーで警官殺しの犯人がわかる」と言って飛び込んでくる。麻薬中毒者も挙げなければならない。そして、「暑かったので亭主を斧でぶってやった」とカミュの「異邦人」もどきの細君まで出現するといった具合だ。

        それを数十人の署員で片づけなければならないのが、この"八十七分署"の英雄たちなのです。愚痴をこぼしながらも"毛むくじゃらの怪物"である市、特に管轄区であるアイソラの街を愛している刑事たちは、この街の空の下から決して逃げ出そうとはしないのです。

        やがて、第三の警官殺しが発生します。瀕死のハンク・ブッシュは犯人に傷を負わせ、事件はいよいよ大詰めへとさしかかるのです-------。

        スピーディーな歯切れの良い文章と語り口、息づく街のリアルな雰囲気、生き生きと描かれる刑事たちの生活。まったくうまいものです。唸らされます。そして、面白いエンターテインメント小説を堪能できた悦びで、私の心は満たされるのです。



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        2017/08/21 by dreamer

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      ディミトリオスの棺 (ハヤカワ・ミステリ文庫 15-1)

      エリック・アンブラー

      4.0
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      • スティーヴン・スピルバーグ監督の「ブリッジ・オブ・スパイ」を観て、この映画の素晴らしさと共に、ソ連のスパイを演じたマーク・ライランスの名演技に酔いしれてしまいました。

        そのことが契機となり、最近、私の本棚の一角を占める"スパイ小説"を耽読しています。スパイ小説というのは、非常に巨大なジャンルで、スパイというのは、売春婦と並んで世界最古の職業だと言われているほどですからね。

        文学史的に見ていくと、すごく古くて「三銃士」に出て来るミレディなんか典型的なスパイだったし、その流れの中で、スパイ小説は第一次世界大戦後に色々な形をとって現われてきたと言われていますね。

        そして、スパイ小説は大雑把に、冒険活劇系統のスパイ小説、ミステリーとしてのスパイ小説、政治的な意味で共産主義と戦う戦士としてのスパイ小説の三つに分けられるのではないかと思っています。

        そこで、今回は、久し振りに、現代のイギリス最高のスパイ小説作家だと思っているエリック・アンブラーの「ディミトリオスの棺」を再読しました。

        この物語は、学者で探偵小説家である主人公のラティマーは、各国の警察が20年来追求してきた国際的な犯罪者ディミトリオスが亡くなったと聞かされる。このことに興味を抱いたラティマーは、デイミトリオスの足跡を探ることにするのだが----。

        今回読み返してみて、とにかく一気に読んでしまうほど、とても面白かった。時代観や推理小説観などを悠々と語りながら、ストーリーは緊迫感にあふれ、登場する人物はみな複雑な顔を持っている。

        政治情勢とか社会情勢とかじゃなくて、"悪の観念"みたいなものが比喩的になっているところが、とにかく凄いと思う。だから、多分、今読んでも面白いのだと思う。

        しかもこの作品は、一種の"追跡小説"で、ひとりの男の肖像を、様々な角度から描いていく叙述の仕方が非常に面白いのです。いわゆる、史上最高の映画だと信じて疑わないオーソン・ウエルズ監督の名作「市民ケーン」型だと思うのです。

        つまり、新聞王のハーストをモデルにしたケーンを描くのに、直接話法をとらずにケーンに関係した人間たちの証言や回想で綴るという方法なのです。

        そして、更に細かく読み込んでいくと、ベテランのスパイが上りと下りの地下鉄の音を聞き分けて尾行者をまいたりとか、そういう一種のリアリティーを押さえて書いているところも、スパイの生活が我々と変わらない日常に依拠しているというのを示しているのが、素晴らしいと思う。
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        2017/02/17 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))

      ギャビン・ライアル

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      5.0
      いいね!
      • 【ルパン三世の次元大介のモデルになった男が、このハーヴェイ・ロヴェルだ!】
         主人公のルイス・ケインは、かつてカントンという名で闘った、レジスタンスの闘士。戦後の現在は、ビジネスエイジェントを生業としています。
         あるとき、かつてのレジスタンスの同士で、現在はパリの腕利きの弁護士となっているアンリ・メランから、マガンハルトという大富豪をブルターニュからリヒテンシュタインまで車で送り届けて欲しいとの依頼を受けます。
         間違いなくやばそうな依頼ですし、撃ち合いもあり得るとのこと。高額の報酬を約束されますが、とにかくやばそう。

         とはいえ、昔の同士からの依頼でもあるので、いつも2人で仕事をすると言われているヨーロッパでNo.1とNo.2と評価されているボディガード(拳銃の使い手ですな)ペアをつけてくれるのならという条件で引き受けようとします。しかし、そのNo.1及びNo.2のガンマンペアとは連絡が取れないということなので、それではということでNo.3と言われているハーヴェイ・ロヴェルを指名します。

         ロヴェルと落ち合ったケインは、マガンハルトの車であるシトロエンを受け取りに約束の場所に赴いたところ、バンパーの下に貼り付けてあるはずの車のキーが見あたりません。 不審に思いながらもドアを開けてみたところ、開くではないですか。しかも、キーは差しっぱなし。
         どうしたんだ?と思い、後部座席を見ると、運転手の死体が! 既に手が回っています。

         とは言え、引き受けたものは仕方がない。とにかく死体を載せたままシトロエンを運転し、マガンハルトと落ち合う予定の海岸に向かいます。
         夜の闇の中、ケインとロヴェルは運転手の死体を始末し、約束通り、沖合に停泊しているはずのマガンハルトを載せた船に向かって合図を送ります。
         ほどなくして、船から船員に伴われたマガンハルトが上陸してきます。ところが女連れ!

         何だ、この女は! 聞いていない話だ。
         しかし、マガンハルトは、その女性も一緒にリヒテンシュタインに行くのだと言い張ります。
         仕方なく、女連れでマガンハルトをシトロエンに載せ、出発する一行。
         まず、間違いなく、こちらの状況は敵に察知されていると考えた方が良い。
         とにかく、アンリに連絡して、運転手が殺害されていたこと等の状況を伝えます。

         マガンハルトが何故リヒテンシュタインに行くのか、その目的はよく分からないものの、とにかく、早急に行かなければならないとのこと。
         アンリの当初の依頼から、マガンハルトは婦女暴行の嫌疑でフランス警察に追われていることは分かっていますが、どうやらこれは濡れ衣くさい。
         しかし、少なくとも警察に追われていることは事実。

         夜通しシトロエンを運転し、明け方、とある村に着きます。朝食を取ることにし、村のカフェに入ります。
         そこで流れていたラジオニュースによると、マガンハルトを載せて来た船が拿捕されて、その船員達が捕まったとのこと。またしても、行動が読まれている!
         船員達は、マガンハルトを上陸させたいきさつをしゃべっていることでしょう。

         とにかく出発することにして、シトロエンを止めた場所に向かったところ、ロヴェルから立ち止まるなとの指示が。
         ははぁ。シトロエンの前後を挟むようにして車が止められています。
         うっかりシトロエンに乗り込もうとでもすれば、狙撃されるのは目に見えています。
         立ち止まらずに裏通りに入り、マガンハルトと連れの女性を残し、ケインとロヴェルは表通りに戻ります。

         この位置関係からすれば、向かいのカフェ当たりに張っているはず……いました、いかにも怪しい3人組。
         何気なく、向かいのカフェに入るケインとロヴェル。あっという間に3人を組に銃を突きつけ、外に出ろと指示します。
         3人組のリーダーらしい奴が抵抗しますが、ロヴェルは即座にその男の右手を潰してしまいます。
         抵抗できずに外に連れ出される3人組。しかし、リーダーは左利きだったのです!
         銃撃戦が始まりますが……

         というような調子で、マガンハルトをリヒテンシュタインまで護衛するサスペンスが本作です。
         この先、様々な出来事が起きますが、少しだけご紹介すると、実は、ロヴェルはアル中だったのです。
         このミッションを引き受けた時から、酒を断っていたのですが、予定していた時間にリヒテンシュタインに着けずミッションが長引くに連れて手が震え出します。
         頼りのガンマンがこれじゃあ…… 手が震えたガンマンが良いか、その先泥のようにダメになってしまうかもしれないけれど、とにかく酒を飲ませてしばらくの間だけでも使い物になるガンマンがましか?

         その先も、ことごとく情報が筒抜けになるのは何故か?
         マガンハルトの連れの女の正体は? この女、この先、禁じられているにもかかわらず、度々電話をしようとします(気付かない間にどこかと連絡を取り続けていたのかも)。
         絶体絶命の一行を救う、昔のレジスタンス仲間達。ですが、その中の一人とはどうしても会おうとしないケイン。それは何故?
         そして、遂に姿を現したヨーロッパNo.2と言われるガンマン(もちろん、敵に雇われていました)。ということは、ペアで仕事をすると言われているNo.1もいるのか? フランス警察の執拗な追跡。

         こんな感じでサスペンスとスピード感たっぷりに話が展開していきます。
         一気に読み切ってしまえるおもしろさがあります。
         銃や車に関するこだわりの描写もハードボイルドに薬味を添えます。
         名作との誉れ高い作品ですし、評判通り、傑作です!

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        2019/01/19 by ef177

      • コメント 2件
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      ガラスの仮面

      美内 すずえ

      白泉社
      カテゴリー:漫画、挿絵、童画
      4.0
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      • この本の名言をご紹介します。

        ***
        才能とは自分を
        自分自身を信じることです
        >> 続きを読む

        2013/06/19 by 本の名言

      • コメント 7件
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      たんぽぽ どきどきしぜん)

      平山和子 , 北村四郎

      福音館書店
      カテゴリー:被子植物
      5.0
      いいね!
      • 家にあるのは物語の絵本が多いのですが、科学よりの絵本も読んであげたいなーと思って、この本を選んでみました。

        春の今の季節にぴったり。
        とってもいいです!!!

        まず、絵がとってもキレイ。丁寧で緻密で美しい。
        たんぽぽについて、優しいことばで語られていて、大人の私でも興味深い。
        だから朝たんぽぽを見かけない気がするのか!
        だからこんなに種ができるのか!
        と、新しいことを知る喜びや感動があります。

        そして

        (絵本の出だしを読む私)「たんぽぽを知っていますか?」
        (娘)「しってます!」

        というやりとりがほのぼの。

        昨日初めて読んだのですが、5回くらいリピート。
        今夜もまた何度も読むことになりそうです。

        次の週末は娘と一緒に綿毛をふーってしたいです。
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        2018/04/11 by chao-mum

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      ざっそう どきどきしぜん)

      甲斐 信枝

      福音館書店
      カテゴリー:一般植物学
      4.0
      いいね!
      • 見ていて飽きることがない。
        ざっそう・・身近な存在だけに、じっくりと見てしまう。
        れでも、全く飽きることがない素晴らしさ。
        それぞれの季節の匂いがするようだ。
        >> 続きを読む

        2020/03/27 by けんとまん

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出版年月 - 1976年4月発行,出版の書籍 | 読書ログ - 読書ファンが集まる読書レビューサイト

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