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1983年4月発行の書籍

人気の作品

      カエアンの聖衣 (ハヤカワ文庫 SF 512)

      バリントン J.ベイリー

      3.5
      いいね!
      • 【意思を持つ衣服というすこぶる奇妙なアイディアに基づくSF】
         この物語の宇宙では、二つの勢力が語られます。
         一つはザイオード人らの勢力。
         ごくごく普通のヒト型タイプの生命体で、まぁ私達に理解しやすい文明を築いています。
         もう一つはタイトルにもなっているカエアン人たちによる勢力。

         カエアン人達もヒト型の生命体で、ザイオード人同様、元々の根っこは地球なのでしょう。
         ただ、すこぶる奇妙な文明を発展させているのです。
         カエアン人達は衣服をものすごく重要なものと考えており、衣服によりそれを着る人間の個性や能力を強調するような文明を築いているのです。
         そういう文明だけあって、カエアン人が作る衣服というのは桁外れに素晴らしいもので、ザイオード人達の世界でも高額で取引される芸術品のようなものでした。
         
         ある時、ザイオード人の密貿易商人であるリアルト・マストは、カエアン人の船が衣服を満載したままある惑星に不時着したという情報を入手しました。
         その惑星には超低周波音を放つ危険な生物がうようよしていることで知られており、うかつに着陸しようものなら、たちまち超低周波音で粉々にされてしまうのが目に見えていたのです。
         そのため、カエアン人達も不時着した船を回収することもできずにいるわけです。

         マストは、ならず者の手下2人と共にこの惑星の不時着船から高額のカエアンの衣服をサルベージして大儲けすることを企てますが、すべての衣服を持ち帰ることは自船の容量から不可能であるため、衣服の目利きができる者として、ザイオード人の優れた服飾家であるペデル・フォーバースを仲間に引き込みました。

         首尾良く不時着船を発見し、ペデルはその船に満載されていたカエアン人の衣装に驚愕します。
         どれも皆素晴らしい!
         とにかく、貴重な物、高そうな物を中心に次々と運び出すのですが、その時、一着のスーツを発見します。
         こ、これは……。

         そのスーツは一見したところザイオードでも普通に見られるようなデザインの何ということはないスーツにも見えるのですが、間違いなく最高の繊維であるブロッシムを使った、しかも、伝説のデザイナーであるフラショナールの手による幻のスーツだったのです。
         言い伝えによれば、フラショナールはこのスーツを5着しか作らなかったと言います。
         そのうちの1着がここにある!
         狂喜したペデルは、このスーツを持ち帰りました。
         そして、この分捕りに参加したマストらが自分の物としてきらびやかな衣装を1着ずつ選んでいる時に、ペデルは何も言わずにこのフラショナール・スーツを自分の取り分としてもらったのでした。

         無事にザイオードに帰ったペデルは、フラショナール・スーツを着てみました。
         何と素晴らしい!
         それまでおどおどしていたペデルですが、心の底から自信が沸き上がってくるようではありませんか。
         物腰や身のこなしも大変優雅なものになっていきます。
         もはやこのスーツを脱ぐことはできない。

         このスーツを身につけたペデルは、仕事も絶好調になり、社会的地位もどんどん上昇していきます。
         今やザイオードの大臣たちとも交友関係を持つ社会的名士となり、うなる程の金も儲けられるようになったのです。

         これがフラショナール・スーツの威力なのでしょうか。
         そんなペデルの心の中に、これだけ素晴らしいスーツを作れるカエアンに行ってみたいという気持ちがどんどん大きくなって行きました。
         それは、本当にペデルの気持ちなのでしょうか?

         一方、ザイオードとカエアンの関係は徐々に悪化していきます。
         どうも、ザイオードに、カエアンが衣服文化を通じてザイオードを侵略するつもりではないのかという疑心暗鬼のような考えが高まって来たのです。
         その考えに乗ずるように、歴史学者のアマラ率いる一行は、自分たちの学術研究を進めるために、カエアン文化が何故あのような特異な発展を遂げたかの研究をザイオード政府に認めさせ、非合法な調査探索に出かけるのです。
         つまり、カエアン文化の発展を知ることはカエアンの弱点を知ることでもあると主張し、それなりの根拠を示したことにより、いずれ戦端を開くことになると思われるカエアンをスパイする的な研究でもあると説得して費用や権限を勝ち取ったのですね。

         さて、本作は、フラショナール・スーツの虜になってしまったペデル、カエアン文化の発展の秘密を探るアマラ、非合法取引に手を染めまくるマストらを中心として、衣服至上文化を築いたカエアンの秘密が語られるという、極めて異色のSFになっています。

         もうとにかく設定がすごいですよね。
         ちょっとだけ書いてしまうと、カエアン人だって実は良いように操られているんですよ。
         じゃあ、一体誰が操っているのか?
         そんな奇想天外な展開をみせるSFです。

         作中には、生まれた時から機械のボディーの中に閉じこもり、成長と共に外側の機械が大きくされていき、一生機械ボディから出なくなったヒト型生命体や、その反対に生体改造をしまくる文明を発展させたヒト型生命体(この両者は敵対しているのです)などというとんでもない種族も登場します。
         後者のサイボーグ文明は、ヤクザ坊主に率いられているなんていうキッチュな設定にもなっていますよ(だって、日本人の後裔なんですもの!)。

         あるいは、『蝿の惑星』なんていう、極めておぞましい星が出てきたりと、まぁ、にぎやかなギミック満載です。
         そうそう、実はこの作品、セーラー服を着たらその服の威力で絶大な能力を使うことができることになるという設定のアニメ、『キルラキル』の作者が本作のアイディアを使ったということだそうですよ。
         『キルラキル』は見たことがないのですが、こういう形での影響も及ぼしているのですね。


        読了時間メーター
        □□□     普通(1~2日あれば読める)
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        2020/04/24 by ef177

    • 他1人がレビュー登録、 4人が本棚登録しています
      Zの悲劇 (創元推理文庫)

      エラリー・クイーン

      東京創元社
      カテゴリー:小説、物語
      3.0
      いいね!
      • 1933年の
        謎をとく役がドルリー・レーンのシリーズ

        レーンの推理で
        犯人は3人のうちの1人
        …という表現が
        何回も出てくるが
        その3人が誰やねんとずっと不思議やった

        語り部の女の子を
        こらアカンやろと思ったのは
        お金の亡者の女性を
        老いぼれ女と言ったり
        死刑囚の事を
        つまらぬ人生を送ったと決めつけたり
        残念な亡くなり方をした人の事を
        無用の長物などと言ったり
        人前で口紅を塗ったり
        無実だからその人を逃がすとか
        この子がうちの子やったら
        もう、許さんで

        ただ、この子
        もし自分が間違っていたら
        貴方の帽子を大通りで食べてみせますわ
        とか言うてたとこ、
        どんな表現やねんと笑った

        警視を引退した
        今は探偵になってる人に
        みんないつまで警視って呼ぶんかな、
        この探偵も否定せんし、
        自分で警視っていうし(汗)

        右利きだと右足がきくって理論、
        眉唾っぽいし
        真相を解くヒントの箱が
        海に関係あるなんて
        伏線すら張られてないし、
        推理小説としてどうやねん、
        頼むで、エラリー・クイーン(涙)

        死刑執行の場面は
        緊迫感に溢れていて
        実際、取材したりしたんやろなあ、
        ここだけでも
        この小説は値打ちがある

        時代を感じたのは
        奇怪なもののたとえに
        女流飛行家とズールー族の娘が出てきたとこで
        現代なら偏見極まりないとされるだろう

        大理石だけを売る業者が出てくるが
        当時は
        それで生計がたつ程の業種だったのかな

        何より、
        レーンがマニキュアって
        男性やし
        爺さんやし
        これがこの頃は当たり前やったのかな
        >> 続きを読む

        2017/03/11 by 紫指導官

    • 他1人がレビュー登録、 6人が本棚登録しています
      つはぶきの花

      内田百間

      旺文社
      5.0
      いいね!
      • 30年以上も前に北海道の岩見沢の通りがかりの本屋さんで購入。百閒の、他にもたくさんあったはずの本のなかから、なぜこの一冊を選んだのかは不明だが、他のものを読んだあとも、やはりこれが一番好きだ。 >> 続きを読む

        2016/05/13 by まるち

    • 1人が本棚登録しています
      死者の学園祭 (角川文庫 緑 497-10)

      赤川 次郎

      角川グループパブリッシング
      カテゴリー:小説、物語
      4.0
      いいね!
      • 校舎から飛び降り自殺した女子高生。その後、立て続けに起こる女子高生殺人事件。

        何となく読んだ気がするなぁと思いつつ読み進めたが、結果的にはやっぱり読んでいた。

        小学生時代に赤川次郎にハマった時期があったため、記憶には残っていないものの、相当数読んでいるはずである。

        とくに本作品のように名前が売れているものは、ほぼ確実に読んでいるはずなのだが、なぜか気になって再読。

        赤川次郎作品としては、久々に読んだのだが、記憶していたよりもずっと面白い。

        学園祭で、あんなエグイ演劇を最後まで演じきれるか!とか、そんな無茶苦茶な学校が有るか!とか、論理的とは思えない部分は有るものの、何と言ってもライトな文体がグイグイと言うよりはスイスイと読み進めさせてくれる。

        そして気がつけば、青春風味と言うか、学生時代に戻ったような気持ちで謎に立ち向かっていくような気持ちになるから不思議だ。

        ミステリでは社会派と呼ばれるタイプのものが好きなのだが、たまにはこういうライトなものも良い。

        読後に深く考えさせられるような部分は無いが、頭が疲れている時に読むには最高だろう。

        そう言えば昔も、赤川次郎作品とは、こんな距離感で付き合っていたことを思い出した。
        >> 続きを読む

        2013/04/01 by ice

      • コメント 5件
    • 5人が本棚登録しています
      英国脱出 (集英社文庫)

      ローマー

      4.0
      いいね!
      • 私が読んだのは単行本版なのですが、まぁいいや。

        1970年代、中東がきな臭い時代。
        アラブの意向を無視してイスラエルに武器を輸出したイギリスは、アラブの怒りを買って銀行の資金をすべて引き上げるとの連絡を受けます。
        北海の油田は共産党の度重なるストライキで使い物にならず、原油もなくマネーもない英国は破産。国民を救うためには、アメリカやオーストラリア、カナダなどの英語圏に大量に移民させる必要がある。
        しかし受け入れ国も失業者問題などいろいろ抱えていて、大量の移民には悲鳴をあげるしかない…

        みたいな経済小説です。スケールの大きさにびっくり。
        著者はカナダ人のベストセラー作家だとか。どおりでカナダが出張っているわけだ。
        ちなみに1975年に英語で刊行されて、1978年に日本語訳が出ています。

        どこまで史実なのか気になったので、読み終わってからwikiで調べてみました。作中でカナダのケベック州(公用語が英語とフランス語の州)が「英国民を無制限に受け入れるなら我々は独立する!」と言い出すのですが、実際1970年代というのは、ケベックの独立が割と本気で取沙汰されていた時代だったようです。時のカナダ首相がケベック州出身であるのも小説と同じ、なので彼がモデルなのでしょう。ちなみに現首相のトルドー氏はイケメンで有名ですが、当時のカナダ首相の息子さんだそうです。二世だったのか!

        しかしこんなに大風呂敷を広げてどうやって収集をつけるんだろうと思ったら、後半に続く!という終わり方でした。調べたら「続・英国脱出」というのがありました。次回はカナダ回の様子。そうだったのね…
        若干訳が古く感じるところもありましたが、時代が時代なのでそういうものなのかも。続きはいずれ読むかもしれませんが、しばらく先かな…
        >> 続きを読む

        2017/09/18 by ワルツ

      • コメント 2件
    • 1人が本棚登録しています
      ポ-ツマスの旗

      吉村昭

      新潮社
      カテゴリー:小説、物語
      4.5
      いいね!
      • 本書は、日露戦争当時外務大臣であった主人公の小村寿太郎が、条約締結の全権となり、ポーツマスでロシアの全権ウィッテと互いの腹を探りあいながら条約締結にいたる日々の息詰まる交渉の進捗状況を史実を元に描き出した歴史小説です。外見的には非常に小柄で弱弱しくさえ見える小村が堂々と対応していく様は痛快でもあります。また、講和条約に反感を持った民衆暴徒の日比谷焼き討ち事件について、感情的な民衆、新聞・政治家の扇動、政府の情報開示の難しさ等考えさせられる事項が多くある好著です。 >> 続きを読む

        2011/04/25 by toshi

    • 3人が本棚登録しています
      はずかしかったものがたり
      童心社
      カテゴリー:小説、物語
      1.0
      いいね!
      • 【読了日不明】

        2013/12/06 by books

    • 1人が本棚登録しています
      神谷美恵子著作集 (別巻) 人と仕事

      神谷 美恵子

      5.0
      いいね!
      • 馬鹿みたいな話だけれど、会ったことの無い人で、知ったのも死後で、そんな人のことなのに、この作品を読んで目の奥がじんと来る思いに溢れる。

        作中で中井久夫氏が、神谷さんについて、『未見の方でありながら、どこかに近しさの感覚を起こさせる』方だ、と触れているが、その通りだなあと思う。


        この作品は、言わば神谷さんへの追悼集になる。
        「生きがいについて」のように、他者いっぱんへのエセーではなく、このタイトルも、神谷さんの「人」となり「と仕事」ぶり、という解題が適切だろうと感じる。

        神谷さんの凄いところは、生き方が、召命感とも言うべき感覚で築き上げられている点と思う。
        『自分は病人に呼ばれている』との観念に25で至り医学と医業を志向したところや、
        『自分のような女が書くのが適当だと思う』との観念でもって、学生時代から、後の集大成たる「こころの旅」の精神的準備を済ませていた点(*)などはその良い例でしょう。
        そしてその観念を支える圧倒的能力と行動力。

        興味と適性
        意志と能力


        自分が何を求めているか
        自分には何ができるか


        「人」となりも「仕事」も、どちらも要は人生をどう位置するか、という要素であり、
        その人生の充実(生きがい)を見つけるにあたっては、その2つの問いは不可欠で不可避なものなのでしょう。


        追悼者が引用する神谷さんの言葉はいちいち素晴らしい。
        「人」が残すもの(「仕事」)は、作品や業績だけでなく、周囲の人への魂の影響もあるのだと洗われる思いに溢れる。


        (*)明石みよ氏追悼文より抜粋
        『その時、私(明石氏)は女の一生、即ち幼児時代からおばあさんになるまでの心理を書いたものは無い、これを誰か書く人はいないかしらと言ったら、前田(神谷)さんは、自分が書く心算だと言う。いままでに女の心理学を書いた人はいない、女の心理は矢張り女が書かなければならない。然し余り女らしい女だったら、客観的に見られないから矢張り書けないと思う。それで自分の様な女が書くのが適当だと思うと言う』
        >> 続きを読む

        2017/08/19 by フッフール

    • 1人が本棚登録しています
      コーネリアス たってあるいたわにのはなし

      レオ・レオニ , 谷川俊太郎

      好学社
      4.0
      いいね! atsushi Tukiwami
      • 副題の通り「たってあるいた わにの はなし」です。

        書店で偶然見かけた際に、ワニの着ぐるみを来た人の話だと思い、中に人が入っていることを豪快にアピールしちゃったわねと笑ってしまい購入したという珍しい出逢い方をしました。

        でも、読んでみたら本当のワニさんで、しかも大人も楽しめる内容でした。

        ワニと言えば、強い!恐い!というイメージは有るものの、一生這いつくばって生きる動物です。
        それなのに、主人公のコーネリアスは立って有るだけではなく、木にぶら下がったりすることまでできます。

        立ちあがって初めて見えて来る世界。

        仲間にも共有しようとするのですが、その気持ちを理解してもらうことができません。
        それでも、コーネリアスは様々な挑戦を続けていきます。

        受け取り方は読者によって違うとは思いますが、私は個性の大切さとか、自分を信じて進む強さみたいなものを改めて教わることができました。

        絵もカワイイし、機会が有ったら是非手に取っていただきたいです☆
        >> 続きを読む

        2013/01/10 by emi

      • コメント 2件
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