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1979年6月発行の書籍

人気の作品

      ジャッカルの日

      フレデリック・フォーサイス

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.4
      いいね! Minnie

      • フレデリック・フォーサイスの大ベストセラー小説「ジャッカルの日」が発表された1970年代前半は、1960年代前半にキューバ危機が起こり、その後、ヴェトナム戦争が泥沼化していくなど、まさに米ソ冷戦たけなわの頃でした。

        国際情勢が流動化する一方で、第二次世界大戦後の復興も一段落し、エネルギー問題や人口問題など経済成長の限界論も出始めていた。

        ジャーナリスト出身の作家・フレデリック・フォーサイスの作品は、内容、スタイルともに、この先行き不透明な時代の要請にぴったりマッチし、これにその他大勢の作家たちが追随することで、「国際謀略小説」や「情報小説」という一大ジャンルを築き上げるに至ったと思う。

        そして、この作品は、綿密な取材に基づいて得られた情報を核にして、壮大なストーリーがドキュメンタリー・タッチで語られるんですね。

        しかし、よくよく考えてみると、フォーサイスの作品がもてはやされたのは、決して「情報」や「分析力」が優れていたからではないと思う。

        時流に乗っただけで消えていった作家も多い中、フォーサイスと「ジャッカルの日」の名が今も燦然と輝いているのは、何よりもこの作品が、私を含めて多くの読者に徹夜を強いるほど「面白い」小説だったからに他ならないと思う。

        この作品の筋書きは、他のレビュアーの方が書かれているので省きますが、とにかく、フィクションである虚と、情報である実を巧みに織り交ぜた、優れたドキュメンタリー・スリラーの代表的傑作と呼べると思う。

        だが、それだけでは、この作品の真価を語ることは出来ないと思う。
        この点を押さえることが、まさに「ジャッカルの日」の核心部分だと言えると思う。

        確かに、この作品の出版当時は、「読者はどこまでが事実かとまどうだろう」とか、「歴史的事実の再構築といった趣がある」と言われていたそうです。

        また、この作品のやや生硬さの残る文章はジャーナリスト的で、いかにも「それらしい」雰囲気が横溢しています。
        特に、物語の導入部分は、ここだけを取り出せば、ノンフィクションの一部と言っても通じるほどだ。

        もっとも、歴史的事実を基盤にした小説は、それまでも多く存在したし、現実の出来事や人物を巧みに織り込むという手法も、取り立てて斬新という訳でもない。
        ただし、迫真性を出すために、細部の情報の盛り込み方を徹底したところが、画期的ではなかったかと思うんですね。

        しかし、それよりもこの作品が際立っているのは、まず全篇を支配する異様な緊張感で、これはドゴール大統領暗殺という題材の設定と無縁ではないと思う。

        一般に民主的な政治体制下においては、時の指導者を排除しても、政策が大きく転換したり、クーデターが成功するようなことは、まず考えられないが、この時代のフランスは例外だった。

        もしも、ドゴール大統領暗殺が成功していたら?-------。
        その仮定が有する影響度の大きさが、この作品のサスペンス性を大きく高めているのだ。

        さらに、より大きなポイントは、この物語の中心点が、人狩りのプロ同士の対決という一点から決してブレないところだと思う。
        それは、知的ゲームであると同時に、宿命のライバルの対決という冒険ロマンでもある。

        暗殺者ジャッカルは、殉教者ではなく、殺しのプロだ。
        ゆえに彼は、暗殺を実行した後に、安全に脱出しなければならない。
        ここにミステリの不可能犯罪物に似た頭脳ゲームの様相が生まれるんですね。

        ある程度の伏線は張ってあるものの、我々読者は最後まで、ジャッカルが「いつ」「どのようにして」暗殺を実行しようとするのかが判らないのだ。

        一方、死力を尽くして戦うジャッカルとルベル警視は、いつしか互いにプロとしての尊敬の念まで抱くようになる。
        著者は敢えて、ジャッカルの内面描写にほとんど筆を割かず、彼を全くの謎の人物として描き出す。

        対するルベル警視は、風采の上がらない恐妻家の小男という設定だ。
        これぞまさに、「怪人対名探偵」という、古き良き時代の探偵小説の構図だ。

        そして、この二人がいよいよ直接対決するクライマックスこそは、この作品が「国際謀略小説」や「情報小説」でもない、本当に手に汗握るサスペンス溢れる迫真の「面白い小説」であるという何よりの証左になっていると思いますね。

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        2019/01/19 by dreamer

    • 他3人がレビュー登録、 12人が本棚登録しています
      国家〈下〉 (岩波文庫 青 601-8)

      プラトン

      岩波書店
      カテゴリー:古代哲学
      5.0
      いいね!
      •  ギリシア哲学の大家プラトンの代表作であり、現在の法政治の先駆ともされる著作『国家』の後半である。
         後半で記される主な概念は善のイデア(有名な太陽、幾何学、洞窟の比喩もここで登場する)、哲人政治。
         個人的に注目したのは、哲学が実利的でないという民衆の批判に対する、プラトンの「自称」哲学者たちの適切でない立ち振る舞い(相手を論駁することを目的とした議論を吹っ掛ける等)が元凶であるという指摘である。奇しくも約2500年後に極東の島国で同じような、文系科目不必要論が国単位で話題に上がっていることを知ったら彼は何を思うだろうか。と言っても、本書に述べられているが、真の哲学者は自然的素養と、学問にのみ打ち込める最適な環境からしか生まれないというのが本当なら、なかなか哲学の真価が日本で問われるのはまだまだ先になりそうか…。
        >> 続きを読む

        2017/04/05 by shinshi

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      死者の都市 (海外ベストセラー・シリーズ)

      ハーバート・リーバーマン

      角川グループパブリッシング
      4.0
      いいね!
      • このハーバート・リーバーマン原作の「死者の都会」は、医学ミステリーというよりは、実録小説風の雰囲気を漂わせている小説です。

        ニューヨーク市検視局局長コーニグが主人公で、バラバラ死体事件、局内不正の発覚、娘の誘拐と、三つの事件が並行して起こり、なおかつ日常業務としての変死体の解剖、大学の講義、様々な事務処理、世界各国の法医学者や病理学者への学術的な返信などに囲まれる"孤独な老法医学者"を通して、"猥雑なニューヨークという大都会"そのものが描かれていきます。

        「救急車やバンが横の入り口や裏口に次々に止まる。パトカーは到る所に止まっている。死体運搬車が外に出され、キャンバスの袋が運び込まれる。〈肉の配達〉----と警官たちはこれを呼んでいる。建物内では、グリーンの廊下に沿って騒音の渦である----開閉するスチール・ドア、行き交う人や運搬車、接触不良の声の割れる拡声装置でがなりたてる呼び出しアナウンス」と、検視局はこのように描写されていますが、この簡潔で的確な描写の背後から、"ニューヨークという大都会の縮図"が鮮やかに浮かんできます。

        死体置き場に次々に運び込まれる元娼婦、元店員などを手早く解剖していくさまは、「左冠状動脈に塞栓」とか「大動脈弁閉鎖不全」という専門語が何の説明もなく、リズミカルにポンポン飛び交うだけに、いっそう不気味でゾッとするような戦慄を覚えてしまいます。

        検視官というものの実態を知らないこちらには、非常に興味深く、特にメチャメチャに分断された肉の切片から復元していくところは圧巻です。

        その不愛想なまでの小説のリズムが、最後まで一貫していて、この小説全篇を実録風な味わいの小説にしているように思います。

        しかし、そうかと言って、ドラマティックな盛り上がりがないわけではなく、ラストシーンは心憎いほどの結末になっていて、このさりげないラストは、"猥雑なニューヨークに生きる検視官のドラマ"を静かに凝縮していて実に見事です。

        ただ主人公のコーニグが法廷で医者だけが偽証しうる、と思うシーンがあり、その点では他の医学ミステリーに登場するような医者たちと同様の"誇りと悩み"が、この小説にも漂っているように思いますが、死体横流し事件を含め、そういう"医学"の縦糸が、誘拐サスペンスという"横糸"と密接な関連を持たず、縦糸同士でもつれていくのをみると、やはりこの小説は医学ミステリーとは別のジャンルの小説ではないかと思います。

        以前、何かで医学ミステリーの定義について読んだことがあります。「医学ミステリーは普段、紙の上で死体を捏造するミステリー全体の贖罪を、一身に負っているジャンルである」と----。



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        2016/09/02 by dreamer

    • 1人が本棚登録しています
      アポロンの剣闘士 (集英社文庫―コバルトシリーズ)

      若桜木 虔

      3.0
      いいね!
      • 既読本

        2018/10/13 by kou7kou

    • 1人が本棚登録しています
      永遠の夫

      千種堅 , フョードル・ドストエフスキー

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      2.0
      いいね!
      • ドストエフスキーが描く人物は、躁鬱病ではないかと思うほど情緒不安定な感じの登場人物が多く、苦手。
        かつて浮気した相手の夫が突然現れる話なのだが、主人公はいけすかないし、夫は何考えているか分からず不気味。
        実に居心地の悪い読後感です。
        >> 続きを読む

        2015/10/10 by asapy

      • コメント 4件
    • 4人が本棚登録しています
      余話として (文春文庫 し 1-38)

      司馬 遼太郎

      文藝春秋
      4.0
      いいね!
      • 織田 信長と「異風好みのかぶき者であった前田利家(加賀百万石の初代藩主)」の主従関係の話、明智光秀は室町風の礼式言葉を身につけていたので、織田 信長の武将としてあのような活躍ができた(最後は、主君信長を殺す有名な「本能寺の変」をおこすことになるが)…等の面白い余話がたくさんあります。 >> 続きを読む

        2011/04/25 by toshi

    • 1人が本棚登録しています
      木のうた (四季のファンタジー 1)

      木島 始

      4.0
      いいね!
      • とてもとても古い絵本ですが、色褪せないです。
        木がとても美しいし、絵も自然と心に沁みこむような感じ。
        文章も、訳された頃の香りがするようだ。
        >> 続きを読む

        2014/12/10 by けんとまん

      • コメント 1件
    • 1人が本棚登録しています

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