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1980年7月発行の書籍

人気の作品

      風の十二方位 (ハヤカワ文庫 SF 399)

      アーシュラ・K・ル・グィン

      早川書房
      カテゴリー:小説、物語
      2.5
      いいね!
      • 【ル・グィンの原点とも言うべき短編集】
         本書は、ル・グィンの第一短編集であり、初期の作品から1974年に発表された作品まで全17編が収録されています。
         その内、長編の一部と言っても良い作品が6編、小説よりも散文詩に近い、作者が『心の神話』と呼んでいるカテゴリーの作品が4編含まれており、その他、ドラッグ・ストーリーとでも言うべきカテゴリーもあり、純粋に独立した短編小説と言えるのは4編位でしょうか。
        ほとんどの作品には冒頭に作者自身によるコメントが付されており、執筆意図や、後に書かれる長編との関係などを知ることができます。
         また、SFというよりはファンタジーと言うべき作品も数編含まれており、バラエティに富んだ構成と言えるのではないでしょうか。
         それでは、収録作品からいくつかご紹介。

        ○ セムリの首飾り
         3つの知的種族が生存している惑星を舞台にしたファンタジー色の濃いSFです。
         人類はこの惑星を既に調査しており、文明の発達に一定程度関与しています。
         その中の一つの種族の女王が、かつて自分の家に代々伝わっていたけれどもその後失われてしまったサファイアの首飾りを探す旅に単身出かけるという物語です。
         ずっとファンタジーで来るのですが、思わぬ所でSFに転化する作品です。

        ○ 四月はパリ
         タイムトラベル物です。
         誰にも注目されない学者がパリのうらぶれたアパートで悶々としていたところ、ほぼ同じ位置に過去あったと思われる場所に住んでいたこれまた世間から相手にされない魔法使いの魔法により過去にタイムスリップするという物語。
         お互いに、知りたい知識を相手が持っていることに気付き、狂喜乱舞します。
         段々図に乗る魔法使いは、女が必要だなどと言い出し……。

        ○ マスターズ
         数学が一定レベルで固定してしまい、それ以上の発展を考察しようとすると異端だと言われる世界が描かれます。
         主人公は、密かに『0』の存在を教えられ、その威力に圧倒されます。
         そして、異端者(つまりは、純粋に数学の発展のために研究しているグループ)に加わり、数学の真の姿を見極めようとするのですが……。

        ○ 名前の掟
         これもファンタジー作品です。
         ある小さな村には、どうにも冴えないミスター・アンダーヒルという魔法使いが住んでいました。
         風采もぱっとしないばかりか、魔法の腕も大したことがなく、魔法でいぼを取ってやってもすぐにまたできてしまうという感じです。
         でも、この世界では、一つの集落には一人は魔法使いがいるというのが当たり前でしたので、そんなアンダーヒルでも人々からは(一応の)尊敬を得ていました。
         そんな村に『黒ひげ』と呼ばれることになるもう一人の魔法使いがやって来たのです。
         その魔法使いは、かつて強力なドラゴンを倒し、自分の一族が所有していた宝物を横取りした優れた魔法使いを探して方々を旅していたのです。
         まさか、あのミスター・アンダーヒルがそんな強力な魔法使いのわけはないのだけれど……。

        ○ 冬の王
         後に、名作『闇の左手』として結晶することになる前触れの短編です。
         『闇の左手』と同じ、冬の惑星を舞台にしています。
         王は、何者かに捉えられ、その脳をいじられてしまったようなのです。
         おそらく、何者かの意のままに王を操るため、いつか脳に施した細工を発動させるつもりなのだと思われます。
         王は、それを阻止しようと退位すると宣言するのですが、評議会はこれに同意しません。
         冬の惑星の医学では王の脳に施された細工を解くことはできませんでした。
         そこで、世界連合の全権大使アクストが呼ばれたのです。
         アクストは、王に対し、「退位された後どうされるのですか?」と尋ねます。
         王は摂政を選ぶと言いますが、「脳をいじられているのであれば、王が望むような摂政を選ばせることはないでしょう」と忠告します。
         王には取り得る手段が無いように思われるのですが……ただ一つ可能なのは、遙か何光年も遠くにある世界連合の医学により王の脳に施された細工を解くことなのですが、そんなことをしてしまえば往復だけで50年近くがかかることになってしまいます。
         王はどうするのでしょうか?

         ご紹介した作品はどれも面白いと思いましたが、他の作品の中には正直ビミョーかなぁと感じるものもありました。
         いずれにしてもル・グィンを読んでいくためには是非とも読んでおいた方が良い重要な短編集であることは間違いなさそうです(他の長編の萌芽が数々見られます)。
        >> 続きを読む

        2020/01/09 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 2人が本棚登録しています
      絵本・地獄
      風涛社
      4.3
      いいね!
      • 人の死に対する恐れは本能と言われるものでしょうが、それはまた、学習によって強められることを、日常の経験を通して私たちは知っています。

        昔の人が医学の未発達のその頃、地獄絵を子供らに見せ、死の恐れを語り、行動の自制を求め、生への執着を強めて子孫の持続を計ろうとした。と考えると、この絵図はその時代の人が生んだ大いなる叡智の1つと言えます。

        以上、前書きより。

        自然経験の豊富な子供ほど、自己肯定感がを強いらしい。本件と通じるところがあるように思う。自身を超越するもの、さりとて工夫の使用が無いわけではないもの、と対比するように自身の輪郭を形成し、行動力・思考力を研ぎ澄ましてゆくというものである。天国・地獄の観念も、現世と対比する事で似たような所があるのではないか。

        如何に生きるべきかを問う前に、生きることそのものを問わなければならない現代。本書は40年ほど前に出版されたが、生死を感じにくい社会感は当時からずっと変わらない。願わくば、死に相対した形で生きることの価値・大切さを、子どもに感じてほしいし、私自身も再考したい。
        >> 続きを読む

        2018/11/12 by こいこい

    • 他1人がレビュー登録、 5人が本棚登録しています
      野草 (岩波文庫 赤 25-1)

      魯迅

      5.0
      いいね!
      • 老人 日も沈んだゆえ、少し休むがよかろう、わしのようにな。
        行人 でも、あの前方の声が行けといいます。
                                  ――「行人」

        +++

        どの海外文学にもいえることですが訳者との相性は本当に大切で、
        魯迅文学といえば私は、漢文のリズムを活かした詩的な竹内好氏の訳が大好きです。


        「沈黙しているとき私は充実を覚える。口を開こうとするとたちまち空虚を感じる。」
        という題辞からして詩的な文体をとっぷり味わえる、魯迅文学の精髄。


        引用した「行人」は好みの収録短編のひとつで
        「過客」とも訳されますが、修行人や旅人といった意味。
        ほぼ会話だけの戯曲形式で展開する10ページほどの散文詩です。


        ある日のたそがれ、老人と少女のもとに、ぼろをまとった若き旅人が通りかかる。
        旅人は疲れきっているのに、休もうともせずに西へ向かおうとする。
        老人が尋ねても、旅人は生まれたときから一人なので、自分が何という名前か知らず、
        物心ついたときから歩いているので、どこへ向かっているのかもしらないという。
        ただ前方からせき立て、呼びかける声の方に従い、足を引きずりながらも旅人は歩きつづけ……

        何故、自分が歩きつづけているのかわからず、
        それでも歩きつづけなければならないことに苦悶する旅人の心理が
        短い会話の中で見事に描かれている気がします。


        ちなみに……
        紹介した「行人」の雰囲気によく似た大好きな物語で、
        アゴタ・クリストフ氏の「道路」という戯曲があります。
        遠い未来、全人類がただひたすら、コンクリートの道路を歩きつづける物語。
        道路に出口はあるのか? 何故歩くのか? やがて疑問を持つ者が現れて……


        「道路では、どんなことも起こらないとはいえないがね、
        たいていのことは起こらないし、確実なことなんて一つもないよ。」
                                     ――「道路」


        『怪物――アゴタ・クリストフ戯曲集』(堀茂樹訳)収録に収録されていて、
        作者は『悪童日記』など双子三部作で有名ですが、戯曲もすごくおもしろいです。

        こういった読後感のささやかなリンクが
        読書の醍醐味でもあるのかなぁと思います。

        >> 続きを読む

        2016/07/30 by ロダン

    • 1人が本棚登録しています
      ああ勝負師 (角川文庫 あ 4-6)

      阿佐田 哲也

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • ギャンブルにまつわる悲哀をコメディタッチで描く。

        お金がかかることで本性を剥き出しにする人間達の悲喜こもごもが虚しい。

        経験としてはもちろん有るものの、基本的にはギャンブルには手を出さないようにしている。

        理由は、生産的で無いこと、胴元が存続している以上、結果的には負ける仕組みになっていること。
        そして何よりも他にやりたいことが有るからで有る。

        従って、経験が有ると言っても、麻雀、競馬、パチンコ程度。
        強いて言えば、宝くじ購入もギャンブルと言えばギャンブルに入るかと言ったところ。

        と言うといかにもギャンブルをやる人が嫌いそうだが、実はそうでも無い。
        定職に就いて、余剰の範囲内のお金で趣味としてやっている分には有りだと思う。

        しかし、これを本職とする(逆に言えば定職に就いていない)ギャンブラーについては、幾ら職業に貴賤は無いとは言え、生産的で無い点で賤しいと見るしかないと考えている。

        気の良いおじさんギャンブラーと、ビジネスの世界で部下を叱咤しながら厳しい業務に臨む人。
        明らかに前者の方が人間的には好かれると思うが、何かを生産することで社会に貢献し、納税の義務を果たすのが社会人としての務めでは無かろうか。

        国民の三大義務も「勤労、納税、教育」で有る。
        責任を背負うことから逃げ、流されるように生きている人間を許容する風潮を作ってはならないと思う。

        本作品では、ギャンブルのスリルに取り付かれ、振り回される人々が描かれている。
        正直住む世界が違うため、第三者的には、非常に刺激的で面白い。

        ヤクザや風俗など裏社会ネタを読んでいる感覚と非常に近いものが有った。

        ギャンブルなんぞに心血を注ぐなら仕事の方に注げと言いたい。
        >> 続きを読む

        2012/09/06 by ice

      • コメント 3件
    • 1人が本棚登録しています
      宇宙のなぞ (なぜなぜ理科学習まんが)

      もりゆき男

      集英社
      4.0
      いいね!
      • 年末、大掃除をしていたら本棚から出てきたので、今度親戚の子にあげようと思って読み直してみた。

        なにせ三十年ぐらい前の、私が小学校にあがる前ぐらいに読んだ本なので、冥王星が惑星に入っていたり、世界の人口が三十億と言われているところはさすがに時代を感じさせるが、大体は今もあまり変わってない、宇宙のいろんなことについてとてもわかりやすく解説してあり面白かった。

        末尾に、

        「ぼくたちはこの美しい地球をまもろうね。そして、宇宙人としてはずかしく文明と文化を築こうね!」

        という一文があり、全く小さい頃に読んだはずなのに覚えていなかったが、あらためてこういう心が大切だよなぁとしみじみ。

        今さらながらだけど、星の等級(一等星とか六等星とか)は古代ギリシャの天文学者のヒッパルコスが定めたとこの本であらためて知って感心した。
        他にもいろいろ忘れていることが多かった。
        天文学、あらためてかじってみようかなぁ。
        >> 続きを読む

        2014/01/13 by atsushi

      • コメント 6件
    • 1人が本棚登録しています
      ジェレミー (ハヤカワ文庫NV)

      ジョン・ミナハン

      3.0
      いいね!
      • ブックオフの棚に並べられていた本書の表紙に惹かれて購入。

        本作は青春映画の佳作とも評されている映画化作品の原作で、主演のロビー・ベンソンとグリニス・オコナーは日本でもちょっと人気がありました。

        ぼくも数年前に映画を先に鑑賞しましたが、本書を読むと語りべのジェレミーのスーザンに対する思いが、幼すぎるというか、純真すぎて幾分気恥ずかしい思いがしました。

        初恋の始まりとあっけない幕切れを淡々と描いていますが、その幕切れの理由が主人公両家の確執云々ではないので、もう少し冷静になれば二人の初恋は継続したんじゃないの?って思いもしましたが、感受性の強い年代の二人だからこそ”世界の終わり”的にとらえるのも青春っぽくて良かったかな。

        >> 続きを読む

        2019/10/29 by アーチャー

    • 1人が本棚登録しています
      針の眼 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

      ケン・フォレット

      5.0
      いいね!

      • このケン・フォレットの「針の眼」は、彼のデビュー作であり、MWA最優秀長篇賞受賞の傑作スパイ・スリラーで、ドナルド・サザーランド主演で映画化もされています。

        その後、ケン・フォレットは、「トリプル」「レベッカへの鍵」「ペテルブルグから来た男」など、良質の作品を発表し続け、いずれも史実を巧みに取り入れて、恋愛小説的な味付けも楽しい作品群で、今や私のご贔屓の作家のひとりになっています。

        ヒトラーは、連合軍がノルマンディに上陸するとみていた。しかし、英国に潜入したスパイたちから送られてきた情報によれば、連合軍の上陸予定地はカレーになっていた。

        その連合軍の上陸作戦が目前に迫ったある日、英国国内で諜報活動を続けていたドイツ屈指のスパイ"針"こと、ディ・ナーデルは、密命を受け、調査任務につき、その結果、重大な事実が明らかになったのだ。

        "針"は、カレー上陸が連合軍の偽装工作であることを見破り、その証拠写真を持って、自らヒトラーに伝える決意をする。

        しかし、今スパイ狩りを行なっていた英国情報部MI5は、過去の殺人事件から"針"の存在を知り、その行方を必死で追っていた。

        その執拗な追跡の手を逃れて"針"は、漁船を盗み、Uボートとの合流地点へと向かうのだが、折からの嵐に遭遇し、船は難破し、彼は必死の思いで、ある孤島へと辿り着く。

        だが、そこで待っていたのは、"危険な愛と思わぬ運命の変転"だった-------。

        一説によれば、ドイツのスパイは、1939年のクリスマスまでに全員検挙され、英国には当時一人も残っていなかったと言われています。

        また、ドイツが連合軍のカレー上陸というトリックに疑念を抱いたことも事実であるらしい。そこで、ケン・フォレットは、想像の翼を広げ、"針"という冷酷にして優秀なスパイを歴史的なノルマンディ上陸作戦に絡ませたのだ。

        そして「針の眼」は、その大芝居であり、それが結果として、ものの見事に成功していると思う。

        もっとも、事実の上に築かれた壮大な虚構の世界は、この作品が初めてではない。スパイ・スリラーの大御所ジョン・ル・カレの「寒い国から帰ってきたスパイ」がそうであったし、フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」もそうだ。

        英国人のケン・フォレットがこの作品を書いたのは、29歳の時だ。つまり、第二次世界大戦を全く知らない青年が、歴史的事実を随所に散りばめながら、"針"を初めとする、様々な人物たちの物語を書いたのだ。

        自分の正体を知った者を、針に似た鋭利な武器で殺していく冷酷な孤高のスパイ"針"の魅力。そして、"針"と英国情報部MI5が繰り広げるスリリングな逃亡と追跡。

        この作品は、ドイツのスパイ全員が捕まったわけではなく、一人、それも不死身のスパイが英国本土に残っていたという仮定から生まれた、途方もなく壮大な波瀾万丈のスパイ・スリラーなのです。


        >> 続きを読む

        2018/01/21 by dreamer

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      容疑者は雨に消える

      コリン・ウィルコックス

      文藝春秋
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • アメリカの警察小説は、エド・マクベインの「八七分署」シリーズだけではなく、コリン・ウィルコックスのサンフランシスコ市警のフランク・ヘイスティングス警部シリーズも、1970年代のネオ・ハードボイルドの影響を色濃く残す、地味ながら良質のなかなか読ませる警察小説です。

        このコリン・ウィルコックスの「容疑者は雨に消える」に登場する、サンフランシスコ市警のフランク・ヘイスティングス警部は、実に魅力的なキャラクターで、その仲間も個性的な面子が揃っているんですね。

        この「容疑者は雨に消える」は、期待を裏切らない、しっとりとした味わいのあるミステリーだと思います。

        クリスマスも近いサンフランシスコで発生した二つの殺人事件に取り組むヘイスティングス警部は、「警官が売買する商品は、人間の悲惨なのだ」と常々考えている、かつてのフットボールの花形スターだったが、今は妻に去られた43歳の苦労人だ。

        そして、彼を取り巻く脇役陣が実にいいんですね。泥棒を逮捕しながら、逆に物を盗まれてしまう28歳のカネリ。体重が240ポンドもあるこの刑事は、捜査でいつも信じられないほどの幸運に恵まれるのです。

        対照的に、ひょろひょろのやせっぽちで、気難しい34歳のカリガン刑事。また、敏腕で出世街道を歩んでいるが、人に好かれないマーカム刑事などが、「私」というヘイスティングスの眼を通して語られていくのです。

        離婚して、小学校の教員を勤める「灰色の大きな目をした、小柄な張りつめた」アン・ヘイウッドも忘れがたいですね。ヘイスティングスは、彼女の息子を取り調べた時、アンと知り合います。その時、雨が降っていました。

        雨のサンフランシスコという設定が、この小説に何とも言えない情緒を添えているように思います。作者のコリン・ウィルコックスは、40歳を過ぎて、このシリーズを書き始めていて、この作品はその第3作目で、実に味わい深い作品だと思います。
        >> 続きを読む

        2017/10/22 by dreamer

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      ポワロの事件簿

      アガサ・クリスティ

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 雑誌連載されたポワロ物を集めた短編集です。
        ポアロがヘイスティングズと一緒に暮らしているのが、やけに嬉しかったりして。

        ポアロは相変わらず、ヘイスティングズをおちょくって怒らせてみたり、
        時には人の家に忍び込んでみたり!の活躍もしてくれます。

        お馴染みのジャップ警部も随所に登場。
        彼は短篇のほうが存在感が増しますね。

        まだ作家として未熟な時期の短編とはいえ、
        いくらでも長編に書き換えられそうな物語がいっぱい。
        贅沢すぎ。もったいない・・・とさえ思ってしまう。

        特に「三幕の殺人」でも話題になっていた「チョコレートの箱」は長編に似合いそうです。
        登場人物の印象がとにかくすごくて。
        ・・・まったくクリスティには畏れ入ります。

        *ハヤカワの「ポアロ登場」と半ば内容がダブる短篇集です。
        収録作品は異なりますが、両方買う必要はありません。
        創元で1-2と買うか、ハヤカワで揃えるかってところです。
        でも私は、ハヤカワの「新訳」真崎 義博氏の訳は嫌いです。
        創元の厚木淳さんの翻訳は、ポアロものを多数訳されていることもあって、
        安定感がありトータルイメージができていると思います。
        ヘイスティングズのセリフもこちらが好みです。

        参考に『ヴェールをかけたレディ』の女性のセリフの翻訳をご紹介。
        ハヤカワ版よりも断然こちらがいいですよ!

        「それは困ります、ポアロさん。私、どうしてもこれが必要なんです」(真崎訳)
        「いけませんわ、ポワロさん、わたくし、ぜひともこれが必要なんですの」(厚木訳)
           ↕ (同一人物のセリフです)
        「騙されたわ!」まるで人が変わったようにレディ・ミリセントが言った。
        「意地悪じじい!」彼女は愛情と畏怖の念が入り混じったような目でポアロを見つめた。(真崎訳)
        「畜生、どじったか」レディ・ミリセントはがらっと態度を変えた。
        「このくえない古狸め」彼女は親しみと畏怖がまじったような目つきでポワロを見た。(厚木訳)

        さて、表現効果の違いをどうご判断されますか(o ̄ー ̄o)

        ≪ポワロの事件簿2  PIOROTS EARLY CASES≫ 1923~30
        1.戦勝舞踏会事件
          「スタイルズ荘事件」の直後に書かれた作品。
          初期作品らしくポアロもまだ若々しくてお茶目です。
          仮面舞踏会での殺人とくれば当然!
        2.料理女を探せ
          使用人の突然の失踪の真相は意外にも大きな事件と繋がっていく。
        3.マーキット・ベイジングの謎
          密室の拳銃自殺の真相は…。
          ジャップ警部と一緒に3人で旅行なんかしています。
          彼は植物学者なんですって!
        4.呪われた相続
          旧家ルメジャラ家には家督を継ぐ長男が不幸な死を遂げるという伝説があり、
          それが現実に起こっていた。
          ポワロは「呪い」を断ち切ることができるだろうか?
          皮肉な結末が新たな不安を醸し出す絶妙な余韻が怖い佳作。
        5.潜水艦の設計図
          盗難事件としては意外な結末。事件の真相はちょっと複雑。
          短篇「首相誘拐事件」の続編。
        6.ヴェールをかけたレディ
          ポアロが泥棒の真似事をするとっても愉快な話 
        7.プリマス特急
          長編『青列車の秘密』の原案なので「青列車」を読む予定があるなら、
          この短編は絶対に先に読まないこと!
        8.消えた鉱山
          中国人事業家が殺害され鉱山の場所を示す地図が盗まれた。
          チャイナ・タウンにアヘン窟といういかにも(^^)な設定。
        9.チョコレートの箱
          ポアロの失敗談。ファンの間ではとても有名なお話。
          老婦人の存在感がお見事。
          トリックとして実現性はどうかしら?とも思いますが、謎解きのヒントは面白いです。
        10.コーンウォールの謎
          夫に毒殺される。ポワロを頼って来た直後に女は死亡した。
          疑惑の夫が犯人なのか、それとも…?
          ここにも、クリスティすなわちポワロの罪に対する独特な考え方が現れている。
        11.クラブのキング
          小国の王子と美人ダンサーの恋愛とそれに絡んだ殺人事件。
          こういう人間関係がクリスティはお好きですね。
          カードゲームのブリッジが謎解きの鍵になってきます。
          ブリッジが登場するのもクリスティの定番です。
          解決の仕方も、この段階でいかにもポアロというやりかたです。
          小品ですが、かなり特徴的な作品だと思います。
        全十一編

        6.8.9.は「ポアロ登場」(ハヤカワ)に収録
        >> 続きを読む

        2012/12/17 by 月うさぎ

      • コメント 8件
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